このガイドでは、Oracle Business Transaction Managementのインストール方法を説明します。このガイドでは、システムの機能およびユースケースの試行に適した汎用Business Transaction Managementシステムのインストールおよび構成に役立つ情報を提供しています。本番環境に必要なデプロイ構成およびリソースは、予測されるスループット、メッセージのサイズおよびタイプ、適用される監視ポリシーの数など、様々な要素によって異なります。Oracleコンサルタントが、お客様固有のニーズに適した構成およびリソース要件を決定するお手伝いをいたします。
この章では、製品アーキテクチャの概要、製品パッケージおよび一般的なデプロイのガイドラインについて説明します。
Business Transaction Managementは、次の3種類の最上位コンポーネントから構成されています。
セントラル・サーバー – セントラル・サーバーは、アプリケーション・サーバーにデプロイするアプリケーションEARファイルです。セントラル・サーバーは3つあります。これらのサーバーは一括でデプロイすることもできますが、パフォーマンスを考慮してそれぞれ別々のWebLogic Serverインスタンスにデプロイすることが推奨されます。モニター用のサービスまたはコンポーネントをホストしているWebLogic Serverインスタンスには、いかなるセントラル・サーバーもデプロイしてはいけません。セントラル・サーバーには、以下のものがあります。
メイン・サーバー(btmMain.ear) – スフィアを含む、すべての集中Business Transaction Managementシステム・サービスおよびユーザー・インタフェース・アプリケーションが含まれています。スフィアは、Business Transaction Management環境を管理するBusiness Transaction Managementコンポーネントです。さらに、btmMain.earには、F5仲介用のサブデプロイメントが含まれています。
パフォーマンス・サーバー(btmPerformanceServer.ear) – サービス・レベル管理コンポーネントが含まれています。btmPerformanceServer.earは、btmMain.earおよびbtmTransactionServer.earがデプロイされていないアプリケーション・サーバーにデプロイします。
トランザクション・サーバー(btmTransactionServer.ear) – トランザクション管理コンポーネントが含まれています。btmTransactionServer.earは、btmMain.earおよび btmPerformanceServer.earがデプロイされていないアプリケーション・サーバーにデプロイします。
オブザーバ – オブザーバは、監視するビジネス・アプリケーションをホストしているアプリケーション・サーバーにインストールする一連のライブラリです。オブザーバはアプリケーション・コンポーネント間のメッセージおよび呼出しを監視します。オブザーバは様々なタイプのコンポーネントの監視が可能で、監視対象のタイプやオブザーバを実行するアプリケーション・サーバーによって分類されます。
モニター (btmMonitor.ear) – モニターは、アプリケーション・パフォーマンスおよび使用状況の測定結果をオブザーバから収集します。モニターは、アプリケーション・サーバーにデプロイするアプリケーションEARファイルです。大規模システムには、シングルトンまたはレプリケートのいずれかとして、複数のモニターをデプロイすることも可能です。パフォーマンスの点から、モニターはセントラル・サーバーがデプロイされているアプリケーション・サーバーにはデプロイしないでください。
Business Transaction Managementは、パフォーマンス測定結果の格納、メッセージのロギング、環境モデルおよびBusiness Transaction Managementの構成の保持のために、Oracle RDBMSにアクセスできる必要があります。
下の図には、標準的な分散アプリケーション環境と、Business Transaction Managementコンポーネントとその環境との関係が示されています。
図1-1 標準的なアプリケーション環境でのBusiness Transaction Managementコンポーネントのデプロイ
Business Transaction Managementは、様々なBusiness Transaction Managementコンポーネントが複数台のマシンおよびアプリケーション・サーバーにデプロイされる分散アプリケーション環境で使用できるように設計されています。
技術的には、すべてのセントラル・サーバーを1台のアプリケーション・サーバーにインストールすることも可能ですが、本番環境ではそのようなデプロイメント・シナリオは推奨されません。1台のアプリケーション・サーバーにインストールした場合、デモや製品の使用方法の学習には役立ちますが、このシナリオはたとえば大量のビジネス・サービスやメッセージ・トラフィックには対応できない場合があります。
それぞれのセントラル・サーバーは、別々のアプリケーション・サーバーにデプロイすることが推奨されます。特に、パフォーマンスおよびトランザクションのコンポーネントは、通常大量のパフォーマンス分析計算を行います。アプリケーション・サーバー間でプロセスを分割することによって、メモリーおよびプロセッサのリソースを制御することができます。
また、モニターもセントラル・サーバーとは別のアプリケーション・サーバーにデプロイする必要があります。監視要件によっては、複数のモニターのデプロイが必要になることもあります。モニターは、シングルトンまたはロード・バランサの背後のレプリケートのいずれかとしてデプロイできます。モニターのレプリケートの詳細は、第7章「モニターのインストール」を参照してください。
オブザーバは、セントラル・サーバーまたはモニターをホストしているアプリケーション・サーバーの外側にインストールする必要があります。
Business Transaction Managementは、ZIPファイルとして配布されています。セントラル・サーバーおよびモニターは、BTM_Servers_*.zip内に一緒にパッケージ化されています(「*」はBusiness Transaction Managementのバージョン番号を指します)。ZIPファイルのアーカイブ・ディレクトリに、セントラル・サーバーおよびモニターのデプロイメントが含まれています。表 1-1に、含まれるデプロイメントを示します。
表1-1 BTM_Servers_*.zipのアーカイブ・ディレクトリに含まれるEARファイル(セントラル・サーバーおよびモニターが含まれる)
デプロイメント名 | サブデプロイメント | デプロイメント戦略 |
---|---|---|
btmMain.ear |
btmcentral.war btmcontainer.war btmhelp.war btmui.war f5Intermediary.war |
Business Transaction Management環境ごとに1回デプロイ |
btmPerformanceServer.ear |
btmcontainer.war btmperformance.war |
btmMain.earおよびbtmTransactionServer.earとは別のアプリケーション・サーバーに、Business Transaction Management環境ごとに1回デプロイ |
btmTransactionServer.ear |
btmcontainer.war btmtransaction.war |
btmMain.earおよびbtmPerformanceServer.earとは別のアプリケーション・サーバーに、Business Transaction Management環境ごとに1回デプロイ |
btmMonitor.ear |
btmmonitor.war |
いずれのセントラル・サーバーとも別のアプリケーション・サーバーに、必要な数をデプロイ |
オブザーバは、プラットフォームおよびオブザーバ・タイプに応じた個別のZIPファイルにパッケージ化されています。表1-2は、リリース12.1.0.5のオブザーバの一覧です。ZIPファイル名の「*」は、オブザーバのバージョン番号、たとえば12.1.0.5を指しています。
表1-2 リリース12.1.0.5で配布されるオブザーバ
オブザーバのZIPファイル名 | 説明 |
---|---|
BTMObserver_Wls_10.3_Universal_*.zip |
WebLogic 10.3サーバーで実行されるJavaEE、Oracle SOA Suite、Oracle Service Bus 11gR1およびOracle Fusion Applications (ADF-UI、ADF-BCおよびSOAデプロイメント)用のオブザーバが含まれます。 |
BTMObserver_Wls_12_JavaEE_*.zip |
WebLogic 12サーバーで実行されるJavaEE用のオブザーバが含まれます。 |
BTMObserver_Wls_10.3_Osb11gR1_*.zip |
WebLogic 10.3上のOracle Service Bus 10gR3用オブザーバが含まれます。 注: ZIPファイル名には文字列「Osb11gR1」が含まれていますが、このオブザーバはOracle Service Bus 10gR3をサポートしています。このオブザーバは、Oracle Service Bus 11gR1では推奨されません(11gR1では、BTMObserver_Wls_10.3_Universal_*.zipを使用する必要があります)。 |
BTMObserver_OEG_11.1.1.6_OEG_*.zip |
Oracle Enterprise Gateway 11.1.1.6用のオブザーバが含まれています。 |
BTMObserver_Iis_7.5_DotNet4_*.zip |
Microsoft IISバージョン7.5上のWCF 3.5および4.0用オブザーバが含まれています。 |
表1-3および表1-4に示されているオブザーバは、以前のリリースの一部として配布されています。これらのオブザーバは、リリース12.1.0.5には含まれていませんが、リリース12.1.0.5に対応しています。対象のプラットフォームを監視する必要がある場合、これらのオブザーバをインストールする必要があります。(各ZIPファイル名の「*」は、オブザーバのバージョン番号、たとえば12.1.0.1.0を指しています。)これらのオブザーバのインストール手順は、現在のリリースのインストレーション・ガイドには含まれていません。これらのオブザーバのインストール手順は、対象リリースのインストレーション・ガイドに記載されています。