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Oracle Solaris Studio 12.3: C++ ユーザーズガイド Oracle Solaris Studio 12.3 Information Library (日本語) |
13.4.1 クラス fstream を使用したファイル操作
13.4.1.2 ファイルを指定しない fstream の宣言
13.4.1.4 ファイル記述子を使用したファイルのオープン
従来型の iostream ライブラリからルーチンを使用するには、必要なライブラリ部分のヘッダーファイルをインクルードする必要があります。 次の表で各ヘッダーファイルについて説明します。
表 13-1 iostream ルーチンのヘッダーファイル
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これらのヘッダーファイルすべてをプログラムにインクルードする必要はありません。自分のプログラムで必要な宣言の入ったものだけをインクルードします。デフォルトでは、従来型の libiostream ライブラリは iostream に含まれています。
iostream を使用した出力は、通常、左シフト演算子 (<<) を多重定義したもの (iostream の文脈では挿入演算子といいます) を使用します。ある値を標準出力に出力するには、その値を定義済みの出力ストリーム cout に挿入します。たとえば someValue を出力するには、次の文を標準出力に挿入します。
cout << someValue;
挿入演算子は、すべての組み込み型について多重定義されており、someValue の値は適当な出力形式に変換されます。たとえば someValue が float 型の場合、<< 演算子はその値を数字と小数点の組み合わせに変換します。float 型の値を出力ストリームに挿入するときは、<< を float 型挿入子といいます。一般に X 型の値を出力ストリームに挿入するときは、<< を X 型挿入子といいます。出力形式とその制御方法については、ios(3CC4) のマニュアルページを参照してください。
iostream ライブラリはユーザー定義型をサポートしません。出力する型を独自の方法で定義する場合、型を正しく処理するための挿入子を定義する (つまり、<< 演算子を多重定義する) 必要があります。
<< 演算子は反復使用できます。2 つの値を cout に挿入するには、次の例のような文を使用できます。
cout << someValue << anotherValue;
前述の例では、2 つの値の間に空白が入りません。空白を入れる場合は、次のようにします。
cout << someValue << " " << anotherValue;
<< 演算子は、組み込みの左シフト演算子と同じ優先順位を持ちます。ほかの演算子と同様に、括弧を使用して実行順序を指定できます。 必要に応じて、優先順位の問題を回避するために括弧を使用します。次の 4 つの文のうち、最初の 2 つは同じ結果になりますが、あとの 2 つは異なります。
cout << a+b; // + has higher precedence than << cout << (a+b); cout << (a&y); // << has precedence higher than & cout << a&y; // probably an error: (cout << a) & y
次のコーディング例では string クラスを定義しています。
#include <stdlib.h> #include <iostream.h> class string { private: char* data; size_t size; public: // (functions not relevant here) friend ostream& operator<<(ostream&, const string&); friend istream& operator>>(istream&, string&); };
この例では、string クラスのデータ部が private であるため、挿入演算子と抽出演算子をフレンド定義しておく必要があります。
ostream& operator<< (ostream& ostr, const string& output) { return ostr << output.data;}
次の例は、string とともに使用される多重定義された operator<< の定義です。
cout << string1 << string2;
operator<< は、最初の引数として ostream& (ostream への参照) を受け取り、同じ ostream を返します。このため、次のように 1 つの文で挿入演算子を続けて使用できます。
operator<< を多重定義するときは、iostream ライブラリからエラーが通知されることになるため、特にエラー検査を行う必要はありません。
エラーが起こると、エラーの起こった iostream は エラー状態になります。その iostream の状態の各ビットが、エラーの大きな分類に従ってセットされます。iostream で定義された挿入子がストリームにデータを挿入しようとしても、そのストリームがエラー状態の場合はデータが挿入されず、iostream の状態も変わりません。
一般的なエラー処理方法は、メインのどこかで定期的に出力ストリームの状態を検査する方法です。エラーが存在する場合は、何らかの方法でエラーを処理するようにしてください。この章では、文字列を取得してプログラムを異常終了する関数 error を定義したと仮定します。error は事前定義関数ではありません。error 関数の例については、「13.3.9 入力エラーの処理」を参照してください。iostream の状態は、演算子 !,で確認でき、これは、iostream がエラー状態の場合にゼロ以外の値を返します。例:
if (!cout) error("output error");
エラーを調べるにはもう 1 つの方法があります。ios クラスでは、operator void *() が定義されており、エラーが起こった場合は NULL ポインタを返します。次の例のような文を使用できます。
if (cout << x) return; // return if successful
また、次のように ios クラスのメンバー関数 good を使用することもできます。
if (cout.good()) return; // return if successful
enum io_state {goodbit=0, eofbit=1, failbit=2, badbit=4, hardfail=0x80};
エラー関数の詳細については、iostream のマニュアルページを参照してください。
多くの入出力ライブラリと同様、iostream も出力データを蓄積し、より大きなブロックにまとめて効率よく出力します。出力バッファーをフラッシュする場合、次のように特殊な値 flush を挿入するだけでフラッシュできます。例:
cout << "This needs to get out immediately." << flush;
flush は、マニピュレータと呼ばれるタイプのオブジェクトの 1 つです。マニピュレータを iostream に挿入すると、その値が出力されるのではなく、何らかの効果が引き起こされます。これらの値は実際には関数で、引数 ostream& または istream& 引数を取り、何らかの動作を実行したあとにその引数を返します (「13.7 マニピュレータ」を参照してください)。
ある値をバイナリ形式のままで出力するには、次の例のようにメンバー関数 write を使用します。次の例では、x の値がバイナリ形式のまま出力されます。
cout.write((char*)&x, sizeof(x));
この例では、&x を char* に変換しており、型変換の規則に反します。通常このようにしても問題はありませんが、x の型が、ポインタまたは仮想メンバー関数を持つクラスであるか、重要なコンストラクタ動作を要求するクラスの場合、前述の例で出力した値を正しく読み込むことができません。
iostream を使用した入力は、出力と同じです。入力には、抽出演算子 >> を使用します。挿入演算子と同様に繰り返し指定できます。例:
cin >> a >> b;
この例では、標準入力から 2 つの値が取り出されます。多重されたほかの演算子のように、使用される抽出子は a および b の型に依存します。a と b が異なる型を持つ場合、2 つの異なる抽出子が使用されます。入力データのフォーマットとその制御方法についての詳細は、ios(3CC4) のマニュアルページを参照してください。通常は、先頭の空白文字 (スペース、改行、タブ、フォームフィードなど) は無視されます。
ユーザーが新たに定義した型のデータを入力するには、出力のために挿入演算子を多重定義したのと同様に、その型に対する抽出演算子を多重定義します。
クラス string の抽出演算子は次のコーディング例のように定義します。
例 13-1 string の抽出演算子
istream& operator>> (istream& istr, string& input) { const int maxline = 256; char holder[maxline]; istr.get(holder, maxline, ”\n’); input = holder; return istr; }
get 関数は、入力ストリーム istr から文字列を読み取ります。読み取られた文字列は、maxline-1 バイトの文字が読み込まれる、新しい行に達する、EOF に達する、のうちのいずれかが発生するまで、holder に格納されます。データ holder は NULL で終わります。最後に、holder 内の文字列がターゲットの文字列にコピーされます。
規則に従って、抽出子は第 1 引数 (前述の例では istream& istr) から取り出した文字列を変換し、常に参照引数である第 2 引数に格納し、第 1 引数を返します。抽出子とは、入力値を第 2 引数に格納するためのものなので、第 2 引数は必ず参照引数である必要があります。
この定義済み抽出子は問題が起こる可能性があるため、注意して使用してください。この抽出子は次のように使用します。
char x[50]; cin >> x;
この抽出子は先頭の空白を読み飛ばし、次の空白文字に到達するまで、文字を抽出してそれを x にコピーします。これは終端ヌル (0) 文字で文字列を完了します。入力によって特定の配列がオーバーフローする可能性があるため、この抽出子は注意して使用してください。
さらに、ポインタが、割り当てられた記憶領域を指していることを確認する必要があります。次の例は一般的なエラーを示しています。
char * p; // not initialized cin >> p;
入力データが格納される場所が不明確なため、プログラムは異常終了することがあります。
char 型の抽出子を使用することに加えて、次に示すいずれかの形式でメンバー関数 get を使用することによって、1 文字を読み取ることができます。例:
char c; cin.get(c); // leaves c unchanged if input fails int b; b = cin.get(); // sets b to EOF if input fails
次の例は、空白だけを読み飛ばし、タブや改行などそのほかの文字で停止する方法を示しています。
int a; do { a = cin.get(); } while(a ==’ ’);
メンバー関数 write で出力したようなバイナリの値を読み込むには、メンバー関数 read を使用します。次の例では、メンバー関数 read を使用して x のバイナリ形式の値をそのまま入力します。次の例は、先に示した関数 write を使用した例と反対のことを行います。
cin.read((char*)&x, sizeof(x));
メンバー関数 peek を使用するとストリームから次の文字を抽出することなく、その文字を知ることができます。例:
if (cin.peek()!= c) return 0;
デフォルトでは、iostream 抽出子は先頭の空白を読み飛ばします。 次の例では、cin の空白の読み飛ばしをオフにし、あとでオンに戻します。
cin.unsetf(ios::skipws); // turn off whitespace skipping ... cin.setf(ios::skipws); // turn it on again
iostream のマニピュレータ ws を使用すると、読み飛ばしが現在有効かどうかに関係なく、iostream から先頭の空白を取り除くことができます。次の例では、iostream istr から先頭の空白が取り除かれます。
istr >> ws;
通常は、第 1 引数が非ゼロのエラー状態にある場合、抽出子は入力ストリームからのデータの抽出とエラービットのクリアを行わないでください。データの抽出に失敗した場合、抽出子は最低 1 つのエラービットを設定します。
出力エラーの場合と同様、エラー状態を定期的に検査し、非ゼロの状態の場合は処理の中止など何らかの動作を起こす必要があります。 ! 演算子は iostream のエラー状態をテストします。たとえば次のコーディング例では、英字を入力すると入力エラーが発生します。
#include <stdlib.h> #include <iostream.h> void error (const char* message) { cerr << message << "\n"; exit(1); } int main() { cout << "Enter some characters: "; int bad; cin >> bad; if (!cin) error("aborted due to input error"); cout << "If you see this, not an error." << "\n"; return 0; }
クラス ios には、エラー処理に使用できるメンバー関数があります。詳細はマニュアルページを参照してください。
C++ プログラムでも stdio を使用できますが、プログラムで iostream と stdio とを標準ストリームとして併用すると、問題が起こる場合があります。たとえば stdout と cout の両方に書き込んだ場合、個別にバッファリングされるため出力結果が設計したとおりにならないことがあります。stdin と cin の両方から入力した場合、問題はさらに深刻です。個別にバッファリングされるため、入力データが使用できなくなっている可能性があります。
標準入力、標準出力、標準エラーに関するこのような問題を解決するためには、入出力を実行する前に次の命令を使用します。次の命令で、すべての定義済み iostream が、それぞれ対応する定義済み stdio FILE に結合されます。
ios::sync_with_stdio();
この種類の結合は、定義済みストリームが結合されたものの一部となってバッファリングされなくなってかなり効率が悪くなるため、デフォルトではありません。stdio および iostream の両方を、別のファイルに適用される同じプログラム内で使用できます。すなわち、stdio ルーチンを使用して stdout に書き込み、iostream に結合した別のファイルに書き込むことは可能です。また stdio FILE を入力用にオープンしても、stdin から入力しないかぎりは cin からも読み込むことができます。