この節では、以下のトピックについて説明します。
この節では、本番環境にパッチを配布する次のモデルについて説明します。
これらのモデルでは、本番環境のシステムに対するソフトウェア・メンテナンスの提供について、次の条件が想定されています。
ベンダーから取得したパッチが厳密に制御され、管理されています。たとえば、保護されたリポジトリに保持され、少数の担当者を除いてアクセスを許可されないようになっています。パッチをリポジトリ内にコピーまたはダウンロードするには、承認、スケジューリング、監査、記録について厳格な手順を踏む必要があります。
パッチは、本番システムにプロモートされるまでに所定の段階を経る必要があり、その過程で徹底的にテストされます。たとえば、最初は本番環境から隔離された単一のシステムにパッチがインストールされ、そこで実施される本番アプリケーションのテストによって、パッチが想定どおりに機能し、回帰が発生しないことが保証されます。場合によっては、本番環境に展開する前に、本番環境で想定される使用状況を模した負荷を課して中間ステージング領域でのテストが実施される場合があります。
パッチが本番環境に導入されたら、パッチがインストールされたすべてのシステムで、更新された製品ソフトウェアを正確に同じメンテナンス・レベルで動作させる必要があります。たとえば、すべてのシステムで使用されるWebLogic Server 9.1のドメイン構成、製品バージョンおよびパッチ・レベルは同一となります。
本番環境のシステムからインターネットに接続してパッチを取得できるとは限りません。実際、本番環境のシステムがまったくインターネットに接続されておらず、インターネット接続の可能なシステムによって共有されているローカル・エリア・ネットワークにも接続されていないことがあります。むしろ、パッチは組織内のある特定の場所または複数の場所からのみ入手可能にさせられ、また、本番システムにダウンロードする際には、いくつかの運用上の規定や手順を遵守する必要があります。
本番環境で使用されるWebLogic Serverインスタンスが、多くのカスタマイズを施したスクリプトから起動されます。
この項では、前述の条件のいくつかまたはすべてに該当する本番システムにパッチを配布する作業の例を示すことで、Smart Updateの機能がどのように役立つかを説明します。
My Oracle Supportは、Avitek社に対して、同社がWebLogic Server 9.1上で実行しているエンタープライズ・アプリケーションについて報告した問題を解決するためのパッチを提供しました。
Avitek社のIT部門に所属しているBob Jonesは、提供されたパッチを自分のシステムのパッチ・ダウンロード・ディレクトリにダウンロードしました。このディレクトリは、ITで使用されるネットワーク・ディスクに設定されており、そこにAvitekのソフトウェア・ベンダーすべてから提供されるメンテナンス更新が格納されています。
Rachel BurnsはAvitek社の品質保証(QA)部門の社員であり、自分のシステムでパッチをテストすることを担当しています。Rachelのシステムには、本番環境で使用されているのと同一のWebLogic Server環境があります。Rachelのシステムにあるドメイン構成は、Avitek社の本番環境で動作中のWebLogicドメインと類似しています。Rachelは、本番環境で使用し、自分のシステムでも実行するWebLogic Server起動スクリプトを作成しました。
Rachelはオフライン・モードでSmart Updateを実行しました。パッチ・ダウンロード・ディレクトリをBobが使用したディレクトリに設定していることを確認してから、そのパッチを自分のWebLogic Serverインストール環境に適用しました。
Rachelは、本番システムがカスタマイズしたWebLogic Server起動スクリプトを使用しており、パッチに存在するクラスが自分のシステムのWebLogicシステム・クラスパスにロードされるようにスクリプトを変更する必要があることに気づきました。
Rachelは、起動スクリプトでデフォルト・パッチ・プロファイルを参照するようにPATCH_CLASSPATH
変数の定義を起動スクリプトに追加し、この変数をSET WEBLOGIC_CLASSPATH
文の先頭に追加しました。
Rachelはパッチのテストに成功し、Avitek社の本番環境で動作している20個の製品インストールすべてに対してこのパッチをレプリケートする準備を整えました。各本番システムはほとんど同じであるため、どのシステム上でも動作するパッチ適用スクリプトを1つ作成すればよいことをRachelは理解していました。
そこでスクリプトを作成しました。その機能は非常に単純で、ターゲット・インストールのデフォルト・パッチ・プロファイルにパッチを適用し、更新した起動スクリプトを各システムの適切な場所にコピーするというものです。
Rachelはこのパッチをパッチ・ダウンロード・ディレクトリにアップロードしました。このディレクトリは、Avitek社のDMZにある本番システムで使用される、セキュリティで保護されたディスク上にあります。また、Smart Updateスクリプトと新しいWebLogic Server起動スクリプトも、この保護されたディスクにアップロードしました。
Dagmar Kohlは、Avitek社の本番環境にあるシステムの管理者です。彼女は、Smart Updateスクリプトを各本番システムにダウンロードして実行しました。
パッチの内容から考えて、Dagmarは、パッチを有効にするために各サーバーを再起動する必要があることを理解しました。サーバーを再起動し、メンテナンス作業は完了しました。
「Smart Updateスクリプトを使用した標準メンテナンス・レベルから本番環境へのプロモート」で説明している手順の代替手段として、完全にパッチを適用した製品イメージのアーカイブを作成し、そのイメージを本番環境全体のすべてのシステムにレプリケートする方法もあります。このアプローチを実行する場合は、次の点に注意してください。
このアプローチはお薦めしません。オラクル社では、製品インストーラを使用して製品のインストールをシステムに作成すること、およびSmart Updateを使用してパッチを配布することを常にお薦めしています。
製品インストール環境にSmart Updateを使用して適用されているメンテナンス・パッチが存在する場合には、アーカイブ・イメージに次のディレクトリを含める必要があります。このディレクトリはミドルウェア・ホーム・ディレクトリの最上位レベルに存在します。
patch_
version
およびすべてのサブディレクトリ
utils
およびすべてのサブディレクトリ
「My Oracle Supportに直接接続できないマシンのメンテナンス」で説明に従って、Smart Updateのオフライン・モードを使用すれば、My Oracle Supportに接続できないシステムにメンテナンス更新をインストールできます。この項では、そうしたシステムにパッチを適用するための次の方法について説明します。
これらの方法についてこの後の項で説明する際には、My Oracle Supportに接続できないシステムのことをオフライン・システムと呼びます。
次の項では、共有パッチ・ダウンロード・ディレクトリ経由でオフライン・システムにパッチを適用する方法について説明します。
共有パッチ・ダウンロード・ディレクトリ経由でオフライン・システムにパッチをインストールするには、主として次の2つを用意する必要があります。
My Oracle Supportへの接続を確立できるシステム。このシステムには次のものが必要です。
オフライン・システムにインストールされている製品とバージョンが同じ製品のローカル・インストール
My Oracle Supportのユーザー・アカウント
My Oracle Supportに接続できるシステムとオフライン・システムの両方からアクセス可能な、ネットワーク上のディスク
インターネットにアクセスできるシステムから、インターネットに接続できないシステムにリモートでパッチを適用するには、インターネットにアクセスできるシステムを使用して次の手順を実行します。
My Oracle Supportに接続できるシステムからMy Oracle Supportへログインし、目的のパッチをパッチ適用元のディレクトリにダウンロードします。第2章 「パッチのダウンロード」を参照してください。
Smart Updateを起動し、次の手順を実行します。
「ファイル」→「プリファレンス」を選択し、手順1でダウンロードしたパッチの場所を指定します。
公開パッチをダウンロードした場合、「ターゲット・インストール」パネルでオフライン・システムにインストールされたソフトウェアおよびそのバージョンと一致するインストールを選択します。
オフライン・システムで、次の手順を実行します。
Smart Updateを起動します。
「ファイル」→「プリファレンス」を選択し、My Oracle Supportに接続されたシステムでパッチをダウンロードした場所にパッチ・ダウンロード・ディレクトリを設定します。
「ターゲット・インストール」パネルで、パッチを適用するターゲット・インストールを選択します。
「パッチの管理」タブで、目的のパッチ・プロファイルが選択されていることを確認します。
「ダウンロードされたパッチ」パネルで、適用するパッチの横にある「適用」をクリックします。
「パッチの適用および管理」の説明に従って、パッチを適用する手順をすべて完了します。
次の項では、リムーバブル・メディア経由でオフライン・システムにパッチを適用する方法について説明します。
リムーバブル・メディアを使用してオフライン・システムにパッチをインストールするには、主として次の2つを用意する必要があります。
My Oracle Supportへの接続を確立できるシステム。このシステムには次のものが必要です。
オフライン・システムにインストールされている製品とバージョンが同じ製品のローカル・インストール
My Oracle Supportのユーザー・アカウント
Oracleサポートに接続されたシステムとオフライン・システムの両方で使用できるタイプのリムーバブル・メディアにパッチを格納できること。例: 書込み可能なCD-ROMまたはDVD。
リムーバブル・メディアを使用してオフライン・システムにパッチを適用するには、次の手順を実行します。
My Oracle Supportに接続できるシステムからMy Oracle Supportへログインし、リムーバブル・メディアにパッチをコピーするコピー元のディレクトリに目的のパッチをダウンロードします。第2章 「パッチのダウンロード」を参照してください。
Smart Updateを起動し、次の手順を実行します。
「ファイル」→「プリファレンス」を選択し、手順1でダウンロードしたパッチの場所を指定します。
公開パッチをダウンロードした場合、「ターゲット・インストール」パネルでオフライン・システムにインストールされたソフトウェアおよびそのバージョンと一致するインストールを選択します。
ダウンロードしたパッチをリムーバブル・メディアにコピーします。
オフライン・システムで、次の手順を実行します。
リムーバブル・メディアをオフライン・システムにマウントします。
Smart Updateを起動します
「ファイル」→「プリファレンス」を選択し、パッチ・ダウンロード・ディレクトリを、パッチが格納されているリムーバブル・メディアのディレクトリとして設定します。
「ターゲット・インストール」パネルで、パッチを適用するターゲット・インストールを選択します。
「パッチの管理」タブで、目的のパッチ・プロファイルを選択します。
「ダウンロードされたパッチ」パネルで、適用する各パッチの横にある「適用」をクリックします。
「パッチの適用および管理」の説明に従って、パッチを適用する手順をすべて完了します。
My Oracle Supportにオンライン接続する手段がない場合、My Oracle Supportでは、必要に応じて代替手段によってパッチを提供することがあります。