Oracle® Fusion Middleware Oracle WebLogic Serverアップグレード・ガイド 12cリリース1 (12.1.1) B65938-02 |
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このドキュメントでは、既存のアプリケーションを未変更のまま、WebLogic Server 12cリリース1 (12.1.1)に移動するプロセスについて説明します。WebLogic Server 12.1.1へのアップグレード時にアプリケーションを変更すると判断する場合や、アプリケーションの変更が必須となる場合もありますが、このドキュメントでは、アプリケーションの変更を行わずにWebLogic Server 12.1.1へアプリケーションを移動する際に考慮が必要な問題について説明します。
WebLogic Serverは一般的に、WebLogic Serverのバージョン全体でハイレベルのアップグレード機能をサポートします。このドキュメントの目的は、WebLogic Serverアップグレード・サポートの提供と、アップグレード中に直面する可能性のある問題の特定によって迅速な解決を促すことです。
注意: 現在のJava EE環境およびデプロイされているアプリケーションを、Oracle Application Server 10gおよびOracle Containers for Java EE (OC4J)からWebLogic Server 12cリリース1 (12.1.1)にアップグレードする場合は、『Oracle Fusion Middleware Java EEアップグレード・ガイド』を参照してください。 WebLogicドメインは、必ずしもWebLogic Server 10.3から12.1.1にアップグレードする必要はありません。WebLogic Server 10.3をベースとするWebLogicドメインは、WebLogic Server 12.1.1でも修正なしで動作します。 |
WebLogic Server 12.1.1には、ドメイン、カスタム・セキュリティ・プロバイダ、およびカスタム・ノード・マネージャをアップグレードするWebLogicアップグレード・ウィザードなど、アプリケーション環境のアップグレードに役立つ強力なツールがあります。
ほとんどのWebLogic Serverアプリケーションは、修正を加えることなくWebLogic Server 12.1.1の新たなアプリケーション環境で動作します。
この章の内容は次のとおりです。
次のトピックに進む前に、次の用語の説明をお読みください。
アップグレード - このドキュメントではアップグレードという用語は、既存のアプリケーションを未変更のまま、新規の(アップグレードされた) WebLogic Serverバージョンに移動するプロセスを指します。
アプリケーション環境 - アプリケーション環境には、アプリケーションとそのデプロイ先のWebLogicドメインが含まれます。また、そのドメインに関連するすべてのアプリケーション・データも含まれます。データベース・サーバー、ファイアウォール、ロード・バランサおよびLDAPサーバーなどのリソースが含まれる場合もあります。
移行 - アプリケーションやドメイン構成を、サード・パーティ製品からOracle製品に移動すること。
相互運用性 - (1)あるWebLogic Serverバージョンでデプロイされたアプリケーションが、別のWebLogic Serverバージョンでデプロイされた別のアプリケーションと通信する機能。(2) Oracle製品のコンポーネントが、標準のプロトコルを使用してサード・パーティ製のソフトウェアと通信する機能。
互換性 - あるWebLogic Serverリリースで構築されたアプリケーションを、アプリケーションが再構築されたかどうかに関係なく、別のWebLogic Serverリリースで実行できること。
アプリケーション環境のアップグレードに必要なプロセスは、アプリケーション・スコープにより異なります。アプリケーション環境は、WebLogicドメインとそれに関連付けられているアプリケーションおよびアプリケーション・データで構成されます。また、アプリケーション環境には、ファイアウォール、ロード・バランサ、LDAPサーバーなどの外部リソースも含まれます。図1-1に、WebLogicのアプリケーション環境の例を示します。
表1-1に、図1-1に示されているWebLogicアプリケーション環境のコンポーネントとそのアップグレード要件を示します。
表1-1 WebLogicのアプリケーション環境例のコンポーネントのアップグレード要件
コンポーネント | 説明 | アップグレード要件 |
---|---|---|
WebLogicドメイン |
管理サーバー(AS)と必要に応じて1台または複数の管理対象サーバー(MS1、MS2、MS3、MS4など)で構成されます。ドメイン内のサーバーは、複数のマシンにまがたる場合があります。さらに、重要なアプリケーションにロード・バランシングとフェイルオーバー保護を適用できるよう管理対象サーバーをクラスタとしてグループ化することができます。WebLogicドメインの詳細は、『Oracle WebLogic Serverドメイン構成の理解』のOracle WebLogicドメインに関する項を参照してください。 |
ドメイン内のすべてのコンピュータのドメイン・ディレクトリをアップグレードします。 |
カスタム・セキュリティ・プロバイダ |
カスタム・セキュリティ要件をサポートします。カスタム・セキュリティ・プロバイダの開発については、『Oracle WebLogic Serverセキュリティ・プロバイダの開発』を参照してください。 |
ドメイン内のすべてのコンピュータのカスタム・セキュリティ・プロバイダをアップグレードします。 |
ノード・マネージャ |
管理対象サーバーで高可用性を実現します。ノード・マネージャの詳細は、Oracle WebLogic Serverのノード・マネージャ管理者ガイドのノード・マネージャの概要に関する項を参照してください。 |
ドメイン内のすべてのコンピュータのカスタム・ノード・マネージャをアップグレードします。 |
アプリケーション |
WebアプリケーションやEJBなどを含むすべてのJava EEアプリケーション。一般的に、アプリケーションはドメイン内の1つまたは複数の管理対象サーバーにデプロイされます。デプロイメント方法に応じて、アプリケーションはコンピュータ上のローカルに配置したり、共有ディレクトリを使用してアクセスできます。さらに、外部クライアント・アプリケーションがファイアウォールの外側からアプリケーション環境にアクセスすることも可能です。 |
ほとんどのWebLogic Serverアプリケーションは、修正を加えることなくWebLogic Server 12.1.1の新たなアプリケーション環境で動作します。詳細については、「旧リリースとの相互運用性および互換性」を参照してください。 |
外部リソース |
ドメインとアプリケーション・データを格納するためのデータベース、ロード・バランサ、ファイアウォールなどのソフトウェア・コンポーネント。 |
すべての外部リソースがWebLogic Server 12.1.1と互換性があることを確認します。詳細については、『Oracle Fusion Middleware Supported System Configurations』( |
WebLogic Serverにデプロイされているビジネス・アプリケーションのアップグレードには、複数のWebLogic Serverアプリケーションのアップグレードが必要な場合があり、一部のケースでは次の目的のためにドメインも連動してアップグレードする場合があります。
使用対象のWebLogic Serverバージョンの整合性の維持
インストール全体における同一のサポートされた構成環境の使用
特定の相互運用性の要件への対応
たとえば、すべてのアプリケーションおよびドメインを同時にアップグレードする場合や、アップグレードを正確に定義された順序で行う場合、あるいは一部のアプリケーションおよびドメインをアップグレードする一方、その他のアプリケーションおよびドメインは旧バージョンのWebLogic Serverにそのまま残すような場合があります。
アップグレード・プロセスを開始する前に、アップグレードする環境の範囲と、どのアプリケーションをどの順序でアップグレードするかについて検討してください。このドキュメントの範囲では、アップグレードのすべての組合せを網羅することはできません。したがって、アップグレードを計画する前に、次の内容を考慮する必要があります。この内容は、単一ドメインで実行中の単一アプリケーションが関連するアップグレードを対象にしています。
一般的に推奨される手順は、開発環境でアプリケーションをアップグレードし、標準のQA、テストおよびステージング・プロセスを使用して、アップグレードされたアプリケーションを本番環境に移動することです。
アプリケーションのアップグレードでは通常、既存ドメインのアップグレードまたは新規ドメインの作成のどちらかを行います。このドメインから新バージョンのWebLogic Serverでアプリケーションを実行できます。ドメイン・アップグレード・ウィザードは、旧バージョンのWebLogic Serverから新バージョンのWebLogic Serverへのドメインのアップグレードをサポートしています。
ドメイン・アップグレード・ウィザードは、旧バージョンのWebLogic Serverから新バージョンのWebLogic Serverへドメインをアップグレードします。ドメインをアップグレードした場合、ドメイン構成を再作成する必要はなく、既存アプリケーションをサポートするために既知の既存ドメイン構成を利用できます。
ただし、アップグレードするアプリケーションをテストする目的のため、Fusion Middleware構成ウィザードまたは他の構成ツール(WLSTなど)を使用して、新規ドメインを作成する場合もあります。
WebLogic Serverのバージョン・アップグレードを計画する際は、Fusion Middlewareのサポート対象システム構成ページ(http://www.oracle.com/technology/software/products/ias/files/fusion_certification.html
)を参照して、アップグレードされた環境がOracleでサポートされていることを、特に次の点について確認します。
現行および計画中のJVMおよびJDKのバージョン
オペレーティング・システムのバージョン
データベースのバージョン
Webサービスのバージョン
WebLogic Serverで同時使用または実行されるその他の製品のバージョン。これは、アップグレードされた環境が、WebLogic Serverで使用しているOracleまたは他のベンダーの製品によってサポートされているかを確認するためです。
オラクル社は非推奨(つまり今後のリリースでは廃止予定)となったAPIおよび機能について文書化しており、現在も進行中です。この目的は、アップグレード性を維持するために使用を避けた方がいいAPIおよび機能について通知することです。現行のリリースで実際に廃止されているAPIおよび機能についても文書化されているため、以前のバージョンからアップグレードする場合は、対象のアプリケーションがアップグレードによる影響を受けるかどうかを判断できます。
APIおよび機能の廃止は累積方式です。たとえば、WebLogic Server 10.0からWebLogic Server 12.1.1にアップグレードする場合、アプリケーションはWebLogic Server 12.1.1で廃止されたAPIまたは機能に加えて、WebLogic Server 10.3で廃止されたAPIまたは機能による影響を受ける可能性があります。アップグレードの際は、WebLogic Serverのすべての対象バージョンに対する、非推奨および廃止となった機能に関するドキュメントをすべて確認してください。
WebLogic Serverアプリケーションの構成、デプロイ、起動/停止または監視に使用する、あらゆるオートメーション(WLSTスクリプトなど)にアップグレード・プロセスが与えうる影響を(ある場合は)考慮する必要があります。アップグレード対象のアプリケーションおよびドメインとともに、オートメーションのアップグレードも必要になる場合があります。
アプリケーションでのサードパーティ・ライブラリの使用によって発生しうる潜在的影響を考慮する必要があります。WebLogic Serverに埋め込まれている別バージョンの同一ライブラリと競合する可能性があるためです。特に、新バージョンのWebLogic Serverでは、WebLogic Serverに埋め込まれているオープン・ソース・ライブラリのバージョンが変更されている場合があります。旧バージョンのWebLogic Serverでは正常に動作するアプリケーションで、アップグレード後に新規クラス競合が発生することがあります。
サードパーティ・ライブラリが埋め込まれているアプリケーションをアップグレードする場合、Classloader Analysis Toolの使用と、WebLogic ServerアプリケーションのWebLogic Server 12.1.1へのアップグレード時にフィルタ・クラスローダーの使用を考慮する必要があります。このツールでは競合の特定、診断および解決が可能になり、アップグレード・プロセスも短縮される場合があります。
旧バージョンのWebLogic Serverでアプリケーションを実行中で、WebLogic Serverパッチまたはバグ修正を使用中の場合、アップグレード先のWebLogic Serverのバージョンにそのパッチまたはバグ修正が組み込まれているかどうかを調べる必要があります。
WebLogicアップグレード・ウィザードは、WebLogic Server 8.1のドメインを、WebLogic Server 12.1.1アプリケーション環境で実行できるようアップグレードするために必要な手順を、ウィザードに従って進めることができます。アップグレード・プロセスの一部として、ドメインで使用されているカスタム・セキュリティ・プロバイダおよびノード・マネージャもアップグレードする必要があります。
また、WebLogicアップグレード・ウィザードを使用して、WebLogic Server 9.xまたは10.xと互換性のあるWebLogic Server 12.1.1ドメインにアップグレードすることもできますが、これは任意です。この種類のドメインは、変更せずにWebLogic Server 12.1.1で実行できます。
アップグレード・プロセスは、グラフィカル・ユーザー・インタフェース(GUI)を使用して対話形式で実行、またはスクリプトを作成してメッセージを通知しない形式で実行することができます。サイレント・モードは、WebLogicドメイン、セキュリティ・プロバイダ、およびノード・マネージャのアップグレードでサポートされています。
WebLogic Server 12.1.1で動作するアプリケーション環境は、WebLogic Server 8.1、9.x、10.0、または10.3で構築されたアプリケーション環境と相互運用できます。
ほとんどのWebLogic Serverアプリケーションは、修正を加えることなくWebLogic Server 12.1.1のアプリケーション環境で動作します。実際の環境においてアプリケーションが機能変更の影響を受けるかどうかについては、付録A「WebLogic Server 12.1.1の旧リリースとの互換性」で互換性情報を確認してください。アプリケーションで非推奨になったAPIまたは削除されたAPIが使用されている場合は、実行時に警告または例外が発生するおそれがあります。