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Oracle® Fusion Middleware Oracle WebLogic Serverアップグレード・ガイド
12cリリース1 (12.1.1)
B65938-02
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2 アプリケーション環境のアップグレードのロードマップ

この章では、WebLogicのアプリケーション環境のアップグレードを準備し、実行する方法について説明します。

ここで説明するトピックは以下のとおりです。

WebLogic 9.xまたは10.xからアップグレードする場合は、第6章「WebLogic Server 9.xまたは10.xアプリケーション環境から12.1.1へのアップグレード」を参照してください。


注意:

WebLogicドメインは、必ずしもWebLogic Server 10.3から12.1.1にアップグレードする必要はありません。WebLogic Server 10.3をベースとするWebLogicドメインは、WebLogic Server 12.1.1でも修正なしで動作します。


アップグレードの計画

アプリケーション環境のアップグレードを計画することは、アップグレード・プロセスの重要な手順の1つです。使用している環境のすべてのアップグレード要件に対応する計画を策定するには、次のステップを実行します:

ステップ1: アプリケーション環境のインベントリの実施

次のコンポーネントを指定することで、アプリケーション環境のインベントリを生成します。

  • 管理サーバーとそれが存在するコンピュータ

  • 管理対象サーバーとそれが動作しているコンピュータ

  • ドメインで使用されているカスタム・セキュリティ・プロバイダ

  • ドメインで使用されているカスタム・ノード・マネージャ

  • アプリケーションの場所(すべての外部クライアント・アプリケーションも含む)

  • 次のような外部リソース:

    • 永続データとアプリケーション・データの保存に使用されているデータベース

    • ファイアウォール

    • ロード・バランサ

  • アプリケーション環境を構築するのに必要なタスクの自動化に使用されているツール、スクリプト、テンプレート、およびソース・コード

「アップグレード・プロセスの概要」にアプリケーション環境の例がありますので、参考にしてください。

ステップ2: サポート対象構成情報の確認

アプリケーション環境に含まれるすべてのハードウェアおよびソフトウェア・コンポーネントのサポート状況を確認します。表2-1に、サポート状況を確認する必要のある重要なコンポーネントを示します。

表2-1 サポート対象構成情報の確認

次を確認するには... 次を参照してください...

オペレーティング・システムとハードウェアのサポート

『Oracle Fusion Middleware Supported System Configurations』の、サポートされるオペレーティング・システム構成の一覧(http://www.oracle.com/technology/software/products/ias/files/fusion_certification.html)

データベース・サポート

『Oracle Fusion Middleware Supported System Configurations』の、サポートされるデータベース構成

次の点に注意してください。

  • WebLogic Server 12.1.1ではPointBase 5.7がサポートされますが、PointBaseは現在WebLogic Serverインストール・プログラムに含まれません。(WebLogic Serverサンプルを実行するためApache DerbyがPointBaseを置換。)

    WebLogic Server 12.1.1へのアップグレードにはフル・インストーラを使用する必要があります。したがって、PointBaseインストール・ディレクトリは保存されません。PointBaseを継続して使用するには、a) ドメインをアップグレードしたで、「ステップ2: カスタマイゼーションを起動スクリプトに再適用する」に記載された手順を完了し、b) PointBaseライセンスをhttp://www.pointbase.comから取得します。「アップグレードしたドメインでのPointBaseの使用」も参照してください。

    注意: WebLogic Serverの古いバージョンを使用して配信された5.7以前のバージョンのPointBaseは、WebLogicドメインに対してのみ使用できます。

  • WebLogic Server 10.3.3以降、インストール・プログラムに含まれる評価版データベース(サンプル・アプリケーションやコード例用またはデモンストレーション・データベースとして提供されます)が、PointBaseからApache Derbyに変更されます。Derbyは、Java、JDBCおよびSQL標準に基づくオープン・ソースのリレーショナル・データベース管理システムです。Derbyの詳細は、http://db.apache.org/derby/を参照してください。

    以前のバージョンのWebLogic ServerにPointBaseに基づくドメインがあり、このドメインをWebLogic Server 12.1.1にアップグレードする場合は、引き続きPointBaseを使用できます。ただし、これを使用するにはライセンスをhttp://www.pointbase.comで取得する必要があります。詳細は、「評価版データベースを使用するドメインのアップグレード」を参照してください。

    ドメイン・データベースをPointBaseからDerbyに移行する方法の詳細は、「アップグレードしたドメイン・データベースのDerbyへの移行」を参照してください。

  • WebLogic Server 10.3から、Oracle Thin DriverはWebLogic Serverのインストールに含まれています。


  • WebLogic jDriver for Oracleは、9.0で削除されています。ドメイン内のJDBC接続プールでデータベース接続を作成するのにWebLogic jDriverが使用されている場合、別のJDBCドライバを使用するには、アップグレードしたデータ・ソースを再構成する必要があります。たとえば、ドライバ・クラス名、データベースURLのフォーマット、データベース接続を作成するときにドライバに送信されるプロパティなどを変更する必要があります。代替ドライバとして、インストールに含まれているOracle Thin Driverを使用することや、仕様を実装しているスレッド・セーフなJDBCドライバを使用することができます。選択したドライバは、データ・ソースがデプロイされているすべてのサーバーで(CLASSPATH内に)インストールする必要があります。サポートされるJDBCドライバの詳細については、『Oracle Fusion Middleware Supported System Configurations』の「サポート対象のデータベース構成」(http://www.oracle.com/technology/software/products/ias/files/fusion_certification.html)を参照。

  • Oracle 8.1.7 Oracle Thin Driver(oracle.jdbc.driver.OracleDriver)はWebLogic Server 10.xではサポートされていません。このドライバを使用するよう構成されたJDBCConnectionPoolsがドメインに含まれている場合、別のドライバを使用するように接続プールを再構成することをお薦めします。データベースのアップグレード中にこのドライバを使用すると、ドメインのアップグレードに失敗します。

  • Oracle OCIデータベース・ドライバからThinデータベース・ドライバに移行する場合は、生成されたJDBCモジュールからserverプロパティを削除する必要があります。例:

    <property> 
    <name>server</name> 
    <value>servername</value> 
    </property> 
    
  • Oracle用のWebLogicタイプ4 JDBCドライバ(非推奨)とOracle Thin DriverはWebLogic Serverと共にインストールされており、すぐに使用することができます。これらのドライバの使用方法については、『Oracle WebLogic Serverタイプ4 JDBCドライバ』のWebLogicタイプ4 JDBCドライバの使い方に関する項と、『Oracle WebLogic Server JDBCデータ・ソースの構成と管理』のWebLogic Serverでインストールされるサード・パーティJDBCドライバに関する項を参照してください。

Webサーバー、ブラウザ、およびファイアウォール

『Oracle Fusion Middleware Supported System Configurations』のサポートされるWebサーバー、ブラウザ、およびファイアウォール


ステップ3: 互換性情報の確認

ほとんどのWebLogic Serverアプリケーションは、修正を加えることなくWebLogic Server 12.1.1のアプリケーション環境で動作します。ただし、実際の環境においてアプリケーションが機能変更の影響を受けるかどうかについては、付録A「WebLogic Server 12.1.1の旧リリースとの互換性」で確認してください。

ステップ4: アップグレード計画の作成

以上の手順で収集した情報を使用して、アプリケーション環境のアップグレード計画を作成します。アップグレード・プロセスのスコープとタイミングは、ビジネス・ニーズに応じて特定します。次の点に注意してください。

  • 現在本番環境にデプロイされているアプリケーション環境をアップグレードすることはお薦めしません。開発中またはテスト中のアプリケーション環境をアップグレードし、アップグレードした環境を本番環境にプロモートする前に、標準的な品質保証およびパフォーマンス・チューニングを行うことをお薦めします。

  • たとえば、アプリケーション環境に多数のクラスタリングされたドメインがあり、多数のアプリケーションがデプロイされているなど、アプリケーション環境が複雑な場合は、アプリケーション環境のコンポーネントを段階的にアップグレードすることを推奨します。

  • 管理するシステムの多様性とコストを最小限に抑えるため、単一のアプリケーション環境で使用されるWebLogic Serverのバージョン数を制限することを推奨します。

  • WebLogic以外のXA対応JMSプロバイダによって駆動されるトランザクション対応のメッセージドリブンBean (MDB)を使用している場合は、サーバーを停止およびアップグレードする前に、仕掛かり中のすべてのトランザクションを安全に休止させる必要があります。仕掛かり中のトランザクションをアップグレード後に回復することはできません。メッセージドリブンBeanの詳細は、『Oracle WebLogic Server WebLogic Enterprise JavaBeansのプログラミング』のメッセージドリブンEJBに関する項を参照してください。

  • WebLogicドメインでRDBMSセキュリティ・ストアを使用する場合は、RDBMSセキュリティ・ストアが構成された新しいドメインを作成すること推奨します。RDBMSセキュリティ・ストアを使用したいドメインが作成済であっても、新しいドメインを作成し、そのドメインに既存のセキュリティ・レルムを移行してください。既存のドメインにはRDBMSセキュリティ・ストアを組み込まないでください。詳細は、『Oracle WebLogic Serverの保護』のRDBMSセキュリティ・ストアの管理に関する項を参照してください。

アップグレードの準備

アプリケーション環境をアップグレードする前に、次の手順を実行する必要があります。

ステップ1: アプリケーションの確認(必要に応じてアンデプロイ)

ドメインをアップグレードする前に、WebLogic Serverアプリケーションのデプロイを解除する必要はありません。ほとんどのWebLogic Serverアプリケーションは、修正を加えることなくWebLogic Server 12.1.1のアプリケーション環境で動作します。実際の環境においてアプリケーションが機能変更の影響を受けるかどうかについては、付録A「WebLogic Server 12.1.1の旧リリースとの互換性」で互換性情報を確認してください。アプリケーションで非推奨になったAPIまたは削除されたAPIが使用されている場合は、実行時に警告または例外が発生するおそれがあります。

ステップ2: アプリケーション環境内のサーバーの停止

アプリケーション環境をアップグレードする前に、アプリケーション環境内のすべてのサーバーを停止する必要があります。

ステップ3: アプリケーション環境のバックアップの作成

アップグレード・プロセスの途中で、ドメインをバックアップするかどうかを選択できます(「WebLogicドメインをアップグレードする手順」「ドメインのバックアップ」を参照)。ただし、ウィザードはドメイン・ディレクトリのみをアーカイブするため、ファイル権限は維持されません。

アプリケーション環境をアップグレードする前に、表2-2に示されているコンポーネントを手動でバックアップすることをお薦めします。ドメイン内のすべてのマシンに関連する情報をバックアップする必要があります。

表2-2 アプリケーション環境のバックアップに関する推奨事項

コンポーネント 推奨事項

ドメイン・ディレクトリ

管理サーバーとアプリケーション環境で定義されているリモートの管理対象サーバーのドメイン・ディレクトリをすべてバックアップします。

デフォルトでは、ドメイン・ディレクトリは構成ウィザードにより{MW_HOME\user_projectsディレクトリ(MW_HOMEはWebLogic ServerがインストールされているMiddlewareホーム・ディレクトリ)に作成されます。

アプリケーション、アプリケーション・データ、および永続データ

ドメイン・ディレクトリの外にあるアプリケーションとデータをすべてバックアップします。

デフォルトでは、アプリケーションはMW_HOME\user_projects\applicationsディレクトリ(MW_HOMEはWebLogic ServerがインストールされているMiddlewareホーム・ディレクトリ)に作成されます。この場所は、10.3.1より前のリリースではBEAホーム・ディレクトリと呼ばれていました。

カスタム・セキュリティ・プロバイダ

アプリケーション環境で使用しているカスタム・セキュリティ・プロバイダをすべてバックアップします。

デフォルトでは、セキュリティ・プロバイダはWL_HOME\server\bin\mbeantypes(WL_HOMEはWebLogic Serverのインストール先のルート・ディレクトリ)に格納されています。

ノード・マネージャのディレクトリおよびスクリプト

クラスタリング環境内のサーバーを管理するのに使用しているノード・マネージャのディレクトリおよびスクリプトをすべてバックアップします。

ディレクトリ名とスクリプト名は、ご使用のオペレーティング・システムによって異なります。

  • Windows:

    WL_HOME\common\nodemanager
    WL_HOME\server\bin\startNodeManager.cmd
    
  • UNIX:

    WL_HOME/common/nodemanager
    WL_HOME/server/bin/startNodeManager.sh
    

上記パス名において、WL_HOMEは、WebLogic Serverのインストール先のルート・ディレクトリ(例: c:\Oracle\Middleware\wlserver_12.1)を表します。

ログ・ファイル

ログに記録されたすべてのメッセージの記録を維持する必要がある場合は、ログ・ファイルをバックアップします。ログ・ファイルにより大量のディスク容量が消費されることがあるので、ログ・ファイルを維持する必要がない場合は、ディスク容量を節約するため削除することもできます。


ステップ4: 必要なOracle製品のインストール

アプリケーション環境をアップグレードする前に、ドメイン内のすべてのコンピュータに必要なOracle WebLogic製品をインストールする必要があります。Oracle WebLogic製品のインストールについては、『Oracle WebLogic Serverインストレーション・ガイド』を参照してください。


注意:

インストールを進める前に次の項目に注意してください。

  • 10.0より前のバージョンでノード・マネージャを使用している場合は、12.1.1製品をインストールするときに、ノード・マネージャのリスン・ポートを、10.0より前のバージョンで使用されているポートと同じ番号に設定するようにしてください。ノード・マネージャのリスニング・ポートのデフォルト値は5556です。

  • PointBaseを使用している既存のドメインがあり、WebLogic Server 12.1.1へのアップグレード後もそのドメインでPointBaseを引き続き使用する予定の場合、PointBaseインストールは保存されません。詳細は、「評価版データベースを使用するドメインのアップグレード」を参照してください。


ステップ5: リモートの管理対象サーバーのドメイン・ディレクトリの準備

構成によっては、ドメイン内で管理サーバーからリモートの管理対象サーバーが1つまたは複数のマシンで実行されていることがあります。このタイプの構成の場合、リモートの管理対象サーバーをホストするすべてのマシンのドメイン・ディレクトリをアップグレードする必要があります。

リモートのドメイン・ディレクトリを準備するには、管理サーバーのホスト・コンピュータ上にあるアップグレード前のドメイン・ディレクトリのルート・ディレクトリから次のファイルをリモートの管理対象サーバーのホスト・ドメインのルート・ディレクトリにコピーする必要があります。

  • config.xml(構成ファイル)

  • SerializedSystemIni.dat


    注意:

    構成内のデータベースがWebLogic Server 12.1.1と互換性がない場合、サポートされているデータベースにデータをアップグレードしなければ、新しいアプリケーション環境でデータを使用できません。詳細については、「ステップ4: アップグレード計画の作成」を参照してください。


ステップ6: 環境の設定

アップグレードする環境を設定するには:

  1. MS-DOSコマンド・プロンプト・ウィンドウ(Windows)またはコマンド・シェル(UNIX)を開きます。

  2. WebLogic ServerクラスをCLASSPATH環境変数に、WL_HOME\server\binをPATH環境変数に追加します。WL_HOMEはWebLogic Server 12.1.1のインストール先の最上位ディレクトリです。

    WL_HOME\server\bin\setWLSEnvスクリプトを実行すると、これらの変数を設定できます。

  3. JMS JDBCストアを使用する場合は、次の手順に従います。

    1. JDBCドライバ・クラスがCLASSPATH環境変数に追加されていることを確認します。

    2. 対応するデータベースを起動します。

アプリケーション環境のアップグレード

図2-1に、アプリケーション環境をアップグレードするのに必要な手順を示します。

図2-1 アプリケーション環境のアップグレードのロードマップ

図2-1の説明が続きます
「図2-1 アプリケーション環境のアップグレードのロードマップ」の説明

表2-3に、アプリケーション環境のアップグレード手順の概要を示します。手順には、必須のものと省略可能なものがあります。各手順は、ドメイン内のすべてのコンピュータに対して、この表に示されている順序で実行する必要があります。

表2-3 アプリケーション環境をアップグレードする手順

ステップ タスク 説明

1

カスタム・セキュリティ・プロバイダのアップグレード

WebLogic Server 8.1からのアップグレードで、現在のアプリケーション環境でカスタム・セキュリティ・プロバイダを使用しており、新しいアプリケーション環境でもそれを継続して使用する場合は、次の要件に従ってカスタム・セキュリティ・プロバイダをアップグレードします。

  • アプリケーション環境内のすべてのマシンでアップグレードする

  • WebLogicドメインをアップグレードする前にアップグレードする

注意: 9.0より前のバージョンのWebLogic ServerがインストールされているディレクトリにWebLogic Server 12.1.1をインストールすると、デフォルトの場所(WL_HOME\server\lib\mbeantypes)にあるすべてのカスタム・セキュリティ・プロバイダは自動的にアップグレードされます。すべてのカスタム・セキュリティ・プロバイダがデフォルトの場所に格納されている場合は、セキュリティ・プロバイダのアップグレードが完了していることを意味するため、ここで説明するセキュリティ・プロバイダのアップグレード手順を実行する必要はありません。

2

ノード・マネージャのアップグレード

現在、管理対象サーバーで高可用性を実現するため、カスタマイズ・バージョンのノード・マネージャを使用しており、新しいアプリケーション環境でもそれを継続して使用する場合は、次の要件に従ってノード・マネージャをアップグレードします。

  • アプリケーション環境内のすべてのマシンでアップグレードする

  • アップグレードしたWebLogicドメインでサーバーを起動する前にアップグレードする

3

WebLogicドメインのアップグレード(管理サーバー)

管理サーバーをホストするコンピュータ上のWebLogicドメインをアップグレードします。

注意 :管理対象サーバーをアップグレードする前に管理サーバーのドメインをアップグレードすることを推奨します。

4

WebLogicドメインのアップグレード(リモートの管理対象サーバー)

管理対象サーバーをホストするすべてのコンピュータ上のWebLogicドメインをアップグレードします。「ステップ5: リモートの管理対象サーバーのドメイン・ディレクトリの準備」で説明されているように、アップグレードを実行する前に、必要なファイルが管理対象サーバーにコピーされていることを確認してください。

注意: 管理サーバーと同じコンピュータにある管理対象サーバーについては、これ以上アップグレードの手順を実行する必要はありません。


アップグレード後の手順の完了

WebLogicアップグレード・ウィザードを使用してアプリケーション環境のアップグレードが完了したら、必要に応じて次の手順を実行する必要があります。

必ずしもすべての手順を実行する必要があるわけではありません。以下の説明に基づいて、アプリケーション環境に必要な手順を決定してください。

ステップ1: アプリケーション・インフラストラクチャのアップグレード

この項は、WebLogic Server 9.1以下のリリースからアップグレードする場合や、weblogic.Adminユーティリティを現在も使用中の場合のみ、該当します。それ以降のリリースからアップグレードする場合や、すでにWebLogic Scripting Toolに移行済みの場合は、このステップをスキップできます。

MBeanの階層構造に最近加えられた変更により、既存の構成および管理スクリプト(WLST、wlconfigweblogic.Admin、Antなど)は9.2より前の環境で必ずしも動作しない可能性があります。WebLogic Server 9.2、10.0、10.3、および12.1.1の新しい機能を利用するようにスクリプトを更新することをお薦めします。リリース9.2以降の各リリースで導入されたMBeanにおける新しいWebLogic Server機能と変更の詳細は、「WebLogic管理と構成スクリプト」を参照してください。

次の項では、スクリプト・ツール、カスタム・ドメイン・テンプレート、およびSNMPについて詳しく説明します。

非推奨のweblogic.Adminユーティリティ

weblogic.AdminユーティリティはWebLogic Server 9.0以降で非推奨となりました。詳細は、Oracle WebLogic Serverのコマンド・リファレンスのweblogic.Serverコマンドライン・リファレンスに関する項を参照してください。weblogic.Adminユーティリティを現在使用中の場合は、次の項で説明するように、Oracle WebLogic Scripting Toolを使用することをお薦めします。

WebLogic Scripting Toolの使用

WebLogic Scripting Tool (WLST)は、コマンド・ライン形式のスクリプト・インタフェースで(Jythonで構築)、WebLogicドメインの構成に使用することができます。WLSTを使用することで、WebLogic Server管理者は、対話形式で、または実行可能なスクリプトにより、管理タスクを実行し、WebLogic Server構成の変更を開始することができます。

WLST OnlineとWLST Offlineは1つのツールとして提供されます。WLSTでは、12.1.1が提供する管理機能と構成機能が完全にサポートされています。WLSTの詳細は、『Oracle WebLogic Scripting Tool』を参照してください。

MBeanの階層構造に最近加えられた変更により、既存の9.2より前のWLSTスクリプトは、9.2より前の他のツールと同様に、9.2または10.xで動作しない可能性があります。これらのスクリプトは、WebLogic Server 9.2、10.0、10.3、および12.1.1の新しい機能を利用するように更新することをお薦めします。

リリース9.2以降の各リリースで導入されたMBeanにおける新しいWebLogic Server機能と変更の詳細は、「WebLogic管理と構成スクリプト」を参照してください。

カスタム・ドメイン構成テンプレートのアップグレード

表2-4は、Template Builderで作成されたカスタム・ドメイン・テンプレートまたは拡張テンプレートをアップグレードするのに必要な手順の概要を示しています。

表2-4 カスタム・ドメイン・テンプレートのアップグレード手順

ステップ タスク 詳細情報

1

アップグレード・ウィザードを使用して、カスタム・ドメイン・テンプレートまたは拡張テンプレートで作成されたドメインをアップグレードします。

「アプリケーション環境のアップグレード」の手順に従います。

2

必要に応じて新機能を活用できるようドメインを修正します。

『Oracle WebLogic Serverの新機能』を参照してください。リリース9.2以降のWebLogic Server各リリースで導入された機能については、表A-4を参照してください。

3

Template Builderまたはpackコマンドを使用して、12.1.1のドメインまたは拡張テンプレートを作成します。

参照:

  • 『ドメイン・テンプレート・ビルダーによるドメイン・テンプレートの作成』

  • 『PackおよびUnpackコマンドによるテンプレートとドメインの作成』


SNMPを使用したWebLogic Serverのモニター

SNMPマネージャを使用してWebLogic Serverをモニターする場合は、次の手順に従います。

  1. WebLogic Server 12.1.1 MIBをSNMPマネージャにロードします。

    MIBは、WL_HOME/server/lib/BEA-WEBLOGIC-MIB.asn1にあります。WebLogic Serverは、既存の管理対象オブジェクトのオブジェクト識別子(OID)を変更するのではなく、新しい管理対象オブジェクトの新しいOIDを追加します。

  2. 非推奨の管理対象オブジェクトのトラップを生成する場合は、置換オブジェクトのトラップを新規作成します。

    非推奨の管理対象オブジェクトの一覧については、Oracle WebLogic Server MBeanリファレンスの非推奨のMBeanに関する項を参照してください。非推奨のMBeanの説明には、置換MBeanへのポインタも含まれています。SNMPの管理対象オブジェクトはそれぞれMBean属性に対応します。


    注意:

    WebLogic Server 9.0から、多数のOracle専用の実行時MBeanがMIBから削除されています。これらのMBeanは、非推奨のMBeanの一覧に含まれていません。詳細は、WebLogic Server 9.0確認済みおよび解決済みの問題JMXの問題に関する項を参照してください。


ステップ2: 起動スクリプトへのカスタマイズの再適用

アプリケーション環境の12.1.1へのアップグレードを完了するには、起動スクリプトへのカスタマイズの再適用が必要になる場合があります。次の項では、デフォルト起動スクリプトおよびカスタム起動スクリプトをカスタマイズする方法について説明します。

デフォルト起動スクリプト

アップグレード・ウィザードによるアップグレード・プロセスでは、デフォルト起動スクリプトに対して行われたカスタマイズの内容(JAVA_OPTIONS環境変数の設定など)は保持されません。アップグレード・プロセスが完了した後に、デフォルト起動スクリプトを再びカスタマイズする必要があります。

ドメインを12.1.1にアップグレードすると同時にPointBaseを継続して使用する場合は、PointBaseのJARファイルをCLASSPATH環境変数定義の先頭に追加する必要があります。これを行うには、setDomainEnvファイル内のset CLASSPATH文を変更します。


注意:

WebLogic Server 12.1.1ではPointBase 5.7がサポートされますが、PointBaseの任意のバージョンをWebLogic Server 10.3.3以上で使用するには、http://www.pointbase.comで入手できるPointBaseのライセンスが必要です。


カスタム起動スクリプト

カスタム起動スクリプトを作成した場合は、次の手順に従って手動で更新する必要があります。

  • JDKバージョンをWebLogic Serverで使用しているJDKに設定します。

  • 次のようにCLASSPATH変数を更新します。

    • WebLogic Server 12.1.1のクラスを変数の先頭に追加します。

    • 使用されていない10.3より前のバージョンのWebLogicのクラスをすべて削除します。

    • PointBaseを継続して使用するには、PointBaseデータベースのJARをCLASSPATH環境変数定義の最初に追加します。

      評価版データベースを使用するドメインのアップグレードの詳細は、「評価版データベースを使用するドメインのアップグレード」を参照してください。

ステップ3: ファイル権限の確認

次のようにファイル権限を確認します。

  • アップグレード・プロセスにおいてドメイン・ディレクトリのバックアップを行った場合、バックアップ・ファイルには機密情報が含まれている可能性があるため、バックアップ・ファイルを保護する必要があります。

  • アップグレード・プロセスでは、ファイル権限は保持されません。デフォルト以外のファイル権限がファイルに設定されている場合は、これらを確認し、リセットする必要があります。

  • UNIXシステムでは、アップグレード・プロセス中に作成される新しいファイルの所有権と権限は、アップグレードを実行するユーザーに割り当てられます。たとえば、アップグレードがrootにより実行される場合、新しいファイルの所有権はrootに割り当てられます。このため、後でドメイン内のこれらのファイルを更新するユーザーにはroot権限が必要となります。したがって、アップグレード・プロセス中に作成されたファイルに設定されている権限を確認または修正することをお薦めします。

ステップ4: ノード・マネージャへのコンピュータの登録

アップグレード・プロセス中にノード・マネージャをアップグレードする場合は、WebLogicドメインをホストしているコンピュータをノード・マネージャに登録する必要があります。これを実行するには、nmEnrollコマンドを使用します。


注意:

管理サーバーと管理対象サーバーが実行されるよう構成されているコンピュータにnodemanager.domainsファイルがあり、管理サーバーと管理対象サーバーが同じドメイン・ディレクトリを共有している場合は、手動でそのドメインのエントリを<domain-name>=<domain-directory>という形式でファイルに含めることができます。

デフォルトでは、このファイルはWL_HOME/common/nodemanager(WL_HOMEはWebLogic Serverのインストール先のルート・ディレクトリ)にあります。

ノード・マネージャの詳細は、『Oracle WebLogic Serverノード・マネージャ管理者ガイド』の「ノード・マネージャの一般的な構成」にある、nodemanager.domainsファイルの構成に関する項を参照してください。


nmEnrollコマンドを実行すると、WL_HOME/common/nodemanagerディレクトリ(WL_HOMEはWebLogic Serverのインストール先のルート・ディレクトリ)にあるnodemanager.domainsファイルのドメインに関する情報が更新されます。nodemanager.domainsファイルには、ノード・マネージャ・インスタンスが制御するドメインを指定します。このファイルを使用することにより、スタンドアロン・クライアントでドメイン・ディレクトリを明示的に指定する必要がなくなります。

また、このコマンドを実行すると、管理サーバーから次のファイルがダウンロードされます。

  • nm_password.properties(サーバー認証に使用される暗号化されたユーザー名とパスワードが含まれるノード・マネージャ秘密ファイル)

  • SerializedSystemIni.datファイル

nmEnrollコマンドを使用してコンピュータをノード・マネージャに登録するには:

  1. 『Oracle WebLogic Scripting Tool』の環境の設定に関する項の説明に従って、環境を設定します。

  2. 『Oracle WebLogic Scripting Tool』のWLSTの呼出しに関する項の説明に従って、WLSTを呼び出します。

    ステップ2の説明に従って、WebLogic Serverインスタンスを起動し、connectコマンドを使用してWLSTをサーバーに接続します。

  3. WLSTが管理サーバーに接続されると、nmEnrollコマンドを入力して、WLSTを実行するコンピュータをノード・マネージャに登録します。

    以下の情報を指定できます。

    • ノード・マネージャ秘密ファイル(nm_password.properties)とSerializedSystemIni.datファイルの保存先のドメイン・ディレクトリのパス。デフォルトでは、この2つのファイルは、起動したWLSTが格納されているディレクトリに保存されます。

    • ノード・マネージャのホーム・ディレクトリのパス。ドメインに関する情報を含むnodemanager.domainsファイルは、このディレクトリに保存されます。デフォルトでは、WL_HOME/common/nodemanager(WL_HOMEはWebLogic Serverのインストール先のルート・ディレクトリ)です。

      たとえば、ドメイン・ディレクトリがc:/bea/mydomain/common/nodemanagerに指定されており、ノード・マネージャのデフォルトのホーム・ディレクトリ(WL_HOME/common/nodemanager)が使用されている場合、WLSTが実行されているコンピュータをノード・マネージャに登録するには、次のコマンド(太字部分)を使用します。

      wls:/mydomain/serverConfig> nmEnroll('c:/bea/mydomain/common/nodemanager') 
      Enrolling this machine with the domain directory at c:\bea\mydomain\common\nodemanager....
      Successfully enrolled this machine with the domain directory at C:\bea\mydomain\common\nodemanager
      wls:/mydomain/serverConfig>
      

詳細は、WebLogic Scripting Toolのコマンド・リファレンスのnmEnrollに関する項を参照してください。

ステップ5: リモート・サーバー起動オプションの確認

管理サーバーを起動したら、JAVA_HOMEMW_HOMEBEA_HOMECLASSPATHなどのリモート・サーバー起動オプションが、ターゲットの管理対象サーバーにインストールされているWebLogic Server 12.1.1を参照していることを確認します。これは管理コンソールを使用して行います。詳細は、Oracle WebLogic Server管理コンソール・オンライン・ヘルプ管理対象サーバーの起動引数の構成に関する項を参照してください。


注意:

リモート・サーバー起動オプションが正しく設定されていないと、ノード・マネージャを使用して管理対象サーバーを起動するときに、次のようなメッセージがログ・ファイルに書き込まれることがあります。このメッセージは再帰的に送信されるため、最終的に使用可能なディスク容量がすべて消費されるおそれがあります。


No config.xml was found.

Would you like the server to create a default configuration and boot? (y/n): 
java.io.IOException: The handle is invalid 
at COM.jrockit.io.FileNativeIO.read(III)I(Native Method) 
at COM.jrockit.io.NativeIO.read(Ljava.io.FileDescriptor;II)I(Unknown Source) 
at COM.jrockit.io.NativeIOInputStream.read(II)I(Unknown Source) 
at COM.jrockit.io.NativeIOInputStream.read(I[BI)I(Unknown Source)
at COM.jrockit.io.NativeIOInputStream.read([BII)I(Unknown Source)
at java.io.FileInputStream.read([BII)I(Unknown Source)

ステップ6: アプリケーション環境の本番環境へのプロモート

アプリケーション環境を本番環境にプロモートする前に、標準的な品質保証およびパフォーマンス・チューニングを行います。テスト・アプリケーション環境でアプリケーション(外部クライアント・アプリケーションを含む)の動作をテストすることをお薦めします。非推奨となったAPIまたは削除されたAPIがアプリケーションで使用されている場合は、実行時に警告または例外が発生するおそれがあります。発生した場合は、アプリケーション環境を本番環境にプロモートする前に、必要な修正を行う必要があります。

すべてのテスト基準をクリアしていれば、「ステップ4: アップグレード計画の作成」で定義したアップグレード計画に従って、アプリケーション環境を本番環境にプロモートできます。

新しい12.1.1のアプリケーション環境が本番環境にデプロイされたら、既存の環境から新しい環境にリクエストをリダイレクトできるようになります。このようにして、最終的には、既存の環境を安全な停止状態にすることができます。これは、ロード・バランサなどを使用して行います。

アップグレード・プロセスで問題が発生した場合のトラブルシューティング

アップグレード・プロセスの手順が失敗すると、WebLogicアップグレード・ウィザードは失敗の理由を示すメッセージを表示してから終了します。続行するには、次のステップを実行します:

  1. 「ステップ3: アプリケーション環境のバックアップの作成」で作成したバックアップ・ファイルを使用して、アプリケーション環境を元の状態にリストアします。

  2. WebLogicアップグレード・ウィザードにより報告された障害を修正します。

  3. 「アプリケーション環境のアップグレード」の説明に従って、障害が発生した手順からアップグレード・プロセスを続行します。