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Oracle Solaris 11.1 ネットワークパフォーマンスの管理 Oracle Solaris 11.1 Information Library (日本語) |
ETS は、アプリケーションの DCB 優先順位に基づいて NIC 上の帯域幅をアプリケーションに割り当てることができる DCB 機能です。DCB 優先順位は、3 ビットの優先順位フィールドを持つ VLAN ヘッダーです。優先順位フィールドの値により、ネットワークの Ethernet パケットが差別化されます。DCB は、802.1p 優先順位とも呼ばれるこの優先順位値を使用して、PFC 構成やリンク帯域幅といったほかの DCB プロパティーにトラフィックを関連付けます。DCB を構成して、パケットの優先順位値に応じてパケットに割り当てる帯域幅を設定します。
ETS を使用するには、NIC が DCB をサポートしており、DCB モードで動作している必要があります。
PFC 情報に関連するデータリンクプロパティーは、パケットに定義されている CoS 優先順位に基づくパケットロス防止に適用されます。ETS 情報に関連するプロパティーは、同じ CoS 優先順位に基づくパケットへの共有帯域幅割り当てに適用されます。次のデータリンクプロパティーで ETS を構成します。
cos は、データリンクのサービスクラスを指定します。このプロパティーは Ethernet 優先順位を表します。このプロパティーは 0 から 7 までの値を取り、データリンクのアウトバウンドパケットに適用されます。値はアウトバウンドパケットの VLAN タグに設定されます。このプロパティーが物理リンク自体に設定された場合、優先順位はそのリンクのプライマリクライアントのトラフィックだけに適用されます。VNIC など、ほかのセカンダリクライアントには優先順位は設定されません。NIC が DCB モードで動作している場合、またはリンクが VLAN の場合、cos はデフォルトで 0 に設定されます。
etsbw-lcl は、データリンクの TX 側に割り当てられた ETS 帯域幅を示します。ベースとなる物理 NIC が DCB 機能を持ち、ETS をサポートしている場合のみ、このプロパティーは構成可能です。値を設定するには、セカンダリデータリンクまたはクライアントに割り当てる帯域幅を、ベースとなる NIC の合計帯域幅の割合で指定します。リンクの cos がゼロ (0) に設定されていない場合に、このプロパティーを設定できます。
注 - アグリゲーションに構成されている DCB モードの物理リンクでは、ETS は現在サポートされていません。
etsbw-lcl に定義される帯域幅の割合は、そのセカンダリクライアントだけに予約された量ではありません。割り当てられた帯域幅が使用されていない場合は、同様に構成されているほかのクライアントがそれを使用できます。また、帯域幅割り当ては、ホストのトラフィックの送信側だけに適用されます。
上記のリストのプロパティーに加え、次の読み取り専用プロパティーにより、ローカルホストとそのピアの間で交換される帯域幅データに関する情報が提供されます。
etsbw-lcl-advice は、推奨される共有帯域幅を指定します。データリンクのこの推奨帯域幅は、リモートピアからローカルホストに送信されます。
etsbw-lcl-effective は、ローカルホストのデータリンクに実装されている実際の共有帯域幅を示します。このプロパティーは、etsbw-lcl プロパティーの値または etsbw-lcl-advice プロパティーの値のどちらかを反映します。
estbw-rmt-effective は、リモートピアに構成されている共有帯域幅を示します。
特定の優先順位を持つパケットに適切な帯域幅が使用されるようにするには、通信を行うホスト間で ETS 情報が対称になっているか同期されている必要があります。特に、ローカルシステムには etsbw-lcl-advice の値に合わせて自身の共有帯域幅を調整する機能があることが望ましいです。Oracle Solaris 11 システムは、リモートピアの ETS 構成と一致するように自身の ETS 構成を自動的に調整できます。
estbw-lcl-effective プロパティーは、ローカルホストが ETS 情報をピアと一致させる機能が有効になっているかどうかを間接的に示します。このプロパティーの値が etsbw-lcl-advice の値と一致している場合、機能は有効になっています。それ以外の場合、etsbw-lcl-effective プロパティーと etsbw-lcl プロパティーの値は同じになります。
ETS TLV ユニット etscfg は、ホストがピアホストから受信した情報に関してどのように動作するかを制御します。この TLV ユニットには構成可能なプロパティーが 1 つだけあり、それは willing です。デフォルトでは、このプロパティーは on に設定され、ローカルホストは自身の ETS 構成をリモートピアの ETS 構成と同期することができます。特定のエージェントの情報の同期を防止する必要がある場合は、次のように willing プロパティーを off に設定します。
# lldpadm set-agenttlvprop -p willing=off -a agent etscfg
この agent は、エージェントが有効になっているデータリンクによって識別されます。
ほとんどの場合、システムの ETS のデフォルトの構成で十分です。LLDP が有効になっている場合で、ベースとなるリンクが DCB をサポートしており、DCB モードで動作しているとき、この構成は自動的に設定されます。ただし、ETS の構成時に使用できる各種オプションを示すために、この手順では手動の ETS 構成手順を示します。この手順では、自動構成は存在しないものとし、仮想クライアント vnic1 に対して構成を実行するものとします。仮想クライアントは LLDP エージェントである net0 経由で構成されます。
「DCBX を有効にする方法」を参照してください。
デフォルトでは、PFC、ETS、およびエッジ仮想ブリッジング (EVB) が有効になります。EVB を無効にすると仮定します。したがって、ほかの 2 つの値を LLDP エージェントの dot1–tlv プロパティーから削除します。
# lldpadm set-agenttlvprop -p dot1-tlv-=evb net0
# dladm set-linkprop -p cos=value vnic1
# dladm set-linkprop -p etsbw-lcl=value vnic1
etsbw-lcl プロパティーに割り当てる値は、ベースとなるリンクの合計帯域幅容量に対する割合を表します。クライアントに割り当てるすべての割り当て帯域幅値の合計は、100 パーセントを超えてはいけません。
# lldpadm show-agenttlvprop -p willing -a net0 etscfg
willing プロパティーが off に設定されている場合は、次のコマンドを発行します。
# lldpadm set-agenttlvprop -p willing=on -a net0 etscfg
このセクションでは、LLDP と DCB の構成後の ETS 構成に関連する情報の例をいくつか示します。
次のコマンドは、ETS 構成に関する情報を表示します。
dladm show-linkprop -p etsbw-lcl,etsbw-advise,etsbw-lcl-effective,etsbw-rmt-effective datalink
このコマンドは、帯域幅割り当ての定義およびデータリンク上で有効になっている割り当てを表示します。
dladm show-phys -D ets datalink
このコマンドは、リンク上の帯域幅の割り当てと分配に関連する、物理リンクの ETS 構成を表示します。
lldpadm show-agenttlvprop -a agent etscfg
この agent は、LLDP が有効になっているデータリンクによって識別されます。このコマンドは、ホストが ETS 情報をピアと同期する機能を制御する ETS TLV プロパティーを表示します。
次の例は、前述のコマンドで表示される情報の種類を示します。
例 8-5 ETS 関連のデータリンクプロパティーの表示
この例では、拡張伝送選択に関連するデータリンクプロパティーのステータスを表示する方法を示します。
# dladm show-linkprop -p cos,etsbw-lcl,etsbw-lcl-advise, \ etsbw-lcl-effective,etsbw-rmt-effective vnic1 LINK PROPERTY PERM VALUE DEFAULT POSSIBLE vnic1 cos rw 2 0 0-7 vnic1 etsbw-lcl rw 20 0 -- vnic1 etsbw-lcl-advise r- -- -- -- vnic1 etsbw-lcl-effective r- -- -- -- vnic1 etsbw-rmt-effective r- -- -- --
出力は、物理リンクで使用できる合計帯域幅の 20% が vnic1 の共有帯域幅になるように構成されていることを示しています。cos プロパティーで示される VNIC の 802.1p 優先順位は、2 に設定されています。
例 8-6 ローカルホストで ETS 情報を同期する機能の表示
この例では、ホストがピアの ETS 構成に合わせて調整する機能の、現在のステータスを表示する方法を示します。
# lldpadm show-agenttlvprop -a net0 etscfg AGENT TLVNAME PROPERTY PERM VALUE DEFAULT POSSIBLE net0 etscfg willing rw off on on,off
同期を有効にするには、次のコマンドを発行します。
# lldpadm set-agenttlvprop -p willing=on -a net0 etscfg # dladm show-linkprop -p etsbw-lcl,etsbw-lcl-advise, \ etsbw-lcl-effective,etsbw-rmt-effective vnic0 LINK PROPERTY PERM VALUE DEFAULT POSSIBLE vnic1 cos rw 2 0 0-7 vnic1 etsbw-lcl rw 20 0 -- vnic1 etsbw-lcl-advise r- 15 -- -- vnic1 etsbw-lcl-effective r- 15 -- -- vnic1 etsbw-rmt-effective r- 25 -- --
vnic1 の estbw-lcl は 20% に設定されていましたが、VNIC で有効になっている共有帯域幅は、ピアから通知された帯域幅と一致する 15% になっています。この調整は、etscfg TLV ユニットの willing プロパティーを on に切り替えた結果として発生します。
次の例は、物理リンク上の優先順位マッピングを表示します。
# dladm show-phys -D ets net0 LINK COS ETSBW ETSBW_EFFECT CLIENTS ixgbe0 0 20 20 <default,mcast>,net0 1 15 15 vnic2 2 20 20 vnic1 3 30 30 vnic5 4 15 15 vnic3 5 0 0 vnic4 6 0 0 vnic6 7 0 0 vnic7
この例では、各 VNIC にそれぞれ対応する cos 値が設定されています。上記の出力に基づくと、vnic1 の cos プロパティーは 2 に設定されています。ETSBW フィールドでは、クライアント vnic1 で有効になっている共有帯域幅は、ピアから通知された値と一致する 15% になっており、これは ETSBW_EFFECT フィールドで示されています。この例では、最大の共有帯域幅が vnic5 に割り当てられていることも示されています。vnic4、vnic6、および vnic7 には 0% が割り当てられていますが、これは、これらのクライアントが帯域幅をまったく共有しないことを意味するわけではありません。ほかのクライアントが割り当てられた帯域幅を使用している場合、これらのクライアントは帯域幅を受け取りません。