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次の項では、SNMP準拠のMIBを定義し、SNMP MIB for Oracle Tuxedo 10.0について説明します。
SNMP管理のネットワーク内の各管理ステーションやエージェントは、ネットワーク管理に関連する情報のローカル・データベースを維持しています。これを管理情報ベース(MIB)と言います。管理ステーション、エージェント、MIBの関係を図1-1に示します。
SNMP準拠のMIBには、管理対象リソースのプロパティと、エージェントがサポートするサービスに関する定義と情報が含まれています。SNMP準拠のMIBに定義されているリソースの管理可能な機能を、「管理対象オブジェクト」または「管理変数」(あるいは単に「オブジェクト」または「変数」)と呼びます。
管理ステーションはMIBのオブジェクトの取得と設定を行い、エージェントはトラップと呼ばれる、重要だが非請求のイベントについて管理ステーションに通知します。管理ステーションとエージェントの間でのメッセージ交換はすべて、Simple Network Management Protocol (SNMP)を使用して実行されます。
管理ステーションのMIBには、ネットワークのすべての管理対象エンティティのMIBから抽出されたネットワーク管理情報が含まれています。
Structure of Management Information (SMI)は、NWG RFC 1155で規定されているSNMP標準で、MIB情報の構造と使用可能なデータ型を定義しています。SMIでは、MIB内のリソースの表現方法と命名方法が指定されています。SMIの背景にある大前提は、MIB内部の単純さと拡張性を促進することです。
SNMP仕様には、抽象構文表記法1 (ASN.1: Abstract Syntax Notation One) OBJECT TYPEマクロと呼ばれるテンプレートが含まれており、これがMIBでオブジェクトとオブジェクトの表を定義する際の公式モデルとなります。MIBオブジェクトの定義には、次のキーワードを使用します。
MIBの各オブジェクトはオブジェクト識別子(OID)を持ち、管理ステーションはこれを利用してエージェントからオブジェクトの値をリクエストします。OIDは、OIDツリーまたは登録ツリーと呼ばれるツリー状の構造でオブジェクトまでのパスを定義することによって管理対象オブジェクトを一意に識別する、連続した整数です。SNMPエージェントが特定の管理対象オブジェクトにアクセスする必要がある場合には、OIDツリーをたどってそのオブジェクトを検索します。MIBオブジェクト識別子の階層と形式を、図1-2に示します。
この階層で、Oracle SNMPエージェント・ソフトウェアが管理するOracleプライベートMIBオブジェクトのそれぞれが一意のオブジェクト識別子を持っています。.1.3.6.1.4.1.140
という接頭辞は、Oracle SNMPエージェント・ソフトウェアのOracleプライベートMIBを指しています。
絶対OIDでは、OIDツリーのルートから属性へのパスを指定します。絶対OIDの名前は、ピリオドで始まり、最上位ノードから特定の管理対象オブジェクトまでのOIDツリーの各ノードを指定する必要があります。例:
相対OIDでは、OIDツリーのあるノードとの相対的な関係で属性へのパスをします。たとえば2.1.1.1
は、system
グループのsysDescrオブジェクトを、OIDツリーのInternetノードとの相対関係で指定します。
ピリオド区切りの表記、つまり一連の整数をピリオドで区切ってOIDを指定する方法だけでなく、数値のかわりに文字記号を使用してオブジェクトまでのパスでノードを表す、または整数と文字記号を組み合せることによってOIDを表すこともできます。シンボリックOIDは、ニーモニック・キーワードを使用して管理対象オブジェクト指定します。例:
次の数値OIDは、整数を使用して同じ管理対象オブジェクトを指定しています。
OIDでは、OIDツリーの各ノードのシンボリック表記と数値表記を両方組み合せることができます。例:
SNMP MIB for Oracle Tuxedo 10.0は基本的に、Oracle Tuxedo 10.0用のTuxedo管理情報ベース(TMIB)のSNMPバージョンです。TMIBは、Oracle TuxedoまたはOracle WebLogic Enterpriseアプリケーションのコンポーネントを管理するための標準MIBです。TMIBの詳細は、「SNMP MIBとTMIBの相違点の理解」を参照してください。
SNMP MIBは、Oracle SNMPエージェント・ソフトウェアを介してアクセスできる様々な管理対象オブジェクトについて、データ型とアクセス権を定義します。また、Oracle SNMPエージェント・ソフトウェアで生成できるイベント通知も定義します。SNMP標準の規定により、SNMP MIB定義はRFC 1212に従った簡潔なMIB形式で記述されます。
Oracle SNMPエージェントには、SNMP MIBを定義するためのbea.asn1
いう名前のファイルがあります。Oracle Tuxedo 10.0の場合、bea.asn1
ファイルはtux_prod_dir
/udataobj/snmp/etc
ディレクトリにあります。tux_prod_dir
は、Oracle Tuxedo 10.0ディストリビューションがインストールされているディレクトリです。
Oracle Tuxedo 10.0のbea.asn1
ファイルによって、次のコンポーネントの機能を認識できるようになり、SNMPネットワーク管理フレームワークで管理できるようになります。
Oracle SNMPエージェント10.0とSNMP MIB for Oracle Tuxedo 10.0を使用すると、Tuxedo 9.1、9.0、8.1、8.0、7.1、および6.5アプリケーションを管理できます。Oracle SNMPエージェント10.0とSNMP MIB for Oracle Tuxedo 10.0で、WebLogic Enterprise 5.1以前のアプリケーションは管理できません。
Oracle Tuxedo 10.0のbea.asn1
ファイルによって定義されるSNMP MIBは、管理ステーションまたはエージェントにおける管理情報のデータベース全体を指します。SNMP MIB自体は個別のコンポーネントMIBで構成されており、そのそれぞれが、SNMP MIB全体の一部である管理情報の特定の集合です。管理ステーションはコンポーネントMIBを使用して、Oracle Tuxedoシステムの特定のコンポーネントとエージェント自身を管理し、管理対象リソースについての情報を収集します。
SNMP MIB for Oracle Tuxedo 10.0は、次のコンポーネントMIBで構成されています。
.1.3.6.1.4.1.140.300
(またはtuxedo
) - Tuxedoアプリケーションの操作と構成を制御するためのMIBオブジェクトを含みます。このMIBには、ドメイン、マシン、キュー、サーバー、ルーティング、クライアント、サービスなどTuxedoアプリケーションの主な情報グループが含まれます。詳細は「コアMIB」を参照してください。.1.3.6.1.4.1.140.300
(またはtuxedo
) - Tuxedoドメイン(Tuxedoビジネス・アプリケーション)間の対話を規定するためのMIBオブジェクトを含みます。詳細は「Domains MIB」を参照してください。.1.3.6.1.4.1.140.305
(またはbeaDomainList
) - 特定の管理対象ノード(マシン)上で現在監視されているTuxedoドメインすべてを識別および記述するためのMIBオブジェクトを含みます。詳細は「Oracle Domain List MIB」を参照してください。.1.3.6.1.4.1.140.300
(またはtuxedo
) - Tuxedo 8.0以上のCORBA機能を管理するためのMIBオブジェクトを含みます。詳細は「CORBA Interface MIB」を参照してください。.1.3.6.1.4.1.140.300
(またはtuxedo
) - Tuxedoアプリケーションのセキュリティ・オプションを設定および制御するためのMIBオブジェクトを含みます。詳細は「Access Control List MIB」を参照してください。.1.3.6.1.4.1.140.300
(またはtuxedo
) - ワークステーションのリスナーとハンドラも含めたTuxedoクライアント・ワークステーションに関する情報を指定するためのMIBオブジェクトを含みます。詳細は「ワークステーションMIB」を参照してください。.1.3.6.1.4.1.140.300
(またはtuxedo
) - Tuxedoアプリケーション・キューへのアクセスを管理するためのMIBオブジェクトを含みます。このグループには、キュー・スペース、キュー、メッセージ、トランザクションを管理するオブジェクトが含まれます。詳細は「Application Queue MIB」を参照してください。.1.3.6.1.4.1.140.300
(またはtuxedo
) - 現在のイベント・サブスクリプションの規定、新しいサブスクリプションの定義、およびサブスクリプションの無効化を行うためのMIBオブジェクトを含みます。詳細は「EventBroker MIB」を参照してください。.1.3.6.1.4.1.140.300
(またはtuxedo
) - Oracle SNMPエージェントに対してSNMPエージェントによって生成されるトラップ通知を指定するためのMIBオブジェクト、および変数バインディングの形でトラップに渡されるオブジェクトを指定するためのMIBオブジェクトを含みます。詳細は「Traps MIB」を参照してください。.1.3.6.1.4.1.140.1
(またはbeaSystem
) - Oracle SNMPエージェント・インテグレータのポーリング・ルールによって生成されるトラップ通知を渡すためのMIBオブジェクトを含みます。たとえば、OID .1.3.6.1.4.1.140.1.0
においてポーリングされるオブジェクトの値が20を超えたとき、指定されたトラップIDの200でトラップを送信するというルール・アクションを指定できます。このオブジェクトの値が20未満になったときには、トラップID 300でトラップが送信されます。Oracle SNMPエージェント・インテグレータのポーリング機能については、『Oracle Tuxedo SNMPエージェント管理ガイド』の「Oracle SNMPエージェント・インテグレータを使用したポーリング」を参照してください。.1.3.6.1.4.1.140.200
(またはbeaIntAgt
) - ユーザー定義のポーリング・ルールに従って、Oracle SNMPエージェント・インテグレータによって生成されるユーザー定義のトラップを作成するためのMIBオブジェクトを含みます。管理対象ノードで実行されるOracle SNMPエージェント・インテグレータは、ローカル・ポーリングを実行してSNMPトラップ通知を生成するように、あるいは特定の条件が満たされたときにシステム・コマンドを実行するように構成することができます。個々のルールは、MIBオブジェクトとして格納され、管理ステーションによってアクティブ化と非アクティブ化が可能です。ポーリング・ルールについては、『Oracle Tuxedo SNMPエージェント管理ガイド』の 「構成ファイル」を参照してください。Oracle Domain List、Traps、Oracle System、Oracle Agent Integratorを除き、SNMP MIBのコンポーネントMIBはTMIBのコンポーネントMIBに対応しています。TMIBの詳細は、「SNMP MIBとTMIBの相違点の理解」を参照してください。
SNMP MIB for Oracle Tuxedo 10.0におけるオブジェクト名は、先頭にtux
という文字が付きます。たとえば、コアMIBにはtuxTmachineTable
という名前のグループが含まれ、tuxTmachineTable
グループには次のオブジェクトが含まれています。
tuxTmachinePmid
tuxTmachineLmid
SNMP MIB定義はRFC 1212に従った簡潔なMIB形式で記述されます。このため、SNMP MIBには単純なデータ型しか格納されません。スカラーと、スカラーの2次元配列(表と呼ばれます)です。SNMP MIB管理対象オブジェクトの定義には、SYNTAX、ACCESS、DESCRIPTIONのキーワードと、STATUSおよびINDEXなど他のキーワードを使用します。
管理ステーションを通じて管理対象オブジェクトの値を監視または変更するには、管理目標に関係するOracle Tuxedoリソースの機能を、どのMIBオブジェクトが表すかを知る必要があります。そのMIBオブジェクトのデータ型、デフォルト値、アクセス権についての情報も必要です。
bea.asn1
ファイルは、RFC 1215(トラップの定義)に従って、Oracle Tuxedoシステムおよびアプリケーションのイベントをすべて定義します。これらのシステムおよびアプリケーション・イベントは、企業固有のトラップとして管理ステーションに送信されます。トラップのリストについては、「Traps MIB」を参照してください。
.1.3.6.1.4.1.140.300
というOIDに設定されています。この値は、トラップ・パケット(Protocol Data Unit、PDU)のenterprise
フィールドで渡されます。
管理ステーションは、bea.asn1
ファイルを使用してOracle SNMPエージェントのSNMP MIBを管理ステーション上に設定します。bea.asn1
ファイルを管理ステーションの管理データベースにインポートする必要があります。『Oracle Tuxedo SNMPエージェント管理ガイド』の「管理フレームワークでのOracle SNMPエージェントの使用」を参照してください。
Oracle SNMPエージェントのSNMPエージェントは、mib.txt
という名前のファイルを使用して管理対象ノード(マシン)上のローカルSNMP MIBを設定します。mib.txt
ファイルは、bea.asn1
ファイルに似ており、SNMP MIBの内容をテキストで記述したものです。デフォルトでは、mib.txt
ファイルはtux_prod_dir
/udataobj/snmp/etc
ディレクトリにあります。tux_prod_dir
は、Oracle Tuxedo 10.0ディストリビューションがインストールされているディレクトリです。 mib.txt
ファイルを使用して管理対象ノードにローカルSNMP MIBを作成する方法については、『Oracle Tuxedo SNMPエージェント管理ガイド』の「Oracle SNMPエージェント・インテグレータのコマンド」を参照してください。
SNMPエージェントは、管理対象のOracle TuxedoアプリケーションのTMIBと通信し、ローカルSNMP MIBに最初に設定されるオブジェクト値を取得します。管理ステーションがSNMPエージェントを介してローカルSNMP MIBの値を取得して設定すると、SNMPエージェントは、ローカルTMIBで対応するオブジェクト値を読み書きするTuxedoコマンドを発行します。
ローカルSNMP MIBは永続的ではありません。つまり、SNMP MIBはディスクには書き込まれません。SNMPエージェント・プロセスが終了すると、そのSNMP MIBも終了します。
存在しないSNMP MIBオブジェクトの値を取得しようとした場合、何も値が返されないか、次のいずれかの値が返されます。
たとえば、Oracle Tuxedo 8.0以上のアプリケーションが管理対象ノードにインストールされていない場合、SNMP MIB for Oracle Tuxedo 10.0に含まれるCORBA固有のオブジェクトは、問い合せても値を返しません。
SNMP MIBの一部のオブジェクトは、Oracle Tuxedoシステムが特定の状態の場合にしか設定(更新)できません。MIBに読み書きオブジェクトを設定しようとしてエラーが発生する場合は、TuxedoのULOG
ファイルでエラーの詳細を確認してください。
Tuxedoシステムは、Tuxedoドメインの各マシン上に毎日ULOG
ファイルを作成します。ULOG
ファイルの詳細は、リフレッシュ・ページの「userlog(3c)」を参照してください。
Oracle SNMPエージェントのSNMP MIBと、Tuxedo MIB (TMIB)との最大の違いは用語の使い方です。さらに、SNMP MIBには、追加のコンポーネントMIBがいくつか含まれています。
Oracle TuxedoシステムのTMIBは個別のコンポーネントMIBで構成され、それぞれがTuxedoシステムの特定のコンポーネントの管理に使用されます。これらのコンポーネントMIBは個別リファレンス・ページに定義されており、各ページはシステムの特定の部分向けのMIBに対応しています。たとえば、『Oracle Tuxedoファイル形式、データ記述、MIBおよびシステム・プロセス・リファレンス』のリファレンス・ページ「TM_MIB(5)」では、Oracle Tuxedo 10.0アプリケーションの基本的な側面の管理に使用するMIBが定義されています。TM_MIBは、SNMPコアMIBと互換性があります。
SNMPの用語では「グループ」および「管理対象オブジェクト」と呼ぶのが一般的ですが、TMIBではアプリケーション・リソースを「クラス」および「属性」として定義します。クラスは、TMIBを構成する管理上のクラス定義です。各クラスには、クラスの個々の項目を識別する一連の属性があります。たとえば、TMIBには次のようなクラスがあります。
T_MACHINE
T_SERVICE
これらのクラスの属性は、接頭辞TA_
に属性名を続けて識別されます。たとえば、T_MACHINE
クラスには次のような属性があります。
TA_PMID
TA_LMID
TMIBの詳細は、『ファイル形式、データ記述、MIBおよびシステム・プロセス・リファレンス』を参照してください。
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