この章の情報は、ブロック・ストレージ・データベースのみに適用され、集約ストレージ・データベースとは関係がありません。
関連項目:
Oracle Essbase Integration Services System Administrator's Guide
Oracle Essbase Administration Services Online Help
リレーショナル・データベースには数テラバイトのデータを保管することができるため、無限ともいえる拡張容易性があります。一方、多次元データベースは、一般的にリレーショナル・データベースよりも小規模ですが、高度な分析能力を提供します。リレーショナル・データベースとEssbaseデータベースを統合することによって、多次元データベースの概念的な能力で拡張容易性の高いリレーショナル・データベースを活用できます。
デフォルトでは、Integration ServerでEssbaseアウトラインを作成するときに、メタアウトラインで指定されたすべてのメンバー・レベルを多次元データベースにロードします。ただし、指定のメンバー・レベルに構築(ハイブリッド分析)する、または次元レベルにのみ構築(拡張リレーショナル・アクセス)するようにIntegration Serverを設定できます。指定のレベルまでの構築の方が、多次元データベースとEssbaseアウトラインは小さくなります。
ハイブリッド分析および拡張リレーショナル・アクセスを参照してください。
Extended Online Analytic Processing (XOLAP)を使用して、ソース・リレーショナル・データベースとEssbaseデータベースを統合できます。これは、ビジネス・インテリジェンスでのOLAPの役割の変形です。具体的には、XOLAPは、アウトライン・メタデータのみを保管して、クエリー時にリレーショナル・データベースからデータを取得するEssbase多次元データベースです。したがって、XOLAPは、Essbaseデータベースと統合して、多次元データベースの高度な分析機能とともにリレーショナル・データベースの拡張容易性を活用します。OLAPとXOLAPのどちらがビジネス環境に適しているかを判断する必要があります。
XOLAPの概要を参照してください。
ハイブリッド分析によって、下位レベルのメンバーおよびそれらのデータをEssbaseデータベースにロードして保管する必要がなくなります。この機能によって、アウトライン・サイズに関する制限をほとんど受けることなくEssbaseを使用できるようになります。また、Essbaseデータベースとリレーショナル・データベースとの間のデータ転送も迅速に行えるようになります。ハイブリッド分析によって、リレーショナル・データベースとEssbase多次元データベースが統合されるので、アプリケーションとレポート・ツールは、両方のデータベースから直接データを取得できます。図141に、ハイブリッド分析のアーキテクチャを示します:
ハイブリッド分析を設定する最初の手順は、リレーショナル・データベースをハイブリッド分析リレーショナル・ソースとして定義することです(図141の1)。
ハイブリッド分析リレーショナル・ソースはIntegration Servicesコンソールで定義します。Integration Servicesコンソールでは、最初にOLAPモデルのリレーショナル・データ・ソースを指定します。OLAPモデルは、リレーショナル・データベースのテーブルと列から作成するスキーマです。モデルを構築するため、Integration Servicesでは、リレーショナル・データベースのスター・スキーマにアクセスします(図141のa)。
このモデルを使用して、階層、およびメンバーをハイブリッド分析に対して使用可能にするタグ・レベルを定義します。メタアウトライン(Essbaseアウトラインを作成するための構造とルールを含んだテンプレート)を、目的のハイブリッド分析レベルまで作成します。ハイブリッド分析の使用可能情報は、OLAPメタデータ・カタログに保管されます。このカタログには、ハイブリッド分析リレーショナル・ソースのデータの性質、ソース、場所およびタイプが記述されます。
次に、メンバー・ロードを実行して、次元とメンバーをEssbaseアウトラインに追加します(図141のb)。メンバー・ロードが完了した後で、データ・ロードを実行してEssbaseデータベースにデータを入れます(図141のc)。この時点で、ハイブリッド分析のアーキテクチャは次の状態になります:
メタデータは、データベース内の値を記述したデータです。ハイブリッド分析データを定義するメタデータは、EssbaseアウトラインおよびEssbaseアウトラインの基となるIntegration Servicesメタアウトラインに存在します。Essbaseアウトラインに関連付けられているOLAPモデルまたはメタアウトラインのハイブリッド分析データが変更された場合は、アウトラインを更新して、Essbaseで報告されるデータの正確さを確保する必要があります。ハイブリッド分析でのデータの一貫性の管理を参照してください。
スプレッドシートやレポート・ライターのインタフェースなどのアプリケーションとレポート・ツールは、両方のデータベースから直接データを取得できます(図141の2)。アウトラインに定義されている次元とメンバー構造を使用して、Essbaseでは、メンバーの場所を特定し、Essbaseデータベースまたはハイブリッド分析リレーショナル・ソースからデータを取得します。データがハイブリッド分析リレーショナル・ソースに存在する場合は、EssbaseではSQLコマンドを使用して取得します。ハイブリッド分析データの取得を参照してください。
アウトラインを変更するには、Administration Servicesのアウトライン・エディタを使用して、必要に応じてハイブリッド分析の次元を使用可能または使用不可にできます(図141の3)。ハイブリッド分析でのアウトライン・エディタの使用および『Oracle Essbase Integration Servicesシステム管理者ガイド』を参照してください。
Integration Servicesコンソールでのハイブリッド分析リレーショナル・ソースの定義方法は、Oracle Essbase Integration Services System Administrator's Guideを参照してください。
ハイブリッド分析では、アプリケーションとレポート・ツールは、次のツールを使用してリレーショナル・データベースとEssbaseデータベースから直接データを取得できます:
Essbaseデータベースとリレーショナル・データベースは、同じODBCデータ・ソースに登録する必要があります。Integration Servicesでは、両方のデータベースに同じソース名を使用する必要があります。 |
計算を実行するとき、またはレポートを生成するときに、データはハイブリッド分析リレーショナル・ソースとEssbaseデータベースからアクセスされるので、ハイブリッド分析によってデータ取得にかかる時間が増える可能性があります。ただし、ピボット、ドリルスルー、その他のメタデータベースのメソッドを含む、Essbaseのデータ取得操作のほとんどの機能は、ハイブリッド分析で使用できます。
表119にリストされた構成設定を使用して、Essbaseサーバーまたは特定のアプリケーションとデータベースに対してハイブリッド分析を使用可能にし、定義します:
表 119. ハイブリッド分析の取得構成設定
設定 |
説明 |
---|---|
ハイブリッド分析リレーショナル・ソースからのメンバーの取得を可能にします | |
Essbaseがリレーショナル・データベースに対してアクティブな状態を保持できる、データベースごとの接続の最大数を設定します | |
OS/390システム上のDB2データ・ソースへのアクセスを可能にします | |
1つのEssbaseクエリー・セッションにつきリレーショナル・データベースのファクト・テーブルに対して発行できる、SQLクエリーの最大数を設定します | |
ハイブリッド分析リレーショナル・ソースからのSQLクエリーのクエリーごとの最大時間制限を設定します | |
Essbaseクエリーのために発行されたSQLクエリーごとに戻される行の最大数を設定します | |
一度に処理するためにSQLクエリーから戻される最大行数が設定されます | |
ハイブリッド分析対応のアウトライン用の次元の作成に使用する次元テーブルの列で、NULL値を使用可能にします | |
ハイブリッド分析リレーショナル・ソースからのクエリー済のメンバーをキャッシュするために予約するメモリー量を設定します |
『Oracle Essbaseテクニカル・リファレンス』を参照してください。
Smart Viewでは、ハイブリッド分析は自動的に使用可能になります。
ハイブリッド分析では、Smart Viewで「親ドリルアップ」・オプションをサポートします。リレーショナル・メンバーに対するドリルアップでは、そのリレーショナル・メンバーの直接の親ではなく、常にEssbaseアウトラインのリーフレベル・メンバーが得られます。
Oracle Hyperion Smart View for Office User's Guideを参照してください。
レポート・ライターでは、コマンドを使用してハイブリッド分析を使用可能または使用不可にします:
<ASYMコマンドと<SYMコマンドは、ハイブリッド分析でサポートされません。この2つのコマンドがレポートにある場合は、エラーが発生する可能性があります。<SPARSEコマンドは、ハイブリッド分析リレーショナル・ソースからデータを取得するレポートで無視され、エラーは発生しません。
次は、IDESCENDANTSコマンドを使用してハイブリッド分析データを戻すレポート・ライター・スクリプトのサンプルです:
<PAGE (Accounts, Scenario, Market) Sales Actual <Column (Time) <CHILDREN Time <Row (Product) <IDESCENDANTS 100-10 !
アウトライン・エディタでは、「ハイブリッド分析」ボタンを切り替えることによって、Integration Servicesコンソールでハイブリッド分析に対して定義されている各次元のハイブリッド分析を使用可能または使用不可にできます。ハイブリッド分析に定義されていないアウトラインを開いた場合、「ハイブリッド分析」ボタンはツールバーに表示されません。
次元のハイブリッド分析が使用不可の場合、ユーザーは、その次元に関連するハイブリッド分析データを表示およびドリル・スルーすることができません。ただし、次元のメンバーは、アウトライン・エディタに表示されたままです。 |
図142は、アウトライン・エディタに表示されたハイブリッド分析に定義されているアウトラインの例です。ハイブリッド分析が使用可能な次元は、ハイブリッド分析を使用できない次元と区別するために特定されています。
ハイブリッド分析リレーショナル・ソースを作成すると、データとメタデータは、リレーショナル・データベースとEssbaseデータベースで次のように保管および管理されます:
データとメタデータは別の場所にあるので、両者の情報が同期していない状態になることがあります。
Essbaseは、ハイブリッド分析リレーショナル・ソースにアクセスするときにIntegration ServicesのOLAPメタデータ・カタログに依存します。Essbaseデータベースの起動時に、Essbaseサーバーでは、Essbaseアウトラインの次元とメンバーの数を関連するメタアウトラインと照合します。
Integration Servicesセッション中に、関連するOLAPモデルまたはメタアウトラインに対して行われた変更は、Essbaseデータベースが再び起動するまでEssbaseサーバーによって検出されません。検出されていない変更によって、Essbaseデータベースとハイブリッド分析リレーショナル・ソースの間にデータの不整合が生じる可能性があります。
ハイブリッド分析リレーショナル・ソースで変更が行われたり、OLAPモデルまたはメタアウトラインにメンバーが追加または削除された場合、そのような変更によって、Essbaseアウトラインはそれが基にしているメタアウトラインと同期しなくなる可能性があります。このような変更と次元の階層構造への変更の影響は、アウトライン構築とデータ・ロード・プロセスがIntegration Servicesコンソールによって完了するまで、Essbaseデータベースに反映されません。
Administration Servicesの「データベースの再構築」ダイアログ・ボックスには、再構築がハイブリッド分析リレーショナル・ソースを含んでいるアウトラインに影響する場合はいつでも警告するように設定できるチェック・ボックスがあります。このような問題は、たとえば、リレーショナル上の子を持つメンバーが移動または削除された場合に発生します。
警告は、アプリケーション・ログにリストされます。警告で、データの一貫性を脅かすものを反映するのかどうかを指定する必要があります。アプリケーション・ログを表示する方法は、Essbaseサーバー・ログおよびアプリケーション・ログの表示を参照してください。
Essbaseの管理者は、Essbase多次元データベース、リレーショナル・データベースおよびIntegration Services OLAPモデルとメタアウトラインが常に同期を維持するようにする必要があります。Administration ServicesとIntegration Servicesコンソールには、管理者が一貫性検査を実行して、該当する更新を実行するためのコマンドが用意されています。
データの整合性の確保およびデータベースの再構築の最適化。を参照してください。
Essbaseの管理者は、個々のEssbaseユーザー・レベルでのハイブリッド分析リレーショナル・ソースへのアクセスを設定します。ハイブリッド分析のアクセスは、Essbase全体のセキュリティに影響する要因と同じ要因で制御されます:
セキュリティ・フィルタにおいて、Essbaseで表示できる、レベル0メンバーのリレーショナル上の子が制限されている場合、Essbaseでアクセスできないレベル0メンバーのリレーショナル上の子は表示できません。
次のような市場次元のアウトラインがあると仮定します。このアウトラインでは、San FranciscoとSan JoseはCaliforniaのリレーショナル上の子であり、MiamiとOrlandoはFloridaのリレーショナル上の子です:
この例で、フィルタによってレベル0メンバーCaliforniaとその子孫のみが表示できるようになっている場合、Californiaとそのリレーショナル上の子であるSan FranciscoおよびSan Joseは表示できます。しかし、レベル0メンバーFloridaの子は表示できません。
Integration Servicesは、拡張リレーショナル・アクセスを使用して、Essbaseユーザーがリレーショナル・データベースまたはデータ・ウェアハウスのデータに直接アクセスできるようにします。Integration Servicesコンソールでは、拡張リレーショナル・ストレージは、メタアウトライン・レベルで使用可能です。リレーショナル・ストレージ・オプションを選択すると、非会計次元のすべてのメンバーに対してリレーショナル・ストレージが使用可能になります。選択した非会計次元に対してリレーショナル・ストレージを使用可能にすることもできます。
メタアウトラインで拡張リレーショナル・アクセスが使用可能な場合、ユーザーは、リレーショナルに保管されたメンバーに直接クエリーを実行できます。データベースへのクエリーは、多次元式(MDX)を使用して実行します。この式は、SQL文に変換されます。次元メンバーはリレーショナル・データ・ソースから直接アクセスされます。
Extended Online Analytic Processing (XOLAP)は、ビジネス・インテリジェンスでのOLAPの役割の変形です。具体的には、XOLAPは、アウトライン・メタデータのみを保管して、クエリー時にリレーショナル・データベースからデータを取得するEssbase多次元データベースです。したがって、XOLAPは、ソース・リレーショナル・データベースとEssbaseデータベースを統合して、多次元データベースの高度な分析機能とともにリレーショナル・データベースの拡張容易性を活用します。OLAPとXOLAPのどちらがビジネス環境に適しているかを判断する必要があります。
OLAPとXOLAPでは、メタデータ・アウトラインおよび基になるデータを保管する場所が異なります:
OLAPでは、メタデータはEssbaseデータベースに配置され、基になるデータもEssbaseデータベースに配置されます。
XOLAPでは、メタデータはEssbaseデータベースに配置されますが、基になるデータはソース・リレーショナル・データベースに配置されます。
メタデータとデータの場所の違いはOLAPとXOLAPの機能に影響するので、XOLAPのメリットを理解する上でこの違いは手がかりとなります。
OLAPは、従来のリレーショナル・データ・ストレージとデータ分析に適しています。XOLAPは、(EssbaseとIntegration Servicesのユーザーによく知られている)ハイブリッド分析や拡張リレーショナル・アクセスなどの混合(ハイブリッド)環境でサポートされる操作に適しています。ハイブリッド分析と拡張リレーショナル・アクセスの基本概念の多くは、Essbase StudioのXOLAPキューブの機能に組み込まれています。
XOLAPの使用に関するガイドラインと制限、およびXOLAP用のモデルの指定方法は、Oracle Essbase Studio User's Guideを参照してください。
XOLAP環境でのデータ取得ワークフローは、XOLAP以外の環境でのワークフローによく似ています:
モデルは、Essbase StudioでXOLAP対応に指定されます。
キューブは、Essbase Studioに配置されますが、この時点ではデータはロードされていません。
Essbaseデータベースは、Smart View、またはEssbaseデータベースにアクセス可能なその他のレポート作成ツールを使用してクエリーされます。
Essbaseによって、ソース・リレーショナル・データベースからデータを取得するために必要なSQLが自動的に生成されます。
XOLAPには、いくつかの制限があります。また、XOLAPでサポートされない使用方法もあります。
XOLAPには次の制限があります:
XOLAPキューブの編集は許可されていません。アウトラインを変更する場合は、Essbase Studioで新しいアウトラインを作成する必要があります。アウトラインの作成後に、次元テーブルの構造とコンテンツの変更はXOLAP操作によって自動的に組み込まれません。
導出テキスト・メジャーがEssbaseモデルを構築するためにキューブ・スキーマで使用されている場合、そのモデルにXOLAPは使用できません。
XOLAPは、集約ストレージでのみ使用できます。データベースは自動的に重複メンバー対応になります。
XOLAPでは、カタログに対応するスキーママッピングのない次元をサポートしますが、そのような次元では、1つのメンバーしか保管済メンバーにすることができません。