ここでは、1つのクライアントと1つのサーバー、およびOracle Tuxedo /Qを使用するアプリケーションqsample
について説明します。このソフトウェア(対話形式)は、Oracle Tuxedoソフトウェアに同梱されています。
このサンプル・アプリケーションを実行するには、Oracle Tuxedoソフトウェアがインストールされてビルドされ、ここで説明するファイルやコマンドを使用できることが必要です。Oracle Tuxedoソフトウェアをインストールする必要がある場合、そのインストール方法については『Oracle Tuxedoシステムのインストール』を参照してください。
すでにインストールされている場合は、ソフトウェアのインストール先のルート・ディレクトリのパス名を確認する必要があります。また、Oracle Tuxedoディレクトリ構造内のディレクトリとファイルに読取りパーミッションと実行パーミッションを設定し、qsample
の各ファイルをコピーしたり、Oracle Tuxedoの各コマンドを実行できるようにします。
qsample
は、Oracle Tuxedo /Qを使用する基本的なOracle Tuxedoアプリケーションです。1つのアプリケーション・クライアントおよびサーバーがあり、2つのシステム・サーバーを使用します。TMQUEUE(5)とTMQFORWARD(5)です。クライアントは、TMQUEUE
を呼び出して、qsample
用に作成されたキュー・スペースにメッセージを登録します。このメッセージは、TMQFORWARD
によってキューから取り出され、アプリケーション・サーバーに渡されます。アプリケーション・サーバーは、文字列を小文字から大文字に変換し、TMQFORWARD
に返します。TMQFORWARD
は、応答メッセージをキューに登録します。その間に、クライアントはTMQUEUE
を呼び出して、応答をキューから取り出します。応答を受信すると、クライアントはその応答をユーザーの画面に表示します。
以下は、qsample
アプリケーションをビルドして実行する手順です。
qsample
用にディレクトリを作成し、そのディレクトリに移動(cd
)します。mkdir qsampdir
cd qsampdir
この作業は省略せずに行ってください。この作業を行うと、最初からあったqsample
のファイルと、手順に従って作成したファイルを確認できるようになります。Cシェル(/bin/csh
)を使用せずに、標準シェル(/bin/sh
)またはKornシェルを使用してください。
qsample
ファイルをコピーします。cp $TUXDIR/apps/qsample/* .
一部のファイルを編集してから、実行形式ファイルを作成することがあるので、本ソフトウェアで提供されたオリジナルのファイルではなく、コピーしたファイルを用いて作業することをお薦めします。
$ ls
README
client.c
crlog
crque
makefile
rmipc
runsample
server.c
setenv
ubb.sample
$
setenv
ファイルを編集します。 setenv
ファイルを開いて、TUXDIR
値をOracle Tuxedoシステムのインストール先のルート・ディレクトリの絶対パス名に変更します。この値を編集するときに、山カッコ(<
と>
)を削除します。
runsample
を実行します。 runsample
スクリプトには、いくつかのコマンドが記述されています。各コマンドの前には、そのコマンドを説明するコメント行があります。
#set the environment
. ./setenv
chmod +w ubb.sample
uname="`uname -n`"
ed ubb.sample<<!
g;<uname -n>;s;;${uname};
g;<full path of Tuxedo software>;s;;${TUXDIR};
g;<full path of APPDIR>;s;;${APPDIR};
w
q
!
#build the client and server
make client server
#create the tuxconfig file
tmloadcf -y ubb.sample
#create the TLOG
./crlog
#create the QUE
./crque
#boot the application
tmboot -y
#run the client
client
#shutdown the application
tmshutdown -y
#remove the client and server
make clean
#remove the QUE ipc resources
./rmipc
#remove all files created
rm tuxconfig QUE stdout stderr TLOG ULOG*
このスクリプトを実行すると、各種のコマンドから生成される一連のメッセージが画面に表示されます。このメッセージの中に、次の行があります。
before: this is a q example
after: THIS IS A Q EXAMPLE
before:
で始まる行は、client
がキューに登録し、server
で処理される文字列のコピーです。after:
で始まる行は、server
から返された文字列です。この2行によって、プログラムが正常に動作したことがわかります。
runserver
を使用してサンプル・アプリケーションのビルドと実行を行うほかに、このアプリケーションの各部分について理解することも有用です。ここでは、参照しておくと役立つ内容について説明します。このアプリケーションについて理解を深めると、ほかのアプリケーションも理解できるようになります。
setenv
は、Oracle Tuxedoの開発でよく使用されるファイルの1つです。TUXDIR
、APPDIR
、およびPATH
の3つの変数が設定されています。これらの変数は、Oracle Tuxedoシステムで作業しているときに常に必要になります。SUNマシンで実行する場合は、PATH
変数の先頭に別個にbin
が必要になるので注意してください。LD_LIBRARY_PATH
、SHLIB_PATH
、またはLIBPATH
は、共用ライブラリを使用してシステムをビルドする場合に重要です。使用する必要のある変数は、お使いのオペレーティング・システムに依存します。TUXCONFIG
は、システムを起動する前に設定しておく必要があります。QMADMIN
は、変数で設定することも、qmadmin(1)コマンド行で指定することもできます。
考慮する点: Oracle Tuxedo /Qの処理を実行するためにファイルの使用を計画する必要がありますか。ログイン時に環境を設定するコマンドが.profile
に必要ですか。
makefile
は、サーバーおよびクライアントをビルドするために、それぞれbuildserver(1)およびbuildclient(1)を使用することに注意してください。これらのコマンドを個別に実行することも、またはmake
機能を使用してアプリケーションを常に最新にしておくこともできます。
ここではmakefile
について説明していますが、クライアント・プログラムとサーバー・プログラムの.c
ファイルも参照しておくことをお薦めします。Oracle Tuxedo /Qと関連して特に重要なことは、tpenqueue
およびtpdequeue
の呼出しです。qspace
およびqname
引数の値に特に注意してください。構成ファイルを確認すると、これらの値の設定元がわかります。
構成ファイルの中で、特に直接関係する3つのエントリとして、TMQUEUE
サーバーのCLOPT
パラメータ、TMQFORWARD
サーバーのCLOPTパラメータ、および*GROUPS
エントリのOPENINFO
パラメータがあります。次のコードは、この3つを抽出したものです。
# First the CLOPT parameter from TMQUEUE:
CLOPT = "-s QSPACENAME:TMQUEUE -- "
# Then the CLOPT parameter from TMQFORWARD:
CLOPT="-- -i 2 -q STRING"
# Finally, the OPENINFO parameter from the QUE1 group:
OPENINFO = "TUXEDO/QM:<APPDIR pathname>/QUE:QSPACE"
TMQUEUE
のCLOPT
パラメータは、サービスの別名としてQSPACENAME
を指定しています。再度client.c
を参照して、tpenqueue
およびtpdequeue
のqspace
引数を確認してください。TMQFORWARD
のCLOPT
パラメータは、-q
オプションを使用してSTRING
サービスを指定しています。これもそのサービス用にメッセージが登録されるキューに指定された名前であり、client.c
にあるtpenqueue
のqname
引数として指定されています。
tmloadcf(1)コマンドは、ASCII形式の構成ファイルをコンパイルしてTUXCONFIG
ファイルを作成するために使用されます。
crlog
のスクリプトは、tmadmin(1)を呼び出して、TLOG
用のデバイス・リスト・エントリを作成し、その後で構成で指定されているサイトのためのログを作成します。キュー機能のすべてのメッセージは、トランザクション内でキューに登録され、キューから取り出されるので、TMS_QM
サーバーによって管理されるトランザクションを追跡するログが必要になります。
crque
のスクリプトは、qmadmin(1)を呼び出して、このサンプル・アプリケーションで使用されるキュー・スペースおよびキューを作成します。キュー・スペースは、QSPACE
という名前になることに注意してください。この名前は、構成ファイルのOPENINFO
パラメータの最後の引数として指定される名前でもあります。STRING
およびRPLYQ
という名前のキューが作成されます。このスクリプトのqspacecreate
部分では、エラー・キューの名前が指定されています。ただし、このスクリプトには、そのキューを作成するqcreate
コマンドは含まれていません。この部分は、必要に応じて後で変更します。
アプリケーション・プログラムを作成し、TUXCONFIG
をロードし、キュー・スペースおよびキューを作成したら、次にアプリケーションを起動して実行します。アプリケーションを起動するには、次のコマンドを実行します。
tmboot -y
-y
オプションは、tmboot
が起動前の確認用プロンプトを表示しないようにします。
サンプル・アプリケーションを実行するには、単に次のコマンドを入力します。
client
アプリケーションを停止するには、tmshutdown
コマンドを使用します。
runsample
スクリプトには、スクリプト実行前の環境に戻すためのコマンドが3つあります。make clean
コマンドでは、make
を使用して、クライアント用とサーバー用のオブジェクト・ファイルと実行可能ファイルを削除します。
rmipc
コマンドは、キュー・スペースのIPCリソースがtmshutdown
を使用しても自動的に削除されないため、使用します。tmshutdownは、アプリケーションで使用されるOracle Tuxedo IPCリソースを削除します。rmipc
を参照すると、rmipcがqmadmin
を呼び出し、qmadminのipcrm
コマンドを使用していることがわかります。その場合、QSPACE
を指定して削除するリソースが識別されています。
このスクリプトの最後のコマンドは、rm
コマンドです。このコマンドは、アプリケーションで生成された数多くのファイルを削除します。これらのファイルが残っていても問題はありません。実際、このサンプル・アプリケーションで作業を続ける場合、tuxconfig
、QUE
、およびTLOG
は再度作成しなくても済むように残しておくと便利です。