28 HCM抽出のフィルタおよび提供

この章の内容は次のとおりです。

抽出モードの使用方法: 説明

「抽出定義の管理」ページでは、抽出を作成して、データを様々なモードで出力できます。モードを使用して、前回の抽出実行後に変更されたデータを抽出します。たとえば、従業員の事業所が変更されるたびに従業員詳細を抽出できます。処理エンジンによって、データの現在のステータスが生成され、データが前回の実行のベースライン済データと比較され、新規と変更が識別されます。変更のみの抽出からの出力には、増分データのみが含まれます。

変更のみの抽出の出力を操作して、特定の属性を(その属性が変更されたかどうかにかかわらず)除外したり含めることができます。たとえば、属性を比較から除外するオプションを選択すると、次の抽出実行の生成済出力に含める変更を識別するときにその属性を比較しないようにすることができます。したがって、属性が前回の抽出実行から変更された場合でも、その属性は出力に含められません。属性が変更されていない場合でも、その属性を抽出実行の生成済出力に常に含めるオプションを選択することもできます。

抽出モード

抽出で様々なモードを有効にするには、CHANGES_ONLYパラメータを含めて、抽出定義のスレッド処理詳細を設定します。抽出の実行時に、CHANGES_ONLYパラメータを使用して抽出モードを制御できます。たとえば、個人のアサイメントでジョブ名が変更されたかどうかを確認するには、アサイメント・レベルでマルチスレッド・データベース・アイテムを設定し、CHANGES_ONLYパラメータを含めます。抽出をATTRIBUTEモードで実行すると、マルチスレッド・レベルからのデータが比較され、増分変更が出力されます。抽出の送信時にモードを選択できるように、PER_EXT_CHANGES_ONLY参照またはORA_HRY_CHANGES_ONLY参照をCHANGES_ONLYパラメータにリンクできます。

次の表では、様々な抽出モードとその参照値および値について説明しています。

モード 参照値 説明

N

すべての属性

抽出にすべてのデータを含めます。完全抽出が実行されると、その時点の完全なデータ出力が生成されます。アーカイブされたデータは、ベースラインとして利用されます。

Y

変更済属性

この抽出実行を前回の抽出実行と比較し、ベースラインとの比較によって(増分データを特定し)、変更されたデータのみを表示します。

ATTRIBUTE

変更済およびマーク済属性

変更または必須とマークされたエレメントを含めます

ATTRIB_OLD

前の値が指定された変更済およびマーク済属性

変更または必須とマークされたエレメントおよびその前の値を表示します

注意: 「US ADP PayForceサードパーティ定期抽出」を使用するたびに、Attrib_Oldモードで給与インタフェースを実行する必要があります。

BLOCK_OLD

スレッド・グループ下にある変更済、マーク済属性、前のデータ

スレッド・データ・グループ下にある次のデータを表示します。

変更済データ

必須とマークされたデータ

前の値

親データ・グループ値

BLOCK

スレッド・グループ下にある変更済、マーク済属性

スレッド・データ・グループ下にある次のデータを表示します。

変更済データ

必須とマークされたデータ

親データ・グループ値

拡張フィルタ基準を使用した抽出のフィルタ: 例

拡張フィルタ基準を使用して、複雑なSQL問合せを使用するデータをフィルタしたり抽出します。式またはFastFormulaを使用してデータをフィルタすることもできます。式を使用する場合、使用可能な演算子だけでは複雑な式を構築できないことがあります。FastFormulaを使用すると、複雑なフィルタ基準を構築できます。ただし、拡張フィルタ基準を使用すると、抽出実行のパフォーマンスが向上する可能性があります。拡張フィルタ基準を使用するには、表の別名およびSQLコンストラクトの作成方法をよく理解する必要があります。

休暇中の従業員の抽出

この例では、拡張フィルタ基準を使用して、次の7日間休暇する従業員を抽出する方法について説明します。マネージャは、この情報を使用して、次の7日間の休暇が承認された従業員のリストを検索できます。

  1. 「HCM抽出定義の管理」ページで、抽出定義を作成し、「レイアウトの切替え」ボタンを使用して専門インタフェースで抽出を開きます。

  2. ナビゲーション・ツリーか「データ・グループ」リンクを選択し、「データ・グループ」ページを開いて「作成」をクリックします。

  3. ユーザー・エンティティPER_EXT_SEC_PERSON_UEを選択し、「拡張」をクリックします。

  4. 「問合せ」タブで、使用するユーザー・エンティティの表と別名をレビューし、「OK」をクリックします。

  5. 「データ・グループ・フィルタ基準」領域で「追加」をクリックします。

  6. 「フィルタ基準」列の「編集」アイコンをクリックします。

  7. 「フィルタ基準条件の編集」ウィンドウで、「抽出個人システムPersonタイプ」がEMPである従業員のみをレビューするために次の式を作成します

  8. 「拡張」をクリックします。基本モードの式がSQLコンストラクト(pptum.system_person_type='EMP')に変換されます

  9. これで、EXISTS句を使用して新しいSQLコンストラクトを追加できるようになりました。次のSQLコンストラクトを入力すると、次の7日間の休暇が承認されている従業員が抽出されます。

    ((pptum.system_person_type='EMP') and EXISTS
    (
    select 1 from fusion.ANC_PER_ABS_ENTRIES abs
    where
    abs.person_id = pptum.person_id and abs.start_datetime between
    pay_report_utils.get_parameter_value_date('EFFECTIVE_DATE') and (pay_report_utils.get_parameter_value_date('EFFECTIVE_DATE')+7)
    and abs.approval_status_cd = 'APPROVED'
    )
    )

    SQL問合せを作成するときに、実行時のパラメータ値を取得する場合は、pay_report_utils.get_parameter_value_date('ESS PARAMETER')関数を使用します。ESSパラメータは、明示的に変更されないかぎり、通常は空白がアンダースコアで置き換えられた大文字のパラメータです。たとえば、Effective DateのESSパラメータはEFFECTIVE_DATEです。

    注意: 2000を超える文字を使用してSQL問合せを作成することはできません。
  10. SQLコンストラクトに構文エラーがないか検証するには、「検証」をクリックします。

  11. 「OK」をクリックします。

  12. 拡張SQL基準が正しく適用されたかどうかを確認するには、GMZFTロギング・モードで抽出を実行し、ログを確認します。

提供オプション: 説明

提供オプションは、抽出定義の一部として指定します。提供オプション・パラメータで、出力形式、提供方法(Eメール、FTP)およびBIパブリッシャ・レイヤーとの統合に必要なその他のパラメータを指定します。

提供オプションの仕組み

HCM抽出は、抽出されたデータを結果表にアーカイブし、XML出力としてデータベースに格納します。アプリケーションは、XML出力をHTML、PDF、EDT、XLSなどのフォーマット済出力に変換します。フォーマット済出力は、抽出定義で設定した提供オプションに応じて、Eメール、FAX、FTPまたは印刷によって提供されます。抽出の提供オプションは、PDF、XLS、XML、DOCなどの提供ファイル出力タイプおよびFTP、Eメール、FAXなどの提供モードを含むBIパブリッシャ・テンプレートを使用して定義できます。

提供タイプの使用方法

選択した提供のタイプによって、抽出の宛先が決まります。提供タイプの中には、追加情報が必要なものもあります。提供モードとして「レコード文書」を選択して、出力をデータベースに格納し、従業員にレコード文書からの出力の表示を許可できます。文書の例として給与明細があります。XML出力が分割されて個別のファイルとしてバーストされている場合は、バースティング・ノードを選択できます。たとえば、すべての従業員にその給与明細を含むEメールを受信させる場合は、バースティング・ノードをEmployee_IDに設定します。「WebCenterコンテンツ」提供タイプを選択して、暗号化されたデータと暗号化されていないデータで抽出を作成し、それをOracle WebCenter Contentに転送します。その後、手動で、または独自のスクリプトを使用してデータを自分のサーバーに転送できます。詳細は、My Oracle Supportの「Oracle Fusionファイル転送の自動化およびデータ・セキュリティ」を参照してください。

BIパブリッシャ・テンプレートの定義: 作業例

この例では、BIパブリッシャ・テンプレートを設定し、抽出済データを使用した必要な形式での文書の作成に使用できるようにする方法を示します。ナビゲータの「レポートおよび分析」リンクを使用して、BIパブリッシャにアクセスします。「レポートおよび分析」ページがアクセス可能な場合は、カタログを参照できます。

FAST銀行は、従業員と部門に関するXMLファイルを、従業員詳細が部門別にグループ化されたヘッドカウント・レポートとして第三者およびHRマネージャに送信する必要があります。

次の表では、いくつかの主な決定事項を要約しています。

考慮する決定事項 この例の場合

BIパブリッシャを設定するのはなぜですか。

BIパブリッシャは、抽出されたXMLデータを必要な形式にフォーマットしたり、レポートまたはビジネス文書を適切な宛先に提供するために設定します。

BIパブリッシャをHCM抽出に接続するには、どうすればよいですか。

Template Builder for Wordプラグインをインストールします。

個別のライセンスは必要ですか。

いいえ。BIパブリッシャはコアHRに付属しています。

タスク

  1. データ・モデルの設定

  2. BIパブリッシャ・レポート・テンプレートの作成

  3. レポートのアップロード

データ・モデルの設定

  1. ナビゲータの「レポートおよび分析」オプションを選択します。

  2. 「カタログの参照」アイコンを選択します。

  3. 「新規」メニュー・オプションを選択し、公開済レポートセクションで「レポート」を選択します。

  4. 既存のデータ・モデルを使用するオプションを選択し、既存のデータ・モデルを使用してレポートを作成します。

  5. 表示されるウィンドウで、データ・モデルを選択し、「次」を選択します。

  6. レポート・エディタオプションを選択し、「終了」を選択してデータ・モデルの設定を完了します。

  7. レポートをHRデータ・レポートとして/Shared Folders/Custom/Human Capital Management/フォルダに保存します

BIパブリッシャ・レポート・テンプレートの作成

  1. BI Publisher Enterpriseのホーム・ページからTemplate Builder for Wordプラグインをインストールします。

    このプラグインは、サンプル文書、デモ、テンプレートおよびテンプレート・ビューアを提供します。これらのサンプルはコンセプトの理解に役立ち、EFTやRTFなどのテンプレートを作成してフォーマット済XML出力を表示できます。

  2. 抽出実行ツリーの「XSDのエクスポート」オプションを使用して、BIパブリッシャ・テンプレートを作成します。

  3. MS Wordを開き、「アド イン」タブ付きリージョンを探して「Oracle BI Publisher」オプションを表示します。

  4. XMLスキーマのロードオプションを選択します。XMLスキーマのロード後、必要に応じてフィールドを配置し、レイアウトを変更します。

レポートのアップロード

  1. レイアウトのアップロードまたは生成リージョンから「アップロード」オプションを選択し、次の情報を入力します。

    パラメータ 詳細

    レイアウト名

    RTFレイアウト

    テンプレート・ファイル

    ローカル・ドライブに保存されているRTFテンプレートのファイル名を選択します。

    タイプ

    RTFテンプレート

    ロケール

    英語(アメリカ)

  2. BIレポートを/Shared Folders/Custom/Human Capital Management/に保存します。

    このBIパブリッシャ・レポート・テンプレートは、抽出定義を作成するときに「提供オプション」セクションで選択できるようになりました。

HCM抽出を使用した暗号化データの提供: 説明

HCM抽出を使用した暗号化ファイルをOracle WebCenter Contentに提供できます。「抽出定義の管理」タスクの「提供」ページで「WebCenterコンテンツ」提供タイプを使用して、暗号化された抽出を作成します。HCM抽出は、暗号化ファイルをOracle WebCenter Contentに転送します。その後、手動でファイルを転送するか、スクリプトを作成して転送を実行できます。「WebCenterコンテンツ」提供タイプを選択すると、追加詳細を入力して、抽出をOracle WebCenter Contentで識別可能にすることができます。たとえば、統合名を指定し、暗号化モードを使用してファイルを暗号化するかどうか、および参照用のファイル名を選択します。この追加設定により、文書は正しい暗号化モードになり、特定のファイル名でOracle WebCenter Contentに保存されます。詳細は、My Oracle Supportの「Oracle Fusionファイル転送の自動化およびデータ・セキュリティ」を参照してください。

HCM抽出のフィルタおよび提供に関するFAQ

抽出するレコードを制限するには、どうすればよいですか。

抽出データ・グループ基準を使用して、アプリケーションが抽出データ・グループに対して実行する一連のフィルタリング条件を定義できます。たとえば、FastFormulaでデータベース・アイテムを使用してper_addresses表のtown_or_city列とprimary_flag列を表し、データをロンドンに住んでいる個人のみに制限できます。次に、抽出定義で、プライマリ住所がロンドン以外の個人を除外します。基準条件は、式またはFastFormulaを使用して指定できます。

スレッド・データベース・アイテムとは何ですか。

スレッド・データベース・アイテムは、「変更のみ」機能を実装するために必要です。スレッド・データベース・アイテムは、選択されたユーザー・エンティティ内の一意のIDです。通常、Pay Employeeユーザー・エンティティとアサイメント・ユーザー・エンティティでは、%ASSIGNMENT%IDを含むDBIです。Personユーザー・エンティティの場合は、パターン%PERSON%IDを含むDBIです。ルート・データ・グループまたは子データ・グループ・レベルで1つのスレッド・データベース・アイテムを宣言できます。たとえば、変更のみが必要な場所からスレッド・データベース・アイテムを宣言します。

条件付き処理とは何ですか。

条件付き処理は、条件付き式または事前定義済FastFormulaの結果に基づいて、実行する処理、および必要に応じてメッセージを識別します。条件付き処理は、抽出前に適用される基準条件と同様に、抽出済データに適用されます。処理およびメッセージは参照に事前定義されていますが、参照に新規値を作成すると、独自のメッセージを追加できます。

条件が満たされると、この機能を使用して特定の事前定義済処理を実行できます。たとえば、事前定義済の国から来たすべての従業員など、条件を満たす従業員を除外できます。従業員の給与がブランクまたは特定のレベルを超えている場合に警告を発行するようにこの機能を構成することもできます。

除外ルールとは何ですか。

除外ルールを使用して、要件に合わないレコードを除外したり、独自のレコードで上書きすることはできません。抽出プロセスでは、除外されたレコードを国別仕様データ・グループに基づいて処理しません。

抽出データ・グループのフィルタとは何ですか。

抽出データ・グループのフィルタでは、データ・グループ内の抽出されたデータをフィルタします。データ・グループを式またはFastFormulaでフィルタするように指定でき、その一方または両方を選択できます。使用可能なデータベース・アイテム、パラメータおよび演算子(条件および論理)を使用して基準を構築できます。フィルタ基準は、実行時にユーザー・エンティティSQLに追加するとより効率的になります。基準を式として指定できない場合は、FastFormula内にロジックを配置し、そこで選択できます。FastFormulaはYまたはNの値を戻して、レコードを抽出する必要があるかどうかを示します。基準とFormulaの両方を指定した場合は、両方の条件が適用されます。

抽出データ・グループ基準とは何ですか。

データ・グループ基準を使用して、アーカイブするデータのフィルタ条件を指定できます。フィルタ条件は、式またはFastFormulaとして指定できます。

HCM抽出とともにOracle Fusion Transactional Business Intelligence (OTBI)を使用できますか。

はい。次の2つの方法があります。

HCM抽出では、データを抽出し、CSV、XMLまたはPDFを使用して出力を生成できます。その後、OTBIはExcelまたはXML形式のデータ・ソースを受け入れることができます。

BIパブリッシャでもExcelまたはXML形式のデータ・ソースを受け入れることができます。HCM出力はBIパブリッシャと統合されます。

BIパブリッシャとはどのようなもので、HCM抽出とどのように連携しますか。

BIパブリッシャは、データ・モデルに基づいて高度にフォーマットされたレポートを作成するために使用する一連のツールです。BIパブリッシャでは、次のことができます。

  • 文書の作成、管理および提供

  • 対話型管理レポートの作成

  • 高度にフォーマットされた対顧客文書の作成

  • 政府文書の作成

  • 電子送金(EFT)文書の作成

BIパブリッシャは、抽出されたデータをデータベースから変換し、そのデータをレポートに表示します。

抽出出力のサイズを減らすには、どうすればよいですか。

提供タブで、「圧縮」オプションを「はい」に設定します。圧縮機能は、「WebCenterコンテンツ」提供オプションでのみ使用できます。この機能は、圧縮された出力を抽出し、大規模なファイルの転送、アップロードおよびダウンロードの高速化に役立ちます。抽出出力の圧縮では、使用されるディスク容量も少なくなります。

抽出を正常に実行するには、すべての提供オプションが完了する必要がありますか。

いいえ。「抽出提供オプション」表の「必須」オプションを使用して、抽出実行が成功するために正常に実行する必要がある提供オプションを指定します。たとえば、給与分割などの重要な提供オプションには「必須」オプションを使用します。この提供オプションが失敗すると、抽出実行も失敗します。これは、抽出実行が、この提供オプションの正常な完了に依存するためです。

また、抽出を正常に実行するためには重要ではないと考えられる任意の提供オプションに、「必須」オプションを使用することもできます。たとえば、自分自身へのEメール通知などの提供オプションについて、「必須」オプションの選択を解除します。この提供オプションが失敗しても、抽出実行は正常に完了します。これは、抽出実行が、この提供オプションに依存しないためです。