Oracle ASMでは、投票ファイルは、格納されている他のファイルとは異なる方法で管理されます。投票ファイルをOracle ASMに格納するようにすると、Oracle ASMは、選択したディスク・グループにクラスタのすべての投票ファイルを格納します。Oracle ASMに格納される投票ファイルとOracle ASMに格納されない投票ファイルは、同じクラスタ内で使用できません。
Oracle ASMで投票ファイルを構成した後、投票ファイルの構成に変更を加えることができるのは、crsctl replace votedisk
コマンドを使用する場合のみです。これは、作業投票ファイルがない場合にもあてはまります。crsctl query css votedisk
によって使用中の投票ディスクがないと報告されても、Oracle ClusterwareはOracle ASMが使用中だったことを記憶しているため、replace
が必要になります。replace
を使用して、Oracle ASM以外の記憶域に投票ファイルを移動した後でのみ、add css votedisk
およびdelete css votedisk
が再び使用可能になります。
特定のOracle ASMディスク・グループに格納できる投票ファイルの数は、ディスク・グループの冗長性に依存します。
デフォルトでは、Oracle ASMが、ディスク・グループ内のそれ自体の障害グループに各投票ファイルを配置します。障害グループは、ディスク・グループ内のディスクのサブセットです。障害グループは、あるディスクに障害が発生し、コンポーネントを共有する他のディスクにも障害が発生した場合などに、コンポーネントを共有するディスクを定義します。障害グループとして定義する可能性のある対象の例として、同じSCSIコントローラを共有しているSCSIディスク・セットがあります。障害グループは、冗長データの格納に使用するOracle ASMディスクを決定するために使用されます。たとえば、ファイルに2方向のミラー化が指定されている場合、ファイル・エクステントの冗長コピーは別の障害グループに格納される必要があります。
Oracle ASMディスク・グループに選択した冗長レベルによって、Oracle ASMでディスク・グループ内のファイルをミラー化する方法および必要となるディスク数とディスク領域が決まります。投票ファイルがディスク・グループにある場合、Oracle Clusterwareファイル(OCRおよび投票ファイル)があるディスク・グループの障害グループの最小数は、投票ファイルが定数障害グループに格納されているため、他のディスク・グループよりも多くなります。
クォーラム障害グループは特殊なタイプの障害グループで、Oracle Clusterware投票ファイルを格納するために使用されます。定数障害グループは、指定した障害グループの定数が使用可能であることを確認するために使用されます。Oracle ASMでOracle Clusterwareファイルが含まれるディスク・グループがマウントされるときに、1つ以上の障害グループが失われた場合にこのディスク・グループをマウントできるかどうかを判別するために、クォーラム障害グループが使用されます。定数障害グループ内のディスクにはユーザー・データが含まれないため、ユーザー・データを格納するための冗長性要件を決定するときには、このグループは考慮されません。
冗長性レベルには次のものがあります。
外部冗長: 外部冗長ディスク・グループでは、最小で1台のディスク・デバイスが必要です。外部冗長のディスク・グループで有効なディスク領域は、全デバイスのディスク領域の合計です。
Oracle ASMは外部冗長ディスク・グループ内のデータをミラー化しないため、RAIDなどのストレージ・デバイスによる外部冗長を使用するか、または独自のデータ保護メカニズムを持つ類似デバイスを使用することをお薦めします。
標準冗長: 標準冗長ディスク・グループでは、最小で2台のディスク・デバイス(または2つの障害グループ)が必要です。標準冗長のディスク・グループで有効なディスク領域は、すべてのデバイスのディスク領域の合計の半分です。
Oracle Clusterwareファイルの場合、標準冗長のディスク・グループは最小で3台のディスク・デバイス(3台のうち2台は障害グループにより使用され、3台すべてがクォーラム障害グループにより使用されます)を必要とし、3つの投票ファイル、1つのOCRおよびOCRのミラーを提供します。標準冗長のディスク・グループを使用すると、クラスタは障害グループを1つ失っても存続できます。
高冗長: 高冗長ディスク・グループでは、Oracle ASMはデフォルトで3方向のミラー化を使用してパフォーマンスを向上させ、最高レベルの信頼性を提供します。高冗長ディスク・グループでは、最小で3台のディスク・デバイス(または3つの障害グループ)が必要です。高冗長のディスク・グループで有効なディスク領域は、全デバイスのディスク領域の合計の3分の1です。
Oracle Clusterwareファイルの場合、高冗長ディスク・グループは最小で5台のディスク・デバイス(5台のうち3台は障害グループにより使用され、5台すべてがクォーラム障害グループにより使用されます)を必要とし、5つの投票ファイル、1つのOCRおよび2つのOCRミラーを提供します。高冗長のクラスタは、障害グループを2つ失っても存続できます。
crsctl replace votedisk
コマンドを使用すると、特定の投票ファイル・セットを、あるOracle ASMディスク・グループから別のOracle ASMディスク・グループに、または動作保証されているファイル・システムに移動できます。あるOracle ASMディスク・グループから別のOracle ASMディスク・グループに投票ファイルを移動する場合は、以前のディスク・グループとは異なる冗長レベルのディスク・グループに投票ファイルを配置することで、投票ファイルの数を変更できます。
注意:
1つのディスク・グループで、投票ファイルの数を直接変更することはできません。
Oracle ASMではディスク・グループの冗長性レベルに従って投票ファイルの数が管理されるため、 Oracle ASMディスク・グループに格納されている投票ファイルに対してcrsctl add | delete votedisk
コマンドを使用することはできません。
投票ファイルがOracle ASMディスク・グループに格納されている場合は、クラスタ・ファイル・システムに投票ファイルを追加できません。Oracle ASM、および同じクラスタのクラスタ・ファイル・システム上に直接、投票ファイルを同時に格納することはサポートされていません。
関連項目:
ディスク・グループの冗長性の詳細は、『Oracle Automatic Storage Management管理者ガイド』を参照してください。
投票ファイルの移行の詳細は、「投票ファイルの追加、削除または移行」を参照してください。