この付録では、レスポンス・ファイルを使用してOracle製品をインストールおよび構成する方法について説明します。内容は次のとおりです。
インストーラの起動時にレスポンス・ファイルを使用して、Oracleソフトウェアのインストールと構成を完全にまたは部分的に自動実行できます。インストーラはレスポンス・ファイルに含まれる値を使用して、一部またはすべてのインストール・プロンプトに応答します。
通常、インストーラは対話型で、つまりグラフィカル・ユーザー・インタフェース(GUI)画面で情報の入力を求めながら動作します。この情報をレスポンス・ファイルで提供する場合は、次のいずれかのモードで、コマンド・プロンプトからインストーラを起動します。
レスポンス・ファイルにすべてのプロンプトへの応答を含め、インストーラの起動時に-silent
オプションを指定すると、インストーラはサイレント・モードで動作します。サイレント・モードでのインストール中、インストーラは画面上に何も表示しません。かわりに、起動に使用した端末上に進捗情報を表示します。
レスポンス・ファイルに一部またはすべてのプロンプトへの応答を含めて、-silent
オプションを指定しないと、インストーラはレスポンス・ファイル・モードで動作します。レスポンス・ファイル・モードでのインストール中は、レスポンス・ファイルで情報を指定した画面も、レスポンス・ファイルに必要な情報を指定しなかった画面も含めて、インストーラはすべての画面を表示します。
サイレント・モードまたはレスポンス・ファイル・モードでインストールするための設定は、レスポンス・ファイルにリストされた変数に値を入力して定義します。たとえば、Oracleホームの名前を指定するには、次のように、ORACLE_HOME
変数に適切な値を入力します。
ORACLE_HOME="OraDBHome1"
レスポンス・ファイルの変数設定を指定するもう1つの方法は、インストーラの起動時にコマンドライン引数として渡す方法です。次に例を示します。
-silent "ORACLE_HOME=OraDBHome1" ...
レスポンス・ファイルを使用する場合は、レスポンス・ファイルを手動で編集してパスワードの値を入力する必要があることに注意してください。システム・セキュリティを保護する場合は、レスポンス・ファイルにパスワードを保存できません。
関連項目: レスポンス・ファイルの詳細は、『Oracle Universal InstallerおよびOpatchユーザーズ・ガイドfor Microsoft Windows and UNIX Systems』を参照してください。 |
次の表に、インストーラをサイレント・モードまたはレスポンス・ファイル・モードで実行する場合の例を示します。
次に、インストーラをサイレント・モードまたはレスポンス・ファイル・モードで使用して、Oracle製品をインストールし構成する一般的な手順を示します。
注意: インストーラをサイレント・モードまたはレスポンス・ファイル・モードで実行する前に、必要なインストール前の手順をすべて終了しておく必要があります。 |
レスポンス・ファイルを準備します。
インストーラをサイレント・モードまたはレスポンス・ファイル・モードで実行します。
ソフトウェアのみのインストールを終了したら、次にNet Configuration AssistantおよびDatabase Configuration Assistantをサイレント・モードまたはレスポンス・ファイル・モードで実行します。
この手順については、次の項で説明します。
この項では、レスポンス・ファイルを準備して、サイレント・モードまたはレスポンス・ファイル・モードのインストールで使用する、次の方法について説明します。
Oracleでは、各製品およびインストール・タイプと各構成ツールに対応する、レスポンス・ファイルのテンプレートを提供しています。ファイルは、インストール・メディアのdatabase/response
ディレクトリに格納されています。
注意: ソフトウェアをハード・ディスクにコピーした場合、レスポンス・ファイルは/response ディレクトリにあります。 |
表C-1に、このソフトウェアに付属するレスポンス・ファイルを示します。
表C-1 Oracle Databaseのレスポンス・ファイル
レスポンス・ファイル | 説明 |
---|---|
Oracle Database 11g のサイレント・インストール |
|
Database Configuration Assistantのサイレント・インストール |
|
Oracle Net Configuration Assistantのサイレント・インストール |
表C-2 Oracle Grid Infrastructureのレスポンス・ファイル
レスポンス・ファイル | 説明 |
---|---|
Oracle Grid Infrastructureインストール環境のサイレント・インストール |
注意: レスポンス・ファイル・テンプレートを変更し、保存して使用する場合、レスポンス・ファイルに暗号化されていないパスワードが含まれている場合があります。レスポンス・ファイルの所有者はOracleソフトウェア・インストール所有者のみとし、レスポンス・ファイルの権限を600に変更してください。データベース管理者またはその他の管理者には、使用していないレスポンス・ファイルを削除または保護することをお薦めします。 |
レスポンス・ファイルをコピーして変更するには、次の手順を実行します。
レスポンス・ファイル・ディレクトリからシステム上のディレクトリに、レスポンス・ファイルをコピーします。
$ cp /directory_path/response/response_file.rsp local_directory
この例では、directory_path
はインストール・メディアのdatabase
ディレクトリのパスです。ソフトウェアをハード・ドライブにコピーしている場合は、response
ディレクトリ内のファイルを編集することも可能です。
テキスト・エディタでレスポンス・ファイルを開きます。
$ vi /local_dir/response_file.rsp
関連項目: レスポンス・ファイルの作成方法の詳細は、Oracle Universal Installer NextGenインストレーション・ガイドを参照してください。 |
レスポンス・ファイル内のパラメータを確認し、クラスタ用の値を入力します。
注意: レスポンス・ファイルを正しく構成しないと、インストーラまたはコンフィギュレーション・アシスタントが失敗します。 |
ファイルの権限を600に変更します。
$ chmod 600 /local_dir/response_file.rsp
注意: Oracle Databaseのインストールに必要なすべての項目を指定したレスポンス・ファイルには、データベース管理アカウント用のパスワードと、OSDBAグループのメンバーであるユーザー用のパスワード(自動バックアップに必要)が含まれています。Oracleソフトウェア所有者であるユーザーのみがレスポンス・ファイルを参照または変更できるようにするか、インストールの正常終了後にレスポンス・ファイルを削除することを検討してください。 |
インストーラを対話モードで使用してレスポンス・ファイルに記録し、このファイルを編集して完全なサイレント・モードまたはレスポンス・ファイル・モードのインストールに使用できます。この方法は、カスタム・インストールまたはソフトウェアのみのインストールに役立ちます。
Oracle Database 11g リリース2(11.2)以降では、「サマリー」ページで「レスポンス・ファイルの保存」をクリックすると、インストール中のすべてのインストール手順をレスポンス・ファイルに保存できます。生成されたレスポンス・ファイルは、後でサイレント・インストールに使用できます。
レスポンス・ファイルを記録する際は、インストールを最後まで実行することも、またはシステムにソフトウェアをコピーする前に「サマリー」ページで終了することもできます。
レスポンス・ファイル・モードのインストール中に記録モードを使用すると、インストーラは元のレスポンス・ファイルに指定されていた変数値を新しいレスポンス・ファイルに記録します。
注意: Oracle Universal Installer(OUI)は、レスポンス・ファイルでパスワードを記録しません。 |
レスポンス・ファイルを記録するには、次の手順を実行します。
通常のインストールと同様にインストール前の作業を実行します。
Oracle Grid Infrastructureソフトウェア所有者ユーザー(通常はgrid
)が、インストーラ実行時に指定するGridホームのパスに対して作成または書込みの権限を持っていることを確認します。
インストールの各画面で、必要な情報を指定します。
インストーラの「サマリー」画面が表示されたら、次の手順を実行します。
「レスポンス・ファイルの保存」をクリックして、値をレスポンス・ファイルに保存するためのファイル名と場所を指定し、「保存」をクリックします。
レスポンス・ファイルを作成してインストールを継続するには、「終了」をクリックします。
レスポンス・ファイルを作成するだけでインストールを継続しない場合は、「レスポンス・ファイルの保存」および「取消」をクリックします。インストールは中断されますが、入力した設定はレスポンス・ファイルに記録されます。
保存したレスポンス・ファイルを別のシステムで使用する前に、ファイルを編集して必要な変更を加えます。
レスポンス・ファイル内のパラメータを確認し、クラスタ用の値を入力します。
コマンドラインでOracle Universal Installerを実行し、作成したレスポンス・ファイルを指定します。Oracle Universal Installerの実行可能ファイルrunInstaller
では、いくつかのオプションを使用できます。すべてのオプションのヘルプ情報を参照するには、runInstaller
コマンドで-help
オプションを指定します。次に例を示します。
$ directory_path/runInstaller -help
ウィンドウにヘルプ情報が表示されます。
レスポンス・ファイルを使用してインストーラを実行するには、次の手順を実行します。
通常のインストールと同様にインストール前の作業を実行します。
ソフトウェア・インストール所有者ユーザーとしてログインします。
レスポンス・ファイル・モードでインストールを実行する場合は、インストールを実行するユーザーのオペレーティング・システムのDISPLAY
環境変数を設定します。
注意: サイレント・モードでインストールを実行する場合は、DISPLAY 環境変数を設定する必要はありません。 |
コマンドを次のように入力して、サイレント・モードまたはレスポンス・ファイル・モードでインストーラを起動します。
$ /directory_path/runInstaller [-silent] [-noconfig] \ -responseFile responsefilename
注意: レスポンス・ファイルのパスを相対パスで指定しないでください。相対パスを指定すると、インストーラが失敗します。 |
この例の意味は次のとおりです。
インストールが完了したら、root
ユーザーとしてログインし、orainstRoot.sh
およびroot.sh
スクリプトを実行します。次に例を示します。
$ su root
password:
# /oracle_home_path/orainstRoot.sh
サイレント・モードでNet Configuration Assistantを実行して、システム上でOracle Net Listenerを構成して起動し、ネーミング・メソッドを構成し、Oracleネット・サービス名を構成できます。Net Configuration Assistantをサイレント・モードで実行するには、レスポンス・ファイル・テンプレートをコピーして編集する必要があります。Oracleでは、DVD上のdatabase
/response
ディレクトリのresponse
ディレクトリで、netca.rsp
という名前のレスポンス・ファイル・テンプレートを提供しています。
注意: ソフトウェアをハード・ディスクにコピーした場合、レスポンス・ファイル・テンプレートはdatabase/response ディレクトリに格納されています。 |
レスポンス・ファイルを使用してNet Configuration Assistantを実行するには、次の手順を実行します。
レスポンス・ファイル・テンプレートnetca.rsp
を、レスポンス・ファイルのディレクトリから使用するシステムのディレクトリへコピーします。
$ cp /directory_path/response/netca.rsp local_directory
この例では、directory_path
はDVDのdatabase
ディレクトリのパスです。ソフトウェアをハード・ドライブにコピーしている場合は、response
ディレクトリ内のファイルを編集することも可能です。
テキスト・エディタでレスポンス・ファイルを開きます。
$ vi /local_dir/netca.rsp
レスポンス・ファイル内のパラメータを確認し、クラスタ用の値を入力します。
注意: レスポンス・ファイルを正しく構成しないと、Net Configuration Assistantが失敗します。 |
Oracleソフトウェア所有者ユーザーとしてログインし、そのオーナーのオペレーティング・システムのORACLE_HOME
環境変数を設定して、正しいOracleホーム・ディレクトリを指定します。
次のようなコマンドを入力して、Net Configuration Assistantをサイレント・モードで実行します。
$ $ORACLE_HOME/bin/netca -silent -responsefile /local_dir/netca.rsp
この例の意味は次のとおりです。
-silent
オプションは、Net Configuration Assistantをサイレント・モードで実行することを意味します。
local_dir
は、netca.rsp
レスポンス・ファイル・テンプレートのコピー先ディレクトリのフルパスです。
Oracleソフトウェアのインストール後にレスポンス・ファイルによる構成を作成して実行するには、次の項の手順を使用します。
サイレント・モードまたはレスポンス・ファイル・モードでのインストールを実行する場合は、使用するサーバーについての情報をレスポンス・ファイルに指定します。指定しない情報は、グラフィカル・ユーザー・インタフェースによるインストール中に手動で入力します。ただし、レスポンス・ファイルには、ソフトウェアのインストール後にコンフィギュレーション・アシスタントから要求されるユーザー・アカウントのパスワードは含まれていません。コンフィギュレーション・アシスタントは、configToolAllCommands
というスクリプトによって起動されます。パスワード・レスポンス・ファイルを作成して使用すると、このスクリプトをレスポンス・ファイル・モードで実行できます。スクリプトはこのパスワードを使用して、構成が完了するまで連続的に構成ツールを実行します。
クローン・インストール用にこのパスワード・ファイルを保持する場合は、セキュアな場所に保存することをお薦めします。また、エラーを解決するためにインストールを中断する必要がある場合も、configToolAllCommands
およびパスワード・レスポンス・ファイルを使用して、コンフィギュレーション・アシスタントを実行できます。
configToolAllCommands
パスワード・レスポンス・ファイルには、次の構文オプションがあります。
internal_component_nameは、コンフィギュレーション・アシスタントで構成するコンポーネントの名前です。
variable_nameは、構成ファイルの変数の名前です。
valueは、構成に使用する値です。
コマンド構文は次のとおりです。
internal_component_name|variable_name=value
次に例を示します。
oracle.assistants.asm|S_ASMPASSWORD=welcome
パスワード・レスポンス・ファイルのセキュリティは、次の方法で維持することをお薦めします。
レスポンス・ファイルの権限を600に設定します。
レスポンス・ファイルの所有者をインストール所有者ユーザーにして、グループは中央インベントリ(oraInventory)グループに設定します。
configToolAllCommands
スクリプトを使用してコンフィギュレーション・アシスタントを実行するには、次の手順を実行します。
構文filename.propertiesを使用してレスポンス・ファイルを作成します。次に例を示します。
$ touch cfgrsp.properties
テキスト・エディタでこのファイルを開き、パスワード・テンプレートを切り取って貼り付け、必要に応じて変更します。
例C-1 クラスタ用Oracle Grid Infrastructureインストールのパスワード・レスポンス・ファイル
Oracle Grid Infrastructureには、Oracle Automatic Storage Management Configuration Assistant (ASMCA)のパスワードが必要です。また、BMCカードがある場合にその機能を有効にするには、Intelligent Platform Management Interface Configuration Assistant(IPMICA)のパスワードが必要になります。この場合、次のレスポンス・ファイルを使用します。
oracle.assistants.asm|S_ASMPASSWORD=password oracle.assistants.asm|S_ASMMONITORPASSWORD=password oracle.crs|S_BMCPASSWORD=password
BMCカードがない場合、またはIPMIを有効にしない場合は、S_BMCPASSWORD入力フィールドを空白のままにしておきます。
注意: Oracle ASM 11gリリース1以前のリリースをアップグレードする場合は、oracle.assistants.asm|S_ASMMONITORPASSWORD の入力フィールドのみ指定する必要があります。 |
例C-2 Oracle Real Application Clustersのパスワード・レスポンス・ファイル
Oracle Databaseの構成には、Database Configuration Assistant (DBCA)で使用するSYS、SYSTEM、DBSNMPのパスワードが必要です。S_ASMSNMPPASSWORD変数には、データベースでOracle ASMを記憶域に使用している場合のみ文字列を入力します。また、S_PDBADMINPASSWORD変数への文字列の指定は、1つ以上のプラガブル・データベース(PDB)を含むマルチテナント・コンテナ・データベース(CDB)を作成する場合にのみ必要です。また、S_EMADMINPASSWORD変数には、Oracle Enterprise Manager Cloud Controlを構成するよう選択した場合、次のようにOracleソフトウェアのインストール所有者のパスワードを指定します(ここで、password
句はパスワードの文字列を指します)。
oracle.assistants.server|S_SYSPASSWORD=password oracle.assistants.server|S_SYSTEMPASSWORD=password oracle.assistants.server|S_DBSNMPPASSWORD=password oracle.assistants.server|S_PDBADMINPASSWORD=password oracle.assistants.server|S_EMADMINPASSWORD=password oracle.assistants.server|S_ASMSNMPPASSWORD=password
Oracle ASM用にOracle Enterprise Managerを有効にしない場合、これらのパスワード・フィールドは空白のままにします。
権限を変更してファイルを保護します。次に例を示します。
$ ls -al cfgrsp.properties -rw------- 1 oracle oinstall 0 Apr 30 17:30 cfgrsp
$ORACLE_HOME/cfgtoollogs
に移動し、次の構文を使用して構成スクリプトを実行します。
configToolAllCommands RESPONSE_FILE=/path/name.properties
次に例を示します。
$ ./configToolAllCommands RESPONSE_FILE=/home/oracle/cfgrsp.properties