Oracle Real Application Clusters(Oracle RAC)を使用すると、Oracle Databaseをサーバーのクラスタ全体に実行することが可能になり、アプリケーションを変更せずにフォルト・トレランス、パフォーマンスおよびスケーラビリティを向上できます。
Oracle RACでは、単一サーバーでのシングル・ポイント障害を取り除くことによって、アプリケーションの高可用性が提供されます。
このガイドは、Oracle Real Application Clusters(Oracle RAC)データベース管理のためのタスク指向のマニュアルです。
このマニュアルでは、Oracle ClusterwareおよびOracle RACの環境を構成および管理する方法を示します。このマニュアルに示す管理の手順および例では、オペレーティング・システムがOracle Linuxであることを前提としています。手順および例では、このマニュアルの目的に合わせて、2ノードのクラスタを使用します。
このマニュアルは、基本的なトラブルシューティング、パフォーマンスの監視、バックアップおよびリカバリ作業の実行など、Oracle RAC環境のインストールおよび保守に必要な基本的な手順の理解を目的としています。このマニュアルでは、Oracle Linuxをベースに説明しますが、このマニュアルの使用にあたっては、Linuxに精通している必要はありません。
『Oracle Database 2日でReal Application Clustersガイド』は、Oracle Real Application Clusters (Oracle RAC)について包括的に説明するものではありません。概念は、特定のタスクの完了に必要な場合にのみ説明しています。
参照:
Oracle RACの概念の詳細は、Oracle Real Application Clusters管理およびデプロイメント・ガイドを参照してください。
Oracle Database 2日でReal Application Clustersガイドは、Oracle Databaseを管理するための一連の包括的な学習教材の一部です。
学習教材には、Oracle Technology Networkで利用できる2日でデータベース管理者のOracle by Example (OBE)シリーズやOracle Universityのインストラクタが指導するクラスが含まれます。OBEシリーズには、Webブラウザを使用して表示するアニメーション・デモも含まれます。
Oracle DatabaseおよびOracle RACのOBEの内容は、次のWebサイトで確認できます。
『Oracle Database 2日でReal Application Clustersガイド』では、Oracle Real Application Clusters (Oracle RAC)およびOracle Clusterwareをインストール、構成および管理する方法について説明しています。
このガイドには、Oracle Linuxオペレーティング・システムを使用して2ノード・クラスタにOracle RACをデプロイできる方法について、例が示されています。Oracle Linuxは、ソースとバイナリの両方でRed Hat Enterprise Linuxと完全な互換性があります。これには、Red Hatディストリビューションと同じソース・コードで同じバージョン・レベルの同一パッケージ・セットが含まれます。
このマニュアルは、単一インスタンスのOracle環境での作業経験があり、Oracle Database 2日でデータベース管理者をすでに読んでいるDBAを対象としています。
オラクル社はOracle Real Application Clusters (Oracle RAC)に関する一連の包括的なドキュメントを提供しています。
有効な関連ドキュメントを次に示します。
Oracle Clusterware管理およびデプロイメント・ガイド
『Oracle Real Application Clustersインストレーション・ガイドfor Linux and UNIX Systems』(またはその他のオペレーティング・システム)
『Oracle Grid Infrastructureインストレーションおよびアップグレード・ガイドfor Linux』(または他のオペレーティング・システム)
注意:
今回のリリースに関する追加情報は、Oracle Database 12cリリース1 (12.1)の『Oracle Databaseプラットフォーム共通日本語README』または『Oracle Databaseリリース・ノート for Linux』を参照してください。これらのドキュメントは、Oracle製品のインストール・メディアまたはOracle Technology NetworkのWebサイトで確認できます。
『Oracle Database 2日でデータベース管理者』の他にも、DBAタスクの実行時に参照する多数のマニュアルがあります。
このマニュアルでは、Oracleドキュメント・ライブラリの次のマニュアルも参照されています。
Oracle Automatic Storage Management管理者ガイド
Oracle Database概要
Oracle Database管理者ガイド
Oracle Database Net Services管理者ガイド
Oracle Databaseの管理者リファレンス
Oracle Databaseライセンス情報
Oracle Databaseリファレンス
『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・アドバンスト・ユーザーズ・ガイド』
Oracle Database 2日でパフォーマンス・チューニング・ガイド
Oracle Databaseパフォーマンス・チューニング・ガイド
Oracle Universal Installer (OUI)ユーザーズ・ガイド
Oracle Databaseアップグレード・ガイド
この結合した製品のインストールは、クラスタ用Oracle Grid Infrastructureと呼ばれます。Oracle ClusterwareおよびOracle ASMは、これまでどおり個別の製品であり、それぞれの名前で呼ばれます。
Oracle ClusterwareとOracle ASMはGridホームと呼ばれる同じホーム・ディレクトリにインストールされます。
Oracle Clusterwareによって、複数のサーバー(ホストまたはノードと呼ばれる)が、1つのサーバー(通常、クラスタと呼ばれる)であるかのように動作できます。これらのサーバーはスタンドアロン・サーバーですが、各サーバーには他のサーバーと通信する追加のプロセスがあります。これにより、アプリケーションおよびエンド・ユーザー側からは、個別のサーバーが1つのサーバーのように見えます。Oracle Clusterwareによって、Oracle RACを実行するためのインフラストラクチャが提供されます。複数のサーバーの処理能力を結合することによって、単一サーバーの場合よりも可用性、スループットおよびスケーラビリティを向上させることができます。
リソース管理を向上させるために、クラスタ内のノードをサーバー・プールに編成できます。各サーバー・プールには、次のプロパティがあります。
サーバー・プール内に含める必要のある最小ノード数
サーバー・プール内に含めることができる最大ノード数
他のサーバー・プールに対するこのサーバー・プールの相対的重要度
クラスタ用Oracle Grid Infrastructureのインストール時に、デフォルトのサーバー・プール(空きプールと呼ばれる)が自動的に作成されます。新規インストールのすべてのサーバーは、最初、空きサーバー・プールに割り当てられます。新しいサーバー・プールを作成した場合、サーバーは空きプールから新しいサーバー・プールに自動的に移動します。
ポリシー管理データベースとしてOracle RACデータベースを作成する場合は、データベースに必要なサーバーの数を指定すると、そのデータベースに対して1つのサーバー・プールが自動的に作成されます。Oracle Clusterwareでは、このサーバー・プールに使用可能なサーバーを含めます。サーバー・プールを使用しない場合は、管理者管理型のデータベースを作成できます。
注意:
このガイドでは管理者管理型のOracle RACデータベースのみの作成および管理について説明します。
参照:
Oracle Real Application Clusters管理およびデプロイメント・ガイド
Oracle Clusterware管理およびデプロイメント・ガイド
Oracle Automatic Storage Management (Oracle ASM)は、統合された高パフォーマンスのボリューム・マネージャおよびファイル・システムです。
Oracle ASMでは、Oracle Clusterware OCRおよび投票ディスク・ファイルの格納をサポートして、Oracle Automatic Storage Managementクラスタ・ファイル・システム(Oracle ACFS)と呼ばれる汎用クラスタ・ファイル・システムも提供します。Oracle ASMでは、管理者を必要とせずにデータベースで記憶域の管理を行うことを原則としています。Oracle ASMにより、場合によっては数千もの数になるOracle Databaseファイルを直接管理することが不要になります。
Oracle ASMは、ストレージ・システムにある複数のディスクを1つ以上のディスク・グループにグループ化します。ユーザーはわずかな数のディスク・グループ・セットを管理し、Oracle ASMはこれらのディスク・グループ内でのデータベース・ファイルの配置を自動化します。
Oracle Cluster Registry (OCR)と投票ディスクは、Oracle ASMディスク・グループ上に配置することもできます。Oracle Real Application Clusters(Oracle RAC)を使用するときには、各インスタンスがOracle RACデータベース用のデータ・ファイルとリカバリ・ファイルにアクセスできる必要があります。Oracle ASMを使用すると、この要件を簡単に満たすことができます。
次の図では、Oracle ASMに格納された標準の冗長性のディスク・グループに、Oracle Clusterwareの投票ディスクおよびOCRファイルを格納するための3つの障害グループ(3つのディスクとして表示されている)があります。投票ディスクには、現在どのノードがクラスタ・メンバーであるかが記録されるため、2ノード・クラスタの場合には少なくとも3つの投票ディスクが必要です。Oracle ASMディスク・グループに投票ディスクとOCRファイルが含まれない場合は、2つの障害グループのみで通常の冗長性のディスク・グループを構成することができます。
図1-1 Oracle ASMディスク・グループに格納されているOracle Clusterwareファイル
関連トピック
Oracle ASMは、データ記憶域を少数のディスク・グループに統合することで、データベース記憶域の管理にまつわるオーバーヘッドを低減します。Oracle ASMディスク・グループには、多くの付加的なメリットがあります。
Oracle ASMを使用すると、次のメリットがあります。
ストライプ化: Oracle ASMは、ディスク・グループ内のすべてのディスクにデータを均等に分散して、パフォーマンスと使用率を最適化します。このようにデータベース・ファイルを均等に分散することにより、定期的な監視およびI/Oパフォーマンス・チューニングが不要になります。
ミラー化: Oracle ASMは、オプションでファイルをミラー化することにより、データの可用性を高めています。Oracle ASMは、ディスク・レベルでミラー化するオペレーティング・システムのミラー化とは異なり、ファイル・レベルでミラー化を行います。ミラー化は、ファイルの各エクステントの冗長コピー(ミラー化コピー)を保持することであり、ディスク障害によるデータ損失を回避するために役立ちます。各ファイル・エクステントのミラー化コピーは、常に元のコピーとは異なるディスクで保持されます。ディスクに障害が発生した場合、Oracle ASMは、ディスク・グループ内の別の使用可能なディスクにあるミラー化コピーにアクセスすることで、影響を受けたファイルに継続してアクセスします。
オンライン・ストレージ再構成および動的リバランス: Oracle ASMを使用すると、データベースの動作中にディスク・ストレージ・システムのディスクを追加または削除できます。ディスク・グループにディスクを追加すると、Oracle ASMによりデータが自動的に再分散され、ディスク・グループ内で新規ディスクも含むすべてのディスクに均等に分散されます。新たに追加したディスクにもデータが分散されるようにデータの再分散を行うプロセスはリバランスと呼ばれます。リバランスはデータベース・パフォーマンスへの影響を最小限に抑えてバックグラウンドで実行されます。
Oracle Managed Filesの作成および削除: Oracle ASMは、Oracle ASMディスク・グループに格納されるファイルをOracle Databaseで管理できるようにすることで、管理タスクをさらに削減します。ファイルが作成されると、Oracle ASMによって自動的にファイル名が割り当てられ、ファイルが不要になると、そのファイルは自動的に削除されます。
Oracle Automatic Storage Management Cluster File System (Oracle ACFS)は、マルチプラットフォームのスケーラブルなファイルシステムであり、Oracle Automatic Storage Management (Oracle ASM)の機能を拡張して、すべてのカスタマ・ファイルをサポートするストレージ管理テクノロジです。
Oracle ACFSでは、実行可能ファイル、データベース・データファイル、データベース・トレース・ファイル、データベース・アラート・ログ、アプリケーション・レポート、BFILEおよび構成ファイルなど、Oracle Databaseファイルおよびアプリケーション・ファイルがサポートされます。他にも、ビデオ、オーディオ、テキスト、イメージ、設計図、その他の汎用アプリケーションのファイル・データがサポートされます。Oracle ACFSは、LinuxおよびUNIXの場合はPOSIX標準に準拠し、Windowsの場合はWindows標準に準拠しています。
Oracle ACFSファイルシステムはOracle ASMと通信し、Oracle ASMストレージを使用して構成されます。Oracle ACFSでは、次のことを可能にするOracle ASM機能を利用します。
Oracle ACFSの動的なファイル・システムのサイズ変更
Oracle ASMディスク・グループ・ストレージへの直接アクセスによるフォーマンスの最大化
I/Oの並列性向上によるOracle ASMディスク・グループ・ストレージ全体でのOracle ACFSの分散の平均化
Oracle ASMミラー化保護メカニズムによるデータの信頼性の確保
Oracle RAC環境では、クラスタ内の1つ以上のノードで実行される複数のインスタンスがOracle ASMにあります。
Oracle ASMは、独自のシステム・グローバル領域とバックグラウンド・プロセスを備えた、特殊なOracleインスタンスとして実装されています。標準のOracle RAC環境では、各ノードに1つのOracle ASMインスタンスがあり、Oracle ASMインスタンスがpeer-to-peerで相互に通信します。各ノードでは1つのOracle ASMインスタンスのみがサポートされますが、同じノードにOracle ASMを使用する複数のデータベース・インスタンスを持つことができます。
次の図に、2ノードのOracle RACデータベースで一般的に使用される記憶域構成を示します。
Oracle ClusterwareファイルおよびOracle RACデータファイルには、Oracle ASMを使用することをお薦めします。Oracle Databaseでは、Oracle ASMファイルおよびOracle ASM以外のファイルの両方を使用できます。Oracle ACFSを使用したファイル・システムを作成して、データベースOracleホームや、クラスタの他の外部ファイル(データベース以外)を格納することもできます。
参照:
Oracle Clusterwareのファイルの詳細は、Oracle Database 2日でReal Application Clustersガイドを参照してください。
Oracle ASMの概念および機能の詳細は、『Oracle Automatic Storage Management管理者ガイド』を参照してください。
Oracle RACは、Oracle Databaseを拡張することで、異なるサーバー上の複数のデータベース・インスタンスを使用してデータを同時に格納、更新および効率的に取得できるようにします。
Oracle RACは、複数のサーバーをインスタンスおよび1つのグループとして管理するソフトウェアを提供します。データベースを構成するデータファイルは、クラスタに含まれるすべてのサーバーからアクセス可能な共有記憶域に存在する必要があります。クラスタ内の各サーバーでOracle RACソフトウェアが実行されます。
Oracle Databaseには、データ・ファイルとデータベース・インスタンス間に1対1関係があります。それに対し、Oracle RACデータベースではデータファイルとデータベース・インスタンスは1対多の関係にあります。Oracle RACデータベースでは、複数のインスタンスによって単一のデータベース・ファイル・セットにアクセスできます。
Oracle RACデータベース内の各データベース・インスタンスは、独自のメモリー構造およびバックグラウンド・プロセスを使用します。Oracle RACは、キャッシュ・フュージョンを使用して、各データベース・インスタンスのバッファ・キャッシュに格納されたデータを同期化します。キャッシュ・フュージョンを使用すると、あるデータベース・インスタンスがディスクにデータ・ブロックを書き込み、他のデータベース・インスタンスがそのデータ・ブロックをディスクから読み取るのではなく、データベース・インスタンス間で(メモリーに存在する)現行のデータ・ブロックが移動されます。あるインスタンスで、別のインスタンスのバッファ・キャッシュにあるデータ・ブロックが必要になると、キャッシュ・フュージョンによってインターコネクト を使用してインスタンス間で直接データ・ブロックの転送が行われるため、Oracle RACデータベースは、データが単一のバッファ・キャッシュにあるかのようにデータにアクセスおよび修正を行うことができます。
Oracle RACは、Oracleソフトウェアを使用してエンタープライズ・グリッド・コンピューティング・アーキテクチャを実装する上で重要なコンポーネントです。複数のデータベース・インスタンスを単一のデータファイル・セットにアクセスさせることで、サーバーがシングル・ポイント障害となることを防止します。クラスタ内のノードが停止した場合、Oracle Databaseはその他のノードで稼働し続けます。アプリケーションのユーザーが作業中でも、個々のノードを停止してメンテナンスを行うことができます。
Oracle RACは、主流ビジネス・アプリケーション(OLTP、DSSなど)、一般的なパッケージ製品(SAP、PeopleSoft、Siebel、Oracle E*Business Suiteなど)、およびカスタム・アプリケーションをサポートします。Oracle Database上でスケーラビリティを持つパッケージ・アプリケーションやカスタム・アプリケーションは、アプリケーション・コードの変更を行わなくてもOracle RACでも適切なスケーラビリティを持ちます。
クラスタ内のOracle RACデータベースの動作、クラスタの構築方法およびOracle RACデータベースの構造の詳細は、このマニュアルの他の項を参照してください。
参照:
Oracle RACの概念およびアーキテクチャの詳細は、『Oracle Real Application Clusters管理およびデプロイメント・ガイド』を参照してください。
Oracle Clusterwareの概念およびアーキテクチャの詳細は、『Oracle Clusterware管理およびデプロイメント・ガイド』を参照してください。
Oracle RAC One Nodeは、クラスタ内の1つのノードで通常の操作のみで実行されるOracle RAC対応データベースの単一インスタンスです。
Oracle Real Application Clusters One Node (Oracle RAC One Node)はOracle Database 11gリリース2 (11.2)以降に使用可能なOracle Database Enterprise Editionのオプションです。このオプションにより、企業内にOracle Databases用の標準デプロイメントを提供することで管理オーバーヘッドを削減しながら、オラクル社がデータベースの統合に対して提供する柔軟性が向上します。Oracle RAC One Nodeデータベースには、Oracle Grid Infrastructureが必要なため、Oracle RACデータベースと同じハードウェア設定が必要になります。
Oracle RACと異なり、通常、Oracle RAC One Nodeには一連の共有データ・ファイル(データベースとも呼ばれます)にアクセスする1つのインスタンスのみがあります。このデータベースは完全にOracle RAC対応ですが、複数のハードウェア・システムを同時に使用しません。かわりに、サーバー、インスタンス、またはこのサーバーの関連するコンポーネントや監視対象コンポーネントで障害が発生した場合、Oracle RAC One Nodeデータベース・インスタンスはクラスタ内の別のサーバーにフェイルオーバーします。Oracle RAC One Nodeでは、サーバーのスケーラビリティは無制限で、アプリケーションが増大して単一ノードで提供できるリソース以上のリソースを必要とする場合には、アプリケーションをOracle RACにオンラインでアップグレードできます。Oracle RAC One Nodeが実行されているノードがオーバーロードになった場合は、インスタンスをクラスタ内の別のインスタンスに再配置できます。
計画された停止(オペレーティング・システムまたはデータベースへのパッチ適用など)の場合、Oracle RAC One Nodeはオンライン・データベース再配置というユニークな機能を提供しており、データベース・サービスを中断することなく、データベースをあるサーバーから別のサーバーに再配置できます。Oracle RAC One Nodeでは、オンライン・データベース再配置機能を使用して、アプリケーション・ユーザーには停止時間なしでデータベース・インスタンスを再配置できます。
参照:
Oracle RAC One Nodeの詳細は、『Oracle Real Application Clusters管理およびデプロイメント・ガイド』を参照してください。
Oracle Multitenantは、マルチテナント・コンテナ・データベース(CDB)に複数のプラガブル・データベース(PDB)を保持できるアーキテクチャに基づいています。
Oracle MultitenantはOracle Database 12cのオプションで、統合、プロビジョニング、アップグレードなどを簡略化します。アプリケーション層を変更することなく、既存のデータベースをPDBとして採用できます。このアーキテクチャでは、1つのシステム上で様々なビジネスで重要なアプリケーションを統合するときに必要なローカルの高可用性を、Oracle RACが提供します。
Oracle RACでPDBを使用する場合、マルチテナントCDBはOracle RACに基づきます。これは、CDBデータベースの場合、クラスタ内の複数のノードで実行されるインスタンスがあることを意味します。各PDBをOracle RAC CDBの各インスタンスまたはインスタンスのサブセットで使用可能にすることができます。どちらの場合も、PDBへのアクセスおよび管理は動的データベース・サービスを使用して調整されます。動的データベース・サービスは、アプリケーションが対応するPDBに接続するためにも使用されます。
Oracle RACデータベースをCDBとして作成し、そのCDBに1つ以上のPDBを接続する場合、Oracle RACのCDBのどのインスタンスでもPDBはデフォルトで自動起動されません。PDBに最初の動的データベース・サービス(データベース名と同じ名前のデフォルト・データベース・サービス以外)を割り当てると、サービスが実行されているインスタンス上でそのPDBが使用可能になります。
Oracle RACの1つ以上のインスタンスでPDBが有効かどうかにかかわらず、CDBは通常、PDBで実行されるサービスで管理されます。インスタンス上でPDBを手動で起動することによって、Oracle RAC CDBの各インスタンス上でPDBアクセスを手動で有効化できます。
Oracle Real Application Clustersは、様々なオペレーティング・システムでサポートされています。
Oracle RACをOracle Linux以外のオペレーティング・システムにインストールして構成する場合にも、このガイドでOracle RACのデプロイ方法に関する一般的な情報を得られます。このマニュアルは、Oracle RACを3つ以上のノードを持つクラスタにデプロイする場合にも使用できます。このマニュアルで説明する環境に一致しない環境の場合は、その環境に応じて例を読み替えてください。
Oracle RACをOracle LinuxまたはRed Hat Enterprise Linux以外の異なるプラットフォームや異なるバージョンのオペレーティング・システムにインストールする場合は、そのプラットフォームのインストールおよび構成に関するガイドを参照する必要があります。たとえば、Oracle RACをOracle Solarisオペレーティング・システムにインストールする場合は、次のマニュアルを使用します。
Oracle Grid Infrastructureインストレーション・ガイドfor Oracle Solaris
『Oracle Real Application Clustersインストレーション・ガイドfor Linux and UNIX Systems』
Oracle ClusterwareおよびOracle RACは同じクラスタ内の異機種プラットフォームをサポートしていません。たとえばOracle Linuxを実行しているクラスタ内のノードとOracle Solarisを実行している同じクラスタ内の他のノードを同時に持つことはできません。すべてのノードが同じオペレーティング・システムを実行する必要があり、つまりバイナリ互換である必要があります。Oracle RACは、同じクラスタ内で異なるチップアーキテクチャを持つマシンをサポートしていません。ただし、同じクラスタ内でスピードとサイズが異なるマシンは持つことができます。
参照:
Oracle RACのインストールの概要は、『Oracle Real Application Clusters管理およびデプロイメント・ガイド』を参照してください。
Oracle Clusterware、Oracle Automatic Storage Management (Oracle ASM)およびOracle Real Application Clusters (Oracle RAC)のインストール、構成および管理に使用する各種のツールがあります。
表1-1 Oracle RACのインストール、構成および管理に使用するツール
ツールまたはユーティリティ | 目的 | 使用方法の説明 |
---|---|---|
Oracle Universal Installer(OUI) |
クラスタ用Oracle Grid Infrastructure(Oracle ClusterwareとOracle ASMで構成される)およびOracle DatabaseをOracle RACとともにインストールします。 |
クラスタで使用するノードを構成した後、OUIはネットワーク接続を使用して指定したノードにOracleソフトウェアをインストールします。 |
クラスタ検証ユーティリティ(CVU) |
共有記憶域デバイス、ネットワーク構成、システム要件などのクラスタおよびOracle RACの各種コンポーネント、ならびにOracle Clusterware、またオペレーティング・システムのグループおよびユーザーを検証します。 |
CVUは、クラスタ環境のインストール前およびインストール後のチェックに使用できるコマンドライン・ツールです。CVUは、特に、Oracle ClusterwareおよびOracle RACコンポーネントのインストール前およびインストール中に有効です。OUIでは、Oracle Clusterwareのインストール後にCVUを実行して環境を検証します。 |
ORAchk |
Oracleソフトウェア・スタックの事前ヘルス・チェックを実行します |
ORAchkは、RACCheckユーティリティに代わるもので、ヘルス・チェックの範囲をOracleソフトウェア・スタック全体に拡張しており、Oracleユーザーから報告された主な問題を特定し、それに対処します。ORAchkは、Oracleの製品とデプロイメントについて既知の問題をあらかじめスキャンします。 |
Oracle Enterprise Manager |
データベースを管理するための主な製品 |
Oracle Enterprise Manager Cloud Controlは、単一インスタンスおよびOracle RACデータベース、Oracle Clusterware、およびOracle ASMの管理に使用できるグラフィカル・ユーザー・インタフェース(GUI)です。Oracle Databaseソフトウェアのインストール、データベースの作成またはアップグレード、およびネットワークの構成後、Oracle Enterprise Managerを使用してデータベースを管理できます。また、Cloud Controlは、パフォーマンス・アドバイザ用のインタフェース、およびSQL*Loader、Recovery Manager (RMAN)などのOracleユーティリティ用のインタフェースも提供します。 |
SQL*Plus |
SQL文およびPL/SQL文をOracle Databaseに発行します |
SQL*Plusには、データベースに対するデータベース管理操作を実行できるコマンドライン・インタフェースが備わっており、データベースに直接データの問合せ、挿入、更新または削除を実行することも可能です。 |
サーバー制御ユーティリティ(SRVCTL) |
Oracle Cluster Registry (OCR)で定義されたリソースを管理します。これらのリソースにはnodeappsと呼ばれるノード・アプリケーションが含まれ、これによって、Oracle Notification Service(ONS)および仮想IP(VIP)を含むOracle Clusterwareが構成されます。 |
SRVCTLのコマンドライン・インタフェースを使用して、Oracle Clusterware環境で実行されるデータベース、インスタンス、リスナー、サービスおよびアプリケーションを管理します。SRVCTLを使用すると、nodeapps、データベース、インスタンス、リスナーおよびサービスの起動と停止、インスタンスおよびサービスの削除または移動、サービスの追加、および構成情報の管理を行うことができます。 |
クラスタ・レディ・サービス・コントロール(CRSCTL) |
Oracle Clusterwareのデーモンを管理します。これらのデーモンには、クラスタ同期サービス(CSS)、クラスタ・レディ・サービス(CRS)、イベント・マネージャ(EVM)などがあります。 |
CRSCTLは、Oracle Clusterwareの起動および停止と、Oracle Clusterwareインストールの現行ステータスの判別に使用できるコマンドライン・ツールです。 |
Database Configuration Assistant(DBCA) |
Oracle Databaseを作成および構成します |
選択したインストール・タイプによっては、DBCAをOUIで起動できます。また、Oracle Databaseをインストール後は、スタンドアロン・ツールとして、いつでもDBCAを起動できます。DBCAは、対話型モードまたは非対話型(サイレント)モードで実行できます。対話型モードには、データベースを作成して構成するためのグラフィカル・インタフェースおよびガイド付きワークフローが用意されています。DBCAはより自動化されていて、DBCAが終了したときにはデータベースを使用できるようになっているため、データベースを作成する推奨の方法です。 |
Oracle Automatic Storage Management Configuration Assistant (ASMCA) |
Oracle ASMをインストールおよび構成します |
ASMCAは、Oracle ASMインスタンス、ディスク・グループ、ボリューム、Oracle Automatic Storage Management Cluster File System (Oracle ACFS)のインストールおよび構成をサポートするユーティリティです。ASMCAには、GUIと、GUI以外のインタフェースの両方があります。 |
Oracle Automatic Storage Managementコマンドライン・ユーティリティ(ASMCMD) |
Oracle ASMを管理します |
ASMCMDは、Oracle ASMインスタンス、Oracle ASMディスク・グループ、ディスク・グループのファイル・アクセス制御、Oracle ASMディスク・グループ内のファイルとディレクトリ、ディスク・グループのテンプレート、およびOracle ASMボリュームの管理に使用できるコマンドライン・ユーティリティです。 |
リスナー制御(LSNRCTL) |
リスナーを管理します |
リスナー制御ユーティリティは、リスナーを管理するために使用するコマンドライン・インタフェースです。このユーティリティのコマンドによって、1つ以上のリスナーで基本的な管理機能を実行できます。また、リスナーのパラメータ設定を表示および変更できます。 |
Oracle Database 12cリリース1 (12.1)のクラスタ用Oracle Grid Infrastructureをインストールした場合、クラスタ、データベース、データベース・インスタンス、Oracle ASMおよびリスナーを管理するユーティリティを使用する際には、管理するオブジェクトやコンポーネントのホーム・ディレクトリにある適切なバイナリを使用します。たとえば、このディレクトリを指すようにORACLE_HOME
環境変数を設定するには、次のようにします。
ASMCMD、SRVCTL、SQL*PlusまたはLSNRCTLを使用してOracle ASMまたはそのリスナーを管理する場合は、Oracle DatabaseホームではなくGridホームにある実行可能ファイルを使用します。ORACLE_HOME
環境変数は、Gridホームの場所に設定します。
SRVCTL、SQL*PlusまたはLSNRCTLを使用してデータベース・インスタンスまたはそのリスナーを管理する場合は、そのデータベース・インスタンスまたはリスナーが実行されているOracleホームにあるバイナリを使用します。ORACLE_HOME
環境変数は、Oracleホームの場所に設定します。
参照:
Oracle RACの管理に使用するツールおよびユーティリティの詳細は、『Oracle Real Application Clusters管理およびデプロイメント・ガイド』を参照してください。