network-monitor (この章ではモニターとも呼びます) は、Oracle Solaris 11 システム上でネットワーク診断を実行するために使用される障害管理デーモン (fmd) トランスポートモジュールユーティリティーです。このユーティリティーはネットワークリソースをモニターし、ネットワーク機能の制限や縮退につながる可能性のある状態を報告します。モニターが異常なネットワーク条件を検出すると、レポート (ireport と呼ばれます) が生成されます。fmdump コマンドを使用して ireport を取得できます。network-monitor モジュールによって生成されたレポートの取得を参照してください。このモニターによって、エラー状態のそれ以上の診断や、追加の復旧アクションが実行されることはありません。詳細は、network-diagnostics(4) のマニュアルページを参照してください。
このモニターは、svc:/network/diagnostics サービス管理機能 (SMF) サービス内に格納されているプロパティー値によって制御されます。詳細は、svc:/network/diagnostics SMF サービスによるプローブの使用の制御を参照してください。
このエラー状態は、2 つのピアデータリンク間の最大転送単位 (MTU) に不一致が存在する場合に発生します。あるデータリンクがピアデータリンクで受信可能なサイズより大きいフレームを送信する可能性があるため、このタイプの不一致によってフレームが破棄される場合があります。このモニターは、MTU が大きすぎる、ローカルシステム上のすべてのデータリンクを検出しようとします。データリンクは、システムの起動時に検証されたあと、MTU の変更が発生したときに再度検証されます。
MTU の検証は、Link-Layer Discovery Protocol (LLDP) または Internet Control Message Protocol (ICMP) のどちらかのプローブ方法を使用して実行されます。LLDP サービスが有効になっているピアシステムは、情報交換に MTU の詳細を含めることができます。このユーティリティーは、ピアの MTU 情報を抽出することによって MTU の検証を実行します。LLDP 情報が使用できない場合、このモニターは、データリンクの MTU に達するまで一連の異なるサイズの ICMP プローブを転送することによって MTU を検証しようとします。このユーティリティーが、最大サイズのプローブを使用したターゲットへの接続に常に失敗する場合は、不一致のフラグが付けられます。
仮想ローカルエリアネットワーク (VLAN) は、エンドシステムの各ホストを同じブロードキャストドメインにグループ化するために使用されます。VLAN 上の各ホストが同じ LAN 上には存在しない可能性がありますが、その場合でも、各ホストはレイヤー 2 (L2) プロトコルを使用して別のホストと通信できます。逆に、同じ LAN 上に存在しても、VLAN が異なるホストは L2 プロトコルを使用して通信することができません。VLAN 上に存在する各ホストは、ネットワークインタフェースを使用して VLAN 上のほかのホストと通信します。VLAN は、関連するネットワークインタフェースを経由して LLDP デーモンによって各ピアにエクスポートされる VLAN 識別子 (VID) で識別されます。これらのピアは通常、ネットワークデバイスであり、これには、VID を使用して対応するホストにデータパケットを転送するスイッチなどが含まれます。
関連するネットワークインタフェース上で VID が正しく構成されていない場合は、ホストが目的のパケットを受信できない可能性があります。VLAN ID 不一致モニターは、VID 情報を VLAN 情報が変更されるたび、システムのブート時、さらに定期的に検証するため、このタイプの構成ミスを取り込むことができます。インタフェースの VID が変更された場合は、適切な ireport メッセージが生成されます。VLAN 情報は LLDP パケットを使用して検証されるため、ピアホストで LLDP サービスが有効になっている必要があります。Oracle Solaris 11.3 でのネットワークデータリンクの管理 の 第 6 章, リンク層検出プロトコルによるネットワーク接続情報の交換を参照してください。