2 SMC の起動

SMC は、割り振りおよびメッセージ処理のために MVS とのすべてのインタフェースを管理するため、テープ処理が発生するすべての MVS ホストでタスクとして起動する必要があります。

SMC は、HSC および MVS/CSC を呼び出して、ポリシーおよびドライブの情報を要求します。したがって、HSC または MVS/CSC を SMC と同じホスト上でアクティブにしたり、リモートホスト上で SMC HTTP サーバーも有効になっている場合は、ローカル SMC がそのリモートホスト上で動作している HSC と対話したりすることができます。

HSC および SMC は次の順序で起動することをお勧めします。

  • HSC を起動します。

  • HSC の初期化が開始したらただちに SMC を起動します。

これは、次の理由により推奨されます。

  • TapePlex および関連する HSC/VTCS サーバーは、SMCCMDS データセットで定義されます。初期化時に、SMC は SMCCMDS データセットで定義された順序で個々の HSC/VTCS サーバーと接続することで、TapePlex ごとに 1 つのサーバーとの通信バインドの確立を試みます。SMC は、この処理中に TapePlex ごとに検出された最初のアクティブなサーバーにバインドします。アクティブなサーバーのない TapePlex ごとに、SMC はその TapePlex 用に定義された各サーバーの永続メッセージ SMC0260 を表示します。SMC は、サーバーがアクティブになるとこれらのメッセージを削除し、自動的にバインドします。SMC の起動時に TapePlex 通信バインドの遅延を回避するには:

    • SMC SERVER 文で参照されているホストが IPLed であり、これらのホスト上での通信用に TCP/IP が SMC の起動前に完全に初期化されていることを確認します。

    • SMC SERVER 文によって参照されるホストの場合は、SMCPARMS または SMCCMDS で、これらのホストに対する SMC 起動パラメータの一部として HTTP START コマンドを発行します。

    • 各 TapePlex について、その TapePlex の SMC SERVER 文で参照されている少なくとも 1 つのホストで、HSC/VTCS および SMC を起動します。

  • 構成に VLE システムを使用する VTCS が含まれる場合、VTCS は SMC 通信サービスを使用して VLE と通信します。HSC 初期化の開始直後に SMC を起動する場合、VTCS が VLE と通信しようとするときにこれらのサービスが VTCS で利用できることを保証できます。

これらの手順を実装することで、SMC 起動処理で可能なかぎり迅速に各 TapePlex をバインドできます。

SMC を起動するには、SMC START 手順を作成して実行する必要があります。この章では、これらのタスクについて説明します。

注:

  • SMC のインストールおよびインストール後処理タスクについては、『ELS のインストール』を参照してください。

  • SMC HTTP サーバーコンポーネントは、SMC HTTP コマンドを使用して有効にします。このコマンドの詳細については、『ELS コマンド、制御文、およびユーティリティーリファレンス』を参照してください。

SMC START 手順の作成

SMC START 手順では、SMC 起動パラメータ設定を指定します。この手順は、ホストシステムの手順ライブラリで作成します。

MVS START コマンドは、このカタログ済みの手順を実行することにより、指定されたパラメータ設定で SMC をアクティブにします。

次の例は、EXECSTEPLIBSMCPARMSSMCCMDSSMCLOG、および SYSTCPD DD 文を含む、サンプルの SMC START 手順を示しています。

例2-1 SMC START 手順

//yourprocname PROC PRM=’WARM’
//stepname  EXEC PGM=SMCBINT,REGION=0M,TIME=1440,
//          PARM=’&PRM’
//*
//STEPLIB   DD DISP=SHR,DSN=your.els.exitlib
//          DD DISP=SHR,DSN=your.els.sea700.sealink
//*
//* The following dataset is optional
//*
//SMCPARMS  DD DISP=SHR,DSN=parmlib_name(parm_member_name)
//*
//* The following dataset is optional but recommended
//*
//SMCCMDS   DD DISP=SHR,DSN=cmdlib_name(cmd_member_name)
//*
//* The following datasets are optional
//*
//SMCLOG    DD DSN=log.file.name,UNIT=unit,RECFM=FB,
//             SPACE=(CYL,(primary-qty,secondary-qty)),
//             DISP=(NEW,CATLG,CATLG)
//*
//SYSTCPD   DD DSN=ddd.eee.fff(anyname) /* Optional TCPIP parms) */

yourprocname の最初の 4 文字は、SMC サブシステム名を指定します (SSYS 起動パラメータが指定されていない場合)。推奨される値は SMCx です (x はジョブ名で有効な文字です)。

SMC EXEC 文

EXEC 文は、一般的な SMC 起動パラメータ設定を定義します。

構文

次の図は、SMC EXEC 文の構文を示したものです。

図2-1 SMC EXEC 文の構文

周囲のテキストで説明されています

パラメータ

PARM=

SMC 初期化ルーチンに渡されるパラメータリストを定義します。

実行パラメータの区切りにはカンマを使用する必要があります。パラメータを空白で区切ると、構文エラーが発生します。

WARM

SMC メイン制御ブロックを再構築しないことを指定します。これは、通常動作でのデフォルト設定です。

COLD

すべての SMC 制御ブロックの再構築を指定します。このパラメータは、WARM と相互に排他的です。

注意:

このパラメータは、SMC が異常終了したり、リスタートできない場合を除き、使用しないでください。

RESET

SMC の MVS Subsystem Communications Vector Table (SSCVT: サブシステム通信ベクターテーブル) にあるアクティブなサブシステムステータスフラグのリセットを指定します。SMC の異常終了時、このパラメータを用いて修正できる場合があります。これは、WARM または COLD とともに指定できます。

SMC サブシステムが正常に動作している状態で、このパラメータを使用すると、予期しない結果が発生する場合があります。

J3NOSET

JES3 システムが JES3 テープセットアップを使用していないことを示します。このパラメータが指定されている場合、割り振りに対する影響は、JES2 の項に解説されているとおりの動作をします。

SSYS

SMC START 手順の先頭 4 文字とは異なるサブシステム ID を指定します。初期化中、このシステム ID が検索されます。

subsystem は、1 - 4 文字の長さである必要があります。

MSTR

SMC が、JES ではなく MSTR サブシステムの下で起動するよう指定します。

このパラメータを指定する場合は、次のアクションのいずれかも実行する必要があります。

  • MVS Start コマンドで SUB=MSTR を使用して SMC サブシステムを起動します。

  • キーワード形式を用いて、SMC サブシステムを IEFSSNxx サブシステムテーブルに追加すること。

注:

  • JES3 の SETUP 環境では、このパラメータはサポートされません。

  • マスター MVS サブシステムの下で SMC を実行する場合は、SMC START 手順を含む PROCLIB がマスターアドレス空間の PROCLIB 連結内に存在する必要があります。この連結は SYS1.PARMLIB(MSTJCLxx) の DD IEFPDSI の下で定義されます。

MAXRC

指定されたコマンドの戻りコードが最大許容値を超えたときに SMC サブシステムの初期化を終了するかどうかを指定します。MAXRC が指定されていない場合は、起動コマンドが失敗したかどうかに関係なく、SMC サブシステムは常にその初期化を完了しようとします。これはデフォルトの動作です。

nn は戻りコードの最大許容値を指定します。SMCPARMS または SMCCMDS データセットから実行された SMC コマンドがこの値を超えた場合は、SMC0236 および SMC0237 メッセージが生成され、SMC は終了します。有効な値は、0、4、8、および 12 です。

PLEXRC

自動的に発行される RESYNC コマンドから返された TapePlexes のステータスに基づいて SMC サブシステムの初期化を終了するかどうかを指定します。

PLEXRC が指定されていない場合は、RESYNC コマンドの結果に関係なく、SMC サブシステムはその初期化を完了します。これはデフォルトの動作です。

nRESYNC コマンドからの戻りコードの最大許容値を指定します。有効な値は、0 および 4 です。

SMC RESYNC コマンドは、SMC がどの定義済み TapePlex とも通信できない場合は 8 の戻りコードを、SMC が (すべてではなく) 1 つまたは複数の定義済み TapePlex と通信できる場合は 4 の戻りコードを設定します。

SMCPARMS および SMCCMDS データセット

SMC の起動時に処理されるようにしたい SMC コマンド設定を含むデータセットを識別するには、SMC START 手順で SMCCMDS および SMCPARMS DD 文を指定します。

少なくとも、TapePlex を定義するには、SMCCMDS または SMCPARMS データセットのどちらかに SMC TAPEPlex コマンドを含める必要があります。SMC の起動時に TAPEPlex コマンドが見つからない場合、SMC サブシステムは終了し、エラーメッセージが生成されます。

SMC が最初に HSC ホストと通信する場合、このホストは SMCCMDS または SMCPARMS データセットで指定された TapePlex 名を採用し、それを CDS 内に格納します。CDS は、あとで SMC Set TapePlex ユーティリティーコマンドによって変更されないかぎり、この名前を保持します。

SMCCMDS

起動後に再処理できる SMC コマンドのための設定を指定するには、SMCCMDS データセットを使用することをお勧めします。

コンソールから SMC READ コマンドを発行して、いつでもこのデータセットを再処理できます。

SMCPARMS

起動時にしか処理できない SMC コマンドのための設定を指定するには、SMCPARMS データセットを使用することをお勧めします。これらのコマンドは CMDDefUSERMsg です。

このデータセットに追加のコマンドを含めることができますが、これらのコマンドを SMC READ コマンドで再処理することはできません。

注:

  • HSC Set TAPEPlex コマンドおよび SMC READ コマンドの詳細については、『ELS コマンド、制御文、およびユーティリティーリファレンス』を参照してください。

  • POLicy コマンドを使用するには、POLicy コマンド (これは、TAPEREQ 制御文の前に処理する必要があります) の前に TAPEPlex および SERVer コマンドを処理する必要があります。

  • SMC がタイムアウトによって終了してしまわないよう、TIME=1440 を設定しておく必要があります。

SMCLOG データセット

SMC 通信やコマンドロギングに使用される SMCLOG データセットを定義するには、SMC START 手順で SMCLOG DD 文を指定します。

この文は、SMC LOG START コマンドが入力された場合にのみ必要であり、SMC でログ記録される特定のタイプのイベントを選択するために SMC LOG TYPE コマンドが入力された場合にのみ書き込まれます。

SMC ロギング機能は、簡単には再現できない特定のタイプのエラーの診断情報を収集することを目的にしています。診断のための収集方法として、収集される情報は少なくなりますが、消費されるリソースも SMC TRACE コマンドに比べてはるかに少なくなります。そのため、これは長期間にわたってすべての通信タスクの診断情報を収集することに適しており、その後、短期間に単一のジョブまたはステップが指定されることを目的とした SMC TRACE 機能を行います。SMC LOG コマンドは、StorageTek サポート担当者からの指示があった場合のみ実行してください。選択された SMC LOG TYPE の数とタイプによっては、SMC ロギング機能の使用により、SMC 通信やサブシステムのパフォーマンスが若干低下します。

SYSTCPD データセット

SMC ジョブの TCP/IP オプションを定義するには、SMC START 手順で SYSTCPD DD 文を指定します。

この DD 文は、IBM TCPIP.DATA 構成データセットで定義されたパラメータを取得するために使用されるデータセットを識別します。詳細については、『IBM TCP/IP Customization and Administration Guide』を参照してください。

SMC START 手順の実行

このセクションでは、SMC START 手順を実行して SMC ソフトウェアを起動する方法について説明します。

MVS START コマンド

SMC START 手順を実行して SMC ソフトウェアを起動するには、MVS START コマンドを発行します。このコマンドは、SMC サブシステムの初期化ルーチンを呼び出します。このルーチンは、どのパラメータが有効かを判定し、必要なすべてのクリーンアップを実行して、正常な SMC 処理を開始します。

SMC Start 手順の EXEC 文の PARM= に関連付けられたパラメータは、MVS START コマンドで PARM= を使用して指定することもできます。MVS START コマンドでの PARM= の指定によって、SMC START 手順での PARM= の指定がオーバーライドされます。パラメータの説明については、パラメータを参照してください。

構文

次の図は、MVS START コマンドの構文を示したものです。

図2-2 MVS START コマンドの構文

周囲のテキストで説明されています

パラメータ

START または S

MVS START コマンドを開始します

smc-proc-name

SMC START 手順メンバー名を示します。