1 概要

Oracle の StorageTek Virtual Library Extension (VLE) は VTSS 用のバックエンドディスクストレージです。VLE は次を提供します。

  • Oracle Cloud Storage との間の VTV の移行およびリコールのサポート

    詳細は、次を参照してください。

    注:

    Cloud アカウントの設定方法の詳細は、http://docs.oracle.com/cloud/latest/ を参照してください。
  • 400M バイト、800M バイト、2G バイト、4G バイト、および 32G バイト VTV のサポート

    注:

    32G バイト VTV の設定および使用方法については、ELS 7.3 のドキュメントを参照してください。
  • VSM ソリューションの追加ストレージレイヤー。VTSS から VLE への VTV の移行が可能となったため、最新データに高速でアクセスできます。さらに、VTV を長期のアーカイブのため、VLE ストレージからテープメディア (MVC) に移行できます。既存の HSC のマネージメントクラスとストレージクラスによって、VTV の移行およびアーカイブ方法を制御して、以前の構成との完全下位互換性を提供できます。

  • 複数の VTSS システム間で共有されるバックエンドディスクストレージ。これにより、データへの高可用性アクセスが保証されます。

注:

VLE 1.1 以降では、VLE はプライベートネットワークと相互接続されたノードの集まりです。

VLE は、VTCS からはテープライブラリと同じように見えますが、ディスク上の仮想マルチボリュームカートリッジ (VMVC) に VTV が格納される点が異なります。VLE を使用すると、VLE とテープ、または VLE のみ (Tapeless VSM 構成を使用するなど) のどちらかのバックエンド VTV ストレージソリューションを構成できます。VTSS は実際のテープライブラリの場合とまったく同様に、VLE との間で VTV の移行やリコールを行えます。

注意:

  • VLE システムがある場合、HSC/VTCS は VLE との通信に SMC 通信サービスを使用します。これらのサービスを VTCS の起動時に使用できるようにするため、Oracle ではまず HSC の起動コマンドを発行してから、HSC の初期化中にすぐに SMC の起動コマンドを発行することをお勧めします。

  • SMC を停止すると VTCS が VLE にメッセージを送信しなくなり、事実上データ転送が停止します。したがって、VTCS アクティビティーが休止状態になっていること、つまり SMC の停止前に VTCS が終了していることを確認すべきです。

  • VLE を使用する場合、SMC HTTP サーバーで AT-TLS を使用することはできません。

  • Tapeless VSM 構成では、ある特定の VTSS に単一ノードの VLE のみが接続されています。VLE がオフラインになると、その VLE がオンラインに戻るまで、その VLE に移行された VTV のうち、VTSS 内に存在しないものには一切アクセスできなくなります。

VLE ソリューションは次から構成されます。

  • 仮想テープストレージサブシステム (VTSS) ハードウェアおよびマイクロコード

  • 仮想テープ制御サブシステム (VTCS) ソフトウェアおよびストレージ管理コンポーネント (SMC)

  • VLE ハードウェアおよびソフトウェア

ネットワーク設定の要件

ネットワークの冗長性が必要な場合は、VSM 5/6 と VLE 間、VLE と VLE 間、および VLE と SMC 間の各 IP 接続を別々のサブネット上に構成する必要があります。

VLE ハードウェアおよびソフトウェア

VLE は Sun Rack II Model 1242 に収められた出荷時組み立てユニットであり、次のハードウェアを含みます。

  • Sun Server X4-4 プラットフォーム上に構築されたサーバー。

  • 4 つのマザーボード 10G ビットポート。そのうち 2 つは、データ転送およびほかの目的に使用できます。2 つは、管理、サービス、およびサポート専用です。

  • サービス (ILOM) ポート。

  • 4 つのデュアルポート 10G バイト光ファイバ (6 つのポートが使用可能)、および 2 つの 10G バイト銅線ポート。

  • ZFS RAID アレイ内にディスク (HDD) を格納する 1 台または複数の Oracle Storage Drive Enclosure DE2-24C (DE2-24C) で、単一の JBOD VLE に対し 200T バイトから始まる実効容量で拡張可能です (VLE へのデータ移行を行う際の圧縮率を 4 対 1 と仮定)。

  • DVD ドライブ。

VLE ソフトウェアは次から構成されます。

  • Oracle Solaris 11 オペレーティングシステム。

  • ZFS ファイルシステムと MySQL データベース。

  • VLE アプリケーションソフトウェア。

図1-1 VLE サブシステムのアーキテクチャー

図1-1 については、周囲のテキストで説明しています。

図1-1 に示すように、VLE のアプリケーションソフトウェアは次のものから構成されます。

  • HTTP/XML は、ホストと VLE との間の通信のためのデータプロトコルです。

  • ユニバーサルユーザーインタフェース (UUI) リクエストハンドラ。ストレージ管理コンポーネント (SMC) および仮想テープ制御ソフトウェア (VTCS) からの UUI リクエストの処理、およびそれらへの応答の生成を行います。UUI リクエストハンドラは、どの VLE コンポーネントを使ってリクエストを処理するかを決定します。

    UUI リクエストハンドラから次のものが呼び出されます。

    • VTV の移行やリコールのスケジューリングを行う PathGroup マネージャー。PathGroup マネージャーによってすべてのパスグループが管理され、各パスグループによって、VTSS と VLE との間の単一の VTV データ転送が管理されます。

    • すべてのレポート生成のスケジューリングを行うストレージマネージャー。

  • VLE ストレージマネージャーコンポーネントは、VLE 上の VMVC/VTV データおよびメタデータを管理します。VLE ストレージマネージャーは、JBOD アレイ上の ZFS に対して VTV データの格納や取得を行います。

  • TCP/IP/IFF がホストと VLE との間の通信のためのデータプロトコルであるのに対し、IP/IFF/ECAM コンポーネントは VTSS と VLE との間の通信を処理します。

単一ノードの VLE 構成

図1-2 に、単一ノードの VLE 構成を示します。

図1-2 VSM システム内の単一ノードの VLE

図1-2 については、周囲のテキストで説明しています。

図1-2 に示すように (1 は MVS ホストで 2 はライブラリです):

  • 複数の TCP/IP 接続 (VTSS の IP ポートと VLE の IP ポートとの間) が次のようにサポートされています。

    • 1 台の VLE を最大 8 台の VTSS に接続できるため、VTSS 間で VLE を共有できます。

    • 1 台の VTSS を最大 4 台の VLE に接続できるため、バッファー領域を増やして高いワークロードに対応できます。

  • 単一の VTSS は次に接続できます。

    • RTD のみ

    • (クラスタ化された) ほかの VTSS のみ

    • VLE のみ

    • 上記の任意の組み合わせ。

  • VLE と VTSS との間の接続、および SMC と VTCS が実行されているホストと VLE との間の接続でサポートされるプロトコルは、TCP/IP のみです。

マルチノードの VLE システム

マルチノードの VLE システムにより、VLE ストレージシステムの大規模なスケーリングが可能になります。1 ノードから 64 ノードで構成でき、複数のノードがプライベートネットワークによって相互接続されたマルチノードシステムを構築できます。マルチノード VLE は、SMC/VTCS には単一の VLE のように見えます。VLE には 4T バイトの JBOD が付属しているため、単一の VLE は 200T バイト (1 台の JBOD システムの場合) から 100P バイト (フル装備の 64 ノード VLE の場合) まで拡張できます。

注:

これらは圧縮率を 4:1 と仮定した場合の実効容量です。VLE は最大 64 ノードとして設計されていますが、最大 7 ノードに対してのみ検証されています。

図1-3 に、VLE マルチノードコンプレックスを示します。ここでは、ノードが専用の 10GE スイッチに相互接続され、各ノードがコンプレックス内のほかのノードにアクセスできるようになっています。

図1-3 VLE マルチノードコンプレックス

図1-3 については、周囲のテキストで説明しています。

VLE と VLE 間のデータ転送

VLE ストレージシステムでは、VTSS と無関係にデータ転送を管理できます。これにより、フロントエンド (ホスト) のワークロードに使われる VTSS リソースが解放されるため、VTSS 全体のスループットが向上します。次に例を示します。

  • 移行ポリシーで、(同じまたは別々の VLE に) VTV の 2 つの VLE コピーが必要であると指定している場合、VLE への最初の移行によって、データが VTSS から転送され、VTV に対する後続のすべての VLE の移行が VLE と VLE 間のコピーによって実現できます。これによって、VTV のすべてのコピーの移行に必要な VTSS サイクル時間が短縮されます。

  • 環境で次を実行している場合:

    • VLE 1.2 以降

    • VTCS 7.1 (サポートする PTF を含む) または VTCS 7.2 以降

      VTCS を使用して、CONFIG STORMNGR VLEDEV パラメータによって、VTSS と VLE 間のパスにあるより多くの VLE デバイスを定義できます。このアドレス指定スキームを使用した場合、VTSS から VLE 宛てのデータ転送が行われる場合にのみ、VTSS からターゲットの VLE へのパスが予約されるため、すべての VTV コピーを VLE に移行するために使用される VTSS リソースがさらに少なくなります。すべての VLE VRTD アクションで、VTSS データ転送が必要な場合にのみ、VTSS からのパスが予約されます。

VTV 暗号化

暗号化機能により、VLE システムに書き込まれた VMVC の暗号化が可能になります。暗号化は、ノードに格納され、USB デバイスにバックアップされている暗号化鍵によって、ノード単位で有効にします。暗号化は、VLE GUI によって完全に管理されます。VLE が VTSS にリコールされた VTV を暗号化解除するため、ホストソフトウェアは暗号化を認識しません。

VTV の複製解除

複製解除は、VLE コンプレックスの冗長データを除去します。複製解除は STORCLAS ステートメント DEDUP パラメータによって制御され、VLE の実効容量を増やし、VTV が VMVC に書き込まれる前に、VLE によって実行されます。

複製解除結果を評価するには、複製解除を有効にし、SCRPT レポートによって結果をモニターして、必要に応じて複製解除を微調整します。SCRPT レポートは、非圧縮 G バイトを使用中の G バイトで割った、複製解除されたデータのおよその「削減率」を示します。そのため、削減率には VTSS の圧縮 VLE の複製解除の両方が含まれます。削減率が大きいことは、圧縮と複製解除の効果が大きいことを示します。

たとえば、VTSS は 16M バイトのデータを受け取り、それを 4M バイトに圧縮して、圧縮されたデータを VTV に書き込みます。VLE は続いて VTV を 2M バイトに複製解除し、それを VMVC に書き込みます。したがって、削減率は 16M バイトを 2M バイトで割ると 8.0:1 になります。

Early Time To First Byte (ETTFB)

Early Time To First Byte (ETTFB) (並行テープリコール/マウント機能とも呼ばれる) では、データが VLE からリコールされるときに VTSS が VTD を使用して、データを読み取ることができます。

  • ETTFB は CONFIG GLOBAL FASTRECL によってグローバルに設定されます。

  • CONFIG GLOBAL FASTRECL=YES の場合、CONFIG VTSS NOERLYMNT によって、VTSS 単位で ETTFB を無効にできます。

CONFIG GLOBAL CONFIG VTSS は RTD の ETTFB と VLE の ETTFB の両方に適用されます。

ETTFB は VSM5 システムにのみ適用されます。

フレームサイズコントロール

フレームサイズコントロールは、各コピーリンクでのジャンボフレームの使用を指定します。

注:

VSM と VLE 間、または VLE 間のインフラストラクチャー全体で、ジャンボフレームが機能するようにサポートする必要があります。これらの接続間のインフラストラクチャーにジャンボフレームをサポートしていない部分があると、ジャンボフレームは機能しません。
  • TCP/IP ネットワークでジャンボフレームをサポートしている場合、このオプションによってネットワークパフォーマンスが向上する可能性があります。

  • ジャンボフレームを有効にするには、「Port Card Configuration」タブの「Jumbo Frames」チェックボックスをオンにします。このボックスをオンにすると、ポートの MTU (Maximum Transmission Unit) 値が 9000 に設定されます。

  • ジャンボフレームは、VLE と VLE 間の転送用に設定されているリンクで有効にすることをお勧めします。

Oracle Cloud Extended Storage

VLE 1.5.2 以降では、VLE から Oracle Cloud への接続を提供します。必要に応じて Oracle Cloud との間で顧客データを直接移行およびリコールするように VLE を構成できます。VLE の構成オプションでは、ローカルの VLE ディスクプールまたは Oracle Cloud (あるいはその両方) にあるデータストレージの任意の組み合わせをサポートしています。

VLE では、Oracle Cloud Object Storage、Oracle Cloud Archive Storage、Encryption within Oracle Cloud という 3 つの Oracle Cloud オプションをサポートしています。サポートされている Oracle Cloud オプションの詳細は、VLE Oracle Cloud Storageを参照してください。