一般会計の遡及処理の定義

このトピックでは、次について説明します。

  • デルタの二重計上。

  • 国ページ。

  • 一般会計データの遡及調整。

一般会計の遡及処理では、正しい設定が行われないとデルタが二重計上されるという特殊な問題があります。このトピックでは、遡及処理の種類に関する概要と、デルタの二重計上を回避する方法について説明します。

遡及処理には、以下の 2 種類があります。

  • 訂正の遡及方法では、デルタはその発生期間内で処理されます。

  • 繰越の遡及方法では、現在の期間にデルタが繰り越されます。

通常は繰越の遡及方法を使用する場合でも、累計コンポーネント (GP_ACCUMULATOR) のレベル ページで [訂正を使用] チェック ボックスをオンにすると、個々の累計を訂正の遡及方法で処理できます。[訂正を使用] をオンに設定すると、累計メンバーの調整値が現在の期間に繰り越されても、この調整値は累計に加算されません。

次の例では、二重計上がどのように発生するかについて説明します。この例では、以下のようになります。

  • 遡及方法は繰越です。

  • 支給 E1 は累計 E1_YTD のメンバーです。

  • E1 の値は 100 です。

最終決定された 1 月の給与計算結果は次のようになります。

カレンダー

レビジョン

E1

E1_YTD

1 月

V1R1

100

100

1 月の給与計算が最終決定されてから、E1 の値がさかのぼって 110 に変更されます。2 月の給与計算を実行すると、グローバル ペイロールによって 1 月の遡及処理も実行されます。2 月の給与計算結果は次のようになります。

カレンダー

レビジョン

E1

E1_YTD

1 月

V1R2

110

110

デルタ 10 が繰り越されます。

2 月

V1R1

120

230

調整値 10 が繰り越されています。

2 月の累計は 230 ではなく、220 になります。230 という金額は、1 月からのデルタが二重計上されることで生じます。これを防止するために、グローバル ペイロールでは、1 月の V1R2 の残高 110 ではなく、V1R1 の残高 100 が自動的に渡されます。2 月の E1_YTD は、繰り越された残高 100 に 110 (E1 の現在の値) と 10 (1 月の支給額の調整値) を加算した値に等しくなり、正しい合計額 220 となります。この場合、1 月の E1_YTD 値 100 は繰越値であり、値 110 は計算値です。この両方の値は累計結果テーブルに保存され、繰越値は CALC_RSLT_VAL フィールドに、計算値は CALC_VAL フィールドにそれぞれ保存されます。

注: 累計に定義された遡及方法が繰越の場合にのみ、レビジョン 1 の累計残高が繰り越されています。累計の遡及方法が訂正の場合は、繰り越される値は計算値と等しくなります。調整値は現在の期間に繰り越されないため、二重計上は発生しません。

グローバル ペイロールでは、繰越の遡及では想定される二重計上は自動的に回避されるように処理され、訂正の遡及処理の場合には同様の二重計上が発生する可能性はありません。それでは、どのようにして二重計上が発生するのでしょうか。その答えは、セグメント累計にあります。セグメント累計以外では、終了残高が次に処理されるセグメントに繰り越され、新しい開始残高として使用されます。セグメント累計は、累計が作成されたセグメントの期間内しか存在しません。したがって、繰越残高という概念はセグメント累計には当てはまらず、セグメント累計に含まれるのは計算値だけです。

前の例で二重計上を回避できたのは、繰り越された E1_YTD 残高は V1R1 から取得した 100 であり、計算値 110 ではなかったためです。また、支給 E1 がセグメント累計 AC1_SEG のメンバーである場合は、繰越がセグメント累計に適用されないため、計算値から繰越値への置き換えは行われません。AC1_SEG では、CALC_RSLT_VAL (繰越値) と CALC_VAL (計算値) はどちらも 110 です。1 月の値 110 が AC1_SEG の 2 月の値 120 に加算されると、デルタが二重計上されてしまいます。

したがって、セグメント累計を一般会計に送信する場合は、セグメント累計に訂正の遡及方法を定義する必要があります。前の例で、AC1_SEG に訂正の遡及方法を定義すれば、1 月と 2 月の両方の値が 110 となり、この 2 つの値を加算して正しい合計額 220 が算出されることになります。

国ページ (GP_COUNTRY) を使用して、一般会計の遡及処理を定義します。

注: 国ページについては、この製品ドキュメントの別のトピックで説明されています。

国ページ」を参照してください。

現在の結果と調整の合計を一般会計に使用

グローバル ペイロールを導入しているほとんどの組織では、最終決定された給与計算で遡及処理が発生した際に、一般会計に転記するチャートフィールドとエレメント グループを処理する方法をデフォルト設定しています。この場合、組織のニーズやグローバル ペイロール国別拡張機能に合ったデフォルトの遡及方法 (繰越または訂正) を国ページで指定するだけで済みます。

企業によっては、V1R1 の結果のみを一般会計に転記する方法を採用する場合もあります。国ページの [一般会計処理] チェック ボックスをオンにすると、この組織の要件に対応することができます。給与計算システムで発生した遡及処理に関して一般会計への転記方法を変更することにより、常にその方法を使用することができます。

[一般会計処理] チェック ボックスは、デフォルトではオフに設定されています。このチェック ボックスをオンにすると、一般会計に過去に転記されたチャートフィールドやエレメント グループの金額が取り消されないように設定されるため、遡及計算 (取り消し) に必要な手順は全て省略され、その代わりに V1R1 の結果と調整の合計のみが送信されます。国ページの [一般会計処理] チェック ボックスをオンにした場合、どちらのデフォルト遡及方法が選択されているかによって処理結果は次のように異なります。

  • [デフォルト遡及方法][訂正] が選択されている場合は、[一般会計処理] チェック ボックスをオンにしても、一般会計の遡及方法に影響ありません。

  • [デフォルト遡及方法][繰越] の場合には、遡及処理は以下のように変更されます。

    • 前回処理されたチャートフィールドと金額が、一般会計の勘定科目にマッピングされていたエレメント グループに関連付けられている場合は取り消されません。

    • 給与計算の遡及処理により再計算された金額は一般会計に転記されません。その代わりに、給与計算システムによって、現在の結果 (V1R1) と調整の合計が一般会計に送信されます。

注: 遡及方法がその都度異なる場合、[現在の結果と調整の合計を使用] グループ ボックスで [一般会計処理] をオンにすると、一般会計の処理結果には繰越と訂正の遡及方法が反映されます。繰越のエレメントにはデルタまたは調整の金額が含められ、訂正の遡及方法ではそれまで入力されていたデータが取り消され、訂正されます。

注: 銀行振込処理と一般会計処理に関して現在の遡及方法に問題がない場合は、[現在の結果と調整の合計を使用] グループ ボックスの [銀行振込処理] チェック ボックスと [一般会計処理] チェック ボックスはオンにしないようにしてください。設定をオンにすると、遡及処理に対応しません。

注: [現在の結果と調整の合計を使用] グループ ボックス内のチェック ボックスを一度オンにすると、デフォルト設定に戻すことはできません。チェック ボックスは表示専用になります。

注: 銀行振込処理と一般会計処理で使用されるテーブルはそれぞれ独立しています。したがって、[銀行振込処理] チェック ボックスと [一般会計処理] チェック ボックスをオンにする場合も、相互に影響することなく設定できます。

プロセス定義ページ」を参照してください。

例: [デフォルト遡及方法] に [繰越] を選択して、[現在の結果と調整の合計を使用] グループ ボックスの [一般会計処理] チェック ボックスをオンにした場合の処理

1 月の時点で、控除額 100 が一般会計勘定科目 210003 (チャートフィールド "部門 1" に対応する勘定科目) に転記されたとします。その後、遡及処理の対象となる変更が給与計算に発生し、1 月に控除額を転記した従業員は実際には部門 2 に属しており、部門 1 に属していなかったことが判明したとします。したがって、部門 2 に対する控除を一般会計勘定科目 210004 に転記する必要があります。

[現在の結果と調整の合計を使用] グループ ボックスの [一般会計処理] チェック ボックスがオンに設定されていて、[デフォルト遡及方法] に [繰越] が選択されている場合、一般会計への送信の結果は次のようになります。

バージョン/レビジョン番号

金額

勘定科目

アクション

1 月

V1R1

100

210003

変換 (前の期間)

2 月

V1R1

100 + 0

210004

変換 (現在の期間 + 調整)

この例では、エレメント グループに関連付けられているチャートフィールドと金額を取り消したり、元に戻した値を一般会計に送信していません。現在の期間の結果と調整の合計だけが処理されます。(控除金額に変更がないため、この場合の調整は 0 になります。)[一般会計処理] チェック ボックスをオンにすると、現在の変換されたチャートフィールドが使用されます。元のチャートフィールドは使用されません。その結果、調整が別の勘定科目に転記されてしまいます。

注: このように、金額が間違った勘定科目に転記されるため、1 月の転記を手動で訂正する必要があります。

給与計算システムの遡及処理モード (訂正または繰越) にかかわらず、一般会計での計算は常に訂正モードで実行されます。つまり、その遡及期間の以前のトランザクションは全て取り消され、再計算結果からの全てのエントリに対して新規のトランザクションが作成されます。これにより、金額の変更だけではなく、チャートフィールドや勘定科目の割り当てについての変更も更新されたトランザクションに反映されるようになります。結果的に、現在の期間から取得された数値は、常に繰り越し調整後の純額で一般会計に転送されます。

給与計算結果に対するこのような "訂正措置" は、一般会計側での処理とは異なります。全てのトランザクションは、一般会計でのプロセスを開始するときに、ユーザーが指定した転記日に基づいて転記され、遡及期間の本来の日付とは関係ありません。元の帳簿は閉じられている可能性があるからです。

1 月の時点で、控除額 100 が一般会計勘定科目 210003 (チャートフィールド "部門 1" に対応する勘定科目) に転記されたとします。その後、遡及処理の対象となる変更が給与計算に発生し、1 月に控除額を転記した従業員は実際には部門 2 に属しており、部門 1 に属していなかったことが判明したとします。したがって、部門 2 に対する控除を一般会計勘定科目 210004 に転記する必要があります。

次の表は、一般会計に送信された計算結果を示したものです。元の転記が取り消され、1 月の処理に対して正しい勘定科目への転記が行われています。

本来のカレンダー グループ

金額

勘定科目

アクション

1 月

1 月

100

210003

変換 (前の期間)

2 月

1 月

–100

210003

取消

2 月

1 月

100

210004

正しい勘定科目へ再転記

2 月

2 月

100

21004

現在の期間

セグメントの不一致が発生した場合は、現在の結果と調整の合計が常に使用され、その合計が前回使用されたセグメントに転記されます。