銀行振込での遡及計算の使い方

このトピックでは、遡及処理の概要と、以下の作業を行う方法について説明します。

  • デフォルト遡及方法を訂正遡及とする指定。

  • デフォルト遡及方法を繰越遡及とする指定。

  • 控除処理の詳細の確認。

  • [現在の結果と調整の合計を使用] グループ ボックスの [銀行振込処理] チェック ボックスをオフにした場合の処理例の確認。

  • [現在の結果と調整の合計を使用] グループ ボックスの銀行振込処理の指定。

  • デフォルト遡及方法に繰越を選択して [銀行振込処理] チェック ボックスをオンにした場合の処理例の確認。

銀行振込処理において、資金供給トランザクションが適切な送金元銀行から実行され、また、借方と貸方の入力が適切な受取人に対して行われるようにするためには、過去の計算の訂正を行う遡及計算が必要です。トランザクションの処理方法を決定するためには、銀行振込のプロセス時に遡及処理とその計算方法が認識されるようにしておく必要があります。

給与計算のデフォルト遡及方法は国ページで定義します ([HCM 基本設定]、[製品/業務別定義]、[グローバル ペイロール/休暇欠勤管理]、[システム設定]、[国別設定]、[国])。このページについては、この製品ドキュメントの他のトピックで説明されています。

国ページ」、「遡及処理の設定」を参照してください。

[国] ページで [デフォルト遡及方法][訂正] を選択した場合は、遡及処理が発生すると以下のステップが実行されます。

  1. 遡及処理で再計算されるよう定義された給与計算実行のエレメントが再計算されます。

  2. 給与計算実行のエレメントに対して再計算された値により、前回の計算が置換されます。

  3. 再計算期間の残高累計およびセグメント累計が更新されます。

  4. 遡及デルタが自動的に算出され、再計算期間に保存されます。

  5. [遡及プロセス上書] ページで繰越エレメント上書きとして定義されている給与計算実行のエレメントに対して、遡及調整が計算されます。

  6. 前回の計算と再計算との間に純支給額の差があるかどうかが確認されます。

  7. 差額がある場合は、銀行振込処理によって処理されます。純支給額が繰り越されていない前回の計算から純支給額入力の全てのセグメントが取り消されます。

    純支給額が繰り越されていない再計算から新しいセグメントの純支給額入力が挿入されます。

  8. 実行タイプ、従業員 ID/雇用レコード、および期間 ID との組み合わせと一致する純支給額配分セットに基づいて、純支給額が全て配分されます。

    合計がゼロの場合は、全ての入力が削除されます。

注: 純支給額の差額がマイナスの場合、その差額は第 1 口座に割り当てられます。

注: 給与計算の取り消しの場合、銀行振込処理によって前回の期間が取り消され、差額に加えて新しい計算結果が転記されます。

[国] ページで [デフォルト遡及方法][繰越] を選択した場合は、遡及処理が発生すると以下のステップが実行されます。

  1. 遡及処理で再計算されるよう定義された給与計算実行のエレメントが自動的に再計算されます。

  2. エレメントに対して再計算された値は、再計算期間の遡及デルタの計算に使用されますが、前回の計算は置換されません。

  3. セグメント累計のみが自動的に更新されます。遡及方法が繰越の場合でも、累計定義レベル、支給累計ページおよび控除累計ページで、残高累計が訂正として動作するように定義することができます。

  4. 遡及デルタが自動的に算出され、再計算期間に保存されます。

  5. 遡及プロセス上書きページで繰り越されるように定義されている、給与計算実行のエレメントに対して遡及調整が算出されます。

  6. 以前に再計算された期間の差分が現在期間に含まれているため、銀行振込処理では現在期間の計算から純支給額だけが取得されます。

遡及の目的にかかわらず、控除処理の手順は以下のとおりです。

  1. カレンダー グループで前回の遡及期間の全ての計算から控除が取り消されます。

  2. 取り消された控除のうち遡及方法が繰越の控除が元に戻されます。これは、適切な受取人に割り当て直すことが目的であるためです。

  3. 訂正遡及で再計算済みの控除について、新しいトランザクションが挿入されます。

    この処理には 2 つのステップがあります。最初は一般受取人に対して、次は個人受取人に対して行われます。

  4. 同一の受取人 ID を持ち、結果がゼロの入力が削除されます。

[銀行振込処理] チェック ボックスがオフの場合は、次のように処理されます。

この例では、純支給額の送金元銀行、受取人、および受給者の口座の相互関係を説明します。現在期間を 2 月 (2004 年 2 月 1 日から 2004 年 2 月 28 日) として、1 月 (2004 年 1 月 1 日から 2004 年 1 月 31 日) にさかのぼって遡及処理が行われます。

  • ABC 社は、送金元銀行 123 を利用しています。DEF 社は、送金元銀行 789 を利用しています。

  • 2 月 1 日から、受給者の勤務先が ABC 社から DEF 社に変更されます。

  • 2 月 15 日から、ABC 社の送金元銀行が 123 から 456 に変更されます。

  • 1 月 1 日から、支給 1 のレートが 100 から 150 に変更されます。

  • 1 月 1 日から、控除 1 のレートが 20 から 25 に変更されますが、受取人に変更はありません。

  • 2 月 1 日から、控除 1 の受取人が受取人 X から受取人 Y に変更されます。

  • 1 月 1 日から、控除 2 の受取人が受取人 A から受取人 B に変更されますが、レートに変更はありません。

  • 2 月 1 日から、受給者の配分口座が口座 1 から口座 2 に変更されます。

バージョン/レビジョン番号

2004 年 1 月 会社 ABC

配分情報

2004 年 2 月 会社 DEF

配分情報

V1R1

 

送金元銀行 123

 

送金元銀行 789

 

支給 1 = 100

 

支給 1 = 150

 

 

控除 1 = 20

受取人 X

控除 1 = 30

受取人 Y

 

控除 2 = 15

受取人 A

控除 2 = 15

受取人 B

 

純支給額 = 65

受給者の口座 1

純支給額 = 105

受給者の口座 2

         

V2R1

 

送金元銀行 456

   
 

支給 1 = 150

差分 50.00

   
 

控除 1 = 25

差分の 5 を受取人 X へ

   
 

控除 2 = 15

<15> を受取人 A へ 15 を 受取人 B へ

   
 

純支給額 = 110

差分の 45 を受給者の口座 2 へ

   

1 月の再計算 (V2R1) の説明

  • 控除 1

    V1R1 と V2R1 の差分は、5 です。

    受取人は、最初にその受給者の控除が計算された時点 (この場合は 1 月の V1R1) での受給者の勤務先に基づいて決められます。この場合、控除 1 の受取人に変更がなかったため、差分の 5 は受取人 X に送金元銀行 456 から支払われます。

  • 控除 2

    差分はありません。

    ただし、1 月にさかのぼると受取人に変更があります。受取人 A から 15 が取り消され、受取人 B に挿入されます。トランザクションはそれぞれ送金元銀行 456 に "請求" されます。

  • 純支給額

    V1R1 と V2R1 の差分は、45 です。

    受給者の配分口座は、現在のカレンダー (この場合 2 月) の支給日に基づいて決められます。差分の 45 は送金元銀行 456 から供給され、受給者の口座 2 に配分されます。

この例から、純支給額と控除は会社 (支給キー) に割り当てられ、受取人は支給期間に基づいていることがわかります。送金元銀行と受給者の口座はトランザクションが作成された時点を基に選択されます。

グローバル ペイロールを導入しているほとんどの組織では、遡及に関連した銀行振込処理を行う際に使用されるデフォルト遡及方法を指定しています。この場合、組織のニーズやグローバル ペイロール国別拡張機能に合った遡及方法 (繰越または訂正) を国ページで指定するだけで済みます。

組織によっては、V1R1 の結果のみを銀行振込処理に転記する方法を採用する場合もあります。国ページの [銀行振込処理] チェック ボックスを使用すると、組織の業務要件に合わせて、遡及に関連する銀行振込の処理方法を変更することができます。[銀行振込処理] チェック ボックスは、デフォルトではオフに設定されています。このチェック ボックスをオンにすると、銀行振込処理で過去の支給が取り消されないように設定されるため、遡及計算 (取り消し) に必要な手順は全て省略され、その代わりに V1R1 の結果と調整の合計のみが使用されます。

国ページの [銀行振込処理] チェック ボックスをオンにした場合、どちらのデフォルト遡及方法が選択されているかによって処理結果は次のように異なります。

  • [デフォルト遡及方法][訂正] の場合、銀行振込処理で訂正遡及の動作は変わりません。

  • [デフォルト遡及方法][繰越] の場合には、遡及処理は以下のように変更されます。

    • 遡及処理では、前回の金額は取り消されず、再計算された金額も転記されません。その代わりに、銀行振込処理で現在の結果 (V1R1) と調整の合計が使用されます。

    • ただし、現在の結果と調整の合計を使用する方法では、受取人や口座の遡及変更が反映されないため、銀行振込処理で確認された不整合については手動による訂正が必要になる場合があります。

    • セグメントの不一致が発生した場合は、現在の結果と調整の合計が常に使用され、その合計が前回使用されたセグメントに転記されます。この場合、国ページで指定されたデフォルト遡及方法や、[現在の結果と調整の合計を使用] グループ ボックス内のチェック ボックスの設定に関係なく処理されます。

      セグメントの不一致が発生するのは、分割された期間がさかのぼって再計算され、元の計算の分割日が再計算の分割日と同一日でない場合です。

注: 銀行振込処理と一般会計処理に関して現在の遡及方法に問題がない場合は、[現在の結果と調整の合計を使用] グループ ボックスの [銀行振込処理] チェック ボックスと [一般会計処理] チェック ボックスはオンにしないようにしてください。設定をオンにすると、遡及処理に対応しません。

注: [現在の結果と調整の合計を使用] グループ ボックス内のチェック ボックスを一度オンにすると、デフォルト設定に戻すことはできません。チェック ボックスは表示専用になります。

注: 銀行振込処理と一般会計処理で使用されるテーブルはそれぞれ独立しています。したがって、[銀行振込処理] チェック ボックスと [一般会計処理] チェック ボックスをオンにする場合も、相互に影響することなく設定できます。

注: [現在の結果と調整の合計を使用] グループ ボックスは国別に設定されます。したがって、国ページで行った設定は、その国だけにしか適用されません。

この例では、控除額 100 が受取人 1 に対して 1 月 1 日に支払われています。2 月には、この受取人が受取人 2 に変更されますが、有効日が 1 月であるため、遡及処理がトリガされます。[銀行振込処理] チェック ボックスがオンに設定されていて、デフォルト遡及方法が繰越の場合、この受取人情報と金額情報は銀行振込処理の結果に転記されます。

バージョン/レビジョン番号

金額

受取人

アクション

1 月

V1R1

100

1

変換 (前の期間)

2 月

V1R1

100 + 0

2

変換 (現在の期間 + 調整)

この場合、取り消しや元に戻す処理は行われません。現在の期間の結果と調整の合計だけが処理されます。(控除金額に変更がないため、この場合の調整は 0 になります。)