1 はじめに

ACSLS HA は、コンポーネントやサブシステムに障害が発生した場合に、中断なしのテープライブラリの制御サービスを保証するために、デュアル冗長性、自動回復、および自動フェイルオーバー回復を提供するハードウェア構成およびソフトウェア構成です。このドキュメントでは、ACSLS ソフトウェアに高可用性を提供するために必要な構成、設定、およびテストの手順について説明します。

手順を開始する前に、完全なインストールプロセスを確認することをお勧めします。クラスタ化されたアプリケーションのインストールプロセスには、細部まで厳しく注意する必要のある複数の手順が伴います。通常、この手順は UNIX システム統合の専門家によって実行されます。

ACSLS HA システムに関連付けられたハードウェアおよびソフトウェアコンポーネントが複数あるため、完全なインストール手順を実行するには数日間かかることもあります。既存の本番ライブラリ環境の場合、ACSLS HA インストールの処理中でもライブラリが運用されるように、お客様は単純なスタンドアロン ACSLS サーバーをインストールすることをお勧めします。

構成は 2 ノードのクラスタです。重大なシステム障害を検出できるモニタリングソフトウェアを備えた 2 つの完全なサブシステム (1 つはアクティブ、1 つはスタンバイ) が含まれます。サブシステムに回復不能な障害が発生した場合に、制御をプライマリからスタンバイシステムに切り替えることができます。この構成では、冗長電源装置、および一般的なスイッチオーバーの必要なしに即座にサブシステムの通信障害から回復できる冗長ネットワークと I/O の相互接続が提供されます。

ACSLS HA では、Solaris Cluster のモニタリングおよびフェイルオーバー機能および Solaris オペレーティングシステムのマルチパス機能を活用することで、最小の停止時間で回復性の高いライブラリの制御操作が実現されます。Solaris では、中断なしのネットワーク接続を保証する IP マルチパス、およびシステムデータへの中断なしのアクセスを保証する RAID 1 を使用したマルチパスディスク I/O が提供されています。Solaris Cluster は、オペレーティングシステム、内部ハードウェア、および外部 I/O リソースを含むシステムリソースの健全性を監視し、必要に応じてシステムのスイッチオーバーを管理できます。ACSLS HA エージェントは、ACSLS アプリケーション、そのデータベース、そのファイルシステム、および StorageTek ライブラリリソースへの接続をモニターして、必要に応じて Solaris Cluster のフェイルオーバーサービスを起動します。

このような冗長構成では、クラスタフレームワークの内外で常に認識されている単一の論理ホスト ID が ACSLS Library Control Server に割り当てられています。この ID は、必要に応じてクラスタノード間で自動的に転送されますが、転送時の停止時間は最小限です。

プロジェクトに着手する前に、ここで説明するように、ACSLS HA をインストールおよび構成する完全なプロセスを確認します。必要に応じて、Oracle の Advanced Customer Services でインストール全体の忠告、支援、および処理に対応できます。

ACSLS ドキュメントについては、次にある OTN (Oracle Technical Network) を参照してください。

http://docs.oracle.com/

システム要件

ACSLS HA サーバーは、1 つの RAID ディスクアレイを共有する 2 台の Solaris サーバーノードで構成されます。

クライアントのオプション

ACSLS HA は、Automated Cartridge System アプリケーションプログラミングインタフェース (ACSAPI) ネットワークインタフェースを使用するすべての ACSLS クライアントをサポートします。単一のネットワーク IP アドレスは 2 つのサーバーノード間で共有されるため、ACSAPI クライアントが共通の仮想ホスト ID を使用して ACSLS を処理できます。

SMCE (SCSI メディアチェンジャーエミュレーション) を使用してファイバチャネルクライアントに提供される論理ライブラリは、この製品でサポートされません。

サーバーのオプション

ACSLS HA 8.4 は、Solaris Cluster 4.2 の最小ハードウェア要件を満たすシステム上で実行するようにしてください。特定のサーバープラットフォーム要件については、『Oracle Solaris Cluster のシステム要件』というタイトルのドキュメントを参照してください。

http://www.oracle.com/technetwork/jp/server-storage/solaris-cluster/overview/sysreq-cluster-166689-ja.pdf

単一障害点を回避するには、各 ACSLS HA サーバーノードに次のものを構成する必要があります。

  • デュアル (冗長) 電源装置

  • 6 つの 10/100/1000 Base-T Ethernet ポート

  • 2 つのファイバチャネルポート (FC 接続のストレージを使用している場合)

  • 2 つの SAS ポート (SAS 接続のストレージを使用している場合)

システムが論理ライブラリ用に使用するように構成されている場合は、SCSI クライアントアプリケーションをサポートしている構成に、1 つ以上の専用ファイバチャネルポートを追加する必要があります。

ファイバ接続のライブラリ (SL500 や SL150 など) 用に構成するには、1 つのファイバチャネルポートを追加する必要があります。

ストレージアレイのオプション

サポートされているディスクアレイサブシステムについては、『Oracle Solaris Cluster Storage Partner Program』というタイトルのドキュメントを参照してください。

http://www.oracle.com/technetwork/server-storage/solaris-cluster/partnerprogram-cluster-168135.pdf

ネットワーク要件

合計で 7 つの IP アドレスを予約するようにしてください。

1 - 論理ホスト (クラスタの仮想 IP (VIP))

2 - ノード 1 の IP アドレス

3 - ノード 2 の IP アドレス

4 - ライブラリインタフェース 1 のソース IP アドレス (ノード 1)

5 - ライブラリインタフェース 2 のソース IP アドレス (ノード 1)

6 - ライブラリインタフェース 1 のソース IP アドレス (ノード 2)

7 - ライブラリインタフェース 2 のソース IP アドレス (ノード 2)

ライブラリインタフェース 1 とライブラリインタフェース 2 は異なるサブネット上に存在することが理想的です (図2-1 を参照)。

ソフトウェア要件

ACSLS HA 8.4 では、次のソフトウェアコンポーネントが必要です。

  • Oracle Solaris 11.2 (SPARC または X86)

  • Oracle Solaris Cluster 4.2

ACSLS HA 用のインストール前チェックリスト

新しい ACSLS HA システムをインストールする前、または ACSLS HA システムを新しいリリースにアップグレードする前に、ACSLS HA をインストールするお客様環境に関する情報を確認し、記録します。

次のインストール前チェックリストを記入すると、リスクが排除されます。また、このチェックリストによりインストールがスムーズに処理され、お客様の環境に関する詳細を待っている間も遅延されません。

Oracle サポート担当者

  • このお客様をサポートする現地の Oracle 担当者はだれですか。

  • Solaris システム管理の経験者はいますか。

  • ACSLS の経験者はいますか。

  • ACSLS HA の経験者はいますか。

お客様サポート担当者

  • ACSLS HA サーバーやお客様のネットワークなどのアクティビティーをサポートするお客様のシステム管理担当者はだれですか。

  • Solaris システム管理の経験者はいますか。

  • ACSLS の経験者はいますか。

  • ACSLS HA の経験者はいますか。

  • ネットワーク管理者はだれですか。

ACSLS HA システム用のハードウェア

  • Oracle Sun サーバーのモデルは何ですか。

  • Solaris リリースおよび更新のレベルは何ですか。

  • メモリー (最小 10G バイト)。

  • ディスクをミラー化するには、各サーバーにデュアルブートドライブが必要です。

  • 共有ディスクのモデルは何ですか。これは Solaris Cluster によってサポートされていますか。

  • 各 ACSLS サーバーを共有ディスクアレイに接続するために使用される SAS またはファイバ HBA。

  • 各 ACSLS サーバーに 6 つの Ethernet ポートが必要です。

  • ACSLS がファイバ接続のライブラリ (SL500 または SL150) を管理している場合や、ACSLS にファイバターゲットモードのポートを使用している論理ライブラリが表示されている場合は、各 ACSLS サーバー上にファイバ HBA が必要です。

  • お客様環境に Solaris サーバーおよびディスクアレイを接続するために必要な電源コードは何ですか。たとえば、HA のインストールが遅延しないようにするには、プラグがお客様サイトの電源コンセントと一致する必要があります。

  • HA のインストールを開始する前に、HA サーバーおよび共有ディスクアレイが正しく構成されていることを確認します。

    • Ethernet 接続用の 6 ポートの要件を満たすために、各 HA サーバーに追加のネットワークインタフェースコントローラ (NIC) カードが搭載されている必要があります。

    • 外部の共有ディスクアレイのインタフェースタイプに注意し、互換性のある HBA が各サーバー上に構成されていることを確認します。

    • ACSLS がファイバ接続のライブラリ (SL500 や SL150 など) と通信する場合は、ファイバ HBA が必要です。

    • ACSLS にファイバターゲットモードを使用している論理ライブラリが提供されている場合は、Qlogic Fibre HBA が必要です。

ネットワーク情報

次のネットワーク情報を確認します。

2 台の HA ACSLS サーバーに割り当てられている IP アドレスとホスト名

  • インストールするには、合計で 9 つの IP アドレスが必要です。

    • ACSLS サーバーノード 1 のローカルアドレス

    • ACSLS サーバーノード 2 のローカルアドレス

    • 論理ホストアドレス (2 台の HA ノード間で共有される仮想 IP アドレス)

    • ノード 1 からのライブラリ接続 a

    • ノード 1 からのライブラリ接続 b (デュアル TCP/IP またはマルチ TCP/IP による冗長化の場合)

    • ノード 2 からのライブラリ接続 a

    • ノード 2 からのライブラリ接続 b (デュアル TCP/IP またはマルチ TCP/IP による冗長化の場合)

    • ノード 1 上の ILOM

    • ノード 2 上の ILOM

  • ACSAPI クライアントは ACSLS と通信しますか。

    • フェイルオーバーイベントのあと、アクティブノードに仮想 IP アドレスが指定されます。仮想 IP アドレスは、どのノードがアクティブであるかにかかわらず ACSLS クライアントからアクセスできます。

    • ACSAPI クライアント上で ACSLS HA の仮想 IP アドレスまたはホスト名を設定する方法を知っていますか。この設定は、クライアント上で実行されている ISV アプリケーションによって異なります。

  • TCP/IP 接続のライブラリ (SL8500、SL3000、および 9310) と通信するために ACSLS で使用される IP アドレス。

  • 単一障害点を回避するには、各冗長ライブラリ接続を、それ独自の別個のサブネットを介して配線することをお勧めします。ネットワークトラフィックのボリュームが大きいことによる問題を防ぐために、サブネットはライブラリ通信用に予約し、一般のネットワーク通信からの干渉を受けないようにしてください。

  • 各 ACSLS HA ノード上のサービスプロセッサ (ILOM や ALOM など) にアクセスするために必要な IP アドレスとパスワード。

HLI ライブラリとの通信

ACSLS と TCP/IP 接続のライブラリ間の通信は、ブロードキャストトラフィックから保護されたサブネット上で行われていますか。

ファイアウォール

  • ACSAPI クライアントと ACSLS HA システム間にファイアウォールがありますか。

  • ACSLS HA システムとその管理対象ライブラリ間にファイアウォールがありますか。

ファイアウォールが存在する場合は、ACSLS 8.4 の管理者ガイドでファイアウォールセキュリティーのオプションに関する付録を参照して、ファイアウォールを介して通信するように ACSLS および ACSAPI クライアントを構成する方法の詳細を確認してください。

ファイバを使用した SCSI メディアチェンジャー

  • この ACSLS システムには、ファイバチャネルターゲットモードのポートを使用している論理ライブラリがクライアントに表示されていますか。その場合は、QLogic Fibre HBA が必要です。

インストールメディア

  • Oracle eDelivery の Web サイトからソフトウェア (Oracle Solaris Cluster、ACSLS、ACSLS HA、その他の必要なパッケージやパッチなど) をダウンロードできるように、HA サーバーからインターネットへの直接的または間接的なアクセスを構築しますか。

    間接的なアクセスの場合は、ファイルをインターネットから HA サーバーに転送できることを確認します。

  • ソフトウェアをインターネットからローカルマシンに直接ダウンロードする場合は、ブラウザの構成に必要な完全なプロキシ情報をインストール時に入手できることを確認します。

ACSLS と通信するクライアント (バックアップまたは ILM) アプリケーション

  • ACSAPI クライアント (バックアップや Information Lifecycle Management アプリケーションなど) は ACSLS と通信しますか。

    • ACSAPI クライアントが ACSLS と通信する場合、クライアントアプリケーション (NetBackup や Oracle SAM など) は何ですか。

    • 使用するクライアントのバージョンは何ですか。

    • クライアントが Windows 上で実行され、LibAttach を使用している場合、実行されている LibAttach のバージョンは何ですか。

  • クライアントアプリケーションは、ファイバチャネルターゲットモードのポートを使用して ACSLS 論理ライブラリと通信しますか。

    • クライアントアプリケーション (NetBackup や Oracle SAM など) は何ですか。

    • 使用するクライアントのバージョンは何ですか。

ACSLS のユーザー ID とグループ

ACSLS では、acsls グループにユーザー ID (acsssacsdb、および acssa) が必要です。

これらのユーザー ID および acsls グループは、ローカルで ACSLS HA サーバー上に設定できますか。それとも、サイトのセントラルユーザーおよびパスワード管理システムに統合する必要がありますか。

高レベルのインストール手順

ACSLS HA を完全にインストールするには、次の手順を実行する必要があります。

  1. 一般的な外部ファイバチャネルまたは SAS2 ディスクアレイに接続されている 2 台の Solaris プラットフォームサーバーをインストールします。各サーバー上に Solaris 11.2 をインストールします。

    Oracle Technology Network ライブラリから入手可能な『Oracle Solaris 11 システムのインストール』ドキュメントを参照してください。

    http://www.oracle.com/technetwork/documentation/solaris-11-192991.html

  2. 基本的な Solaris システムを構成します。

    • ユーザーアクセス権限

    • マルチパスネットワークアクセスとディスク I/O

    ACSLS HA 用の Solaris システムの構成 を参照してください

  3. ZFS ファイルシステムを構成します。

    • ルートストレージプール

    • ACSLS ストレージプール

    ZFS を使用したファイルシステムの構成 を参照してください

  4. ソフトウェアパッケージをダウンロードします。ソフトウェアパッケージのダウンロード を参照してください

    • ACSLS 8.4.0

    • Solaris Cluster 4.2

    • ACSLS HA 8.4.0

    ソフトウェアパッケージのダウンロード を参照してください

  5. ACSLS 8.4.0 とパッチ更新 (ある場合) をインストールします。ACSLS 8.4 のインストール を参照してください

  6. Solaris Cluster 4.2 とパッチ更新 (ある場合) をインストールします。Solaris Cluster 4.2 のインストール を参照してください

  7. ACSLS HA 8.4.0 をインストールします。ACSLS HA 8.4 のインストールと起動 を参照してください

  8. ACSLS HA 用に Cluster 操作を調整します。ACSLS HA の微調整 を参照してください