27 トランスポータブル表領域セットの作成
この章では、RMANを使用し、バックアップをリストアしてトランスポータブル表領域セットを作成する方法について説明します。ここでは、『Oracle Database管理者ガイド』で説明するトランスポータブル表領域の手順に習熟していることを前提としています。この章で説明する手順は、トランスポータブル表領域セットの生成に使用する代替方法です。この章の内容は、次のとおりです。
27.1 トランスポータブル表領域セットの作成の概要
この項では、RMANのバックアップからトランスポータブル表領域セットを作成する場合の基本的な概念およびタスクについて説明します。
27.1.1 トランスポータブル表領域セットの作成の目的
トランスポータブル表領域セットには、表領域セットのデータファイル、および表領域セットの構造メタデータを含むエクスポート・ファイルが含まれています。エクスポート・ファイルは、データ・ポンプ・エクスポートによって生成されます。
トランスポータブル表領域セットを使用する例としては、表領域リポジトリの作成があげられます。たとえば、四半期レポートに使用する複数の表領域を含むデータベースがある場合、これらの表領域のトランスポータブル・セットを表領域リポジトリのストレージに作成できます。その後、表領域のバージョンをリポジトリから要求して別のデータベースに組み込み、レポートの生成に使用することができます。
トランスポータブル表領域を使用するもう1つの例としては、Oracle Streams環境での使用があげられます。Oracle Streamsを使用して、宛先データベースとソース・データベースを継続して同期化するための準備をする場合には、Oracle Streamsのインスタンス化を実行する必要があります。Oracle Streamsを使用して後続の更新をソース・データベースから宛先データベースに移動する前に、2つのデータベースが同期化されたことがわかっている時点のSCNまで宛先データベースを戻す必要があります。バックアップからのトランスポータブル表領域セットは、Oracle Streamsのインスタンス化の一部として作成できます。
RMANのTRANSPORT TABLESPACEコマンドの主なメリットは、トランスポートする表領域のアクティブなデータファイルにアクセスする必要がないことです。これに対して、『Oracle Database管理者ガイド』で説明されているトランスポータブル表領域の方法では、トランスポート時に、トランスポートする表領域を読取り専用でオープンする必要があります。したがって、バックアップからトランスポートすると、トランスポート中、トランスポートする表領域を書込み用にオープンしたままにできるため、特に大規模な表領域の場合にデータベースの可用性が向上します。また、現行のデータベース・アクティビティによっては、表領域を読取り専用モードにする操作に時間が長くかかる場合もあります。
RMANのTRANSPORT TABLESPACEコマンドを使用すると、リカバリ期間内に目標時点、SCNまたはリストア・ポイントを指定し、表領域データを指定した時点の状態でトランスポートすることもできます(「指定した時点またはSCNでのトランスポータブル表領域セットの作成」を参照)。たとえば、バックアップの保存方針で1週間のリカバリ期間を保証しており、月の最終日のデータベースの内容に基づいてトランスポータブル表領域を作成する場合、RMANは、翌月の第1週目の任意の時点にそのタスクを実行できます。
関連項目:
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TRANSPORTTABLESPACEコマンドの詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・リファレンス』を参照してください。 -
RMANおよびOracle Streamsのインスタンス化の詳細は、『Oracle Streamsレプリケーション管理者ガイド』を参照してください。
27.1.2 トランスポータブル表領域セットの基本的な概念
RMANをソース・データベースにTARGETとして接続してから、TRANSPORT TABLESPACEコマンドを実行して、トランスポータブル表領域セットを作成します。ソース・データベースには、トランスポートされる表領域が含まれています。
RMANでは、TRANSPORT TABLESPACE操作の目標時点までリカバリ可能な、必要となるすべての表領域のバックアップおよびアーカイブREDOログ・ファイルが使用可能になっている必要があります。図27-1に、トランスポータブル表領域の基本プロセスを示します。
図27-1に示されているプロセスは、次のフェーズで実行されます。
-
RMANによって、補助インスタンスが起動されます。
RMANによって、表領域のリストアおよびリカバリを実行するために、ソース・データベースと同じホスト上に補助インスタンスが作成されます。また、補助インスタンスの初期化パラメータ・ファイルが自動的に作成され、インスタンスが
NOMOUNTモードで起動されます。 -
RMANによって、補助インスタンスの制御ファイルとして機能するソース・データベースの制御ファイルのバックアップがリストアされ、その制御ファイルがマウントされます。
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RMANによって、ソース・データベースのバックアップから、補助セットおよびトランスポータブル・セットのデータファイルがリストアされます。
補助セットには、表領域のトランスポートに必要なデータファイルおよびその他のファイルが含まれていますが、それらのファイル自体はトランスポータブル表領域セットの一部ではありません。通常、補助セットには、
SYSTEM表領域、SYSAUX表領域、一時ファイル、およびロールバック・セグメントまたはUNDOセグメントを含むデータファイルが含まれています。補助インスタンスには、それ自体の制御ファイル、パラメータ・ファイル、オンライン・ログなどの他のファイルが関連付けられますが、これらのファイルは補助セットの一部ではありません。RMANによって、選択した補助の宛先に補助データファイルが格納されます。補助の宛先は、トランスポート実行中に、補助インスタンスのパラメータ・ファイル、データファイル(トランスポータブル・セットのデータファイル以外)、制御ファイル、オンライン・ログなどの補助セット・ファイルをRMANによって格納できるディスク上の場所です。転送が正常に実行されると、これらのファイルはRMANによって削除されます。
RMANによって、表領域の格納場所にトランスポータブル・セット・ファイルが格納されます。表領域の格納場所は、表領域のトランスポートコマンドの完了時に、デフォルトでデータファイルのコピーおよび他の出力が格納されるディスク上の場所です。
-
RMANは、補助インスタンスでデータベースのPoint-in-Timeリカバリ(DBPITR)を実行します。
このリカバリによって、補助セットおよびトランスポータブル・セットのデータファイルの内容が、
TRANSPORTTABLESPACEコマンドに対して指定された目標時点の状態に更新されます。目標時点が指定されていない場合、RMANでは、すべての使用可能なREDOログを使用してリカバリが行われます。必要に応じて、バックアップからアーカイブREDOログが補助の宛先(またはその他の場所)にリストアされ、適用後に削除されます。 -
RMANによって、補助データベースが
RESETLOGSオプションを使用してオープンされます。これにより、データファイルに、表領域のトランスポート操作の目的のSCN時点の表領域内容が反映されます。
-
RMANによって、補助インスタンスのトランスポータブル・セットの表領域が読取り専用モードに設定されます。また、データ・ポンプ・エクスポートがトランスポータブル表領域モードで起動され、トランスポータブル・セットのエクスポート・ダンプ・ファイルが作成されます。
デフォルトでは、ダンプ・ファイルは表領域の格納場所に格納されます。ダンプ・ファイルの場所を指定するには、「データ・ポンプ・ファイルの場所の指定」を参照してください。
また、RMANによって、トランスポートした表領域をターゲット・データベースに組み込む場合に使用するサンプル・データ・ポンプ・インポート・スクリプトも生成されます。このスクリプトの内容は、表領域の格納場所の
impscript.sqlという名前のファイルに書き込まれます。このスクリプト用のコマンドも、RMANのコマンド出力に含まれます。 -
前述の手順が正常に実行されると、RMANによって、補助インスタンスが停止され、
TRANSPORTTABLESPACE操作の実行中に作成されたすべてのファイル(トランスポータブル・セット・ファイル、データ・ポンプ・エクスポート・ファイルおよびサンプル・インポート・スクリプトを除く)が削除されます。
27.1.3 トランスポータブル表領域セットの作成の基本手順
トランスポータブル表領域セットを作成する前に、いくつかの前提条件を満たす必要があります。これらの前提条件については、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・リファレンス』のTRANSPORT TABLESPACEエントリを参照してください。
トランスポータブル表領域セットの作成の基本手順は次のとおりです。
27.2 補助インスタンスの初期化パラメータのカスタマイズ
RMANにより、補助インスタンスに使用される初期化パラメータをカスタマイズできます。
RMANは、補助インスタンスの作成時に、初期化パラメータ・ファイルを作成します。デフォルト値は、ほとんどのTRANSPORT TABLESPACEの例(特にTRANSPORT TABLESPACEコマンドにAUXILIARY DESTINATIONオプションを指定する場合)で正常に動作します。また、RMANは、追加の初期化パラメータの値を含む補助インスタンスのパラメータ・ファイルも使用できます。これらの値によって、デフォルトの初期化パラメータ・ファイルで定義されているパラメータの値が上書きされます。
次の理由から、補助インスタンスのパラメータ・ファイルを使用する場合があります。
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STREAMS_POOL_SIZEおよびSHARED_POOL_SIZEを増加するため(データ・ポンプ・エクスポートで必要な場合)。 -
補助インスタンスのデータファイルの場所の場所を管理するため。たとえば、すべてのファイルの場所を個別に指定せずに、補助インスタンスのすべてのデータファイルが同一の場所に格納されないようにする場合などです。
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LOG_FILE_NAME_CONVERTを使用してオンラインREDOログの名前を指定するため。
補助インスタンスのパラメータ・ファイルは、補助インスタンスの完全な初期化パラメータ・ファイルとはみなされません。指定したパラメータは、補助インスタンスのデフォルト・パラメータに追加されるか、これらのパラメータを上書きします。上書きしない初期化ファイルに、パラメータを指定する必要はありません。
27.2.1 RMAN補助インスタンスの初期化パラメータの設定について
RMANは、自動補助インスタンスに対して表27-1の基本初期化パラメータを定義します。
表27-1 補助インスタンスに対するデフォルトの初期化パラメータ
| 初期化パラメータ | 値 |
|---|---|
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ソース・データベースの |
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ソース・データベースの互換性設定と同じです。 |
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ソース・データベースの |
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ソース・データベースの |
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推奨値280Mです。 |
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補助の宛先( |
表27-1に示されている、補助インスタンスのパラメータ・ファイル内の基本初期化パラメータを不適切な値で上書きすると、TRANSPORT TABLESPACEが失敗する場合があります。問題が発生する場合は、初期化パラメータをデフォルト値に戻してください。
関連項目:
ファイルの名前を指定するためにDB_FILE_NAME_CONVERTおよびLOG_FILE_NAME_CONVERTを使用する方法については、「初期化パラメータを使用した補助ファイル名の指定」を参照してください。
27.2.2 補助インスタンスのパラメータ・ファイルの場所の設定
デフォルトでは、RMANは、RMANクライアントが実行されているホスト上のオペレーティング・システム依存の場所で、補助の初期化パラメータ・ファイルを検索します。この場所は、補助インスタンスが実行されているホスト上ではない場合があります。UNIXシステムの場合、この場所は?/rdbms/admin/params_auxint.oraです。ここで、クエスチョン・マーク(?)は、RMANが実行されるホスト上のORACLE_HOMEを表します。デフォルトの場所でファイルが検出されない場合でも、RMANはエラーを生成しません。
補助インスタンスのデフォルトの初期化パラメータを使用する場合は、TRANSPORT TABLESPACEを実行する前に、補助インスタンスのパラメータ・ファイルが存在するかどうかを確認してください。
補助インスタンスのパラメータ・ファイルに別の場所を指定するには、RMANでTRANSPORT TABLESPACEコマンドの前にRUNブロック内でSET AUXILIARY INSTANCE PARAMETER FILEコマンドを使用します。補助インスタンスのパラメータ・ファイルのデフォルトの場所と同様に、SET AUXILIARY INSTANCE PARAMETER FILEコマンドを使用して指定したパスは、クライアント側のパスです。
RMANクライアントが実行されているホスト上に、/tmp/auxinstparams.oraというファイルを作成するとします。このファイルには、次の初期化パラメータが含まれています。
SHARED_POOL_SIZE=150M;
例27-1に示すように、TRANSPORT TABLESPACEを指定して初期化パラメータ・ファイルを使用できます。RMANが補助インスタンスを作成する際に、/tmp/auxinstparams.oraのSHARED_POOL_SIZEパラメータによって、SHARED_POOL_SIZEで使用されるデフォルト値が上書きされます。
例27-1 補助インスタンスのパラメータ・ファイルの指定
RUN
{
SET AUXILIARY INSTANCE PARAMETER FILE TO '/tmp/auxinstparams.ora';
TRANSPORT TABLESPACE tbs_2
TABLESPACE DESTINATION '/disk1/transportdest'
AUXILIARY DESTINATION '/disk1/auxdest';
}27.3 トランスポータブル表領域セットの作成
この項では、最大限に自動化された最も基本的な場合のTRANSPORT TABLESPACEの使用について説明します。基本例を少し変更した例については、「トランスポータブル表領域セットの使用例」を参照してください。
『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・リファレンス』のTRANSPORT TABLESPACEエントリに関する項で説明されている前提条件を満たしていると想定しています。また、『Oracle Database管理者ガイド』で説明されている前提条件も満たしていると想定しています。
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ソース・プラットフォームと宛先プラットフォーム間で、表領域のトランスポートがサポートされていることを確認します。
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トランスポータブル・セットに含める自己完結型の表領域セットを識別します。
トランスポータブル表領域セットを作成する手順
27.4 トランスポータブル表領域セットの作成のトラブルシューティング
RMANのTRANSPORT TABLESPACEコマンドが失敗すると、トラブルシューティングのために、失敗した補助インスタンスのファイルがその補助インスタンスの宛先にそのまま残ります。
SET NEWNAME、CONFIGURE AUXNAMEおよびDB_FILE_NAME_CONVERT設定を使用したため、補助セット内またはトランスポータブル表領域セット内の複数のファイルに同じ名前が付けられた場合は、TRANSPORT TABLESPACEコマンドの実行中にエラーがレポートされます。この問題を解決するには、これらのパラメータに異なる値を使用して、重複するファイル名が作成されないようにします。ネーミング方法については、「トランスポータブル表領域を使用した補助ファイルの場所の指定」を参照してください。
27.5 トランスポータブル表領域セットの使用例
この項では、次の項目について説明します。
27.5.1 指定した時点またはSCNでのトランスポータブル表領域セットの作成
TRANSPORT TABLESPACEコマンドを使用すると、目標時点またはSCNを指定できます。表領域の転送操作中、RMANは、目標時点より前のバックアップを使用して補助インスタンスで表領域をリストアし、補助データベースでPoint-in-Timeリカバリを実行して指定の目標時点にリカバリします。このPoint-in-Timeリカバリに必要なバックアップおよびアーカイブREDOログが使用可能である必要があります。
例27-2に示すように、(現行のインカネーションまたはその祖先内の)SCNを使用して目標時点を指定できます。
例27-2 終了SCNの指定
TRANSPORT TABLESPACE tbs_2 TABLESPACE DESTINATION '/disk1/transportdest' AUXILIARY DESTINATION '/disk1/auxdest' UNTIL SCN 11379;
例27-3に示すように、リストア・ポイントを指定することもできます。
例27-3 終了リストア・ポイントの指定
TRANSPORT TABLESPACE tbs_2 TABLESPACE DESTINATION '/disk1/transportdest' AUXILIARY DESTINATION '/disk1/auxdest' TO RESTORE POINT 'before_upgrade';
例27-4に示すように、終了時刻を指定することもできます。
例27-4 終了時刻の指定
TRANSPORT TABLESPACE tbs_2 TABLESPACE DESTINATION '/disk1/transportdest' AUXILIARY DESTINATION '/disk1/auxdest' UNTIL TIME 'SYSDATE-1';
27.5.2 データ・ポンプ・ファイルの場所の指定
トランスポータブル・セットのデータ・ポンプ・エクスポート・ダンプ・ファイル、ターゲット・データベースで使用するサンプル・インポート・スクリプト、データ・ポンプ・エクスポートで生成されるログ・ファイル、およびこれらのファイルの書込み先となるディレクトリの名前を変更できます。
デフォルトでは、これらのファイルは、表領域の格納場所に格納され、次のような名前になります。
-
データ・ポンプ・エクスポート・ダンプ・ファイルは、
dmpfile.dmpという名前になります。 -
エクスポート・ログ・ファイルは、
explog.logという名前になります。 -
サンプル・インポート・スクリプトは、
impscrpt.sqlという名前になります。
TRANSPORT TABLESPACEコマンドのDATAPUMP DIRECTORY句を使用してデータベース・ディレクトリ・オブジェクトの名前で渡すことによって、ダンプ・ファイルとエクスポート・ログを異なるディレクトリに格納できます。DATAPUMP DIRECTORY句で使用するデータベース・ディレクトリ・オブジェクトは、実際のファイル・システム・ディレクトリのディレクトリ・パスではありません。渡される値は、データ・ポンプ・エクスポートのDIRECTORYコマンドライン引数に対応しています。
関連項目:
データ・ポンプ・エクスポートでのディレクトリ・オブジェクトの使用方法の詳細は、『Oracle Databaseユーティリティ』を参照してください。
これらのファイルの名前は、TRANSPORT TABLESPACEのDUMP FILE、EXPORT LOG、およびIMPORT SCRIPT句を使用して変更できます。ファイル名には、ディレクトリ名を使用した完全なファイル・パスを含めることができません。DUMP FILEまたはEXPORT LOGというファイル名によってファイル・パスを指定した場合、TRANSPORT TABLESPACEでエクスポート・ダンプ・ファイルを生成しようとすると失敗します。DATAPUMP DIRECTORY句を使用して、データ・ポンプ・エクスポートの出力場所を識別するデータベース・ディレクトリ・オブジェクトを指定します。
次の例では、DATAPUMP DIRECTORY、DUMP FILE、EXPORT LOGおよびIMPORT SCRIPTというファイル名を指定したTRANSPORT TABLESPACEを使用します。次のように入力して、データ・ポンプ・エクスポートで使用するためにデータベース・ディレクトリ・オブジェクトを作成するとします。
CREATE OR REPLACE DIRECTORY mypumpdir as '/datapumpdest';
例27-5に、ファイルの出力場所を指定するオプションの引数を使用したTRANSPORT TABLESPACEコマンドを示します。
例27-5 ファイルの出力場所の指定
TRANSPORT TABLESPACE tbs_2 TABLESPACE DESTINATION '/transportdest' AUXILIARY DESTINATION '/auxdest' DATAPUMP DIRECTORY mypumpdir DUMP FILE 'mydumpfile.dmp' IMPORT SCRIPT 'myimportscript.sql' EXPORT LOG 'myexportlog.log';
正常に実行されると、RMANは、補助の宛先をクリーンアップし、DATAPUMP DIRECTORY(/datapumpdest/mydumpfile.dmpおよび/datapumpdest/myexportlog.log)によって参照されるディレクトリにデータ・ポンプ・エクスポート・ダンプ・ファイルおよびエクスポート・ログを作成し、トランスポータブル・セットのデータファイルを/transportdestに格納します。
27.5.3 トランスポータブル表領域を使用した補助ファイルの場所の指定
いくつかの規則が、転送実行中に作成される補助インスタンス・ファイルの場所に適用されます。
補助ファイルの場所を指定する方法にかかわらず、目標時点でこのトランスポート操作に使用するのに適したデータファイル・コピーがいずれかの補助ファイルに含まれるとRMANが判断した場合、データファイルをリストアするかわりに、そのデータファイル・コピーが使用されます。存在するデータファイル・コピーのうち、要求された時点よりも新しいため、またはターゲット・データベースの一部として認識されていないためにこのトランスポート操作に適さないものは、データファイルのリストア時に上書きされます。
最も簡単な方法としては、TRANSPORT TABLESPACEコマンドのAUXILIARY DESTINATION句を使用して、RMANで自動的にすべてのファイルの場所を管理する方法があげられます。
次の表に、補助インスタンスの一部またはすべてのファイルを再配置する場合にファイルの場所を指定するために使用できる方法をRMANが使用する優先順位の高い順に示します。
表27-2 補助ファイルの場所を指定するオプション
| 優先順位 | 補助ファイルのネーミング方法 | 追加情報 |
|---|---|---|
| 1 |
|
|
| 2 |
|
|
| 3 |
|
|
| 4 |
|
これらのうち複数のオプションを使用する場合は、ファイルに適用されるリスト内の最初のオプションによってファイル名が決定されます。
27.5.3.1 補助データファイルに対するSET NEWNAMEの使用
RUNブロック内で次のSET NEWNAMEコマンドを使用すると、TRANSPORT TABLESPACEコマンドで使用するファイル名を指定できます。
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SET NEWNAME FOR DATAFILE -
SET NEWNAME FOR DATABASE -
SET NEWNAME FOR TABLESPACE
例27-6に示すSET NEWNAME FOR DATAFILEコマンドを使用すると、補助インスタンスのデータファイルは/disk1/auxdestではなく、指定した場所にリストアされます。
例27-6 SET NEWNAME FOR DATAFILEを使用した補助データファイル名の指定
RUN
{
SET NEWNAME FOR DATAFILE '/oracle/dbs/tbs_12.f'
TO '/bigdrive/auxdest/tbs_12.f';
SET NEWNAME FOR DATAFILE '/oracle/dbs/tbs_11.f'
TO '/bigdrive/auxdest/tbs_11.f';
TRANSPORT TABLESPACE tbs_2
TABLESPACE DESTINATION '/disk1/transportdest'
AUXILIARY DESTINATION '/disk1/auxdest';
}
SET NEWNAMEは、1回のみの操作に最適です。特定の表領域セット用に、定期的にバックアップからトランスポータブル表領域を作成する予定がある場合、補助インスタンスのデータファイルの場所に永続的な設定を行うために、SET NEWNAMEのかわりにCONFIGURE AUXNAMEを使用することを検討してください。
27.5.3.2 補助データファイルに対するCONFIGURE AUXNAMEの使用
CONFIGURE AUXNAMEコマンドを使用して、トランスポータブル表領域セットまたは補助セットのデータファイル用の永続的な場所を指定できます。RMANは、リカバリの前に、CONFIGURE AUXNAMEコマンドが使用されている各データファイルを指定された場所にリストアします。RMANは、操作が失敗しないかぎり、操作の完了時に補助セットのデータファイルを削除します。
CONFIGURE AUXNAMEコマンドとTRANSPORT ... AUXILIARY DESTINATIONコマンドの間の関係を表す例を示します。表領域tbs_11をトランスポートするとします。表領域tbs_12は、補助セットの一部であり、データファイルtbs_12.fを含んでいます。次の手順を実行します。
前述の例で、RMANは、データファイル/oracle/dbs/tbs_12.fの補助セットのコピーを、AUXILIARY DESTINATIONで指定された場所ではなく/disk1/auxdest/tbs_12.fに格納します。CONFIGURE AUXNAME設定の優先順位が、AUXILIARY DESTINATIONの優先順位より高いためです。
注意:
『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・リファレンス』で説明するように、SHOW AUXNAMEコマンドを実行することによって、現行のCONFIGURE AUXNAME設定を表示できます。
27.5.3.3 AUXILIARY DESTINATIONを使用した補助ファイルの場所の指定
AUXILIARY DESTINATION引数をTRANSPORT TABLESPACEとともに使用する場合、SET NEWNAMEまたはCONFIGURE AUXNAMEコマンドを使用して別の場所に移動されていない補助セット・ファイルは、TRANSPORT TABLESPACE操作の間に補助の宛先に格納されます。
AUXILIARY DESTINATIONを使用しない場合は、LOG_FILE_NAME_CONVERTを使用して、補助インスタンスのオンラインREDOログ・ファイルの場所を指定する必要があります。SET NEWNAMEまたはCONFIGURE AUXNAMEのいずれを使用しても、補助インスタンスのオンラインREDOログの場所に影響を与えることはできません。このため、AUXILIARY DESTINATIONまたはLOG_FILE_NAME_CONVERTを使用しない場合、RMANにはオンラインREDOログを作成する場所に関する情報がありません。
27.5.3.4 初期化パラメータを使用した補助ファイル名の指定
補助インスタンスのパラメータ・ファイルでLOG_FILE_NAME_CONVERTおよびDB_FILE_NAME_CONVERT初期化パラメータを使用すると、補助インスタンスのオンラインREDOログおよびその他のデータベース・ファイルの名前を指定できます。TRANSPORT TABLESPACEコマンドにAUXILIARY DESTINATION句を指定しない場合は、これらのパラメータによって、CONFIGURE AUXNAMEまたはSET NEWNAMEコマンドが実行されなかったすべてのファイルの場所が決定されます。
元のファイルがOracle Managed Files(OMF)ファイルである場合、LOG_FILE_NAME_CONVERTまたはDB_FILE_NAME_CONVERTを使用して、補助インスタンスのファイルに新しいOMF名を生成することはできません。データベースによって、各OMF転送先で一意のファイル名が生成されるように管理されます。AUXILIARY DESTINATION句を使用して、オンラインREDOログ・ファイルの場所を制御する必要があります。AUXILIARY DESTINATION句、SET NEWNAMEコマンド、CONFIGURE AUXNAMEコマンドまたはDB_CREATE_FILE_DEST初期化パラメータを使用して、OMFデータファイルの場所を指定する必要があります。
関連項目:
LOG_FILE_NAME_CONVERTおよびDB_FILE_NAME_CONVERT初期化パラメータの詳細は、『Oracle Databaseリファレンス』を参照してください。
