7.1 共有記憶域にOracle ASMを使用するための記憶域要件の確認

Oracle Grid Infrastructureをインストールする前に、Oracle ASMで使用可能なデバイスの数、各ディスクで使用可能な空きディスク領域のサイズおよびOracle ASMで使用する冗長性レベルを特定および確認する必要があります。

Oracle ASMによって冗長性が提供される場合は、いくつかの障害グループで発生した障害で失われたデータの再作成を管理するのに十分な容量を、各ディスク・グループに確保しておく必要があります。

ヒント:

次の手順を実行する際に、Oracle ASMディスク・グループを作成するために使用するRAWデバイス名のリストを作成し、Oracle Grid Infrastructureのインストール中またはOracle RACデータベースの作成時にこの情報を使用できるようにします。
  1. Oracle ASMディスク・グループの要件を計画します。グリッド・インフラストラクチャ管理リポジトリ(GIMR)を別のOracle ASMディスク・グループに格納することを選択した場合は、2つの別々のOracle ASMディスク・グループが必要となります。1つはOCRおよび投票ファイル用で、もう1つはGIMR用です。
  2. Oracle ASMをOracle Databaseファイル、リカバリ・ファイルまたはすべてのファイル・タイプに使用するかどうかを決定します。Oracle Databaseファイルには、データファイル、制御ファイル、REDOログ・ファイル、サーバー・パラメータ・ファイル、およびパスワード・ファイルが含まれます。

    注意:

    • Oracle Databaseファイルとリカバリ・ファイルに同じ記憶域メカニズムを使用する必要はありません。一方のファイル・タイプに共有ファイル・システムを、他方にOracle ASMを使用することもできます。

    • Oracle Clusterwareファイルには、OCRファイルと投票ファイルの2つのタイプがあります。Oracle ASMを使用して、OCRファイルと投票ファイルを格納する必要があります。

  3. Oracle ASMディスク・グループに使用するOracle ASMの冗長レベルを選択します。

    Oracle ASMディスク・グループに選択した冗長レベルによって、Oracle ASMがディスク・グループ内のファイルをミラー化する方法および必要となるディスク数とディスク領域が決まります。外部冗長を使用する場合を除き、Oracle ASMでは、ディスク・グループ内の個別の障害グループに、すべてのOracle Clusterwareファイルをミラー化します。定数障害グループは特殊なタイプの障害グループで、投票ファイルが標準または高冗長ディスク・グループに格納されている場合に投票ファイルのミラー・コピーが格納されます。Oracle Clusterwareファイル(OCRファイルと投票ファイル)があるディスク・グループの障害グループの最小数は、投票ファイルがOracle ASMディスク・グループ内の定数障害グループに格納されているため、他のディスク・グループよりも多くなります。

    定数障害グループは、Oracle Clusterwareの投票ファイルを格納する特別なタイプの障害グループです。定数障害グループは、指定した障害グループの定数が使用可能であることを保証します。Oracle Clusterwareファイルが含まれたディスク・グループがOracle ASMによってマウントされるときには、1つ以上の障害グループが失われた場合に、ディスク・グループをマウントできるかどうかが、定数障害グループにより判別されます。定数障害グループ内のディスクにはユーザー・データが含まれないため、ユーザー・データを格納するための冗長性要件を決定するときには、このグループは考慮されません。

    冗長レベルは、次のとおりです。

    • 高冗長性

      高冗長ディスク・グループでは、Oracle ASMはデフォルトで3方向のミラー化を使用してパフォーマンスを向上させ、最高レベルの信頼性を提供します。高冗長ディスク・グループでは、最小で3台のディスク・デバイス(または3つの障害グループ)が必要です。高冗長のディスク・グループで有効なディスク領域は、全デバイスのディスク領域の合計の3分の1です。

      Oracle Clusterwareファイルの場合、高冗長のディスク・グループは最小で5台のディスク・デバイスを必要とし、5つの投票ファイル、1つのOCR(プライマリに1つ、セカンダリ・コピーに2つ)を提供します。たとえば、デプロイメントを3つの正規障害グループと2つの定数障害グループで構成できます。投票ファイルが5つのディスクすべてを必要とするとはいえ、すべての障害グループが定数障害グループになれるわけではない点に注意してください。高冗長のクラスタは、障害グループを2つ失っても存続できます。

      高冗長ディスク・グループでは、高レベルのデータ保護が提供されますが、この冗長レベルの使用を決定する前に、追加するストレージ・デバイスのコストを考慮する必要があります。

    • 標準冗長性

      標準冗長ディスク・グループでは、パフォーマンスおよび信頼性を向上させるために、Oracle ASMはデフォルトで2方向のミラー化を使用します。標準冗長ディスク・グループでは、最小で2台のディスク・デバイス(または2つの障害グループ)が必要です。標準冗長のディスク・グループで有効なディスク領域は、すべてのデバイスのディスク領域の合計の半分です。

      Oracle Clusterwareファイルの場合、標準冗長のディスク・グループは最小で3台のディスク・デバイスを必要とし、3つの投票ファイル、1つのOCR(プライマリに1つ、セカンダリ・コピーに1つ)を提供します。たとえば、デプロイメントを2つの正規障害グループと1つの定数障害グループで構成できます。標準冗長のクラスタは、障害グループを1つ失っても存続できます。

      ストレージのデータ消失に対する独立保護を提供するストレージ・アレイを使用していないのであれば、標準冗長を選択することをお薦めします。

    • 外部冗長性

      外部冗長ディスク・グループでは、最小で1台のディスク・デバイスが必要です。外部冗長のディスク・グループで有効なディスク領域は、全デバイスのディスク領域の合計です。

      Oracle ASMは外部冗長ディスク・グループ内のデータをミラー化しないため、RAIDなどのストレージ・デバイスによる外部冗長を使用するか、または独自のデータ保護メカニズムを持つ類似デバイスを使用することをお薦めします。

    • フレックス冗長性

      フレックス冗長ディスク・グループは、フレキシブルなファイル冗長性、ミラー分割、冗長性変更などの機能を持つ冗長ディスク・グループのタイプです。フレックス・ディスク・グループは、異なる冗長性要件を持つファイルを単一のディスク・グループに統合できます。データベースでファイルの冗長性を変更する機能も用意されています。ディスク・グループはファイル・グループのコレクションであり、それぞれ1つのデータベースに関連付けられています。割当て制限グループにより、ディスク・グループ内のデータベース・グループの最大記憶領域または割当て制限が定義されます。

      フレックス冗長ディスク・グループでは、Oracle ASMはOracle ASMメタデータの3方向のミラー化を使用してパフォーマンスを向上させ、信頼性を提供します。データベース・データに対して、ミラー化なし(非保護)、双方向ミラー化(ミラー化)または3方向ミラー化(高)を選択できます。フレックス冗長ディスク・グループでは、最小で3台のディスク・デバイス(または3つの障害グループ)が必要です。

    注意:

    ディスク・グループの作成後、ディスク・グループの冗長レベルを変更できます。たとえば、標準または高冗長ディスク・グループをフレックス冗長ディスク・グループに変換できます。フレックス冗長ディスク・グループ内のファイル冗長性は、非保護、ミラー化または高の3つの可能な値の間で変更できます。
  4. 共有記憶域にOracle ASMを使用するためにOracle Clusterwareファイルに必要となるディスク領域の合計容量を決定します。

    システムでOracle ASMインスタンスが実行されている場合は、既存のディスク・グループを使用して記憶域要件を満たすことができます。必要に応じて、データベースをインストールする際に既存ディスク・グループにディスクを追加できます。

  5. 割当て単位サイズを決定します。

    すべてのOracle ASMディスクは割当て単位(AU)に分割されます。割当て単位とは、ディスク・グループ内での割当ての基本単位です。特定のディスク・グループ互換レベルに応じて、AUサイズの値には1、2、4、8、16、32または64MBを選択できます。フレックス・ディスク・グループの場合、AUサイズのデフォルト値は4MBに設定されています。外部冗長、標準冗長および高冗長性ディスク・グループの場合、デフォルトのAUサイズは1 MBです。

  6. Oracle Clusterwareインストールでは、Oracle ASMのメタデータ用にディスク領域を追加する必要もあります。次の計算式を使用して、OCR、投票ファイルおよびOracle ASMメタデータのディスク領域要件(MB単位)を計算します。
    total = [2 * ausize * disks] + [redundancy * (ausize * (all_client_instances + nodes + disks + 32) + 
       (64 * nodes) + clients + 543)]

    redundancy = ミラーの数: 外部 = 1、標準 = 2、高冗長性 = 3、フレックス = 3
    ausize = メタデータのAUサイズ(MB)
    nodes = クラスタのノード数
    clients - 各ノードのデータベース・インスタンスの数
    disks - ディスク・グループのディスク数

    たとえば、標準冗長ディスク・グループに3台のディスクを使用する4ノードのOracle RACインストールでは、5293MBの追加領域が必要になります。 [2 * 4 * 3] + [2 * (4 * (4 * (4 + 1)+ 30)+ (64 * 4)+ 533)] = 5293 MB

  7. 必要な場合は、Oracle ASMディスク・グループのデバイスに障害グループを指定します。

    注意:

    Oracle RACのインストール前またはOracle RACデータベースの作成前にOracle ASMディスク・グループを構成するインストール方法を使用する場合は、この手順のみを完了する必要があります。

    標準または高冗長ディスク・グループを使用する場合は、カスタム障害グループのディスク・デバイスを関連付けることによって、ハードウェア障害に対するデータベースの保護を強化できます。障害グループには、障害の可能性のある共通のメカニズムを共有しているOracle ASMディスクを定義します。デフォルトでは、各デバイスに独自の障害グループが含まれます。

    標準冗長ディスク・グループの2台のディスク・デバイスが同じホスト・バス・アダプタ(HBA)に接続されている場合、コントローラに障害が発生すると、ディスク・グループは使用できなくなります。この例でのHBAは、シングル・ポイント障害です。このタイプの障害を防止するためには、2つのHBAファブリック・パスを使用します。各HBAに2台のディスクを接続し、各HBAに接続されたディスクに障害グループを定義します。この構成では、ディスク・グループが1つのHBAファブリック・パスの障害を許容できます。

    注意:

    Oracle Grid Infrastructureのインストール時に、カスタム障害グループを定義できます。Oracle Grid Infrastructureのインストール後に、GUIツールのASMCA、コマンドライン・ツールのasmcmd、またはSQLコマンドを使用して、障害グループも定義できます。カスタム障害グループを定義する場合、標準冗長性ディスク・グループに対して2つ以上の障害グループ、および高冗長性ディスク・グループに対して3つ以上の障害グループを指定する必要があります。
  8. システムに適切なディスク・グループが存在しない場合は、適切なディスク・デバイスを設置または指定して、新しいディスク・グループを追加します。次のガイドラインに従って、適切なディスク・デバイスを指定します。
    • ディスク・デバイスは、グリッド・インストールを実行するユーザーが所有する必要があります。

    • Oracle ASMディスク・グループでは、すべてのデバイスのサイズおよびパフォーマンス特性が同じである必要があります。

    • 単一の物理ディスクにある複数のパーティションを、1つのディスク・グループのデバイスとして指定しないでください。Oracle ASMは、各ディスク・グループのデバイスが、別々の物理ディスク上に存在するとみなします。

    • 論理ボリュームは、Oracle ASMディスク・グループのデバイスとして指定できますが、Oracle ASMには不要な複雑なレイヤーが追加されるため、これを使用することはお薦めできません。論理ボリューム・マネージャの使用を選択する場合は、追加ストレージ・レイヤーのストレージ・パフォーマンスに対する影響を最小化できるように、論理ボリューム・マネージャを使用してストライプ化またはミラー化しない単一の論理ユニット番号(LUN)を表すことをお薦めします。

関連項目: