この章の内容は次のとおりです。
親トピック: データ・グリッド操作の実行
問合せは、Coherenceキャッシュから特定の時点の問合せ結果を取得でき、さらに問合せの結果が変更された場合のイベントを受信できます。また、連続問合せ機能では問合せ結果を関連するイベントの連続的なストリームと結合し、リアルタイムに最新の問合せ結果を維持することが可能です。目的の問合せの待機時間が0である場合と同じ効果を持ち、問合せが1ミリ秒ごとに数回繰り返されるため、この機能は連続問合せと呼ばれています。キャッシュ内のデータの問合せを参照してください。
連続問合せは、問合せの結果を連続問合せキャッシュにマテリアライズし、問合せでイベント・リスナーを使用してリアルタイムでキャッシュを最新の状態に保つことにより実装されます。つまり、連続問合せは、決して古くなることのない、キャッシュされた問合せ結果になります。
連続問合せキャッシングには、いくつかの異なる一般的な用途があります。
これは、複合イベント処理(CEP: Complex Event Processing)システムやイベント相関エンジンにおける有用な構成要素です。
これは、アプリケーションが特定の問合せを繰り返し実行し、その問合せの最新の結果に常に即座にアクセスできることが有益である状況では、効果的です。
連続問合せキャッシュはマテリアライズド・ビューに類似しており、標準のNamedCache
APIを使用して問合せの結果にアクセスし、操作する場合およびその問合せに関連するイベントの現行ストリームを受信する場合に役立ちます。
連続問合せキャッシュは、最新のデータ・セットを使用場所(特定のサーバー・ノードやクライアント・デスクトップなど)でローカルに保持できるため、ニア・キャッシュと同様の方法で使用できます。ニア・キャッシュは無効化ベースですが、連続問合せキャッシュでは実際にデータが最新の状態で保持されます。
使用例の1つにトレーディング・システム・デスクトップがあります。このデスクトップには、トレーダーの未処理の注文とすべての関連情報が常に最新の状態で保持されている必要があります。Coherence*Extend機能を連続問合せキャッシュと組み合せることにより、アプリケーションで文字どおり何万もの同時ユーザーをサポートできます。
注意:
連続問合せキャッシュは、分散される可能性のあるより大きなキャッシュ・データ・セットの特定のサブセットについて、その最新のローカル・コピーを非常に簡単かつ効果的に維持する機能を提供します。そのため、クライアントベースおよびサーバーベースのアプリケーションを含め、ほとんどすべてのタイプのアプリケーションに有用です。
Coherenceでの連続問合せの実装には、com.tangosol.net.cache.ContinuousQueryCache
クラスを使用します。このクラスは、Coherenceのすべてのキャッシュと同様、次の機能を備えた標準のNamedCache
インタフェースを実装します。
Map
インタフェースを使用したキャッシュのアクセスおよび操作: NamedCache
は、Java Collections Frameworkの標準的なMap
インタフェースを拡張します。これは、JavaのHashMap
クラスとHashtable
クラスで実装されているものと同じインタフェースです。
キャッシュ内で発生するすべてのオブジェクト変更に対するイベント: NamedCache
はObservableMap
インタフェースを拡張します。
IDをベースとしたクラスタ全体でのキャッシュ内オブジェクトのロック: NamedCache
はConcurrentMap
インタフェースを拡張します。
キャッシュ内オブジェクトの問合せ: NamedCache
はQueryMap
インタフェースを拡張します。
キャッシュ内オブジェクトの分散パラレル処理および集約: NamedCache
はInvocableMap
インタフェースを拡張します。
ContinuousQueryCache
は、Coherenceのすべてのキャッシュで提供されるAPIであるNamedCache
インタフェースを実装しているため、非常に使いやすく、その機能が必要になった場合に別のキャッシュと簡単に置き換えることができます。
連続問合せキャッシュは、次の2つの項目で定義されます。
基礎となるキャッシュ
連続問合せキャッシュでキャッシュされるサブセットを構成する、基礎となるキャッシュの問合せ
基礎となるキャッシュには、別の連続問合せキャッシュを含めた任意のCoherenceキャッシュを使用できます。キャッシュは一般にCacheFactory
インスタンスで取得されます。これにより開発者は、次の例に示すように、キャッシュの名前を指定するのみでアプリケーションのキャッシュ構成情報に基づいて自動的にキャッシュを構成できます。
NamedCache cache = CacheFactory.getCache("orders");
この問合せは、データのフィルタリングに使用される問合せと同じタイプになります。次に例を示します。
Filter filter = new AndFilter(new EqualsFilter("getTrader", traderid), new EqualsFilter("getStatus", Status.OPEN));
キャッシュ内のデータの問合せを参照してください。
通常、キャッシュを問い合せるには、QueryMap
のメソッドを使用します。たとえば、トレーダー・オブジェクトの未決済ポジションすべてのスナップショットを取得するには、次のようにします。
Set setOpenTrades = cache.entrySet(filter);
同様に、連続問合せキャッシュは、次に示す同じ2つの要素で構成されます。
ContinuousQueryCache cacheOpenTrades = new ContinuousQueryCache(cache, filter);
連続問合せキャッシュでは、その基礎となるキャッシュに1つ以上のイベント・リスナーが配置されます。連続問合せキャッシュがアプリケーションの継続期間を通して使用される場合、リソースはそのノードがシャットダウンされたか、または別の原因で停止したときにクリーンアップされます。ただし、連続問合せキャッシュを一定の期間のみ使用する場合は、アプリケーションによる連続問合せキャッシュの使用が終了した時点で、ContinuousQueryCache
でrelease()
メソッドがコールされる必要があります。
連続問合せキャッシュを構成する際、問合せで取得されたキーのみをキャッシュで追跡し、要求された場合にのみ、その値を基礎となるキャッシュから取得するように指定できます。この機能は、問合せの結果セットが非常に膨大になる連続問合せキャッシュを作成する場合、または値をリクエストされることがないかほとんどない場合に役立ちます。キーのみをキャッシュするように指定するには、CacheValues
プロパティを構成できるコンストラクタを使用します。例:
ContinuousQueryCache cacheOpenTrades = new ContinuousQueryCache(cache, filter, false);
必要に応じて、CacheValues
プロパティはキャッシュがインスタンス化された後で変更することもできます。次に例を示します。
cacheOpenTrades.setCacheValues(true);
連続問合せキャッシュに標準の(非Lite)イベント・リスナーがある場合、またはイベント・リスナーのいずれかがフィルタリングされる場合は、CacheValues
プロパティが自動的にtrueに設定されます。これは、イベントをフィルタリングする際、および発生させたイベントに古い値と新しい値を提供する際に、ローカルにキャッシュされた値を連続問合せキャッシュが使用するためです。
この項には次のトピックが含まれます:
連続問合せキャッシュ自体は監視可能であるため、クライアントが連続問合せキャッシュに1つ以上のイベント・リスナーを配置することが可能です。次に例を示します。
ContinuousQueryCache cacheOpenTrades = new ContinuousQueryCache(cache, filter); cacheOpenTrades.addMapListener(listener);
キャッシュに格納されているすべてのアイテムとキャッシュに追加されるすべてのアイテムに対してなんらかの処理を実行する必要がある場合、その方法は2つあります。1つは、処理を実行した後、以降の追加に対処するリスナーを追加する方法です。
ContinuousQueryCache cacheOpenTrades = new ContinuousQueryCache(cache, filter); for (Iterator iter = cacheOpenTrades.entrySet().iterator(); iter.hasNext(); ) { Map.Entry entry = (Map.Entry) iter.next(); // .. process the cache entry } cacheOpenTrades.addMapListener(listener);
ただし、このコードは正しくありません。これでは、反復処理が終了してリスナーが追加されるまでのわずかの時間に発生したイベントを見逃すことになります。別の方法では、イベントを見逃さないように、まずリスナーを追加し、その後で処理を実行します。
ContinuousQueryCache cacheOpenTrades = new ContinuousQueryCache(cache, filter); cacheOpenTrades.addMapListener(listener); for (Iterator iter = cacheOpenTrades.entrySet().iterator(); iter.hasNext(); ) { Map.Entry entry = (Map.Entry) iter.next(); // .. process the cache entry }
ただし、同じエントリがイベント内とIterator
内の両方に出現し、イベントが非同期になる可能性があるため、操作の順序が正しいことは保証できません。
解決策は、構成時にリスナーを指定することです。そうすることで、既存の(問合せに含まれていた)項目であるか、キャッシュの構成時または構成後に追加された項目かどうかに関係なく、連続問合せキャッシュ内の項目ごとにイベントが1つずつリスナーに送信されます。
ContinuousQueryCache cacheOpenTrades = new ContinuousQueryCache(cache, filter, listener);
ContinuousQueryCache
実装にも同じ課題がありました。同じキャッシュから変更イベントのストリームを受信しながら、基礎となるキャッシュの正確なポイント・イン・タイム・スナップショットをいかにアセンブルするかということです。その解決法は、いくつかの部分に分かれています。まず、Coherenceでは同期イベントのオプションがサポートされており、これによって順序付けが保証されます。(マップ・イベントの使用を参照してください)。
また、ContinuousQueryCache
には初期移入の2フェーズ実装があります。これにより、基礎となるキャッシュを問い合せてから、第1フェーズで発生したすべてのイベントを解決できます。このようにイベントを見逃したり重複させたりすることなくデータの可視性を保証する操作はかなり複雑であるため、ContinuousQueryCache
では、アプリケーション開発者が作成時にリスナーを渡すことで、この複雑さに対処しなくても済むようにしています。
デフォルトでは、ContinuousQueryCache
のリスナーにはイベントが非同期で配信されます。ただし、ContinuousQueryCache
では、SynchronousListener
インタフェースで提供されている同期イベントのオプションも対応しています。連続問合せキャッシングの使用を参照してください。