3 リカバリ・アプライアンスのワークフロー

この章では、Zero Data Loss Recovery Appliance環境を管理するための基本的なワークフローについて説明します。この章では、該当する場合に『Zero Data Loss Recovery Appliance保護されたデータベースの構成ガイド』を参照しています。この章の内容は次のとおりです。

リカバリ・アプライアンス管理における職務の分離

一般的なリカバリ・アプライアンス環境には、次のロールを持つ個人が含まれます。

  • Cloud Control管理者

    このロールを持つアプリケーション管理者は、Oracle Enterprise Manager Cloud Control (Cloud Control)を管理します。職務には次が含まれます。

    • リカバリ・アプライアンスなどのターゲットの検出

    • 1つ以上の保護されたデータベースの管理

    • 1つ以上のリカバリ・アプライアンスの管理

  • リカバリ・アプライアンス管理者

    この管理者はリカバリ・アプライアンスを管理します。一般的な職務には次が含まれます。

    • 保護ポリシーの作成

    • 保護ポリシーへの保護されたデータベースの割当て

    • リカバリ・アプライアンスの領域の管理

    • テープおよびレプリケーション操作の構成

    • 仮想プライベート・カタログを所有するリカバリ・アプライアンス・ユーザー・アカウントの作成

    • リカバリ・アプライアンスのモニタリングとレポートの生成

  • 保護データベースの管理者

    この管理者は、リカバリ・アプライアンス管理者によって割り当てられた仮想プライベート・カタログ・アカウントを使用して、リカバリ・アプライアンスへのバックアップの構成を担当します。

関連項目:

リカバリ・アプライアンス管理の前提条件

Oracleフィールド・エンジニアとともに作業して、リカバリ・アプライアンスをインストールおよび設定する必要があります。

リカバリ・アプライアンス管理のツール

次のツールを使用して、リカバリ・アプライアンスの管理タスクを実行します。

  • Cloud Control

    Cloud Controlとは、リカバリ・アプライアンスおよびその保護データベースの管理およびモニタリングに使用できるグラフィカル・ユーザー・インタフェースが含まれたシステム管理ツールです。これはリカバリ・アプライアンスのタスクの推奨UIです。

    詳細は、Cloud Controlのオンライン・ヘルプを参照してください。

  • SQL*Plus

    SQL*Plusは、DBMS_RAプログラム・ユニットの実行やリカバリ・カタログ・ビューの問合せを行うことができるコマンドライン・ツールです。SQL文およびオラクル社が提供するPL/SQLパッケージを使用して、SQL*Plusでこれらのタスクを実行します。

    『SQL*Plusユーザーズ・ガイドおよびリファレンス』を参照してください。

リカバリ・アプライアンスの計画

次の一般的なタスクを実行する必要があります。

タスク1: 保護データベースの階層グループ分け

リカバリ要件に基づいてデータベースをグループ分けします。デフォルトでリカバリ・アプライアンスには、プラチナ、ゴールド、シルバーおよびブロンズの保護ポリシーが含まれます。各ポリシーは、保護のレベルに対応しています。たとえば、ゴールドは、この階層のデータベースにリアルタイムREDOトランスポート保護を提供するのに対し、ブロンズは提供しません。

タスク2: 各データベース階層のリカバリ要件の決定

各データベース階層で次の項目を決定します。

  • 潜在的なデータ損失の危険にさらされる最長期間

  • ディスク・リカバリ・ウィンドウ目標

  • テープのリカバリ・ウィンドウ

  • データベース階層のテープ・バックアップのスケジュール、テープ・ボールティングのスケジュール、または暗号化の要件

  • リカバリ・アプライアンス・レプリケーションの構成

  • バックアップ・ポーリングのディレクトリ(バックアップ・ポーリング・ポリシーを有効にする場合)

  • 既存のリカバリ・カタログのリカバリ・アプライアンス・カタログへのインポート

  • コピーの保証機能の有効化(領域を再利用するためにリカバリ・アプライアンスのバックアップの削除を検討する前に、バックアップをテープにコピーするかレプリケートする必要がある)

  • ディスク上のバックアップの最長保存期間

タスク3: 各保護データベースのリカバリ要件の決定

たとえば、次のタスクを実行します。

保護データベースの計画に関するその他の考慮事項は、『Zero Data Loss Recovery Appliance保護されたデータベースの構成ガイド』を参照してください。

タスク4: リカバリ・アプライアンスのアクセス要件の決定

データ・センターでリカバリ・アプライアンスのアクセス権を持つユーザーを決定します。たとえば、データベース管理者、記憶域管理者、システム管理者およびバックアップ管理者ではアクセス要件が異なることがあります。1人のユーザーがすべての役割を担当するデータ・センターもあります。

タスク5: リカバリ・アプライアンスへのバックアップ移行計画の作成

このステージでは、従来のRMANバックアップをリカバリ・アプライアンスのバックアップ計画にどのように組み込むかを決定します。リカバリ・アプライアンスを設定した後で、次の計画の1つを選択できます。

  • 一定期間、新しいリカバリ・アプライアンスへのバックアップと並行して、従来のディスクとテープへのバックアップを実行しながら、リカバリ・アプライアンスのみのバックアップへの移行を準備します。

  • 保護データベースはリカバリ・アプライアンスのみにバックアップし、従来のバックアップは従来のメディアで別に管理します。

どちらのケースでも、全体的なカタログ管理を簡略化するために、最初に従来のRMANリカバリ・カタログをリカバリ・アプライアンス・カタログにインポートすることをお薦めします。

関連項目:

リカバリ・アプライアンス・カタログへのメタデータのインポート方法の詳細は、『Zero Data Loss Recovery Appliance保護されたデータベースの構成ガイド』を参照してください。

タスク6: Cloud Controlのレポート・ツールおよびモニタリング・ツールの確認

Cloud Controlはリカバリ・アプライアンスの推奨インタフェースです。「リカバリ・アプライアンスのためのCloud Controlスタート・ガイド」で説明しているように、リカバリ・アプライアンスを構成する前に、主要なCloud Controlページについて理解してください。データベース管理者は、「バックアップ設定」、「バックアップのスケジュール」および「バックアップ・レポート」などのバックアップ関連ページを確認することもできます。

リカバリ・アプライアンスの設定と構成

次の一般的なタスクを実行する必要があります。

タスク1: Cloud Controlユーザー・アカウントの作成

「リカバリ・アプライアンス管理における職務の分離」で説明したように、リカバリ・アプライアンス環境では複数の管理アカウントが必要になる場合があります。この手順では、環境で必要なCloud Controlユーザー・アカウントを作成します。

注意:

これらはデータベース・ユーザー・アカウントではなく、アプリケーションレベルのユーザー・アカウントです。

関連項目:

Enterprise Managerユーザー・アカウントの作成方法は、Cloud Controlのヘルプを参照してください。

タスク2: 各データベース階層の保護ポリシーの作成

保護データベースの階層ごとに個別の保護ポリシーを作成します。「保護ポリシーを管理するための基本タスク」でこれらのタスクについて説明します。

  1. バックアップ・ポーリングの場所へのアクセス権がリカバリ・アプライアンスにある場合、必要に応じて、バックアップ・ポーリング・ポリシーを作成します。

    注意:

    Cloud Controlを使用する場合、この手順は保護ポリシーの構成に含まれます。DBMS_RAを使用するときは、別のプロシージャ(CREATE_POLLING_POLICY)を実行する必要があります。

    「バックアップ・ポーリング・ポリシーの作成(コマンドラインのみ)」でこのタスクについて説明しています。

  2. 特定のデータベース階層の保護ポリシーを作成します。

    「保護ポリシーの作成」でこのタスクについて説明しています。

タスク3: リカバリ・アプライアンスでの保護データベースのアクセス権の構成

リカバリ・アプライアンスのメタデータ・データベースに仮想プライベート・カタログ所有者を作成し、保護データベースを追加し、保護データベースへのアクセス権をカタログ所有者に付与します。「保護されたデータベース・アクセスを構成するための基本的なタスク」の説明に従って、これらの手順すべてをリカバリ・アプライアンスで実行します。

タスク4: 保護データベースの構成(DBA向け)

保護データベース管理者がこのタスクを実行します。リカバリ・アプライアンスでのDBMS_RAプロシージャの実行は含まれません。クライアント側の構成には次のサブタスクが含まれます。

  1. リアルタイムREDOトランスポートなど、バックアップおよびリカバリ設定の構成

  2. リカバリ・アプライアンスへのアクセスの有効化(リカバリ・アプライアンス・バックアップ・モジュールのインストールとリカバリ・アプライアンス・ユーザー・アカウントの認証が含まれる)

  3. バックアップおよびリストア操作のテスト

保護データベースの構成方法の詳細は、『Zero Data Loss Recovery Appliance保護されたデータベースの構成ガイド』を参照してください。

タスク5: 従来のバックアップのリカバリ・アプライアンスへの移行(DBA向け)

保護データベースのDBAがこのタスクを実行します。リカバリ・アプライアンスでのDBMS_RAプロシージャの実行は含まれません。移行では、従来のリカバリ・カタログをリカバリ・アプライアンス・カタログに移行して、ディスクまたはテープ上の物理バックアップにリカバリ・アプライアンスがアクセスできるようにします。

従来のバックアップの移行方法の詳細は、『Zero Data Loss Recovery Appliance保護されたデータベースの構成ガイド』を参照してください。

タスク6: リカバリ要件を満たすcopy-to-tapeスケジュールの作成

環境でテープ・デバイスを利用する場合は、SBT属性セットの作成、テープ・ジョブのスケジュール設定、テープ・バックアップ・ステータスのモニタリングなどを行う必要があります。「リカバリ・アプライアンスでテープにバックアップをコピーする場合の基本的なタスク」の説明に従って、これらの手順すべてをリカバリ・アプライアンスで実行します。

タスク7: リカバリ・アプライアンス・レプリケーションの構成

このタスクには、アップストリーム・リカバリ・アプライアンスとダウンストリーム・リカバリ・アプライアンス両方の構成と、保護データベース・ホストでの手順の実行が含まれます。「リカバリ・アプライアンス・レプリケーションを構成するための基本的なタスク」を参照してください。

Recovery Applianceのメンテナンス・タスク

通常、次のタスクを実行する必要があります。

タスク1: リカバリ・アプライアンスにおけるアクティビティのモニタリング

Cloud Controlを使用すると、リカバリ・アプライアンスをモニタリングして、ビジネス要件を満たしていることを確認できます。たとえば、次のように操作します。

  • アラートまたは警告を確認します。

  • 使用可能な領域がすべてのリカバリ・ウィンドウに対応できることを確認します。

  • バックアップ・スループットがパフォーマンス要件を満たしていることを確認します。

「リカバリ・アプライアンスをモニタリングするための基本的なタスク」を参照してください。

タスク2: バックアップ・ジョブのモニタリング(DBA向け)

保護されたデータベースの管理者は、バックアップ・ジョブ・レポートでエラーを定期的にモニタリングする必要があります。

『Zero Data Loss Recovery Appliance保護されたデータベースの構成ガイド』を参照してください。

タスク3: リカバリ・アプライアンスにおけるレポートの生成および確認

Cloud Controlを使用すると、記憶域使用状況および容量計画のBI Publisherレポートを生成および確認できます。

「リカバリ・アプライアンス・レポートにアクセスするための基本的なタスク」を参照してください。

タスク4: Recovery Applianceの再起動

必要に応じて、オペレーティング・システムのユーティリティおよびDBMS_RAプロシージャを使用してRecovery Applianceを停止および起動します。Recovery Applianceの再起動方法の詳細は、『Zero Data Loss Recovery Applianceオーナーズ・ガイド』を参照してください。