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Oracle® Fusion Middleware Oracle WebLogic Serverのアップグレード
12c (12.2.1.3.0)
E90294-03
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1 はじめに

WebLogic Serverおよびドメインを旧バージョンのWebLogic ServerからWebLogic Server 12cへアップグレードできます。既存のアプリケーションをWebLogic Server 12.2.1.3.0で実行するように更新することもできます。

バージョン12.2.1.3.0へアップグレードするときに、アプリケーションを変更したい、または変更する必要がある場合があります。ただし、このドキュメントでは、アプリケーションを変更せずにWebLogic Server 12.2.1.3.0に移行するときに考慮する必要のある問題についてのみ焦点を当てています。

このドキュメントの手順は、次のアップグレード・シナリオに対応します。

注意:

WebLogic Server 10.3.1より前のリリースからアップグレードする場合は、「WebLogic Server 10.3.6より前のWebLogicバージョンからのアップグレード」を参照してください。

バージョン12.2.1.1.0以降からバージョン12.2.1.3.0にアップグレードしている場合、スキーマまたは構成のアップグレードのためにアップグレード・アシスタント(UA)を実行する必要はありません。「再構成」ウィザードのみを実行する必要があります。ただし、新しいOracleホームにバイナリをインストールして、オフラインで再構成を実行する必要があります。

また、このドキュメントでは、既存のWebLogic Server 10.3.xまたは12.1.xドメインをWebLogic Server 12.2.1.3.0と互換性を持つように更新(再構成)する方法およびWebサービスをアップグレードする方法についても説明します。

WebLogic Serverは一般的に、WebLogic Serverのバージョン全体でハイレベルのアップグレード機能をサポートします。このドキュメントの目的は、WebLogic Serverアップグレード・サポートの提供と、アップグレード中に直面する可能性のある問題の特定によって迅速な解決を促すことです。

注意:

現在のJava EE環境およびデプロイされているアプリケーションを、Oracle Application Server 10gおよびOracle Containers for Java EE (OC4J)からWebLogic Server 12cリリース1 (12.2.1.3.0)にアップグレードする場合は、『Fusion Middleware Java EEアップグレード・ガイド』を参照してください。

このドキュメントでは、WebLogic Serverのみを含むOracle製品のインストールのアップグレード・プロセスについて説明します。インストールが他のOracle Fusion Middleware製品に含まれる場合は、アップグレードを開始する前に、『Oracle Fusion Middlewareのアップグレードのプランニング』およびインストールにおける各Fusion Middleware製品のアップグレード・ガイドを参照してください。

WebLogic Server 12.2.1.3.0には、Fusion Middleware再構成ウィザードが含まれていて、WebLogic Serverおよびご使用のアプリケーション環境のアップグレードを支援します。

ほとんどのWebLogic Serverアプリケーションは、修正を加えることなくWebLogic Server 12.2.1.3.0の新たなアプリケーション環境で動作します。

この章の内容は次のとおりです。

バージョンの互換性

WebLogic Serverのアップグレード前に、WebLogic ServerとWebLogic Server 12.2.1.3.0のドメイン互換性要件を確認する必要があります。

『Oracle WebLogic Serverの理解』ドメイン内の互換性に関する項を参照してください。

WebLogicドメイン内では、管理サーバー、すべての管理対象サーバー・インスタンスおよびWebLogicドメインは、同一のWebLogic Serverメジャーおよびマイナー・バージョンである必要があります。WebLogic Server 12.2.1.x内では、管理サーバー、管理対象サーバーおよびWebLogicドメインは、すべてバージョン12.2.1.xである必要があります。12.1.2より前のWebLogic Serverのバージョンでは、特定のドメインでサポートされているWebLogic Serverバージョンに関する互換性の制限が若干異なります。

重要な用語

WebLogic Serverアップグレードに関するドキュメントでは、特徴および機能を説明する際に様々な用語を使用します。これらの用語を十分に理解することが重要です。

  • アップグレード - このドキュメントでは、アップグレードという用語は、WebLogic Serverをアップグレードし、既存のアプリケーションを未変更のまま、新規の(アップグレードされた)WebLogic Serverバージョンに移動するプロセスのことを指します。

  • 再構成 - アップグレードしたWebLogic Serverのバージョンと互換性を持つように、以前のWebLogic Serverのバージョンで作成されたドメインをアップグレードするプロセスです。これは、再構成ウィザードまたはWLSTのいずれかを使用して実行できます。

  • アプリケーション環境 - アプリケーション環境には、アプリケーションとそのデプロイ先のWebLogicドメインが含まれます。また、そのドメインに関連するすべてのアプリケーション・データも含まれます。データベース・サーバー、ファイアウォール、ロード・バランサおよびLDAPサーバーなどのリソースが含まれる場合もあります。

  • 移行 - アプリケーションやドメイン構成を、サード・パーティ製品からOracle製品に移動すること。

  • 相互運用性 - (1)あるWebLogic Serverバージョンでデプロイされたアプリケーションが、別のWebLogic Serverバージョンでデプロイされた別のアプリケーションと通信する機能。(2) Oracle製品のコンポーネントが、標準のプロトコルを使用してサード・パーティ製のソフトウェアと通信する機能。

  • 互換性 - あるWebLogic Serverリリースで構築されたアプリケーションを、アプリケーションが再構築されたかどうかに関係なく、別のWebLogic Serverリリースで実行できること。

WebLogic Server 10.3.6より前のWebLogicバージョンからのアップグレード

10.3.1より前のバージョンからWebLogic Server 12.2.1.3.0にアップグレードするには、まずWebLogic Server 10.3.6にアップグレードして、その後12.2.1.3.0にアップグレードする必要があります。

WebLogic Server 10.3.6より前のWebLogicバージョンを現在使用している場合、バージョン12.2.1.3.0へのアップグレードには2段階のプロセスがあります。

  • インストールをWebLogic Server 10.3.6へアップグレードします。

    アップグレードするには、http://docs.oracle.com/middleware/11119/wls/WLUPG/intro.htm「WebLogic Server 10.3.6のアップグレード・ガイド」の手順に従います。

    ドメインをアップグレードするには、WebLogic Server 10.3.6ドメイン・アップグレード・ウィザードを使用してください。

    注意:

    WebLogic Server 10.3.6アップグレード・インストーラをダウンロードするには、「My Oracle Support」に適切なパッチ番号を入力します。

    • パッチ13529623—10.3.6汎用アップグレード・インストーラ(JDKバンドルは含まれていません)

    • パッチ13529653—10.3.6 Linux 32ビット・アップグレード・インストーラ

    • パッチ13529639—10.3.6 Windows 32ビット・アップグレード・インストーラ

    • パッチ13529649—10.3.6 Solaris 32ビット・アップグレード・インストーラ

  • このガイドの説明に従って、WebLogic Server 10.3.6をWebLogic Server 12.2.1.3.0にアップグレードします。

    注意:

    WebLogic Server 12.1.2から、アップグレード・インストーラは提供されなくなりました。WebLogic Server 12.2.1.3.0を新しいディレクトリの場所にインストールする必要があります。既存のインストール上にインストールすることはできません。

アップグレード・プロセスの概要

すべてのWebLogic Serverアプリケーションおよびドメインを同時にアップグレードし、アップグレードを正確に定義された順序で行う、あるいは一部のアプリケーションおよびドメインをアップグレードする一方、その他のアプリケーションおよびドメインは旧バージョンのWebLogic Serverにそのまま残すことができます。

アプリケーション環境のアップグレードに必要なプロセスは、アプリケーション・スコープにより異なります。アプリケーション環境は、WebLogicドメインとそれに関連付けられているアプリケーションおよびアプリケーション・データで構成されます。また、アプリケーション環境には、ファイアウォール、ロード・バランサ、LDAPサーバーなどの外部リソースも含まれます。図1-1に、WebLogicのアプリケーション環境の例を示します。

図1-1 WebLogicのアプリケーション環境の例

図1-1の説明が続きます
「図1-1 WebLogicのアプリケーション環境の例」の説明

表1-1に、図1-1に示されているWebLogicアプリケーション環境のコンポーネントとそのアップグレード要件を示します。

表1-1 WebLogicのアプリケーション環境例のコンポーネントのアップグレード要件

コンポーネント 説明 アップグレード要件

WebLogicドメイン

管理サーバー(AS)と必要に応じて1台または複数の管理対象サーバー(MS1、MS2、MS3、MS4など)で構成されます。ドメイン内のサーバーは、複数のマシンにまがたる場合があります。さらに、重要なアプリケーションにロード・バランシングとフェイルオーバー保護を適用できるよう管理対象サーバーをクラスタとしてグループ化することができます。WebLogicドメインの詳細は、Oracle WebLogic Serverドメイン構成の理解のOracle WebLogicドメインの理解に関する項を参照してください。

ドメイン内のすべてのコンピュータのドメイン・ディレクトリをアップグレードします。

アプリケーション

WebアプリケーションやEJBなどを含むすべてのJava EEアプリケーション。一般的に、アプリケーションはドメイン内の1つまたは複数の管理対象サーバーにデプロイされます。デプロイメント戦略に応じて、アプリケーションはコンピュータ上のローカルに配置したり、共有ディレクトリを使用してアクセスできます。さらに、外部クライアント・アプリケーションがファイアウォールの外側からアプリケーション環境にアクセスすることも可能です。

ほとんどのWebLogic Serverアプリケーションは、修正を加えることなくWebLogic Server 12.2.1.3.0の新たなアプリケーション環境で動作します。「旧リリースとの相互運用性および互換性」を参照してください。

外部リソース

ドメインとアプリケーション・データを格納するためのデータベース、ロード・バランサ、ファイアウォールなどのソフトウェア・コンポーネント。

すべての外部リソースがWebLogic Server 12.2.1.3.0と互換性があることを確認します。Oracle Technology NetworkのOracle Fusion Middlewareのサポートされるシステム構成のページを参照してください。

WebLogic Serverにデプロイされているビジネス・アプリケーションのアップグレードには、複数のWebLogic Serverアプリケーションのアップグレードが必要な場合があり、一部のケースでは次の目的のためにドメインも連動してアップグレードする場合があります。

  • 使用対象のWebLogic Serverバージョンの整合性の維持

  • インストール全体における同一のサポートされた構成環境の使用

  • 特定の相互運用性の要件への対応

始める前に

WebLogic Serverのアップグレード前に、マシンがWebLogic Serverのアップグレードと実行の要件を満たした設定になっていることを確認します。アップグレードする環境の範囲と、どのアプリケーションをどの順序でアップグレードするかについても検討する必要があります。

このドキュメントの範囲では、アップグレードのすべての組合せを網羅することはできないので、アップグレードを計画する前に、次の点を検討してください。この内容は、単一ドメインで実行中の単一アプリケーションが関連するアップグレードを対象にしています。

  • 推奨される手順は、開発環境でアプリケーションをアップグレードし、標準のQA、テストおよびステージング・プロセスを使用して、アップグレードされたアプリケーションを本番環境に移動することです。

  • アプリケーションのアップグレードでは通常、既存ドメインのアップグレードまたは新規ドメインの作成のどちらかを行います。このドメインから新バージョンのWebLogic Serverでアプリケーションを実行できます。アップグレードするアプリケーションをテストするために、Fusion Middleware構成ウィザードまたは他の構成ツール(WLSTなど)を使用して、新規ドメインを作成する場合もあります。

    注意:

    ドメインがWebLogic Serverバージョン10.3.1より前のバージョンを使用して作成された場合は、最初にWebLogic Server 10.3.6にアップグレードする必要があります。「WebLogic Server 10.3.6より前のWebLogicバージョンからのアップグレード」を参照してください。WebLogic Server 10.3.6にアップグレードした後で、WebLogic Server 10.3.6ドメイン・アップグレード・ウィザードを実行して、ドメインをアップグレードします。その後、再構成ウィザードを使用して、ドメインをWebLogic Server 12.2.1.3.0にアップグレードできます。

  • WebLogic Serverのバージョン・アップグレードを計画する際は、Oracle Technology Network (OTN)のFusion Middlewareのサポート対象システム構成ページを参照して、アップグレードされた環境がOracleでサポートされていることを、特に次の点について確認します。

    • 現行および計画中のJVMおよびJDKのバージョン

    • オペレーティング・システムのバージョン

    • データベースのバージョン

    • Webサービスのバージョン

    • WebLogic Serverで同時使用または実行されるその他の製品のバージョン。これは、アップグレードされた環境が、WebLogic Serverで使用しているOracleまたは他のベンダーの製品によってサポートされているかを確認するためです。

  • オラクル社は非推奨(つまり今後のリリースでは廃止予定)となったAPIおよび機能について文書化しており、現在も進行中です。この目的は、アップグレード性を維持するために使用を避けた方がいいAPIおよび機能について通知することです。現行のリリースで実際に廃止されているAPIおよび機能についても文書化されているため、以前のバージョンからアップグレードする場合は、対象のアプリケーションがアップグレードによる影響を受けるかどうかを判断できます。

    APIおよび機能の廃止は累積方式です。たとえば、WebLogic Server 10.0からWebLogic Server 12.2.1.3.0にアップグレードする場合、アプリケーションはWebLogic Server 12.2.1.3.0で廃止されたAPIまたは機能に加えて、WebLogic Server 10.3で廃止されたAPIまたは機能による影響を受ける可能性があります。アップグレードの際は、WebLogic Serverのすべての対象バージョンに対する、非推奨および廃止となった機能に関するドキュメントをすべて確認してください。

  • WebLogic Serverアプリケーションの構成、デプロイ、起動/停止または監視に使用する、あらゆるオートメーション(WLSTスクリプトなど)にアップグレード・プロセスが与えうる影響を(ある場合は)考慮する必要があります。アップグレード対象のアプリケーションおよびドメインとともに、オートメーションのアップグレードも必要になる場合があります。

  • アプリケーションでのサードパーティ・ライブラリの使用によって発生しうる潜在的影響を考慮する必要があります。WebLogic Serverに埋め込まれている別バージョンの同一ライブラリと競合する可能性があるためです。特に、新バージョンのWebLogic Serverでは、WebLogic Serverに埋め込まれているオープン・ソース・ライブラリのバージョンが変更されている場合があります。旧バージョンのWebLogic Serverでは正常に動作するアプリケーションで、アップグレード後に新規クラス競合が発生することがあります。

    サードパーティ・ライブラリが埋め込まれているアプリケーションをアップグレードする場合、Classloader Analysis Toolの使用と、WebLogic ServerアプリケーションのWebLogic Server 12.2.1.3.0へのアップグレード時にフィルタ・クラスローダーの使用を考慮する必要があります。このツールでは競合の特定、診断および解決が可能になり、アップグレード・プロセスも短縮される場合があります。

  • 旧バージョンのWebLogic Serverでアプリケーションを実行中で、WebLogic Serverパッチまたはバグ修正を使用中の場合、アップグレード先のWebLogic Serverのバージョンにそのパッチまたはバグ修正が組み込まれているかどうかを調べる必要があります。

旧リリースとの相互運用性および互換性

ほとんどの既存のWebLogic Server 10.3.1以降のアプリケーションは、修正を加えることなくWebLogic Server 12.2.1.3.0の新たなアプリケーション環境で動作します。

実際の環境においてアプリケーションが機能変更の影響を受けるかどうかを判断するには、「WebLogic Server 12.2.1.3.0の旧リリースとの互換性」で互換性情報を確認してください。アプリケーションで非推奨になったAPIまたは削除されたAPIが使用されている場合は、実行時に警告または例外が発生するおそれがあります。

既存のWebLogic Serverインストールへのパッチ適用

既存のWebLogic Serverインストールに、「ダウンタイムなしのパッチ適用」を使用して、または手動でのサーバーのローリング更新を使用して、パッチを適用することができます。

ダウンタイムなしのパッチ適用(ZDTパッチ適用)は、顧客に対するサービスを中断せずにドメイン内のサーバーに更新をロールアウトする、高度に自動化された方法です。この方法を使用するのは、ドメインに3つ以上のノードが含まれ、パッチを適用するすべてのサーバーがクラスタに割り当てられている場合のみです。「ダウンタイムなしのパッチ適用について」を参照してください

サービスのローリング更新を手動で実行すると、顧客に対するサービスが中断することになります。この方法を使用してクラスタの一部でない個別のサーバーにパッチを適用するか、またはドメインに含まれるノードが3つ未満の場合はこの方法を使用します。「ダウンタイムなしのパッチ適用について」を参照してください

「適用済パッチのリストの取得」では、WebLogic Serverインスタンスにすでに適用されているパッチのリストを参照する方法を説明します。

ダウンタイムなしのパッチ適用について

WebLogic Server 12.2.1現在、ダウンタイムなしのパッチ適用(ZDTパッチ適用)を使用して、WebLogic Serverインストールに対するパッチ、バンドル・パッチまたはパッチ・セット更新を適用する処理を自動化できます。

ZDTパッチ適用を使用すると、OPatchAutoツール、WLSTまたはWebLogic Server管理コンソールを使用して、ドメイン内のサーバーの一部またはすべてにわたり、更新のロールアウトを編成できます。簡略化すると、内容は次のとおりです。

  • 2番目のOracleホームの作成とパッチ適用。これは、手動で行うことも、OPatchAutoを使用して処理を自動化することもできます。

  • パッチが適用されたOracleホームをノードのすべてに配布。これも、手動で行うことも、OPatchAutoにさせることもできます。

  • OPatchAuto、WLSTまたはWebLogic Server管理コンソールを使用してパッチ適用ワークフローを構成し、ドメイン内の目的のサーバーを更新。

ZDTパッチ適用では、以前にZDTパッチ適用を使用してWebLogic Serverインストールに適用したパッチを、パッチ適用ワークフローを使用して元に戻すこともできます。

ZDTパッチ適用の詳細は、『ゼロ・ダウンタイム・パッチ適用ワークフローの管理』を参照してください。

ローリング更新について

ローリング更新は、アクティブなクライアント・セッションの状態を保持します。ローリング更新プロセス中に、クライアント・セッションは、非アクティブ・サーバーからアクティブ・サーバーにフェイルオーバーされ、アプリケーション・ユーザーにシームレスな経験を提供します。

WebLogic Serverのローリング更新とは、クラスタまたはドメイン全体を停止せずに、既存のWebLogic Serverインストールに、パッチ、バンドル・パッチまたはパッチ・セット更新をインストールするプロセスのことを指します。

クラスタのローリング更新時に、クラスタ内の他のサーバーが操作を続行する間、クラスタ内の各サーバーは個別にパッチ適用および再起動されます。クラスタの一部ではない管理対象サーバー上でもローリング更新を実行できます。

注意:

インストールにOracle Enterprise Manager (EM)が含まれる場合、『Oracle Enterprise Managerライフサイクル・マネージメント管理者ガイド』ソフトウェア・デプロイメントのパッチ適用に関する項を参照してください。

ローリング更新については、次の制限事項に留意してください。

  • ローリング更新を使用してWebLogic Serverの新しいマイナー・バージョンにアップグレードすることはできません(たとえばバージョン12.1.2から12.1.3へ)。個々のパッチ、パッチ・バンドルまたはパッチ・セット更新のみをインストールできます(たとえば12.1.2.0.0から12.1.2.0.1へ、12.1.2.0.1から12.1.2.0.2へ、12.1.2.0.0から12.1.2.0.5へ)。新しいマイナー・バージョンにアップグレードするには、新しいOracleホーム・ディレクトリで新しいバージョンをインストールする必要があります。『Oracle WebLogic ServerおよびCoherenceのインストールと構成』を参照してください。

  • 管理サーバーが実行中のマシンは、管理対象サーバーのみを実行しているドメイン内のマシンと同じまたはそれ以降のバージョンのソフトウェアを実行している必要があるため、そのマシンを最初に更新する必要があります。

  • WebLogic Serverがインストールされているマシンの場合、そのマシンで複数のサーバーが実行中の場合は、ローリング更新を実行する前に、そのマシン上で管理サーバーが実行中の場合はそれを含め、マシン上のすべてのサーバーを停止する必要があります。

  • ドメイン内のすべてのサーバーが更新されるまで、ローリング更新プロセス中に構成変更を行わないでください。新しい構成オプションについては、特に注意が必要です。サーバーは処理できない設定を無視して、反応しないため、ローカル構成ファイルが適切に更新されません。また、新しい構成オプションを使用すると、ローリングの方法でのパッチ、パッチ・セットまたはパッチ・セット更新の削除を妨げる可能性があります。

ローリング更新の実行

Oracle WebLogic Serverのパッチ、バンドル・パッチまたはパッチ・セット更新を使用してローリング更新を実行するには、Oracle OPatchツールを使用します。一般的なプロセスは次のとおりで、管理サーバーで開始します。『Opatchによるパッチ適用』を参照してください。

  1. アプリケーション、データベース・スキーマ、その他のアプリケーション・データ、およびドメインをバックアップしています。

  2. WebLogic Serverのパッチ、バンドル・パッチまたはパッチ・セット更新をクラスタ内のサーバーにダウンロードします。

  3. アップグレードするマシン上のサーバーを停止します。

    1. 任意の保留中のプロセスを完了します。

    2. サーバーを正常に停止します。

  4. パッチまたはパッチ・セット更新を適用します。

  5. サーバーを再起動します。

  6. パッチを適用する必要がある各サーバー・マシンに対して、前述の手順を繰り返します。

    注意:

    ベスト・プラクティスとして、アクティブなクライアント・セッションの状態を保持するには、アップグレード順序で次のマシン上のサーバーが停止するまで、適切な時間、待機する必要があります。待機する時間は、アプリケーションがアイドル・クライアント・セッションを無効化するのにかかる時間に応じて、5分から10分ほどになることがあります。

パッチ、バンドル・パッチまたはパッチ・セット更新のロールバック

Oracle OPatchツールを使用して、適用されたパッチ、バンドル・パッチまたはパッチ・セット更新をロールバックします。

  • 単一のパッチをロールバックする場合は、「適用した1つのパッチのロールバックに関する項」を参照してください。

  • 複数のパッチをロールバックする場合は、「適用した複数のパッチのロールバックに関する項」を参照してください。

適用済パッチのリストの取得

Oracle WebLogic Serverでは、WebLogic Serverインスタンスに適用されているパッチのリストを表示する機能を提供しています。パッチ・リストは次のソースのいずれかから取得できます。

前述のソースのいずれかを使用する場合、適用済パッチごとに次の詳細が示されます。

  • 関連するOracle Bug#

  • パッチ番号

  • パッチが適用された日

  • 簡単な説明

次の項では、サーバーの適用済パッチのリストを取得するのに使用できる方法を説明します。

weblogic.log.DisplayPatchInfoシステム・プロパティ

weblogic.log.DisplayPatchInfoシステム・プロパティには、WebLogic Serverインスタンスに適用されているすべてのパッチのログが含まれており、次のいずれかの方法で参照することができます。

  • サーバー・インスタンスを起動する-Dweblogic.log.DisplayPatchInfo=true JVMオプションをコマンド・ラインで指定します。サーバーが起動されると、stdoutの起動メッセージに適用済パッチのリストが含まれ、サーバー・ログ・ファイルにも保持されます。起動時のログ出力の負荷を最小限にするためにこのオプションのデフォルト値はfalseです。

  • weblogic.versionユーティリティを実行します。このユーティリティは-Dweblogic.log.DisplayPatchInfo=true起動オプションが使用されているかどうかにかかわらず、パッチ・リストを取得でき、WebLogic Serverインスタンスが起動されているまたは実行されている必要がありません。

次にweblogic.versionユーティリティを実行する例を示します。この例では、パッチ・リストが表示される特定のサーバー・インスタンスに対応するweblogic.jarファイルのクラスパスを指定します。

bash-4.1$ java -classpath wlserver/server/lib/weblogic.jar weblogic.version

WebLogic Server 12.2.1.1.0 Thu Jun  2 16:21:58 PDT 2016 1784838
24907328;20845986;Mon Mar 13 14:40:42 PDT 2017;WLS PATCH SET UPDATE 12.2.1.1.170117
19795066;19149348;Mon Mar 13 14:33:28 PDT 2017;One-off
18905788;18668039;Mon Mar 13 14:32:57 PDT 2017;One-off
19632480;19278519;Mon Mar 13 14:32:26 PDT 2017;One-off
19002423;18804275;Mon Mar 13 14:31:50 PDT 2017;One-off
19030178;19234068;Mon Mar 13 14:31:22 PDT 2017;One-off
19154304;19278518;Mon Mar 13 14:30:54 PDT 2017;One-off
 
Use 'weblogic.version -verbose' to get subsystem information
 
Use 'weblogic.utils.Versions' to get version information for all modules

ServerRuntimeMBean.PatchList属性

WebLogic Serverインスタンスに適用されたパッチのリストは、ServerRuntimeMBean.PatchList属性でも参照できます。この属性の値は、weblogic.log.DisplayPatchInfoシステム・プロパティには依存しません。次に示すいずれかのクライアントを使用すると、ServerRuntimeMBean.PatchList属性にアクセスできます。

注意:

ServerRuntimeMBeanからパッチ・リストにアクセスするには、Adminロールにマッピングできる認証済ユーザーである必要があります。

パッチ情報の取得にどのクライアントを使用する場合でも、各パッチ・エントリは次の形式になります。

<BugNumber>;<PatchID>;<DateApplied>;<Description>

例1-1 WLSTの使用

次の例は、WLSTを使用してサーバー・インスタンスに接続し、適用されたパッチのリストを取得する方法を示しています。

wls:/offline> connect('username','password','t3://localhost:7001')
Connecting to t3://localhost:7001 with userid weblogic ...
Successfully connected to Admin Server "myserver" that belongs to domain "mydomain".
 
Warning: An insecure protocol was used to connect to the server.
To ensure on-the-wire security, the SSL port or Admin port should be used instead.
 
wls:/mydomain/serverConfig/> serverRuntime()
Location changed to serverRuntime tree.
 This is a read-only tree with ServerRuntimeMBean as the root.
For more help, use help('serverRuntime').
 
wls:/mydomain/serverRuntime/> print cmo.getPatchList()
array(java.lang.String,['24907328;20845986;Mon Mar 13 14:40:42 PDT 2017;WLS PATCH SET UPDATE 12.2.1.1.170117', '19795066;19149348;Mon Mar 13 14:33:28 PDT 2017;One-off', '18905788;18668039;Mon Mar 13 14:32:57 PDT 2017;One-off', '19632480;19278519;Mon Mar 13 14:32:26 PDT 2017;One-off', '19002423;18804275;Mon Mar 13 14:31:50 PDT 2017;One-off', '19030178;19234068;Mon Mar 13 14:31:22 PDT 2017;One-off', '19154304;19278518;Mon Mar 13 14:30:54 PDT 2017;One-off'])
wls:/mydomain/serverRuntime/> 

例1-2 REST APIの使用

次の例は、REST APIを使用してパッチ・リストを返す例を示しています。

Request:
http://localhost:7001/management/weblogic/latest/serverRuntime?links=none&fields=name,patchList

Response: {
    "patchList": [
        "24907328;20845986;Mon Mar 13 14:40:42 PDT 2017;WLS PATCH SET UPDATE 12.2.1.1.170117",
        "19795066;19149348;Mon Mar 13 14:33:28 PDT 2017;One-off",
        "18905788;18668039;Mon Mar 13 14:32:57 PDT 2017;One-off",
        "19632480;19278519;Mon Mar 13 14:32:26 PDT 2017;One-off",
        "19002423;18804275;Mon Mar 13 14:31:50 PDT 2017;One-off",
        "19030178;19234068;Mon Mar 13 14:31:22 PDT 2017;One-off",
        "19154304;19278518;Mon Mar 13 14:30:54 PDT 2017;One-off"
    ],
    "name": "myserver"
}

例1-3 WebLogic Server管理コンソールの使用

WebLogic Server管理コンソールを使用する手順は次のとおりです。

  1. 管理コンソールの左側のペインで、「環境」を展開し、「サーバー」を選択します。

  2. 適用済パッチ・リストを表示するサーバーの名前を選択します。

  3. 「構成」「一般」「モニタリング」を選択します。

適用済パッチのリストが、「パッチ・リスト」とラベル付けされたフィールドの下に表示されます。

例1-4 JMXクライアントの使用

JMXアプリケーションを使用すると、次の例に示すようにgetPatchListメソッドを起動してWebLogic Serverインスタンスの適用済パッチ・リストにアクセスできます。

/**
 * @include-api for-public-api
 * Returns array of informational strings for installed patches. Each info string
 * is of the form: <bug-id>;<patch-id>;<date-applied>;<patch-description>
 * For example:
 * 24907328;20845986;Mon Mar 13 14:40:42 PDT 2017;WLS PATCH SET UPDATE 12.2.1.1.170117
 *
 * @return Array of informational strings for installed patches at a server.
 * @roleAllowed Monitor
 * @unharvestable
 */
public String[] getPatchList();