ミッション・クリティカルなJavaアプリケーションは、可用性とパフォーマンスの問題にしばしば直面します。開発者とIT管理者は多くの時間を費やして、これらの問題の根本的原因を診断します。本稼働環境で発生する問題は、他の環境では再現できないか、時間がかかりすぎて再現できないことがほとんどです。これはビジネスに重大な影響を及ぼすことがあります。
Oracle Enterprise Manager Cloud Control 13cのJVM診断では、管理者が本番環境でのJavaアプリケーションのパフォーマンスに関する問題を診断できます。問題を再現する必要がないため、問題の解決に要する時間を削減できます。このため、アプリケーションの可用性とパフォーマンスが向上します。JVM診断を使用すると、管理者は、パフォーマンスの問題をテスト環境または開発環境で再現することなく、本番環境でその根本原因を特定できます。アプリケーションの詳細を把握するためにアプリケーションの複雑なインスツルメンテーションや再起動は必要ありません。アプリケーション管理者は、アプリケーションの詳細な知識がなくても、アプリケーションの停止時間の原因となるJavaおよびデータベースの問題を特定できます。JVM診断の主な機能は、次のとおりです。
JVM診断を使用すると、Javaアプリケーションの処理速度を低下させずに、細部にわたってモニタリングできます。処理に時間のかかっているリクエストやメソッド、I/Oを待機中のリクエスト、CPUサイクルを大量に消費しているリクエスト、そしてデータベース・コールを待機しているリクエストを特定するのに役立ちます。また、リソースのボトルネックの影響を受けているエンドユーザー・リクエストも特定できます。さらに、パフォーマンスのボトルネックを引き起こしているアプリケーション・リソースも表示できます。
JVM診断ではJavaスタックを迅速に可視化できます。スレッドの状態とJavaメソッド/行番号をリアルタイムでモニターし、アプリケーション・クラッシュ、メモリー・リークおよびアプリケーションのハングなどの問題を、発生後に診断するのではなく発生前に特定することができます。
特定のリクエストがハングしている場合や、アプリケーション全体の処理が遅い場合、管理者はリアルタイム・トランザクション・トレースを実行して、現在のJavaアプリケーション・アクティビティを表示できます。障害が発生しているスレッドや、その実行コール・スタックを参照できます。また、スレッドがデータベース・ロックの待機に費やした時間などの、様々なボトルネック・リソースも分析できます。あるスレッド(またはリクエスト)のアクティビティが他のスレッドのアクティビティや残りのJVMに影響する場合などの複雑な問題を、迅速に発見することができます。
時折、使用されているモニタリング間隔(デフォルトは2秒)が不正確になる場合があります。対象のJavaスレッドのライブが短すぎるか、収集されたモニタリング・データの量が不十分である可能性があります。このようなケースでは、JVMトレースを実行して、JVMアクティビティの正確な詳細を取得できます。この機能では、短期間に非常に高い頻度(デフォルトの頻度は200ミリ秒に1回)でJavaアプリケーションをモニターできます。これによって、スレッド、ボトルネック・リソース(DB、I/O、CPU、ロック、ネットワーク、RMI)およびトップ・メソッドの相互依存性を識別できます。
JVM診断を使用すると、関連付けられたデータベース・セッションへのJavaリクエストをトレースしやすくなり、その逆の場合も同様で、様々な層にまたがる問題の迅速な解決が可能になります。管理者は、DB待機状態のJVMスレッドから、関連付けられたOracleデータベース・セッションにドリルダウンできます。また、SQL問合せから、関連付けられたJVMターゲットおよびWebLogic Serverターゲットにドリルアップできるようになりました(データベースとJVMがEnterprise Managerの管理対象になっている場合にのみ有効)。
この機能では処理に時間のかかっているSQL問合せが明らかになるため、管理者はSQLおよびデータベースをチューニングしてアプリケーションのパフォーマンスを改善できます。このように、データベース層またはアプリケーション層に問題を切り分けることで、データベース管理者とアプリケーション管理者のコミュニケーションがスムーズになります。
メモリー・リークはアプリケーションの処理速度の低下につながり、最終的にはアプリケーションのクラッシュを引き起こします。JVM診断では、Javaメモリーの異常な消費量について管理者にアラートが送られます。管理者はJVM Diagnosticsを使用して、アプリケーションを停止せずに本稼働アプリケーションのヒープ・ダンプを取得できます。その他のヒープ分析が、「メモリー・リーク・レポート」および「アンチパターン・レポート」で利用できます。管理者は、複数のヒープ・ダンプを一定期間で取得し、ヒープ・ダンプ間の差異を分析して、メモリー・リークを引き起こしているオブジェクトを識別できます。ヒープ分析は、バージョンが異なるアプリケーションに対しても実行できます。複数のヒープ・ダンプによる様々なヒープ分析によって、メモリー・リークの識別が容易になります。
JVM診断では、管理者がJVMのセットをJVMプール内にグループ化できます。このグループ化によって、すべての関連するJVMに対する単一のビューがコンソール・ユーザーに提供されます。したがって、単一のアプリケーションまたは単一のクラスタを構成するすべてのJVMを、アプリケーション内でグループ化できます。この機能により、管理者が問題を自然かつ直観的に視覚化できるようになります。
JVM診断では、Javaアプリケーションでリアルタイムおよび履歴の診断を実行できます。これによって、本稼働の問題の根本的原因について、同じ問題をテストまたはQA環境で再現しなくても詳細に見通すことができます。トランザクションはブラウザからインタラクティブに再生して、ネットワークおよびサーバーでの消費時間を表示できます。
リアルタイム・データ以外に、履歴データを分析して過去に起こった問題を診断することもできます。エンドユーザー・リクエストにかかった時間と、サーブレット、JSP、EJB、JDBCおよびSQLレイヤーによるブレークダウンを示す履歴データを表示できます。
この項では、Oracle Enterprise Manager Cloud Control 13cリリース3におけるJVM診断の新機能の一部を一覧で示します。
JVMプールのヒープ・ダンプの場所といった、JVM設定を構成するために追加された新しいオプション。ユーザーはデプロイ時にlibdir
を指定することもできます。
クラスタ・ターゲットの使用によるJVMDエージェントのデプロイ/アップグレード/削除のサポート。
(サンプル・インスタンスのみではなく)すべての実行済インスタンスに基づくメトリックのリクエスト。
OFFモードでのエージェントのデプロイ。
クラスタ・レベルでのエージェントのデプロイ。エージェントは、後で追加されるものも含め、クラスタ内のすべての管理対象サーバーにターゲット設定されます。
デプロイメント時にLIBDIRを指定可。
EMCLIサポート(JVMおよびJVMプールにおいて)。
ヒープ/JFRダンプ・ディレクトリの構成
モニタリングの有効化/無効化
DBリクエストによるデータ収集の改善。
ツリー・ビューの拡張機能の呼出し。
(コード明細レベルに加えて)メソッド・レベルのオプション・ビュー
重要なコード・パスを表示するための自動展開オプション
最新の動作確認情報は、My Oracle Supportのノート1415144.1を参照してください。My Oracle Supportには、次のURLでアクセスできます。