E エンドツーエンド・ユースケース: データ・センターのパッチ適用

この付録では、Enterprise Managerを使用して、管理者がデータ・センター全体にパッチを公開する方法を説明します。

この付録の内容は次のとおりです。

データ・センターへのパッチ適用の課題

どのような企業でも、データ・センターは、IT機能の稼働を維持してビジネスを遂行するためにクリティカルな役割を果しています。データ・センターの規模は企業によって様々ですが、データ・センターがビジネスの成功にとってクリティカルであるという事実に疑問の余地はありません。

データ・センターの管理者は、連日、データ保守、データ・バックアップ、ライフサイクル管理の操作を行っています。こうしたシステム管理アクティビティを実行する際に管理者が直面する課題がきわめて大きいこともあります。データ・センターが複数のタイム・ゾーンにまたがって距離が離れている場合、このような問題はさらに深刻になります。

管理者が恒常的に直面するライフサイクル管理の課題の1つは、エコシステム全体にパッチを適用して、データ・センターをセキュアかつ最新の状態に保つことです。複数のタイプのパッチがある場合、この要件はさらに複雑になります。データ・センターに関連するパッチを特定するのが困難であり、パッチ適用操作全体が手動で、エラーが発生しやすく時間もかかるためです。

Enterprise Managerソリューション

これ以降の項では、Enterprise Managerの機能を活用した、前述の課題に対するソリューションを提供します。1つに統合されたパッチ適用ワークフローを使用することが目標です。データ・センターに関連するパッチを特定できるだけではなく、パッチのダウンロードから公開まで自動的に行えるようにします。また、データ・センターのポリシーと標準に100%準拠できるようにします。

このユースケースの基本フローは次のとおりです。


パッチ適用ワークフロー

データ・センターに関連するパッチの特定

Enterprise Managerによって提供されるパッチ推奨を使用して、データ・センターに関連するパッチを特定します。パッチ推奨は、潜在的なシステム上の問題と、システム・パフォーマンスの向上やシステム停止の回避を支援する推奨に関するプロアクティブな通知です。推奨されるパッチは、セキュリティ・パッチと、企業の構成に基づくその他のパッチです。

パッチの公開計画の準備、テストおよび認定

環境を分析して、データ・センターのターゲットにパッチを適用できるかどうかを確認します。パッチを適用できることを確認したら、推奨されたパッチでパッチ計画を作成し、パッチ計画を使用してパッチをテストし、事前にパッチの競合をすべて診断して解決しておきます。パッチ計画がデプロイ可能な状態になったら、パッチ計画をテンプレートに変換することで認定します。

パッチを公開するための変更アクティビティ計画の作成

変更アクティビティ計画を作成します。具体的には、ターゲット・タイプを関連付け、実行する一連のタスク(パッチ適用前と後のタスクを含む)を作成し、使用するパッチ計画テンプレートを選択し、パッチ適用ステップの優先度を指定し、データ・センターでの正式公開のために変更アクティビティ計画のスケジュールを設定します。

変更アクティビティの進捗のモニターとステータスの報告

様々な変更アクティビティの進捗をモニターし、パッチ公開操作のステータスを追跡し、ドリフトがあれば識別し、全体のステータスを管理職に報告します。

サンプル・シナリオの実行

次の表に、このサンプル・シナリオで実行されるタスクと、タスクを実行できるユーザー・ロールを示します。

必要なロールを持つ管理者の作成

ロール: EMスーパー管理者

表E-1に示すロールを使用して、この章で説明するシナリオのために管理者を作成します。

表E-1 必要なロールを持つ管理者の作成

Enterprise Managerロール 権限

EM_PATCH_DESIGNER

CREATE_PATCH_PLAN、VIEW_ANY_PLAN_TEMPLATE

EM_CAP_ADMINISTRATOR

CREATE_JOB、CREATE_CAP_PLAN、BASIC_CAP_ACCESS

EM_CAP_USER

BASIC_CAP_ACCESS

これらのロールを持つ管理者の作成手順は、Enterprise Managerユーザー・アカウントの作成を参照してください。

インフラストラクチャの設定

ロール: EM_PATCH_DESIGNER

パッチのデプロイメントのためにオンライン・パッチ適用モードを使用することをお薦めします。オンライン・パッチ適用モードは、Enterprise Managerでのパッチ適用のデフォルト・モードです。したがって、初回は手動で設定する必要はありません。ただし、ある理由でオフライン・モードに設定し、オンライン・モードにリセットする場合、またはオンライン・モードが設定されていることを確認する場合は、オンライン・モードでパッチを適用するためのインフラストラクチャの設定(MOSに接続済)を参照してください。

オンライン・モードでは、Enterprise ManagerはMy Oracle Supportに接続し、パッチ、パッチ・セットおよびARUシード・データ(製品、プラットフォーム、リリース、コンポーネント、動作保証詳細、パッチ推奨など)をダウンロードします。このために、Enterprise Managerでは、OMSホストで設定したインターネット接続を使用してMy Oracle Supportに接続します。ただし、環境でプロキシ・サーバーを設定している場合は、プロキシの詳細を登録する必要があります。プロキシ・サーバーの詳細をEnterprise Managerに登録するには、オンライン・モードでパッチを適用するためのインフラストラクチャの設定(MOSに接続)を参照してください。

環境の分析およびターゲットにパッチを適用できるかどうかの確認

ロール: EM_PATCH_DESIGNER

パッチ計画を作成してターゲットにパッチを適用する前に、パッチ適用機能レポートを表示して環境を分析し、パッチを適用するターゲットがパッチ適用操作に適しているかどうかを確認することをお薦めします。これらのレポートには、パッチ適用できるターゲットとパッチ適用できないターゲットのサマリーが記載されており、デプロイ可能なパッチ計画の作成に役立ちます。パッチ適用できない、設定内のターゲットの問題を識別し、それらの問題に対する推奨事項を提案します。

パッチ適用機能レポートは、Oracle Database、Oracle WebLogic ServerおよびOracle SOAインフラストラクチャのターゲットで使用できます。

パッチ適用機能レポートを表示するには、環境の分析およびターゲットがパッチ適用可能かどうかの識別を参照してください。

関連するパッチの特定

ロール: EM_PATCH_DESIGNER

「パッチ推奨」リージョンを表示して、データ・センターに公開するために、推奨されているパッチの中から関連するものを特定します。「パッチ推奨」セクションに記載されているパッチは、MOS内で提供されたパッチのコレクションで、1つのグループとして1つ以上のターゲットに適用できます。

「パッチ推奨」リージョンでは、推奨パッチ・リストをドリルダウンして、詳細の表示、パッチのダウンロードまたはパッチ計画へのパッチの追加を行うことができます。

推奨パッチを表示するには、パッチ推奨についてを参照してください。

パッチ計画の作成、パッチのテストおよびパッチの認定

ロール: EM_PATCH_DESIGNER

推奨されたパッチでパッチ計画を作成し、パッチ計画を使用してパッチをテストし、事前にパッチの競合をすべて診断して解決しておきます。パッチ計画がデプロイ可能な状態になったら、パッチ計画をテンプレートに変換することで認定します。

パッチ計画を作成するには、パッチ計画の作成を参照してください。

新しく作成したパッチ計画にアクセスするには、パッチ計画へのアクセスを参照してください。

パッチをパッチ計画に追加し、パッチを分析およびテストし、パッチ計画をパッチ・テンプレートとして保存するには、次のURLに記載されているステップ(1)からステップ(5)を実行し、ステップ(6)の「レビューおよびデプロイ」ページで「テンプレートとして保存」をクリックします。新規計画テンプレートの作成ダイアログで、パッチ・テンプレートの一意の名前を入力して「テンプレートの作成」をクリックします。詳細は、ソフトウェア・デプロイメントのパッチ適用を参照してください。

パッチを公開するための変更アクティビティ計画の作成

ロール: EM_CAP_ADMINISTRATOR

変更アクティビティ計画を作成し、変更アクティビティを指定し、所有者をアクティビティに割り当てます。さらに、ターゲット・タイプを関連付け、実行する一連のタスク(パッチ適用前と後のタスクを含む)を作成し、使用するパッチ計画テンプレートを選択し、パッチ適用ステップの優先度を指定し、データ・センターでの正式公開のために変更アクティビティ計画のスケジュールを設定します。

これを行うには、変更アクティビティ計画の作成を参照してください。

パッチの公開

ロール: EM_CAP_USER

自分に割り当てられたタスクを確認し、タスクの終了予定日をモニターし、パッチ適用前タスクを完了し、パッチ計画を公開し、パッチ適用後タスクをすべて完了し、タスク・ステータスを更新します。

これを行うには、自分のタスクの表示を参照してください。

変更アクティビティのステータスのチェックおよび報告

ロール: EM_CAP_ADMINISTRATOR

作成した変更アクティビティ計画に含まれるタスクのステータスを追跡し、全体のステータスを管理職に報告します。

これを行うには、変更アクティビティ計画の管理を参照してください。

ターゲットでのパッチ適用の確認

ロール: EM_CAP_ADMINISTRATOR

パッチ適用対象として指定されたターゲットで、選択したパッチによるパッチ適用が正常に終了したことを確認します。

これを実行するには、次のURLに記載されているように、構成検索ライブラリでオラクル社提供の構成検索「Oracle製品に適用されたパッチの検索」を実行します。ターゲットに適用したパッチIDを検索します。検索結果に、そのパッチIDを含むすべてのターゲットがリスト表示されます。自分のリストのターゲットがこの検索結果に含まれることを確認します。これを行うには、構成検索の管理を参照してください。