7 動的クラスタの使用

動的クラスタは1つ以上の動的サーバーを含むクラスタです。動的サーバーは、構成をサーバー・テンプレートから取得するサーバー・インスタンスです。各サーバーを個別に構成する必要がある管理対象サーバーとは対照的です。

動的クラスタについて

動的クラスタは、アプリケーションのリソース・ニーズを満たすように動的にスケール・アップできるサーバー・インスタンスで構成されます。動的クラスタは、指定した数の生成された(動的)サーバー・インスタンスの構成を定義する単一のサーバー・テンプレートを使用します。

動的クラスタを作成すると、動的サーバーが事前構成され、自動的に生成されます。これにより、追加のサーバー容量が必要な場合に動的クラスタ内のサーバー・インスタンスの数を簡単にスケール・アップできます。動的サーバーは、最初に手動で構成してそれをクラスタに追加する必要はなく、単に起動するだけで使用できます。

最初に指定した数のサーバー・インスタンスに追加が必要となった場合、動的クラスタの構成でサーバー・インスタンス(動的)の最大数を増やすか、構成済サーバー・インスタンスを手動で動的クラスタに追加することが可能です。動的サーバー・インスタンスと構成済サーバー・インスタンスの両方が含まれた動的クラスタを複合クラスタと呼びます。

次の表に、動的クラスタに関連する用語の定義を示します。

用語 定義

動的クラスタ

1つの共有サーバー・テンプレートに基づいた生成済(動的)サーバー・インスタンスを1つ以上備えたクラスタ。

構成済クラスタ

手動で構成し、各サーバー・インスタンスを追加するクラスタ。

動的サーバー

動的クラスタの作成時にWebLogic Serverで生成されるサーバー・インスタンス。構成は、共有サーバー・テンプレートに基づきます。

構成済サーバー

属性を手動で構成するサーバー・インスタンス。

複合クラスタ

動的サーバー・インスタンスと構成済サーバー・インスタンスの両方を備えたクラスタ。

サーバー・テンプレート

一連のサーバー・インスタンスに割り当てることができ、テンプレートの構成を継承する、デフォルト以外の共通の設定と属性が含まれたプロトタイプ・サーバーの定義。動的クラスタでは、サーバー・テンプレートを使用して動的サーバーを生成します。『Oracle WebLogic Serverドメイン構成の理解』サーバー・テンプレートに関する項を参照してください。

動的クラスタの詳細は、『Oracle WebLogic Serverクラスタの管理』動的クラスタに関する項を参照してください。

動的クラスタを使用する理由

動的クラスタを使用すると、サーバーの容量を追加する必要があるときに、1つまたは複数の構成済動的サーバー・インスタンスを起動するだけで、簡単にクラスタをスケール・アップできます。新しいサーバー・インスタンスを手動で構成してそれをクラスタに追加したり、システムの再起動を実行する必要はありません。

動的クラスタの仕組み

必要な管理対象サーバー・インスタンスの数を設定し、サーバーのテンプレートを作成または選択します。

動的クラスタの作成と構成

動的クラスタを作成するには、構成ウィザードの3つのステップを実行する必要があります。

  • ピーク負荷時に必要となると考えられるサーバー・インスタンスの数の指定

  • サーバーの構成の基準とするサーバー・テンプレートの作成または選択。

  • WebLogic Serverでサーバー固有の属性を計算する方法の定義

WebLogic Serverでは、指定された数の動的サーバー・インスタンスを生成し、各動的サーバー・インスタンスに計算した属性値を適用します。

注意:

動的クラスタの構成に指定したサーバー・インスタンスの最大数を処理できる性能があることを確認します。クラスタを作成する際の設計およびデプロイメントに関するベスト・プラクティスは、クラスタリングのベスト・プラクティスに関する項を参照してください。

サーバー・テンプレートの使用

サーバー・テンプレートは、一連のサーバー・インスタンスが共有する構成属性を定義します。動的クラスタでは、動的サーバーの構成にサーバー・テンプレートが使用されます。

『Oracle WebLogic Serverドメイン構成の理解』サーバー・テンプレートに関する項を参照してください。

サーバー固有の属性の計算

動的クラスタを使用する際には、動的サーバー・インスタンスを個別に構成したり、動的サーバー・レベルでサーバー・テンプレートの値をオーバーライドしたりできません。サーバー名、マシン、リスニング・ポートなどのサーバー固有の属性は、動的クラスタを作成する際に設定した値を使用して計算する必要があります。

注意:

JTAトランザクション回復サービスをホストすることになる管理対象サーバーのインスタンスには、一意のリスニング・アドレス値を設定する必要があります。そうしないと、移行は失敗します。

WebLogic Serverは、動的サーバーのインスタンスIDを使用して、次のサーバー固有の属性を計算して適用します。

  • サーバー名

  • (オプション)リスニング・ポート(クリア・テキストおよびSSL)

  • (オプション)ネットワーク・アクセス・ポイントのリスニング・ポート

  • (オプション)マシンまたは仮想マシン

サーバー名の計算

「サーバー名の接頭辞」では、計算済サーバー名を制御します。

サーバー名には、入力した接頭辞が付き、その後に索引番号が続きます。たとえば、接頭辞がdyn-server-に設定されている場合、動的サーバーの名前は、(指定したサーバー・インスタンスの数に応じて)dyn-server-1dyn-server-2などのようになります。

リスニング・ポートの計算

リスニング・ポートの計算では、サーバーのリスニング・ポートが計算済かどうかを指定します。

動的クラスタを作成する際にリスニング・ポートを計算しない場合には、WebLogic Serverではサーバー・テンプレート内の値が使用されます。動的クラスタ構成やサーバー・テンプレート内でリスニング・ポートを定義しない場合、WebLogic Serverではデフォルト値が使用されます。

サーバー・テンプレートまたは動的クラスタ構成で動的クラスタの基本リスニング・ポートを定義すると、最初の動的サーバー・インスタンスのリスニング・ポート値は基本のリスニング・ポートになり、値が1ずつ増えていきます。動的サーバー・インスタンスを追加するたびに、リスニング・ポート値は1ずつ増えていきます。デフォルトの基本リスニング・ポートを使用する場合、WebLogic Serverは、動的サーバー・インスタンスごとに、の位を1つ増やし、そこから続けます。

マシン名の計算

「計算済マシン名」および「マシン名マッチング式」は、動的クラスタ内のサーバー・インスタンスをマシンに割り当てる方法を制御します。

「計算済マシン名」オプションを選択した場合、「マシン名マッチング式」を使用して、動的サーバーに使用したマシンのセットを選択できます。「マシン名マッチング式」を設定していない場合、ドメイン内のすべてのマシンが選択されます。割当は、ラウンド・ロビン・アルゴリズムを使用して行われます。

次の表は、動的クラスタにおけるマシン割当ての例を示しています。

表7-1 マシン名の計算

ドメイン内のマシン 「マシン名マッチング式」の構成 動的サーバーのマシン割当

M1、M2

未設定

dyn-server-1: M1

dyn-server-2: M2

dyn-server-3: M1

...

Ma1、Ma2、Mb1、Mb2

Ma1、Mb*

dyn-server-1: Ma1

dyn-server-2: Mb1

dyn-server-3: Mb2

dyn-server-4: Ma1

...

高可用性トポロジでの動的クラスタの作成

動的クラスタを作成して、高可用性トポロジをスケール・アウトできます。

動的クラスタを作成する前に、次の事項を確認してください。

  • Oracle Fusion Middleware Infrastructureおよび製品ソフトウェアがインストールされている。

  • 製品スキーマがデータベースで作成されている。

高可用性トポロジの動的クラスタを作成するには、次の手順を実行します。
  1. binディレクトリに移動します。

    UNIXオペレーティング・システムの場合:

    ORACLE_HOME/oracle_common/common/bin

    Windowsオペレーティング・システムの場合:

    ORACLE_HOME\oracle_common\common\bin

    ここでORACLE_HOMEは、12c (12.2.1.3.0) Oracleホームになります。

  2. 構成ウィザードを起動します。

    UNIXオペレーティング・システムの場合:

    ./config.sh
    

    Windowsオペレーティング・システムの場合:

    config.cmd
  3. 「構成タイプ」画面で、「新規ドメインを作成(N)」を選択します
  4. 「テンプレート」画面で、作成するテンプレートの名前を入力します。「次へ」を選択します。「管理対象サーバー」画面が表示されるまで、構成ウィザードの画面でクラスタを作成する通常のステップに従います。
    「アプリケーションの場所」画面(構成ウィザードの「テンプレート」の後の画面)以降でクラスタを作成するステップに関する情報が必要な場合、製品のインストレーション・ガイドを参照してください。
  5. (オプション)動的管理対象サーバーのみを含むドメインを作成する場合、「管理対象サーバー」画面が表示されたときに、静的管理対象サーバーを削除できます。これを行うには、ドメインで不要な静的管理対象サーバーを選択してから、「削除」を選択します。(すでにリストされている管理対象サーバーを選択しないでください。)「次へ」をクリックします。
  6. 「クラスタ」画面で「追加」を選択します。クラスタの名前、および「フロントエンドHTTPポート」「フロントエンドHTTPSポート」の値を入力します。「動的サーバー・グループ」ドロップダウン・メニューで、product-DYN-CLUSTERを選択します。動的サーバー・グループがリストされていない場合、「未指定」を選択します。
  7. 「サーバー・テンプレート」画面に、ドメインで使用可能なテンプレートが表示されます。「クラスタ」ドロップダウン・メニューで、各サーバー・テンプレートが属するクラスタを選択します。
  8. 「動的サーバー」画面で、作成したクラスタをカスタマイズします。「最大動的サーバー数」の値として、2を入力します。これは、最初のクラスタでは一般的なサーバー数です。
  9. 動的クラスタ内のサーバー・インスタンスをマシンに割り当てる方法を制御するために、「計算済マシン名」を選択し、「マシン名マッチング式」に値を入力します。
    • 動的サーバーを特定のマシンに割り当てる場合に、「計算済マシン名」を選択する必要があります。
    • 動的サーバーが使用するマシンのセットを選択するには、「マシン名マッチング式」に値を入力します。「マシン名マッチング式」に値を入力しない場合、ドメイン内のすべてのマシンが選択され、ラウンド・ロビン方式でマシンが割り当てられます。

      名前を入力した場合、指定した各値がマシン名と完全に照合されます。SOAHOST*またはWCPHOST*などのように、末尾にアスタリスク(*)の接尾辞を入力して、複数のマシン名を照合します

      「マシン・マッチング・タイプ」がタグの場合、指定した各値ではそれらのタグ値を含むすべてのマシンと照合します。

  10. 「計算済リスニング・ポート」を選択します。
  11. 「動的クラスタ」を選択します。
  12. 「次へ」をクリックします。
    「サーバーのクラスタへの割当」画面が開きます。これ以降の構成ウィザードの画面で、通常のドメインを作成する場合と同様にドメインの作成を続行します。この画面の詳細は、管理対象サーバーのクラスタへの割当てに関する項を参照してください。

動的クラスタの拡張と縮小

動的クラスタを作成すると、WebLogic Serverでは指定した数の動的サーバーが生成されます。サーバー・インスタンスの数を決定する前に、希望の数を処理するための性能があることを確認してください。

動的サーバー・インスタンスは、サーバー・テンプレートで指定した構成と計算された属性に基づいています。

  • クラスタを拡張するには、任意の数の構成済動的サーバーを起動します。

  • 動的クラスタを縮小するには、余分な数の動的サーバーを停止します。

最初に指定した数のサーバー・インスタンスに追加が必要となった場合、動的クラスタの構成で動的サーバーの最大数を増やすことができます。動的クラスタ内のサーバー・インスタンスの数を減らすには、動的サーバーの属性の最大数の値を減らします。この値を小さくする前に、削除する予定のサーバー・インスタンスを停止します。