1 Oracle Fusion Middleware 12cへのアップグレードのプランニング (12.2.1.3.0)

アップグレードの開始前に、アップグレードの制限事項とアップグレードが本番環境に与える影響について理解しておく必要があります。

次の手順に沿って、Oracle Fusion Middlewareの12c (12.2.1.3.0)へのアップグレードを計画する方法についての一般的な理解を得てください。:

アップグレード・プランニングのロードマップ

アップグレード・プロセスの開始前に、適切に策定したアップグレード計画を用意してください。

Oracle Fusion Middleware 12c (12.2.1.3.0)へのアップグレードの必要性

このような疑問を抱いている場合、これらの項で説明するプランニング・ステップを確認してください。このリリースのOracle Fusion Middlewareに関連付けられた要件に対して準備不足または理解不足である場合、アップグレードの作業は複雑で時間がかかります。

このプランニング・ガイドを、アップグレードの方針を設計する最初のステップとして使用してください。Oracle Help CenterおよびOracle Technology Network (OTN)では、アップグレード・プランニングに役立つアップグレード・ビデオやサポート・コミュニティへのリンクなど、プランニングのための追加のリソースを提供します。

次の表に、アップグレードのプランニング・フェーズ中に完了することが必要となる可能性があるタスクを示します。アップグレード・タスクを実行する順序は、現在の環境によって異なります。最も重要なアップグレード後の考慮事項を確認するには、このリストをチェックリストとして使用してください。使用する環境に適用されないタスクがあることに注意してください。

表1-1 アップグレード・プランニングのロードマップ

タスク 説明 ドキュメント

Oracle Fusion Middleware 11gとリリース12cとの相違点を理解する。

Oracle Fusion Middleware 11gユーザーは、アップグレード・プロセスを開始する前に、11gとリリース12cとの概念的および機能的な相違点を理解する必要があります。

11gユーザーを対象としたOracle Fusion Middleware 12cの概要

Oracle Fusion Middleware 12cへのアップグレードのプロセス・フローを確認する。

プロセス・フロー・マップでは、アップグレード・プロセスに関連するプライマリ・タスクを示します。

基本的な12cのアップグレード・プロセス・フローについて

既存のOracle Fusion Middlewareデプロイメントのアップグレードの高度なプロセスを理解する。

アップグレードは、複雑なプロセスで、システム停止時間を伴います。全体的なプロセスを理解しておくと、アップグレードをプランニングの役に立ちます。

基本的な12cのアップグレード手順について

アップグレードを開始する前に、システムに重要なすべてのファイルを含むバックアップ戦略を作成します。

アップグレードを開始する前に、バックアップする対象のコンポーネント、ファイル、スキーマを決定する必要があります。失敗が発生した場合、環境をアップグレード前の元の状態にリストアする必要があります。

アップグレードのためのバックアップ戦略の作成について

テスト戦略を作成します。

テスト環境から本番環境への移行は、アップグレードにおいて特に困難です。アップグレードを開始する前に、アップグレード・テスト戦略を作成すると、不必要な停止時間を回避できます。たとえば、実際のアップグレードを実行する前に、クローニングした本番環境でアップグレードを実行することを検討します。

アップグレード・テスト戦略の作成について

アップグレード・プロセス時のシステム停止時間を計画する。

アップグレード・プロセスでは、ほとんどのOracle Fusion Middlewareコンポーネントで「インプレース」アップグレードが行われます。この間システムが停止するための準備をする必要があります。失敗した場合に備えてバックアップおよびリカバリをテストし、アップグレードのダウンタイムを計画するため、アップグレード・プロセスをテストし、またリストア機能をテストします。アップグレード時に問題が発生し、システムのリストアが必要になった場合のシナリオの計画にも役立ちます。

アップグレード時のシステム停止時間に関する計画について

インプレース・アップグレードとアウトオブプレース・アップグレードについて

アップグレードの前に、サポートされているハードウェアおよびソフトウェアを稼働していることを確認します。

既存のOracle Fusion Middlewareデプロイメントをホストするハードウェアおよびソフトウェアが、Oracle Fusion Middleware 12cにアップグレードする前に特定の要件を満たしている必要があります。

注意: ハードウェア要件またはソフトウェア要件を満たせない場合は、アップグレードしないでください。

サポートされているアップグレード開始点について

データベースがサポートされていることを確認する。

12cドメインには、新しいスキーマを格納するOracleデータベースが必要です。Fusion Middlewareで使用するスキーマをホストするデータベースのバージョンがサポートされている必要があります。

12cのためのOracle Databaseのアップグレードおよび準備

どの11g製品および機能をアップグレードできるかを理解する。

どのコンポーネントをこのリリースのOracle Fusion Middleware 12cにアップグレードできるかを理解する必要があります。

11gコンポーネントをアップグレードした12cコンポーネントとともに使用する予定の場合、アップグレードによって相互運用性および互換性にどのような影響があるかを理解する必要があります。

Oracle Fusion Middleware 12cで使用できる製品および機能

Oracle Fusion Middleware 12cで使用できない製品および機能

デプロイされているアプリケーションおよびコンポーネントに与える影響を考慮する。

アップグレードされた12c環境でFusion Middleware 11gコンポーネントを引き続き使用する場合、発生する可能性のある相互運用性および互換性の問題を確認および理解する必要があります。

動作保証、互換性および相互運用性に関する要件について

アップグレードの基本的なルールおよび制限を理解する。

アップグレードで発生する可能性のある問題を回避するために、基本的なルールおよび制限を理解する必要があります。

コンポーネント・アップグレードの制約について

ドメイン・アップグレードの制限について

製品の最新のディストリビューションおよびアップグレード・ツールの入手先を理解する。

アップグレードを開始する前に、Oracle Help CenterおよびOracle Technology Networkのサイトを訪問し、製品ドキュメント、ビデオおよびその他の重要なプランニング・リソースの場所を熟知しておきます。

アップグレードするための製品ディストリビューションの取得について

アップグレードおよび構成ツールについて

11gユーザーを対象としたOracle Fusion Middleware 12cの概要

既存のOracle Fusion Middleware 11gユーザーを対象に、Oracle Fusion Middleware 12cの概念と用語について説明します。

Oracle Fusion Middleware 11gユーザーは、12cで導入された新しい用語と概念および既存の11gの用語の変更点を理解する必要があります。

一般的なFusion Middlewareの用語変更

いくつかの重要な概念と用語が12cで再定義されました。アップグレードする前に新しい用語を理解することが重要です。また、多くの用語が非推奨になりました。

「12cの新しい用語および非推奨用語」を参照してください。

アップグレードおよびパッチ適用の用語変更

Fusion Middleware 11gで使用されているアップグレードおよびパッチ適用の定義は、リリース12cで再定義されました。次の用語の変更点を確認して、既存の環境の更新に必要なパスを確実に理解してください。

  • メジャー・リリースは、新しい革新的な標準に準拠した機能で構成されています。メジャー・リリースには、新しいデータベース必須サポート・ファイル、JDBCドライバ、JDK依存関係および新しい動作保証と言語サポートが導入されている場合があります。たとえば、11gから12cへのアップグレードはメジャー・リリースで、12.1.3.0から12c (12.2.1.3.0)へのアップグレードはマイナー・リリースです。

  • リリース12cマイナー・リリースには、既存の機能のバグ修正に加え、重要な新機能の小さいセットが含まれています。マイナー・リリースにアップグレードすると、既存のすべての製品構成がサポートされ、新しい構成オプションを利用できるようになります。

  • リリース12cでは、アップグレードは、サポートされているOracle Fusion Middleware 11gデプロイメントでの新しい機能、機能拡張およびバグ修正を取得するために実行されます。次の例は、サポートされているアップグレード・パスを示しています。

    • 11.1.1.7.0または11.1.1.9.0から12.2.1.3.0への移行

    • 12.1.3.0から12.2.1.3.0への移行

    • 12.2.1.1から12.2.1.3.0への移行

  • リリース12cでは、bugを解決するためにFusion Middlewareのパッチ・セットがリリースされています。パッチ・セット・リリースには、新しい機能は含まれません。パッチ・セットは、新しいバイナリのセットと置き換えるかまたは既存のインストールに追加します。

    『Opatchによるパッチ適用』では、リリース12cでのパッチの適用に関する用語が説明されています。

12cドキュメント・ライブラリ・リソースの使用

12cドキュメント・ライブラリにおいて、アップグレード・ドキュメントはタスクに基づいて編成されています。タスク固有のページには、一般的なアップグレード手順および関連ドキュメントへのダイレクト・リンクが用意されています。

詳細はOracle Fusion Middlewareライブラリを参照してください。

サポートされているアップグレード開始点について

アップグレードするには、アップグレード前環境が、サポートされているバージョンのOracle Fusion Middlewareにある必要があります。

最新バージョンのOracle Fusion Middlewareにアップグレードするために実行する必要があるOracle Fusion Middlewareの特定のバージョンがアップグレード開始点となります。サポートされているアップグレード開始点であるOracle Fusion Middlewareのバージョンを実行していない場合は、以前のリリースのドキュメントを使用して、まずサポートされている開始点にアップグレードする必要があります。

Oracle Fusion Middleware 12c (12.2.1.3.0)でサポートされているアップグレード開始点

アップグレードするOracle Fusion Middlewareコンポーネントのサポートされているリリースを確認します。

Oracle Fusion Middlewareコンポーネント、サーバー、およびデータベースのすべてが認定済のバージョンである必要があります。ほとんどのFusion Middlewareコンポーネントのサポートされている開始点は同じですが、コンポーネントによっては異なる場合があります。アップグレード前のドメインの内容を必ず確認して、アップグレードがサポートされているバージョンであることを確認してください。

サポートされているOracle Fusion Middlewareリリース

次に示す以前のバージョンのOracle Fusion MiddlewareからOracle Fusion Middlewareリリース12c (12.2.1.3.0)にアップグレードできます。

  • Oracle Fusion Middleware 12.1.2.0.0、12.1.3.0.0、12.2.1.0.0、12.2.1.1.0および12.2.1.2.0

    以前の12cリリースからアップグレードしている場合、12c (12.2.1.3.0)に移行するには、フル・アップグレードを実行する必要があります。12c (12.2.1.3.0)ディストリビューションを同じOracleホームにインストールすることで既存の12cドメインを更新しようとしないでください。12.2.1.3.0へのドメインのアップグレードは、パッチ・セット・インストールではありません。

  • Oracle Fusion Middleware 11g 11.1.1.7.0、11.1.1.8.0および11.1.1.9.0

ノート:

アップグレードするコンポーネントでサポートされている開始点の詳細は、コンポーネント固有のアップグレード・ガイドを参照してください。

サポートされているOracle WebLogicリリース

WebLogic Serverバージョンのアップグレードをプランニングしている場合、Oracle Technology Network (OTN)のFusion Middlewareでサポートされているシステム構成に関する説明のページを参照して、アップグレード後の環境がOracleでサポートされるか確認する必要があります。

詳細は、次を参照してください。

このリリースのOracle Fusion MiddlewareでJDKが動作保証されていることの確認

このマニュアルの発行時点で、12c (12.2.1.3.0)の動作保証済JDKは、1.8.0_131です。

Oracle Technology Network (OTN)で、Oracle Fusion Middlewareのサポート対象システム構成 に関する情報を参照して、現在使用しているJDKがサポートされていることを確認します。

サポート対象外のJDKを使用している場合やJDKをインストールしていない場合は、次に示すWebサイトから必須のJava SE JDKをダウンロードする必要があります。
http://www.oracle.com/technetwork/java/javase/downloads/index.html

JDKは、Oracleホームの外部にインストールしてください。Oracle Universal Installerにより指定されたOracleホーム・ディレクトリが空であることが検証され、空のディレクトリが指定されていなければインストールは行われません。JDKをOracleホームにインストールした場合、今後の操作で問題が発生することがあります。このため、JDKは/home/oracle/products/jdkディレクトリにインストールすることをお薦めします。

汎用インストーラとプラットフォーム固有のインストーラの相違点の詳細は、Oracle Fusion Middlewareのダウンロード、インストールおよび構成のREADMEファイルの汎用とプラットフォーム固有のディストリビューションとの相違点の理解に関する項を参照してください。

サポートされているOracle HTTP Serverリリース

Oracle HTTP Server製品ディストリビューションの一環として、サポートされているOracle HTTP Server 11gリリースまたは12cリリースを、最新のリリースにアップグレードできます。Oracle HTTP ServerをOracle Fusion Middlewareリリース12c (12.2.1.3.0)にアップグレードする詳細は、次を参照してください。

サポートされているデータベース・バージョン

サポートされる最低限のデータベース・バージョンを使用していない場合、Fusion Middlewareのアップグレードを開始する前に、サポートされているいずれかのバージョンにデータベースをアップグレードする必要があります。

Oracle Fusion Middlewareリリース12c (12.2.1.3.0)がサポートしている最新のデータベース・バージョンの詳細は、「12cのためのOracle Databaseのアップグレードおよび準備」を参照してください。

サポートされているOracle Fusion Middlewareコンポーネントを実行していない場合

サポートされているOracle Fusion Middlewareコンポーネントを実行していない場合、12cアップグレード・プロセスを開始する前に、最初にご使用の環境でサポートされていないFusion Middlewareコンポーネントを、サポートされているアップグレード開始点にアップグレードします。

注意:

アップグレードした環境で、サポートされていないFusion Middleware 11gコンポーネントを使用しないでください。

サポートされている11gまたは12cコンポーネントとこのリリースとの間に互換性の問題が発生するかどうかを判断するには、動作保証、互換性および相互運用性に関する要件についてを参照してください。

以前のリリースのパッチ適用およびアップグレードに関するドキュメントは、Oracle Technology Network (OTN)で提供されています。

Oracle documentation

基本的な12cのアップグレード・プロセス・フローについて

12c Fusion Middleware Infrastructureへのアップグレードに使用する高度なアップグレード手順およびツールの概要を理解する必要があります。

ノート:

フローチャートは基本的なアップグレードを示すことを意図しています。コンポーネント固有のアップグレードを完了するために実行するタスクは、この項で示されている例とは異なる場合があります。コンポーネント固有のアップグレード・ドキュメントには、コンポーネントのアップグレードに必要な個別タスクの詳細が説明されています。

基本的な12cのアップグレード手順について

Oracle Fusion Middlewareデプロイメントを12cにアップグレードする方法の基本を理解します。アップグレードを実行する手順については、コンポーネント固有のアップグレード・ドキュメントを参照してください。

このトピックでは、Oracle Fusion Middleware 11gまたは以前の12cリリースからこのOracle Fusion Middleware 12cへの一般的なアップグレードを示します。アップグレードするコンポーネントによってはさらにステップがある場合もありますが、アップグレード・プロセスについての一般的な理解にお役立てください。

アップグレード手順の詳細は、コンポーネント固有のアップグレード・ガイドで説明されています。

表1-2 基本的なアップグレード・プロセスの理解

タスク 使用するツール

既存のデプロイメントのバックアップ・コピーを作成します。

環境に必要なアップグレード前タスクを完了します。

コンポーネントのアップグレード・ガイドのアップグレード前チェックリスト

新しいOracleホームに製品ディストリビューションをインストールします。

Oracle Universal Installer(OUI)

アップグレード前の準備状況チェックを実行して、デプロイメントがアップグレードの準備ができているかどうかを判断します。 アップグレード・アシスタント(UA)

Fusion Middlewareコンポーネントに新しいスキーマを作成します。

追加の表領域サイズなどのカスタム設定を必要とするスキーマにリポジトリ作成ユーティリティ(RCU)を使用します。

または、

デフォルト・スキーマ設定を使用して欠落しているまたは必要なスキーマを作成するには、Upgrade Assistantを使用します。スキーマはアップグレード・プロセス中に作成されます。

アップグレードするコンポーネントの11gまたは前の12cデータベース・スキーマをアップグレードします。

アップグレード・アシスタント(UA)

ドメインを再構成します。

再構成ウィザード

コンポーネント構成をアップグレードします。

アップグレード・アシスタント(UA)

アップグレード後に必要なすべてのタスクを実行します。

状況により異なります

アップグレードが成功したことを確認します。最低でもサーバーおよびノード・マネージャが開始され、アプリケーションが予想どおりに機能することを確認します。

状況により異なります

12cにおける標準的なアップグレード・トポロジについて

一例として標準インストール・トポロジを示しますが、この製品では、その他のアップグレード・トポロジもサポートされています。

各Oracle Fusion Middlewareリリース12cアップグレード・ガイドは、標準的なアップグレード・トポロジを説明します。標準アップグレード・トポロジは、コンポーネントに固有のインストレーション・ガイドで説明されている、標準インストール・トポロジに基づいています。各インストレーション・ガイドでは、標準的なトポロジを作成するための特定の手順を説明していますが、目的が異なる場合は、サポート・ドキュメントを参照してください。

コンポーネント固有のアップグレード・ガイドでは、アップグレード・トポロジを構成する特定の手順を説明していますが、インストールまたは構成時に選択をカスタマイズする場合は、そのタスクを実行できるように、サポートしているドキュメントの参照が記載されています。

標準的なトポロジの詳細は、開始点としての標準インストール・トポロジの使用方法を参照してください。

アップグレードのためのバックアップ戦略の作成について

アップグレード・プランに、アップグレードが失敗した場合に備えたバックアップの作成、格納およびリストアの戦略を含めておくことが重要です。

ノート:

バックアップおよびリカバリ計画に完全データベース・リストアの実行が含まれない場合は、オンライン・バックアップおよびリカバリに関する特別な考慮事項に関する項を確認してください。オンライン・リカバリを容易にするために追加の事前アップグレード・タスクの実行が必要な場合があります。

アップグレードの開始前に、アップグレード前環境の完全なバックアップを作成しておくようにしてください。このドキュメントの範囲外になりますが、Oracle Fusion Middlewareのバックアップおよびリカバリ戦略についてさらに学習するには、『Oracle Fusion Middlewareの管理』の次に示す項で説明しています。

アップグレード・テスト戦略の作成について

アップグレード前にクローン環境でテストを実施することにより、本番のアップグレード計画全体に適用できる重要なデータが得られます。テスト戦略には、アップグレード前環境のバックアップのリストアも含める必要があります。

その他のメリットには次のものがあります。

  • アップグレードに関する問題を明らかにし、修正します。

  • エンドツーエンドのアップグレードを完了させる練習をします。

  • アップグレードのパフォーマンスおよびパージ・スクリプトがどのように役立つかを理解します。

  • メタデータおよびその他のアーティファクトをアップグレードするのに必要な時間について理解します。

  • データベース・リソースの使用(一時表領域、PGAなど)について理解します。

Upgrade Assistantを使用したスキーマの作成について

アップグレード中に欠落しているスキーマを作成するには、Upgrade Assistantを使用します。Upgrade Assistantではデフォルトのスキーマ属性が適用されます。スキーマがカスタマイズされた設定を必要とする場合、リポジトリ作成ユーティリティ(RCU)を使用してアップグレードを開始する前にスキーマを作成します。

アップグレード時、Upgrade Assistant (UA)はコンポーネント・スキーマが欠落していてアップグレード前に作成する必要がある場合に検出することができます。アップグレード・アシスタントは、デフォルトの表領域と一時表領域の設定を使用してこれらのスキーマを作成できます。これらの設定をカスタマイズするには、リポジトリ作成ユーティリティを実行してスキーマを作成する必要があります。欠落しているスキーマが検出されると、「スキーマの作成」画面が表示されます。デフォルトで、「指定されたドメインで欠落しているスキーマの作成」オプションが有効になっています。アップグレード・アシスタントは、指定されたデータベース接続詳細とスキーマ所有者名を使用して、ドメインの欠落スキーマの作成を試行します。

ソース・ドメインにスキーマがない場合、UAは既存のスキーマ・プリフィックスを新しいスキーマに使用します。既存のスキーマがない場合、UAはプロンプト表示し、スキーマ情報の入力を求めます。

ただし、Upgrade Assistantでこれらのスキーマを作成しない場合は、このオプションの選択を解除し、「次」をクリックします。リポジトリ作成ユーティリティを使用してスキーマを作成する必要があります。

Upgrade Assistantの使用によるアップグレード前の準備状況チェックの実行

-readinessモードでUpgrade Assistantを実行すると、実際のアップグレードの前に問題を検出できます。これは、Upgrade Assistantウィザードを使用して実行できます。また、レスポンス・ファイルを使用してサイレント・アップグレードを実行することもできます。準備状況チェックは省略可能ですが、アップグレードごとに実行することをお薦めします。ただし、準備状況チェックはスタンドアロン・ドメインには実行できない点に注意してください。

Upgrade Assistantの準備状況チェックでは、既存のOracle Fusion MiddlewareスキーマおよびOracle WebLogic構成の読取り専用のアップグレード前確認を行います。

準備状況チェックは、既存のOracle Fusion Middlewareドメインがオンライン(他のユーザーがアクティブに使用している間)またはオフラインである間に実行できます。

準備状況チェックは、実際のアップグレードが試行される前に何度でも実行できます。ただし、アップグレード後はレポートで有効な結果が提供されないため、準備状況チェックを実行しないでください。

ノート:

パフォーマンスが低下する可能性を回避するために、準備状況チェックはオフピーク時に実行することをお薦めします。

調査フェーズと準備状況チェックの違いの理解

アップグレード・プロセスの調査フェーズは、準備状況チェックの実行とは別の操作です。通常、Upgrade Assistantの調査フェーズ中に実行されるチェックより、準備状況チェックの方が徹底しています。調査フェーズはUpgrade Assistant UIで「アップグレード」をクリックする直前に移行し、スキーマおよび構成問題に関する潜在的な問題を特定しますが、準備状況チェックは実際のアップグレードを開始する前に実行される読取り専用のプロセスです。

ノート:

アップグレードの実行時に、アップグレードの成功を妨げる問題が発生した場合は、アップグレードを再実行するために、バックアップしておいたアップグレード前の環境に戻すことが必要になる場合があります。準備状況チェックを実行すると、これらの問題の一部を特定し、システムのダウンタイムが延長されることを回避できます。

準備状況レポートの理解

準備状況チェックでは、フォーマットされ、タイムスタンプの付けられた準備状況レポートが生成され、実際のアップグレードを試みる前に潜在的な問題に対処できます。問題が検出されない場合は、アップグレード・プロセスを開始できます。アップグレードを実行する前に、このレポートを詳細に確認することをお薦めします。

レポートの情報 説明 必要なアクション
全体的な準備状況ステータス: SUCCESSまたはFAILURE レポートの上部には、アップグレードの準備状況チェックが成功したか、または1つ以上のエラーが発生して完了したかが示されます。 1つ以上のエラーが発生してレポートが完了した場合、アップグレードを試みる前に、FAILを検索し、障害の原因となった問題を修正します。準備状況チェックは、アップグレードする前に必要に応じて何度でも再実行できます。

タイムスタンプ

これは、レポートが生成された日付と時刻です。

必要なアクションはありません。

ログ・ファイルの場所

これは、生成されたログ・ファイルのディレクトリの場所です。

必要なアクションはありません。

準備状況レポートの場所

これは、生成された準備状況レポートのディレクトリの場所です。

必要なアクションはありません。

チェックされたコンポーネントの名前

チェックに含まれるコンポーネントの名前およびバージョンとステータス。

このリリースにアップグレードできないコンポーネントがドメインに含まれている場合は、アップグレードしないでください。

チェックされたスキーマの名前

チェックに含まれるスキーマの名前および現在のバージョンとステータス。

スキーマのバージョン番号をレビューします。このリリースにアップグレードできないスキーマがドメインに含まれている場合は、アップグレードしないでください。

ステータス: FAIL

個別準備状況チェック・テストによって問題が検出されました。

FAILED問題がすべて解決されるまではアップグレードしないでください。

ステータス: PASS

準備状況チェック・テストによって問題が検出されませんでした。

準備状況チェック・レポートにPASSステータスのみが表示されている場合、環境をアップグレードできます。ただし、準備状況チェックでは、ハードウェアやアップグレード時の接続性などの外部環境に関する問題を検出することはできません。アップグレードの進捗を常に監視する必要があります。

ノート:

準備状況チェックを-responseモードで実行して、レスポンス・ファイルを使用してサイレント準備状況チェックを実行することもできます。

アップグレード時のシステム停止時間に関する計画について

目的のFusion Middlewareデプロイメントにあわせた最適なアップグレード戦略を作成するには、まず、アップグレードが本番環境に与える影響を理解しておくことが重要です。また、データベースのサイズやシステム・インフラストラクチャの速度などの要因もアップグレード時の全体的な停止時間に影響します。

停止時間をプランニングする場合は、次の内容を慎重に検討してください。

  • Upgrade Assistantでは、アップグレードの期間全体を通じて、管理サーバーおよび管理対象サーバーを停止する必要があります。

  • 実際のアップグレードを開始する前に、アップグレード前準備状況チェックを実行して、潜在的なアップグレードの問題を識別します。実際のアップグレードに問題が発生した場合、アップグレード・プロセスを最初からもう一度開始する必要があります。これには、バックアップ・ファイルからのリカバリおよび再デプロイメントも含まれます。停止時間のプランニングおよび計算の際にはこれを考慮に入れる必要があります。

  • コンポーネント・スキーマのアップグレード後、再構成ウィザードを使用してドメインを再構成します。ドメインが再構成された後、Upgrade Assistantでは、構成をアップグレードする間、すべてのサーバーおよびコンポーネントを停止したままにする必要があります。12cでは、アップグレード処理の期間全体を通じて、サーバーおよびコンポーネントは停止します。

インプレース・アップグレードとアウトオブプレース・アップグレードについて

Fusion Middlewareのアップグレードの際に、既存のドメインがインプレースで上書きされます。新しい、別のドメインを作成するのではなく、アップグレードをインプレースで実行することをお薦めします。

インプレース・アップグレードでは、アップグレード前の環境にある既存の11gまたは12cファイルが更新および上書きされます。たとえば、スキーマおよびドメイン・ディレクトリのアップグレードはインプレースで実行されます。ただし、アウトオブプレース・アップグレード中は、アップグレード前のOracleホーム・ディレクトリを保持します。いずれの場合でも、新しいバイナリが新しいOracleホーム・ディレクトリにインストールされ、スキーマは常にインプレースでアップグレードされます。

Oracle Fusion Middleware 12cへのアップグレードには、中間層およびスキーマの両方のアップグレードが含まれます。中間層のみ、またスキーマのみのアップグレードはできません。

次のリストは、各コンポーネントに対するアップグレードの実行方法を示します。

  • Oracleホーム・バイナリ - アウトオブプレースでアップグレード

    Oracle Infrastructure (WebLogic ServerおよびJRFを含みます)およびその他の12cディストリビューション・バイナリを、新しいOracleホームにインストールします。アップグレード前バイナリは上書きされないため、バイナリのアップグレードはアウトオブプレースと考えられます。

  • 開始点(ソース)スキーマ - インプレースでアップグレード

    アップグレード前デプロイメントのスキーマはインプレースでアップグレードされるため、Upgrade Assistantはアップグレード処理時にスキーマを更新および上書きします。この処理の間は、サーバーを停止する必要があります。

  • ドメイン・ディレクトリ再構成 - インプレースでアップグレード

    既存のドメインはインプレースでアップグレードされます。アップグレードの間、既存のドメインの場所を指定し、ドメインは新しい12cのOracleホーム・ディレクトリを指すように再構成されます。

    ノート:

    ドメインのアップグレードはインプレースで実行することをお薦めします。ただし、アウトオブプレース・ドメイン・アップグレードが必要な場合は、アウトオブプレース・ドメイン・ディレクトリ・アップグレードの実行を参照してください。その場合も、スキーマはインプレースでアップグレードされます。
  • ドメイン・コンポーネント構成 - インプレースでアップグレード

    既存のドメインの再構成後に、Upgrade Assistantを再度使用して、新しい12c Oracleホーム・ディレクトリ内のアップグレードが必要な残りのドメイン・コンポーネント構成をアップグレードします。

動作保証、互換性および相互運用性に関する要件について

アップグレード手順を開始する前に、製品間の相互運用性と互換性、システム要件、および動作保証要件を確認することは重要です。

  • サポートされるオペレーティング・システム、データベース、Webサーバー、LDAPサーバー、アダプタ、IPv6、JDKおよびサード・パーティ製品に関する情報は、12c (12.2.1.3.0)の動作保証マトリックスを参照してください。

  • 製品間の相互運用性および互換性の詳細は、相互運用性および互換性の理解を参照してください。Oracle Fusion Middleware製品が旧バージョンの他のOracle Fusion Middleware、Oracleまたはサード・パーティ製品と機能するために重要な情報がこのマニュアルに記載されています。

コンポーネント・アップグレードの制約について

どの統合されたコンポーネントを最新バージョンのOracle Fusion Middlewareにアップグレードできるかを理解することは重要です。

本番環境をアップグレードする前に、クローン本番環境でアップグレードを試すことを強くお薦めします。

アップグレードにおけるその他の考慮事項は、相互運用および互換性の理解に記載されています。

ドメイン・アップグレードの制限について

既知の制限および以前のOracle Fusion Middlewareリリースからの構造の変更により、12cにアップグレードできないドメインもあります。

サポートされていないドメインはアップグレードしないでください。アップグレードは失敗し、バックアップからリカバリしなければならなくなります。たとえば、サポートされていないバージョンのコンポーネントが既存のドメイン内にある場合、そのドメインはこのリリースにアップグレードできません。

他にも適用される制限がある可能性があります。コンポーネント固有のアップグレード・ガイドおよびリリース・ノートを参照して、これらの制限がドメインに影響を与えないことを確認することをお薦めします。

アップグレードするための製品ディストリビューションの取得について

製品ディストリビューションは、Oracle Software Delivery CloudまたはOracle Technology Networkのいずれかから取得できます。

Oracle Fusion Middleware 12cソフトウェアは、製品ディストリビューションのシリーズとして取得されます。ディストリビューションは、Oracle Fusion Middleware製品および機能セットが事前定義されたセットをインストールするインストーラが含まれたアーカイブです。機能セットには、製品およびサービスが含まれており、これらは、該当する製品を選択すると、自動的にインストールされます。

ディストリビューションおよび機能セットの詳細は、配布、製品および機能の理解に関する項を参照してください。

ディストリビューションを取得するためにアクセスする必要のあるサイトの詳細な情報は、「Oracle Fusion Middlewareダウンロード、インストールおよび構成のReadmeファイル」ページを参照してください。

アップグレードおよび構成ツールについて

Oracle Fusion Middleware 12cは、多くのアップグレード関連タスクを自動化するインストール、アップグレードおよび構成ツールのスイートを提供します。

次のツールが、製品ディストリビューションの一部としてインストールされます。

表1-3 インストール、アップグレードおよび構成ツール

ツール名 このツールを使用すると、次のことができます。

Oracle Universal Installer(OUI)

12c製品ディストリビューションおよび機能セットをインストールします。

主要な各コンポーネントには、固有のインストレーション・ガイドがあります。これらのガイドは、コンポーネントでUniversal Installerを使用する方法の詳細を説明しています。

Oracle Upgrade Assistant (UA)

スキーマのアップグレード、コンポーネント構成およびスタンドアロン・システムのコンポーネント構成を行います。個別のパッチ・セット・アシスタント・ユーティリティは、スキーマのアップグレードに使用されなくなりましたので、11gからアップグレードするユーザーは注意してください。

主要な各コンポーネントには、固有のアップグレード・ガイドがあります。これらのガイドは、コンポーネントでUpgrade Assistantを使用する方法の詳細を説明しています。

リポジトリ作成ユーティリティ(RCU)

データベース内にスキーマを作成します。アップグレードの内容によっては、Oracle再構成ウィザードの実行前に、スキーマの作成が必要になることがあります。リポジトリ作成ユーティリティは各12cディストリビューションに含まれており、個別にRCUをダウンロード、インストールする必要があったFusion Middleware 11gとは異なります。

アップグレードの前に、すべてのコンポーネントに作成することが必要になる、新しい12cスキーマがあります。詳細は、コンポーネント固有のアップグレード・ドキュメントを参照してください。

Oracle構成ウィザード

WebLogicドメインを作成します。構成ウィザードは、WebLogic Serverドメインの作成および拡張のプロセスを簡略化します。

Oracle HTTP Server (OHS)などのスタンドアロン・システム・コンポーネントをアップグレードする場合、構成ウィザードを使用してドメインを構成しないでください。Upgrade Assistantを使用してスタンドアロン・ドメインを作成および構成します。

Oracle再構成ウィザード(12cの新機能)

Oracle WebLogic Serverを使用するドメインを再関連付けします。

再構成ウィザードを使用してドメインを再構成すると、WLSのコア・インフラストラクチャおよびドメイン・バージョンは自動的に更新されます。

OPatch

12cにパッチを適用します。

12cでは、パッチ・セット・インストーラはありません。Oracle Universal Installerは、すべてのメジャーおよびマイナー・リリースをインストールする場合に使用します。