4 アップグレードのトラブルシューティング

Oracleサポートに問い合せる前に、Upgrade Assistantを使用して、このリリースにOracle Fusion Middlewareのデプロイメントをアップグレードする際に発生する可能性のある、一般的な問題をトラブルシューティングできます。

アップグレードのトラブルシューティング

Upgrade Assistantの実行中に発生する可能性のあるエラーを理解すると、効果的なトラブルシューティングに役に立ちます。

注意:

処理は、エラーがどのフェーズで発生したかによって異なります。

Upgrade Assistantの実行時にエラーが発生した場合は、次のステップを実行して問題のトラブルシューティングを行ってください。

  1. Upgrade Assistantログ・ファイルを検索し、テキスト・エディタで開きます。

    ログ・ファイルの場所の詳細は、「ログ・ファイルの確認」を参照してください。

  2. Upgrade Assistant .jarファイルの正しいバージョンを確認するには:
    1. jlibディレクトリに移動します。

      cd ORACLE_HOME/oracle_common/upgrade/jlib

    2. 次のコマンドを入力します。

      unzip -p ua.jar META-INF/MANIFEST.MF

      注意:

      unzip -p ua.jar META-INF/MANIFEST.MFコマンドの出力により、Upgrade Assistantの構築に使用された開発ラベルが識別され、この情報により、実行されたUpgrade Assistantソフトウェアの日付とバージョンが識別されます。サービス・リクエストを発行する場合、この情報をOracleに提供する必要があります。
  3. UPGAST-00091などの番号で識別されるエラー・メッセージを検索します。
  4. エラー・メッセージに関する説明でそのエラー番号を参照してください。

    エラーの説明には、エラーの原因およびそのエラーを解決するために実行する必要がある処置が含まれています。

  5. エラー・メッセージおよびエラー・メッセージの説明を検索できるかどうかに応じて、次の操作のいずれかを実行します。
    • アップグレード時に発生した障害の解決方法を識別できる場合、その解決方法を実行した後、Upgrade Assistantを再起動してアップグレードを再実行します。

      Upgrade Assistantを再実行しても、前回のアップグレード時に正常にアップグレードされたコンポーネントは影響を受けません。ただし、Upgrade Assistantは、正常にアップグレードされなかったコンポーネントをアップグレードしようとします。

    • マニュアルに記載されていないエラーや、記載されている手順に従っても解決できないエラーについては、オラクル社カスタマ・サポート・センターに連絡してください。エラーの中には、バックアップからのリポジトリのリストア、問題の解決、および別のアップグレードの実行が必要なものがあることに注意してください。Oracleサポートでは存在する場合にUA.logファイルおよびUA.outファイルの提供を要求することに注意してください。これらのファイルの抜粋ではなく、完全なログを提供してください。

      注意:

      調査フェーズ中にエラーが発生したため、まだコンポーネントやスキーマがアップグレードされていない場合は、準備状況チェックを実行してください。準備状況チェックによって実行されるチェックのタイプの方が、アップグレードの調査フェーズよりも徹底したチェックが行われます。

      ただし、アップグレード中またはアップグレード後にエラーが発生した場合は、バックアップ・コピーから環境をリストアし、エラーを修正してから、アップグレード・プロセスを最初から再開する必要があります。

ログ・ファイルの確認

ログ・ファイルは削除しないでください。Upgrade Assistantの実行中に発生する問題の診断と修正に役立ちます。

Upgrade Assistantを実行中、ログ・ファイルの内容は、コマンドラインから別の-logLevel値を指定することで変更できます。デフォルト値は-logLevel NOTIFICATIONです。-logDirパラメータを使用して、ログ・ファイルの場所を変更できます。-logLevel TRACEを使用してUpgrade Assistantを実行することにより、より詳細なロギング情報を取得できます。ただし、これによってログ・ファイルのサイズが非常に大きくなる場合があります。

注意:

TRACEメッセージは、Upgrade Assistantログ・ファイル・ビューアに含まれていません。TRACEメッセージを表示するには、別のツールを使用します。

ヒント:

確認プロセスを容易にするには、ERRORという語句を検索します。

ログ・ファイルのエラー・メッセージの詳細は、「Upgrade Assistantの一般的なエラーの解決方法」を参照してください。

ログ・ファイルは、次のデフォルトのディレクトリに格納されます。

  • (UNIX) ORACLE_HOME/oracle_common/upgrade/logs/uatimestamp.log

  • (Windows)

    ORACLE_HOME\oracle_common\upgrade\logs\uatimestamp.log

timestampには、Upgrade Assistantが実行された実際の日時が反映されます。

一部のコンポーネントでは、uatimestamp.outという2番目のログ・ファイルが、同じ場所に作成されます。

特定のコンポーネントのデータベース・スキーマのアップグレードでは、シェル・プロセスで実行されたコマンドやPL/SQLスクリプトとして実行されたコマンドの画面出力を含む出力(.out)ファイルが存在することもあります。これらの出力ファイルは、同じデフォルトのディレクトリ内にあります。

このガイドの情報で解決できない、アップグレード時に発生した障害に関する質問や問題がある場合、ログ・ファイルを保存しておくことが重要です。サービス・リクエストを発行する必要がある場合、Upgrade Assistantの.logファイルおよび.outファイル(使用可能な場合)全体をサービス・リクエストとともにアップロードする必要があります。

調査時に発生した障害の調査

アップグレードの調査フェーズで発生する障害を特定してトラブルシューティングします。

確認時の障害の原因を判別するには、次の手順を実行します。

  1. Upgrade Assistantダイアログ・ボックスまたはコマンドライン出力内の障害が発生したコンポーネントの名前を書き留めます。
  2. Upgrade Assistantログ・ファイルを開きます。

    ログ・ファイルの場所の詳細は、「ログ・ファイルの確認」を参照してください。

  3. ログ・ファイルで、Starting to examine component_name. というメッセージを検索します。

アップグレードを完了するには、問題を解決し、Upgrade Assistantを再度起動します。または、可能であれば、「戻る」をクリックして前の画面に戻り、必要な変更を加えます。

注意:

準備状況チェックを使用すると、調査フェーズよりはるかに詳細なレベルのチェックが実行されます。調査時に障害が発生した場合は、-readinessパラメータを使用してUpgrade Assistantを実行し、テストの障害がレポートに表示されないことを確認できます。

調査フェーズ中に検出された問題は、バックアップからリストアしなくても解決できます(実際のアップグレード中に発生したエラーを解決する必要に応じて)。ただし、システムの状態を変更する方法で調査エラーを解決しようとしている場合は、システム全体をアップグレード前の状態(アップグレード操作が行われる前の状態)にリストアする必要があります。

アップグレード時に発生した障害の調査

アップグレード時に発生する障害を特定してトラブルシューティングします。

アップグレード時の障害の原因を判別するには、次の手順を実行します。

  1. Upgrade Assistantダイアログ・ボックスまたはコマンドライン出力内の障害が発生したコンポーネントの名前を書き留めます。
  2. アップグレード・ログ・ファイルを開きます。

    ログ・ファイルの場所の詳細は、「ログ・ファイルの確認」を参照してください。

  3. Starting to upgrade component_name. というメッセージを検索します。

アップグレードを完了するには、アップグレード前のバックアップを使用して、アップグレード操作が試行されていない時点まで環境全体をリストアし、問題を解決して、Upgrade Assistantを再起動します。アップグレードを正常に(完全に)行うには、アップグレード・プロセスを最初から始める必要があります。

注意:

RMANを使用してすべてのデータベースをバックアップし、これらのバックアップからPoint-in-Timeリカバリを実行できる必要があります。ドメインのFusion Middlewareリポジトリが複数のOracle Databaseサーバーにわたる場合、これらの各バックアップからリストアする必要があります。

Upgrade Assistantの一般的なエラーの解決方法

Oracleサポートに問い合せる前に、Upgrade Assistantの一般的なエラーの解決を試行します。

次の項では、最も一般的なアップグレード・エラーについて説明します。すべてのFusion Middlewareエラーにリストについては、エラー・メッセージに関する説明を参照してください。

ディスク領域が十分であるかどうかの確認

ディスク領域不足が原因でアップグレードに障害が発生した場合、バックアップからデータベース・サーバー環境を復元し、十分なディスク領域を追加するか、データベース・サーバーから不要なファイル(一時ファイルまたはトレース・ファイル)を削除して、アップグレードを再試行する必要があります。

注意:

このクラスのエラーが原因でデータベース・スキーマのアップグレードに障害が発生すると、ディスク領域を追加するだけではアップグレードを再試行できません。スキーマが不整合な状態になり、INVALIDとしてマークされた可能性があります。バックアップから元のデータベースの状態を復元しないと、このエラーから復元できません。

次の例は、発生する可能性のあるディスク領域不足によるエラーを示しています。

ORA-01658: 表領域にセグメント用のINITIALエクステントを作成できません

原因: 既存のスキーマ表領域に、アップグレードを完了するための十分な領域がありません。

処置: 表領域に、アップグレードを正常に実行するための十分な空き(領域)を確保してください。既存のデータベース表領域に、より多くのデータファイルを追加することをお薦めします。そうしないと、アップグレードは失敗します。

ORA-01114: ファイルブロック番号にブロックを書込み中にIOエラーが発生しました

原因: ファイルが保存されているデバイスが、オフラインになっている可能性があります。そのファイルが一時ファイルの場合、そのデバイスは領域不足である可能性があります。これは、一時ファイルのディスク領域が、ファイル作成時に割り当てられるとはかぎらないために発生する場合があります。

処置: デバイスへのアクセス権限を正しく設定するか、または不要なファイルを削除して、領域を解放してください。

ORA-09945: 監査証跡ファイルの初期化ができません。

原因: システムが、監査証跡として使用されるファイルへのヘッダー情報の書込みに失敗しました。監査ファイルを生成するためのaudit_trail_dest(監査証跡の生成先)のディスク領域が一杯です。

処置: 領域を解放してから操作を再試行してください。

スキーマのアップグレード時に発生するデータベース接続の問題の解決方法

Upgrade Assistantを使用してコンポーネント・スキーマをアップグレードするときに、データベースへの接続障害が発生した場合、SQL*Plusなどの別のツールを使用して、データベースへの接続を試行してください。これにより、データベースが稼働中でネットワークから使用できることを検証することで、問題のトラブルシューティングが可能になります。

サポートされていないドメインのアップグレード試行

サポートされていないドメインのスキーマやドメイン構成は、アップグレードしないでください。

指定されたドメインをアップグレードできないことを示すエラーを受け取ったら、最初にドメインをサポート対象バージョンにアップグレードする必要があります。サポートされていないドメインでスキーマまたはドメイン構成をアップグレードしないでください。

障害が発生した後のUpgrade Assistantの再起動

Upgrade Assistantを再起動する前にエラーを解決する必要があります。

Upgrade Assistantがアップグレード・フェーズで失敗した場合や、一部のコンポーネントしかアップグレードされない場合は、それらの問題の解決方法を試してから次のステップを実行します。

  1. 問題を特定して解決します。ログ・ファイルを確認し、パッチの適用が必要な可能性があることに注意します。
    アップグレードに障害が繰り返し発生する場合は、より多くの情報がロギングされるよう、-logLevelTRACEに設定することを検討してください。これは、障害が発生したアップグレードのトラブルシューティングに役立ちますが、パフォーマンスの問題を避けるために、問題が解決された後は、必ず-logLevelNOTIFICATIONに再設定してください。
  2. 11gまたは12c環境全体をアップグレード前のバックアップからリストアします。
  3. コンポーネント固有のアップグレード・ガイドの説明に従ってアップグレードを再起動します。
オラクル社が推奨する標準バックアップおよびリカバリ手順に従うことができない場合は、オンライン・リストアを実行する必要があります。