13 Oracle Trace File Analyzerスタート・ガイド

この項では、様々なオペレーティング・システムでのOracle Trace File Analyzerのインストール方法について説明します。

13.1 Oracle Trace File Analyzer

Oracle Trace File Analyzerは、診断データを収集して分析するのに役立ちます。

DBAは、より少ないリソースでより多くの作業を行うことを常に求められます。ミッション・クリティカルなアプリケーションの稼動および実行を維持する責任があります。なんらかの問題が発生した場合、すべてのユーザーは、不具合の原因やその修正方法の説明をDBAに求めます。

これは必ずしも容易ではありません。適切なタイミングで適切なツールを実行する必要があります。また、Oracle Grid Infrastructureを使用している場合は、すべてのデータベース・ノードから診断データを収集する必要があります。このデータの収集には、滅多に使用しないツールを使用しなければならない場合もあります。言うまでもなく、各ツールには独自の構文があります。

収集するデータの量が膨大になる可能性があります。有用なデータは収集するデータのほんの一部ですが、どの部分が関連するか判断する方法がありません。データが上書きされる前に、すべてを迅速に収集する必要があります。一方で、会社の時間と経費が消費されるという問題もあります。

Oracle Trace File Analyzerは、診断データの収集を可能にします。診断データの収集は、Oracle Databaseで発生する問題を解決するための非常に重要なステップです。

Oracle Trace File Analyzerは、サービスに影響を与える可能性のある重大な問題がないか、ログを監視します。また、潜在的な問題の検出時に、関連する診断を自動的に収集します。

Oracle Trace File Analyzerでは、ログ・ファイル内の関連する情報を特定できます。問題を解決するために必要な部分のみにログ・ファイルを切り捨てます。また、Oracle Trace File Analyzerは、クラスタ・ノード間でデータを収集し、すべてを1箇所に統合します。

Oracle Trace File Analyzerでは、重要なデータベース診断ツールを容易に使用できます。Oracle Trace File Analyzerは、すべてのツールに単一のインタフェースと構文を提供することで複雑さを解消します。

13.2 サポートされている環境

Oracle Trace File Analyzerは、Oracle DatabaseおよびOracle Grid Infrastructureのすべてのサポートされているバージョンで使用できます。

Oracle Trace File Analyzerは、次のオペレーティング・システムで動作します。

  • Linux OEL

  • Linux RedHat

  • Linux SuSE

  • Linux Itanium

  • zLinux

  • Oracle Solaris SPARC

  • Oracle Solaris x86-64

  • AIX

  • HPUX Itanium

  • HPUX PA-RISC

  • Microsoft Windows 64-bit

Oracle Trace File Analyzerは、Oracle Databaseでサポートされているオペレーティング・システムの各バージョンでサポートされています。Java Runtime Editionのバージョン1.8を使用してください。

Oracle Trace File Analyzerは、バージョン11.2.0.4および12.1.0.2以降のOracle Gird Infrastructureに付属しています。ただし、このインストールには、Oracle Databaseの多くのツールが含まれていません。オラクルは、Oracle Trace File Analyzerの最新バージョンを年に複数回リリースしています。これらの新しいリリースには新機能とバグ修正が含まれています。

My Oracle Supportノート1513912.1から、Oracleデータベース・サポート・ツール・バンドルが付属した最新のOracle Trace File Analyzerを取得してください。

13.3 rootユーザーとしてのLinuxまたはUNIXでのOracle Trace File Analyzerのインストール(デーモン・モード)

Oracle Trace File Analyzerの最大限の機能を取得するには、rootとしてインストールします。

Oracle Trace File Analyzerは、アクセスを許可するユーザーを判別するためにアクセス制御リスト(ACL)を保持します。デフォルトでは、GRID_HOME所有者およびORACLE_HOME所有者は、それぞれの診断にアクセスできます。他のユーザーは、診断収集を実行できません。

Oracle Trace File Analyzerがすでにインストールされている場合、再インストールすると既存の場所へのアップグレードが実行されます。Oracle Trace File Analyzerがまだインストールされていない場合、推奨される場所は/opt/oracle.tfaです。

rootとしてインストールするには、次のようにします。

  1. 適切なOracle Trace File Analyzerのzipファイルをダウンロードし、ダウンロードしたファイルを必要なマシンにコピーして解凍します。
  2. installTFAコマンドを実行します。
    $ ./installTFA-platform

ローカル・インストールまたはクラスタ・インストールを実行するように要求されます。

クラスタ・インストールでは、すべてのクラスター・ノードに対して、rootへのパスワードなしのSSHユーザー等価性が必要です。まだ構成していない場合、インストールにより、パスワードなしのSSHユーザー等価性がオプションで設定され、終了時に削除されます。

パスワードなしのSSHの使用を希望しない場合は、ローカル・インストールを使用して各ホストにインストールします。tfactl syncnodesコマンドを実行して、関連するSSL証明書を生成してデプロイします。

Oracle Trace File Analyzerは、クラスタ・レディ・サービス(CRS)の停止時に使用できる必要があるため、CRSによって管理されません。

インストールにより、Oracle Trace File Analyzerで自動起動が構成されます。自動起動の実装は、プラットフォームによって異なります。Linuxでは、initか、initに代わるupstartsystemdなどが使用されます。Microsoft Windowsでは、Windowsサービスが使用されます。

Engineered System以外でLinuxまたはSolarisにOracle Trace File Analyzerをrootとしてインストールすると、Oracle ORAchkデーモンが自動的に設定および実行されます。

このデーモンは毎日午前1時に再起動し、環境の変更を検出します。このデーモンは、毎日午前2時に完全なローカルOracle ORAchkチェックを実行し、最も影響のあるチェックの一部をoratier1プロファイルを介して6時間ごとに実行します。

このデーモンは、2週間より古い収集を自動的に消去します。

自動起動を有効にした後、デーモン設定を変更できます。自動起動を随時削除するには、tfactl run orachk -autostopを実行します。

13.4 非ルート・ユーザーとしてのLinuxまたはUNIXでのOracle Trace File Analyzerのインストール(非デーモン・モード)

rootとしてインストールできない場合は、Oracle Trace File AnalyzerをOracleホーム所有者としてインストールします。

このインストール・モードでは、Oracle Trace File Analyzerの機能は縮小されます。

次のタスクは実行できません。

  • 自動診断収集

  • リモート・ホストからの診断収集

  • Oracleホーム所有者が読取り可能でないファイル(例: /var/log/messages)や特定のOracle Grid Infrastructureログの収集

Oracleホーム所有者としてインストールするには、–extracttoオプションを使用します。–extracttoオプションを使用して、インストール場所をOracle Trace File Analyzerに指示します。また、–javahomeオプションを使用して、使用するJREを指定します。より新しいバージョンを入手済の場合を除き、Oracleホームですでに入手可能なJREを使用します。

./installTFA-platform -extractto install_dir -javahome jre_home

13.5 Microsoft WindowsでのOracle Trace File Analyzerのインストール

ノート:

Oracle Trace File Analyzerをインストールするには、.NET Frameworkバージョン4.0.30319以上が必要です。インストール・エラーが発生した場合は、正しい.NET Frameworkバージョンがインストールされていることを確認してください。

  1. 適切なOracle Trace File Analyzerのzipファイルをダウンロードし、ダウンロードしたファイルを必要なマシンの1つにコピーして解凍します。
  2. 管理者としてコマンド・プロンプトを開き、Perlのホームを指定してインストール・スクリプトを実行します。

    次に例を示します。

    install.bat -perlhome D:\oracle\product\12.2.0\dbhome_1\perl

ローカル・インストールまたはクラスタ・インストールを実行するように、インストーラによって要求されます。クラスタ・インストールを選択すると、インストーラはローカルおよびリモートのクラスタ・ノード上にOracle Trace File Analyzerをインストールします。

または、各ホスト上でローカル・インストールを実行できます。tfactl syncnodesコマンドを実行して、関連するSSL証明書を生成してデプロイします。

13.6 Microsoft WindowsでのOracle Trace File Analyzerのインストール(非デーモン・モード)

Oracle Trace File AnalyzerをWindowsサービスとして自動的に実行しない場合は、非デーモン・モードでインストールします。このインストール・モードでは、Oracle Trace File Analyzerの機能は縮小されます。

次のタスクは実行できません。

  • 自動診断収集

  • リモート・ホストからの診断収集

  • Oracleホーム所有者が読取り可能でないファイルの収集

  1. 適切なOracle Trace File Analyzerのzipファイルをダウンロードし、ダウンロードしたファイルを必要なマシンの1つにコピーして解凍します。
  2. 管理者としてコマンド・プロンプトを開き、インストール・スクリプトを実行します。
    tfa_home\bin\tfactl.bat -setupnd

13.7 Oracle Trace File Analyzerの主なディレクトリ

インストール・タイプに基づいて、ora_homeディレクトリおよびbinディレクトリは異なる場合があります。

Oracle Grid InfrastructureとともにOracle Trace File Analyzerをインストールした場合、TFA_HOMEGRID_HOME/tfa/hostname/tfa_homeになります。

表13-1 Oracle Trace File Analyzerの主なディレクトリ

ディレクトリ 説明

tfa/bin

コマンドライン・インタフェースのtfactlが含まれています。

Oracle Grid Infrastructureがインストールされている場合、tfactlGRID_HOME/binディレクトリにインストールされます。

tfa/repository

Oracle Trace File Analyzerが診断収集を格納するディレクトリ。

tfa/node/tfa_home/database

システムに関するデータが格納されるBerkeleyデータベースが含まれています。

tfa/node/tfa_home/diag

Oracle Trace File Analyzerのトラブルシューティング用のツール。

tfa/node/tfa_home/diagnostics_to_collect

次の収集に含めるファイルをここに配置し、その後、削除されるようにしてください。

tfa/node/tfa_home/log

Oracle Trace File Analyzerの操作に関するログが含まれています。

tfa/node/tfa_home/resources

ログ・マスキング制御ファイルなどのリソース・ファイルが含まれています。

tfa/node/tfa_home/output

環境に関する追加のメタデータが含まれています。

13.8 Oracle Trace File Analyzerコマンドのインタフェース

tfactlツールは、コマンドライン・インタフェース、シェル・インタフェース、およびメニュー・インタフェースとして機能します。

表13-2 Oracle Trace Fileのインタフェース

インタフェース コマンド 使用方法

コマンドライン

$ tfactl command

コマンドラインですべてのコマンド・オプションを指定してください。

シェル・インタフェース

$ tfactl

コンテキストを設定および変更し、シェル内からコマンドを実行してください。

メニュー・インタフェース

$ tfactl menu

メニュー・ナビゲーション・オプションを選択してから、実行するコマンドを選択してください。

13.9 機密データのマスキング

機密データのマスキングは、Oracle Trace File Analyzerを構成してログ・ファイルの機密データをマスキングする、オプションの機能です。

Oracle Trace File Analyzerでは、ホスト名やIPアドレスなどの情報がマスキングされ、機密データがすべてのファイルで一貫して置き換えられます。一貫して置き換えることにより、機密データを共有することなく、情報の適合性および診断目的での有用性が保たれます。

マスキングを構成するには:

  1. ディレクトリtfa_home/resourcesmask_strings.xmlというファイルを作成します。
  2. mask_strings要素を定義して、その中にmask_string要素を定義し、置き換える文字列ごとにoriginalreplacementを定義します。
    次に例を示します。
    <mask_strings>
         <mask_string>
              <original>WidgetNode1</original>
              <replacement>Node1</replacement>
         </mask_string>
         <mask_string>
              <original>192.168.5.1</original>
              <replacement>Node1-IP</replacement>
         </mask_string>
         <mask_string>
              <original>WidgetNode2</original>
              <replacement>Node2</replacement>
         </mask_string>
         <mask_string>
              <original>192.168.5.2</original>
              <replacement>Node2-IP</replacement>
         </mask_string>
    </mask_strings>

    Oracle Trace File Analyzerにより自動的にmask_strings.xmlファイルが検出され、収集した診断情報の機密データの置換が開始されます。

13.10 Oracle Trace File Analyzerへのアクセスの保護

tfactlコマンドの実行は、権限のあるユーザーに制限されます。

tfactlは、次を行うためのコマンドライン・インタフェースとシェルを提供します。

  • 診断を実行し、選択した時刻からの関連ログ・データをすべて収集します。

  • その時刻の前後でログ・ファイルを切り捨て、診断に必要なデータのみを収集します。

  • クラスタ内の必要なノードから、切捨て済のすべての診断を収集してパッケージ化し、単一ノード上の1つのパッケージにすべてを統合します。

権限のある非rootユーザーは、tfactlコマンドのサブセットを実行できます。その他すべてのtfactlコマンドには、rootアクセスが必要です。権限のないユーザーはtfactlコマンドを実行できません。

デフォルトでは、次のユーザーがtfactlコマンドのサブセットにアクセスできます。

  • Oracle Grid Infrastructureホーム所有者

  • Oracle Databaseホーム所有者

LinuxおよびUNIXでは、Oracle Trace File Analyzerがrootとしてインストールされている場合にのみユーザー・アクセスを適用できます。Oracle Trace File Analyzerが非rootとして、またはWindowsにインストールされている場合には、ユーザー・アクセスは適用されません。

tfactlへのユーザー・アクセスをプロビジョニングするには:

  • tfactlへのアクセス権を持つユーザーをリストするには、次のようにします。

    tfactl access lsusers
  • tfactlにアクセスするユーザーを追加するには、次のようにします。

    tfactl access add –user user [-local]

    デフォルトでは、–localを使用してローカル・ノードに制限されている場合を除き、アクセス・コマンドはクラスタ全体に適用されます。

  • tfactlへのアクセスからユーザーを削除するには、次のようにします。

    tfactl access remove –user user [-local]
  • tfactlへのアクセスからすべてのユーザーを削除するには、次のようにします。

    tfactl access removeall [-local]
  • ユーザー・アクセスをデフォルトにリセットするには、次のようにします。

    tfactl access reset
  • ユーザー・アクセスを有効にするには、次のようにします。

    tfactl access enable
  • ユーザー・アクセスを無効にするには、次のようにします。

    tfactl access disable

関連項目

13.11 Oracle Trace File Analyzerのアンインストール

  1. Oracle Trace File Analyzerをアンインストールするには、 rootまたはインストール・ユーザーとしてuninstallコマンドを実行します。
    $ tfactl uninstall