『Oracle Clusterware管理およびデプロイメント・ガイド』に関するこのリリースにおける変更
この章では、Oracle Database19cおよび18c用のOracle Clusterwareの新機能について説明します。
Oracle Clusterwareリリース19cの変更点
Oracle Clusterware 19cのOracle Clusterware管理およびデプロイメント・ガイドの新機能は次のとおりです。
Oracle Clusterware19cのSRVCTLの変更
Oracle Clusterware 19cには、既存のコマンドに対する構文の変更やOracle Automatic Storage Management (Oracle ASM)を管理するコマンドなど、サーバー制御ユーティリティ(SRVCTL)への変更が含まれます。
SRVCTLは、Oracle Real Application Clusters (Oracle RAC)およびOracle Clusterwareの管理に使用するツールの1つです。
高速ホーム・プロビジョニングの名称変更
このリリースでは、これまで高速ホーム・プロビジョニングと呼ばれていた機能の名前が、フリート・パッチ適用およびプロビジョニングに変更されています。機能に対する変更はなく、RHPCTLユーティリティは、フリート・パッチ適用およびプロビジョニング操作の管理に使用するツールのままです。
PDBの自動的なパッチ適用および再配置
統合されたOracleマルチテナント環境では個々のプラガブル・データベースにパッチを適用できるため、コンテナ・データベース全体ではなく、特定のプラガブル・データベースにのみバグ修正のパッチを適用できます。ファイングレイン・シングルインスタンスのプラガブル・データベース・パッチ適用によって、広範な変更の採用(バグ修正など)で発生する可能性のあるリスクが減少し、必要な場所のみ変更を行う影響も軽減されます。
フリート・パッチ適用およびプロビジョニングを使用した停止時間0のOracle Grid Infrastructureパッチ適用
停止時間0のOracle Grid Infrastructureパッチ適用では、Oracle Real Application Clusters (Oracle RAC)データベース・インスタンスに影響を与えることなく、Oracle Grid Infrastructureの個別パッチを適用できます。フリート・パッチ適用およびプロビジョニングを使用して、クラスタのノードごとに1つずつパッチを適用します。この機能は、2つ以上のノードを持つすべてのOracle RACクラスタで使用できますが、現在は個別パッチにのみ適用されます(リリース更新またはリリース更新リビジョンには適用されない)。
フリート・パッチ適用およびプロビジョニングを使用して、データベース・インスタンスの停止時間を0にしてOracle Grid Infrastructureパッチを適用すると、ユーザーに対する影響と、Oracle RACデータベース・インスタンスからのサービスの中断がなくなります。以前のデータベース・リリースでは、Oracle Grid Infrastructureパッチを適用する前にデータベース・インスタンスを停止する必要があり、エンタープライズ操作に明らかに影響していました。
Oracle Grid Infrastructureのアップグレードの自動トランザクション・ドレイン
Oracle Grid Infrastructureアップグレードの自動トランザクション・ドレインでは、データベース・サービス構成に従って、一度に1ノードずつ、データベース・インスタンスに対するトランザクションの自動ドレインが行われます。トランザクション・ドレイン機能は、データベース・サービス設計の不可欠な部分であり、Oracle Grid Infrastructureのローリング・パッチ適用に自動的に統合されています。
フリート・パッチ適用およびプロビジョニングを使用した、ローリング・パッチ適用中のデータベース・トランザクションの自動かつ協調的なドレインにより、パッチ適用操作の影響が軽減されます。ユーザー・トランザクションがドレインされると、クラスタ上の特定のノードに対するパッチ適用操作を完了でき、その後でインスタンスおよびサービスがローカルで再起動し、新しい接続が確立されます。接続は、パッチ適用操作の前にクラスタ内の次のノードに進みます。
Oracle Restartのパッチ適用およびアップグレード
フリート・パッチ適用およびプロビジョニングを使用して、Oracle Restartにパッチを適用しアップグレードします。以前のリリースのOracle Restart環境は、ユーザーがパッチ適用およびアップグレードの操作を実行する必要があり、多くの場合、手動操作が必要でした。フリート・パッチ適用およびプロビジョニングでは、これらの手順が自動化されます。
フリート・パッチ適用およびプロビジョニングを使用してOracle Restartにパッチ適用とアップグレードを行うと、Oracle RACデータベース・インストールで実装されるプロセスが自動化および標準化されます。これにより、Oracle Restartデプロイメントが多い場合は特に、操作の必要性とリスクも低減されます。
CRSCTLを使用したTLS暗号の仕様のサポート
CRSCTLユーティリティの拡張機能によって、トランスポート層セキュリティ(TLS)暗号の仕様のサポートが追加されます。
セキュアなクラスタ通信
セキュアなクラスタ通信を単一ネットワーク・サポートと併用すると、一般的なセキュリティに対する脅威からクラスタ・インターコネクトが保護されます。セキュアなクラスタ通信には、メッセージ・ダイジェスト・メカニズム、ファジングに対する保護、およびトランスポート層セキュリティ(TLS)を使用したクラスタ・メンバー間のプライバシとデータ整合性の提供が含まれます。
クラスタ・インターコネクトのセキュリティ強化は、新しいOracle Grid Infrastructure 19cデプロイメント、またはOracle Grid Infrastructure 19cへのアップグレードの一部として、自動的に呼び出されます。データベース管理者やクラスタ管理者は、この機能の構成を変更する必要はありません。
OCRおよび投票ディスクの直接ファイル配置の再サポート
Oracle Grid Infrastructure 19c以上では、共有ファイル・システム上の直接OCRおよび投票ディスク・ファイルの配置のサポート終了は、Oracleスタンドアロン・クラスタに対して廃棄されます。Oracleドメイン・サービス・クラスタの場合、共有ファイル・システムでホストされているファイルに加えて、OCRおよび投票ファイルをOracle Automatic Storage Management (Oracle ASM)に配置し、ASMディスクとして使用するという要件は変わりません。
Oracle Grid Infrastructure 12cリリース2 (12.2)では、直接、共有ファイル・システム上でOracle Grid InfrastructureのOracle Cluster Registry (OCR)および投票ファイルの配置がサポートされなくなることが発表されました。このサポート終了は現在破棄されました。Oracle Grid Infrastructure 19c (19.3)以上では、Oracleスタンドアロン・クラスタとともに、OCRおよび投票ディスク・ファイルを共有ファイル・システムに直接配置できます。
グリッド・インフラストラクチャ管理リポジトリのオプションのインストール
Oracle Grid Infrastructure 19c以上では、グリッド・インフラストラクチャ管理リポジトリ(GIMR)は、Oracleスタンドアロン・クラスタの新規インストールでオプションです。Oracleドメイン・サービス・クラスタでは、GIMRをサービス・コンポーネントとしてインストールする必要があります。
GIMRに含まれているデータは、適用されている機械学習に基づく予防診断の基礎となり、Oracle Real Application Clusters (RAC)データベースの可用性の向上に役立ちます。GIMRをオプションでインストールすると、特にテスト・システムや開発システムのインストール時に、記憶領域の管理および高速デプロイメントをより柔軟に行うことができます。
Oracle Clusterware 19cで非推奨となった機能
次の機能は、Oracle Clusterware 19cでは非推奨であり、将来のリリースではサポートされなくなる可能性があります。
Addnodeスクリプトの非推奨
addnode
スクリプトは、Oracle Grid Infrastructure 19cでは非推奨です。クラスタにノードを追加する機能は、インストーラ・ウィザードで使用できます。
addnode
スクリプトは今後のリリースで削除される可能性があります。addnode
スクリプト(addnode.sh
またはaddnode.bat
)を使用するかわりに、インストーラ・ウィザードを使用してノードを追加してください。インストーラ・ウィザードでは、addnode
スクリプト以上に多くの機能が拡張されています。インストーラ・ウィザードを使用すると、すべてのソフトウェア・ライフサイクル操作を1つのツールに統合することで管理が簡略化されます。
clone.plスクリプトの非推奨
clone.pl
スクリプトは今後のリリースで削除される可能性があります。clone.pl
スクリプトを使用するかわりに、インストーラ・ウィザードを使用して、抽出されたゴールド・イメージをホームとしてインストールすることをお薦めします。
Oracle Clusterwareとベンダー・クラスタウェアの統合の非推奨
ベンダーまたはサード・パーティのクラスタウェアとOracle Clusterwareの統合は、Oracle Database 19cで非推奨になりました。
Oracle Clusterwareとベンダー・クラスタウェアの統合は非推奨であり、将来のリリースでサポートされなくなる可能性があります。特定のクラスタ機能を非推奨にし、制限付きの採用とすることにより、オラクル社では、すべての機能の中核となるスケーリング、可用性および管理性の向上に注力できます。異なるクラスタ・ソリューション間の統合がない場合、システムでクラスタ・ソリューションの競合の問題が生じることがあります。これは、独立した各クラスタ・ソリューションが、特定の障害が発生した場合に実行する必要がある修正処理を個別に決定する可能性があるという事実を示しています。このため、いつの時点においても1つのソリューションのみをアクティブにすることをお薦めします。次回のソフトウェアまたはハードウェアのアップグレードでは、この理由により、ベンダー・クラスタ・ソリューションを使用しない構成に移行することをお薦めします。
Oracle Clusterwareを使用したブラック・ボックス仮想マシン管理の非推奨
Oracle Clusterwareを使用した仮想マシン(VM)リソースの直接管理は、Oracle Database 19cで非推奨となり、将来のリリースで削除される可能性があります。
Oracle Clusterware 19cを使用した物理ハードウェア上のブラックボックスOracle Grid Infrastructure仮想マシン(GIVM)のOracle Clusterware管理の使用が引き続きサポートされているため、可用性が向上し、仮想マシンの管理が容易になります。
Oracle Clusterware 19cでサポートが終了した機能
Oracle Clusterware 19cでサポート対象外になった機能は、次のとおりです。
フレックス・クラスタ・アーキテクチャでのリーフ・ノードのサポート終了
リリーフ・ノードはOracle Grid Infrastructure 19cのOracle Flex Clusterアーキテクチャでサポートされなくなりました。
Oracle Grid Infrastructure 19c (19.1)以上のリリースでは、Oracle Flex Clusterのすべてのノードはハブ・ノードとして機能します。Oracle Flex Clusterアーキテクチャの元の実装でリーフ・ノードによって提供された機能は、ハブ・ノードで容易に提供できます。このため、リーフ・ノードはサポートされなくなりました。
Standard Edition 2 (SE2)データベース・エディション用のOracle Real Application Clustersのサポート終了
Oracle Database 19c以上では、Oracle Real Application Clusters (Oracle RAC)はOracle Database Standard Edition 2 (SE2)でサポートされなくなりました。
Oracle Real Application Clusters (Oracle RAC)機能を使用するOracle Database Standard Editionデータベースを以前のリリースからOracle Database 19cにアップグレードすることはできません。これらのデータベースをOracle Database 19cにアップグレードするには、アップグレードを開始する前にOracle RAC機能を削除するか、Oracle Database Standard EditionからOracle Database Enterprise Editionにアップグレードします。
アップグレード後のシステムの再構成方法を含む各ステップの詳細は、My Oracle Supportノート2504078.1「Oracle Database Standard Edition 19cでのOracle Real Application Clusters(RAC)のサポート終了」を参照してください。