日本語PDF

2 Oracle ASMストレージに関する考慮事項の確認

一部の問題は、Oracle Automatic Storage Management (Oracle ASM)の構成前にストレージ・サブシステムに関して考慮する必要があります。

Oracle ASMの使用目的でストレージを準備する場合は、まずシステムのストレージ・オプションを決定し、次に特定のオペレーティング・システム環境に対してディスク・ストレージを準備する必要があります。

システムのストレージを構成する場合、システムの初期容量および今後の増加に対応した計画を検討する必要があります。Oracle ASMによって増加に対応する作業が容易になります。ただし、増加計画はOracle ASMディスクのサイズなどの選択に影響を与える可能性があります。また、I/Oパフォーマンスがストレージ・ディスクだけでなく、ストレージとホスト間のインターコネクトに依存するかどうかも検討する必要があります。クラスタ内のノードの数を増やすにつれて、ストレージ・サブシステムも拡張する必要があります。

この章のトピックは、次のとおりです:

ディスク・グループ用のストレージ・リソース

Oracle ASMディスク・グループの作成に使用できる様々なストレージ・リソースがあります。

Oracle ASMディスク・グループは、次のいずれかのストレージ・リソースを使用して作成できます。

  • ディスク・パーティション

    ディスク・パーティションは、ディスク・ドライブ全体またはディスク・ドライブのセクションになります。ただし、パーティション表は上書きされるため、Oracle ASMディスクはパーティション表が含まれているパーティションに置くことはできません。

  • 論理ユニット番号(LUN)

    LUNは、ストレージ・アレイによってコンピュータ・システムに提供されるディスクです。ハードウェアRAID機能を使用してLUNを作成することをお薦めします。ストレージ・ハードウェアRAID 0+1またはRAID5、および他のRAID構成をOracle ASMディスクとしてOracle ASMに提供できます。

  • 論理ボリューム

    論理ボリューム は、論理ボリュームがLUNにマップされているか、論理ボリュームでディスクまたはRAWパーティションを使用する比較的単純な構成でサポートされます。論理ボリューム構成では機能が重複するため、お薦めしません。また、Oracle ASMでミラー化が提供されているため、ミラー化に論理ボリューム・マネージャを使用することもお薦めしません。

  • ネットワーク・ファイル・システム(NFS)

    Oracle ASMディスク・グループは、Oracle Direct NFS (dNFS)を含むNFSファイルから作成できます。ディスク・グループにプロビジョニングされるNFSファイルは、よりよいロード・バランシングと柔軟な容量計画を提供するために、複数のNFSサーバーからのものであってもかまいません。

    NFSは、Direct NFSを使用してもしなくても、データ・ファイルの格納に使用できます。ただし、NFSはOracle Clusterwareファイルに対してはサポートされません。Oracle Real Application Clusters(Oracle RAC)をWindowsにNFSを使用してインストールするには、Oracle Clusterwareファイルに対するNFS以外の共有ストレージ方法へのアクセスも必要です。

    dNFSではソフト・マウントがサポートされていないため、NFSベースのクォーラム・ディスク(クォーラム障害グループ)では、Direct NFS (dNFS)を使用しないでください。かわりに、クォーラム・ディスクにはNFSマウント・ポイントのソフト・マウントを使用します。ソフト・マウントを使用する場合、Oracle ASMはI/O障害を正常に処理し、関連するクォーラム・ディスクのみをオフラインに設定します。

    ハード・マウントすると、NFSサーバーが使用不可になった場合に、Oracle ASMまたはデータベース・インスタンスがハングすることがあります。このようなハングの状態は、Direct NFSを使用するかどうかにかかわらず、またOracle ASMをミラーリングに使用しているかどうかにかかわらず発生します。

    関連項目:

    Oracle Direct NFSの詳細と、Oracle ASMOの記憶域要件の詳細は、使用しているオペレーティング・システムの『Oracle Grid Infrastructureインストレーションおよびアップグレード・ガイド』

ノート:

  • Oracle ASM動的ボリューム・マネージャ(Oracle ADVM)ボリュームおよびOracle Automatic Storage Managementクラスタ・ファイル・システム(Oracle ACFS)ファイル・システムは、NFSまたは共通インターネット・ファイル・システム(CIFS)ファイルから作成されたディスク・グループでは、現在サポートされていません。ただし、場合によっては、Oracle ACFSファイル・システムを、NFSまたはCIFSファイル・システムとしてネットワーク・クライアントにエクスポートすることはできます。Oracle ACFS Linux、SolarisまたはAIXサーバーと接続している場合、Windows上のSamba/CIFSクライアントはACLを使用できません。

  • Oracle ACFSファイルを介したループバック・ファイル・システムのマウントはサポートされていません。

  • ブロック・デバイスおよびRAWデバイスは、Oracle Universal Installer(OUI)およびDatabase Configuration Assistant(DBCA)ではサポートされていません。

Oracle ASM用のストレージ・リソースを準備する手順は次のとおりです。

  • Oracle ASMディスク・グループの作成に使用できるすべてのストレージ・リソース・デバイス名を識別して、Oracle ASM用のストレージ・デバイスを識別または作成します。たとえば、Linuxシステムのデバイス名は通常、/dev/device_name_identifierという名前構文で、/devディレクトリにあります。

  • ストレージ・デバイス・リソースの所有権とアクセス権を変更します。

    たとえば、Linuxシステムでは次のステップが必要です。

    • デバイスのユーザーおよびグループ所有権をgrid:asmadminなどに変更します。

      Oracle ASMの権限の詳細は、「Oracle ASMの権限について」を参照してください。

    • デバイスのアクセス権を読取り/書込みに変更します。

    ノート:

    所有権および権限の設定を持続させるには、udevを使用してシステムを再起動するときにディスクがroot所有権を元に戻さないことを確認できます。

Oracle ASMを構成したら、ASM_DISKSTRING初期化パラメータを設定して、ディスク検出が正しく構成されていることを確認します。ASM_DISKSTRINGパラメータの詳細は、「ASM_DISKSTRING」を参照してください。

ノート:

所有権のoracle:dbaへの設定は、デフォルト設定の一例です。デフォルト以外のインストールでは異なる設定が必要になる場合があります。通常、ディスク・デバイスの所有者はOracleバイナリ・ソフトウェアの所有者と同じにします。グループの所有権は、Oracle ASMインスタンスのOSDBAにします。これはインストール時に定義されます。Oracle ASMの権限の詳細は、「Oracle ASMの権限について」を参照してください。

Oracle ASMインストール用のディスク準備の詳細は、Oracle Database、Oracle ClusterwareおよびOracle Real Application Cluster(Oracle RAC)のプラットフォーム固有のインストレーション・ガイドを参照してください。

関連項目:

Oracle Exadataストレージの準備の詳細は、Oracle Exadataのドキュメントを参照してください。

Oracle ASMとマルチパス化

マルチパス化ソリューションは、冗長な物理パス・コンポーネントを使用することでフェイルオーバーを提供します。

これらの冗長性物理パス・コンポーネントとして、サーバーとストレージ・サブシステムの間に存在するアダプタ、ケーブルおよびスイッチなどがあります。これらのコンポーネントの1つ以上に障害が発生した場合、アプリケーションは引き続きデータにアクセスできるため、ストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)、ホスト・バス・アダプタ、インタフェース・ケーブル、またはマルチポート・ストレージ・アレイ上のホスト・ポートでのシングル・ポイント障害はなくなります。

マルチパス化は、オペレーティング・システムのデバイス・ドライバ・レベルで実装されるソフトウェア・テクノロジです。マルチパス化では疑似デバイスが作成され、使用可能なすべてのI/Oパスの間でI/O操作を共有し、それらの操作のバランスを取ることが容易になります。また、使用可能なすべてのパスにI/O負荷を分散させることでシステムのパフォーマンスも向上するので、自動フェイルオーバーやフェイルバックによる、より高いレベルのデータ可用性が提供されます。

Oracle ASMはマルチパス化機能を備えた設計になっていませんが、マルチパス化テクノロジとともに機能します。マルチパス化テクノロジは、数多くのソースから利用できます。ストレージ・ベンダーは固有のストレージ製品に対応したマルチパス化製品を提供しており、ソフトウェア・ベンダーは通常、複数のサーバー・プラットフォームとストレージ製品に対応したマルチパス化製品を開発しています。

関連項目:

特定のプラットフォームおよびストレージ製品のマルチパス化オプションの詳細は、ストレージまたはソフトウェア・ベンダーのマルチパス化のドキュメントを参照してください。

Oracle ASMでは、ASM_DISKSTRING初期化パラメータの値を、マルチパス・ディスクを表す疑似デバイスと一致するパターンに設定することにより、マルチパス・ディスクを確実に検出できます。I/Oが疑似デバイスへ送られると、マルチパス・ドライバはそれを検出し、基礎となるサブパスにロード・バランシングを提供します。

Oracle ASMで同じディスク・デバイスに対して複数のパスが検出されると、エラーが発生します。マルチパス構成では単一のディスクが複数回現れる可能性があるため、マルチパス・ディスクのみを検出するようにOracle ASMを構成する必要があります。

関連項目:

ストレージ準備の推奨事項

この項では、Oracle ASMによるストレージ準備の推奨事項について説明します。

Oracle ASMで使用するストレージを準備する際のガイドラインを次に示します。

  • 次のものに対して、個別のディスク・グループを構成します。

    • Oracle Cluster Registry (OCR)と投票ファイル

    • グリッド・インフラストラクチャ管理リポジトリ(GIMR)ファイル

    • データベース・データファイル

    • 高速リカバリ領域

  • ディスク・グループごとのLUN (Oracle ASMディスク)の数は、アクティブなI/Oパスの数の少なくとも4倍である必要があります。たとえば、ディスク・グループにアクティブなI/Oパスが2つある場合、少なくとも8つのLUNを使用する必要があります。LUNのサイズおよびパフォーマンスは、各ディスク・グループで同じである必要があります。

    I/Oパスは、LUNを提供するストレージとサーバー間の個別のチャネルまたは接続です。アクティブなI/Oパスは、LUNのI/O負荷がマルチパス・ソフトウェアによって多重化されるI/Oパスです。

  • ディスク・グループ内のすべてのOracle ASMディスクは、ほぼ同じストレージ・パフォーマンスと可用性の特性を備えている必要があります。フラッシュ・メモリー・ドライブやハードディスク・ドライブ(HDD)など、様々な速度のドライブを使用したストレージ構成では、最も遅い速度のドライブによってI/Oパフォーマンスが制約されます。

  • Oracle ASMのデータ分散ポリシーは容量に基づいています。ディスク・グループ内のOracle ASMディスクは、均衡を保つために同じ容量となるようにします。

  • パートナ・ステータス表(PST)の必要な数のコピーを維持し、ストレージ・ハードウェアの障害に関する堅牢性を確保するには、標準冗長性ディスク・グループでは3つ以上の障害グループ、高冗長性ディスク・グループでは5つ以上の障害グループを構成します。

  • 高性能のストレージ・アレイを使用する場合は、外部冗長性のディスク・グループを作成します。一般に、高性能のストレージ・アレイにはハードウェアRAID保護が備わっています。ハードウェアRAIDを使用していない場合や、ホストベースのボリューム管理機能(ストレージ・システムにまたがるミラー化など)が必要な場合は、Oracle ASMのミラー化冗長性を使用してください。地理的に離れているサイト(拡張クラスタ)間でミラー化を行う場合は、Oracle ASMのミラー化を構成で使用できます。

  • Oracle ASMディスク・グループにディスクを割り当てることで、Oracle ASMディスクと他のアプリケーション間のI/O競合を最小限に抑えます。

  • 2の累乗であり、かつOracle ASM割当て単位のサイズ以下であるハードウェアRAIDストライプ・サイズを選択します。

  • 一貫性のあるデバイスのネーミングと権限の永続性を実現するにはOracle ASMフィルタ・ドライバ機能を使用します。

関連項目:

ストレージ・デバイス・パスおよび権限の永続性

Oracle ASMで使用する新しいストレージ・デバイスをインストールまたは構成する前に、管理者はストレージ・パスおよび所有権がシステムの再起動後も持続するように、ストレージ・デバイス名と所有権を構成する必要があります。

権限を維持しデバイス・パスを管理するには、Oracle ASMフィルタ・ドライバを使用します。また、Oracle Solarisでは、Solaris I/Oマルチパス機能を使用して、権限とデバイス・パスを維持できます。

関連項目:

ストレージ・デバイスでパスおよび権限の永続性を構成する方法の詳細は、使用しているオペレーティング・システムの『Oracle Grid Infrastructureインストレーションおよびアップグレード・ガイド』を参照してください。