11 Oracle Database Gateway for ODBCの構成
ゲートウェイおよびOracle以外のシステムに対応するODBCドライバのインストール後、次のタスクを実行してOracle Database Gateway for ODBCを構成します。
ゲートウェイ初期化パラメータ・ファイルの構成
次のタスクを実行して、ゲートウェイ初期化ファイルを構成します。
初期化パラメータ・ファイルの作成
Oracle Database Gateway for ODBC用に、初期化ファイルを作成する必要があります。Oracleには、サンプルの初期化ファイルinitdg4odbc.ora
が付属します。サンプル・ファイルは、ORACLE_HOME
\hs\admin
ディレクトリに格納されています。
ODBCゲートウェイ用の初期化ファイルを作成するには、サンプルの初期化ファイルをコピーしてその名前をinit
sid
.ora
に変更します(sid
は、ゲートウェイの接続先となるOracle以外のシステムのインスタンスで使用されるシステム識別子(SID)です)。
ゲートウェイ・システム識別子(SID)は、ゲートウェイ・インスタンスを識別する英数字の文字列です。アクセスするODBCソースごとに、1つのゲートウェイ・インスタンスが(したがって1つのゲートウェイSIDが)必要です。
2つのODBCソースにアクセスする場合は、ゲートウェイのインスタンスごとに1つずつ、合計2つのゲートウェイSIDが必要です。ODBCソースが1つのみ存在し、そのアクセスに使用するゲートウェイ・パラメータ設定のセットを状況に応じて使い分ける場合、単一のODBCソースに対して複数のゲートウェイSIDが必要です。SIDは、初期化パラメータ・ファイルのファイル名の一部として使用されます。
初期化パラメータ値の設定
初期化ファイルを作成した後は、初期化パラメータ値を設定する必要があります。複数の初期化パラメータを使用して、ゲートウェイの動作を変更できます。HS_FDS_CONNECT_INFO
初期化パラメータを設定する必要があります。他の初期化パラメータはデフォルト値を持つか、オプションです。デフォルト値を使用して、オプション・パラメータを省略できます。または、インストールのために調整した値を使用してパラメータを指定できます。設定可能な初期化パラメータの完全なリストは、初期化パラメータを参照してください。初期化パラメータに加えた変更は、次のゲートウェイ・セッションまで反映されません。
HS_FDS_CONNECT_INFO
初期化パラメータでは、Oracle以外のシステムに接続するのに必要な情報を指定します。HS_FDS_CONNECT_INFO
は、次のように設定します。
HS_FDS_CONNECT_INFO=dsn_value where dsn_value is the name of the system DSN defined in the Microsoft Windows ODBC Data Source Administrator.
注意:
デフォルト値をそのまま使用するか、または変更するかを決定する前に、初期化パラメータですべての初期化パラメータの詳細を参照してください。
例: 初期化パラメータ値の設定
システムDSNは、Microsoft WindowsのODBCデータソース アドミニストレータで定義済であると仮定します。ゲートウェイを通じてこの例のSQL Serverデータベースに接続するには、init
sid
.ora
ファイルに次の行が必要です。
HS_FDS_CONNECT_INFO=sqlserver7
sqlserver7
は、Microsoft WindowsのODBCデータソース アドミニストレータで定義したシステムDSNの名前です。
Microsoft WindowsのODBCデータソース アドミニストレータ(バージョン3.5)でシステムDSNを定義するには、次の手順を実行します。
注意:
ODBCドライバで引用識別子または区切り識別子がサポートされる場合、それを有効化する必要があります。
ゲートウェイ用のOracle Netの構成
ゲートウェイでは、Oracle Databaseと通信するためにOracle Netが必要です。ゲートウェイの構成後、次のタスクを実行して、ゲートウェイと連携動作するようにOracle Netを構成します。
ゲートウェイ用のOracle Net Listenerの構成
Oracle Net Listenerは、Oracle Databaseからの着信リクエストをリスニングします。Oracle Net Listenerでゲートウェイをリスニングするためには、ゲートウェイに関する情報をOracle Net Listenerの構成ファイル(listener.ora
)に追加する必要があります。このファイルのデフォルトの場所は、ORACLE_HOME
\network\admin
です(ORACLE_HOME
はゲートウェイのインストール先のディレクトリです)。
次のエントリをlistener.ora
ファイルに追加する必要があります。
-
Oracle Net ListenerがリスニングするOracle Netアドレスのリスト
-
Oracle Net Listenerが着信接続リクエストに応じて起動するゲートウェイの実行可能ファイルの名前
listener.ora
エントリのサンプル(listener.ora.sample
)は、ORACLE_HOME
\dg4odbc\admin
ディレクトリにあります(ORACLE_HOME
はゲートウェイのインストール先のディレクトリです)。
listener.oraファイルのエントリの構文
Oracle Databaseは、Oracle Netおよびサポートされている任意のプロトコル・アダプタを使用してゲートウェイと通信します。次に、TCP/IPプロトコル・アダプタを使用してOracle Net Listenerがリスニングするアドレスの構文を示します。
LISTENER= (ADDRESS= (PROTOCOL=TCP) (HOST=host_name) (PORT=port_number))
説明:
変数 | 説明 |
---|---|
|
ゲートウェイがインストールされているマシンの名前。 |
|
Oracle Net Listenerにより使用されるポート番号。同じマシン上で稼働する他のリスナーが存在する場合、 |
着信接続リクエストに応じてゲートウェイを起動するようOracle Net Listenerを構成するには、listener.ora
ファイルにエントリを追加します。
注意:
listener.oraファイルと次のステップで構成するtnsnames.ora
ファイルで同じSID値を使用する必要があります。
SID_LIST_LISTENER= (SID_LIST= (SID_DESC= (SID_NAME=gateway_sid) (ORACLE_HOME=oracle_home_directory) (PROGRAM=dg4odbc) ) )
説明:
変数 | 説明 |
---|---|
|
ゲートウェイのSIDを指定します。 |
|
ゲートウェイが存在するOracleホーム・ディレクトリを指定します。 |
|
Oracle Database Gateway for ODBCの実行可能ファイル名を指定します。 |
既存のOracle Net Listenerがすでに存在する場合、既存のlistener.ora
ファイルのSID_LIST
に次の構文を追加します。
SID_LIST_LISTENER= (SID_LIST= (SID_DESC=. . ) (SID_DESC=. . ) (SID_DESC= (SID_NAME=gateway_sid) (ORACLE_HOME=oracle_home_directory) (PROGRAM=dg4odbc) ) )
関連項目:
listener.ora
ファイルの変更方法の詳細は、Oracle Database Net Services管理者ガイドを参照してください。
ゲートウェイ・アクセス用のOracle Databaseの構成
ゲートウェイを使用してODBCデータソースにアクセスする前に、Oracle Databaseを構成してOracle Netを通じたゲートウェイとの通信を使用可能にする必要があります。
Oracle Databaseを構成するには、tnsnames.ora
ファイルに接続記述子を追加する必要があります。このファイルのデフォルトの場所は、ORACLE_HOME
\network\admin
です(ORACLE_HOME
はOracle Databaseのインストール先のディレクトリです)。tnsnames.ora
ファイルの構成にOracle Net AssistantやOracle Net Easy Configツールを使用することはできません。手動でファイルを編集する必要があります。
tnsnames.ora
エントリのサンプル(tnsnames.ora.sample
)は、ORACLE_HOME
\dg4odbc\admin
ディレクトリにあります(ORACLE_HOME
はゲートウェイのインストール先のディレクトリです)。
関連項目:
tnsnames.ora
ファイルの編集方法の詳細は、Oracle Database管理者ガイドを参照してください。
tnsnames.oraの構成
ゲートウェイの接続記述子を追加するには、tnsnames.ora
ファイルを編集します。次に、TCP/IPプロトコルを使用するOracle Netエントリの構文を示します。
connect_descriptor= (DESCRIPTION= (ADDRESS= (PROTOCOL=TCP) (HOST=host_name) (PORT=port_number) ) (CONNECT_DATA= (SID=gateway_sid)) (HS=OK))
説明:
表11-1 tnsnames.oraファイルのOracle Database Gateway for ODBCパラメータ
変数 | 説明 |
---|---|
|
データベース・リンクの作成時に指定された接続先オブジェクトの記述(
注意: |
|
TCP/IP接続に使用されるTCPプロトコルです。 |
|
ゲートウェイが稼働しているマシンを指定します。 |
|
ゲートウェイをリスニングしているOracle Net Listenerにより使用されるポート番号と一致させます。Oracle Net Listenerのポート番号は、Oracle Net Listenerにより使用される |
|
ゲートウェイのSIDを指定し、ゲートウェイをリスニングするOracle Net Listenerの |
|
この接続記述子でOracle以外のシステムに接続することを指定します。 |
複数のリスナー用のtnsnames.oraの構成
高可用性を確保するために、接続記述子内に複数のリスナーを指定できます。
connect_descriptor= (DESCRIPTION= (ADDRESS= (PROTOCOL=TCP) (HOST=host_name_1) (PORT=port_number_1) ) (ADDRESS= (PROTOCOL=TCP) (HOST=host_name_2) (PORT=port_number_2) ) (CONNECT_DATA= (SID=gateway_sid)) (HS=OK))
これは、host_name_1
およびport_number_1
のリスナーが使用できない場合、host_name_2
およびport_number_2
の2番目のリスナーが引き継ぐことを示します。
関連項目:
tnsnames.ora
ファイルの詳細は、Oracle Database Net Services管理者ガイドを参照してください。
データベース・リンクの作成
Oracle Databaseに接続されたすべてのOracleクライアントは、ゲートウェイを通じてODBCデータソースにアクセスします。OracleクライアントとOracle Databaseは、異なるマシン上に存在できます。ゲートウェイは、Oracle Databaseからの接続のみを受け入れます。
ゲートウェイへの接続は、Oracleセッションでゲートウェイが初めて使用されるときに、データベース・リンクを介して確立されます。この場合の接続とは、Oracle Databaseとゲートウェイ間の接続を示します。接続は、Oracleセッションが終了するまで確立されたままです。別のセッションまたはユーザーが同じデータベース・リンクにアクセスし、ゲートウェイおよびODBCデータソースに対する別個の接続を取得することも可能です。
データベース・リンクは、ゲートウェイ・セッションの継続中はアクティブです。セッション中にデータベース・リンクをクローズする場合は、ALTER SESSION
文を使用します。
ODBCデータソースにアクセスするには、データベース・リンクを作成する必要があります。パブリック・データベース・リンクは、最も一般的なデータベース・リンクです。
SQL> CREATE PUBLIC DATABASE LINK dblink CONNECT TO 2 "user" IDENTIFIED BY "password" USING 'tns_name_entry';
説明:
変数 | 説明 |
---|---|
|
完全なデータベース・リンク名。 |
|
ゲートウェイを識別する |
データベース・リンクの作成後に、次のようにODBCデータソースへの接続を確認できます。
SQL> SELECT * FROM DUAL@dblink;
関連項目:
データベース・リンクの使用の詳細は、Oracle Database管理者ガイドを参照してください。
ゲートウェイ初期化パラメータ値の暗号化
ゲートウェイでは、ユーザーIDとパスワードを使用してリモート・データベースの情報にアクセスします。ユーザーIDおよびパスワードは、リソース・リカバリなどの機能を処理するために、ゲートウェイ初期化ファイルで定義される場合があります。セキュリティを意識した現在の環境では、初期化ファイルでアクセス可能なプレーン・テキスト・パスワードは、セキュアではないとみなされます。セキュリティを向上するために、異機種間サービスの一部としてdg4pwd
暗号化ユーティリティが追加されました。このユーティリティには、このゲートウェイからアクセスできます。機密値を含む初期化パラメータは、暗号化された形式で格納できます。
関連項目:
このユーティリティの使用方法の詳細は、Oracle Database Heterogeneous Connectivityユーザーズ・ガイドを参照してください。
複数のODBCデータソースにアクセスするためのゲートウェイの構成
複数のODBCデータソースにアクセスするためのゲートウェイの構成作業は、単一のデータソースを対象とするゲートウェイの構成作業とほぼ同じです。構成の例では、次のことを想定しています。
-
ゲートウェイが
dg4odbc
というSIDを使用してインストールおよび構成されていること。 -
ゲートウェイが
dsn1
という1つのODBCデータソースにアクセスするよう構成されていること。 -
dsn2およびdsn3という2つのODBCデータソースが追加されること(dsn2およびdsn3は、Microsoft WindowsのODBCデータソース アドミニストレータで定義されたシステムDSNの名前)。
複数のODBCデータソースの例: ゲートウェイの構成
ODBCデータソースごとに1つのシステムIDを選択
ODBCデータソースごとにゲートウェイの個別のインスタンスが必要です。各インスタンスには、固有のゲートウェイ・システムID(SID)が必要です。この例では、ODBCデータソースにアクセスするインスタンスに対して次のゲートウェイSIDが選択されます。
-
dg4odbc2
(データソースdsn2
にアクセスするゲートウェイ用)。 -
dg4odbc3
(データソースdsn3
にアクセスするゲートウェイ用)。
2つの初期化パラメータ・ファイルの作成
ゲートウェイのインスタンスごとに初期化パラメータ・ファイルを作成するため、元の初期化パラメータ・ファイル ORACLE_HOME
\hs\admin\initdg4odbc.ora
を2回コピーします。次のように、1つのファイルにはdsn2
のゲートウェイSIDを含む名前を付け、もう1つのファイルにはdsn3
のゲートウェイSIDを含む名前を付けます。
> cd ORACLE_HOME\hs\admin
> copy initdg4odbc.ora initdg4odbc2.ora
> copy initdg4odbc.ora initdg4odbc3.ora
次のように各新規ファイルのHS_FDS_CONNECT_INFO
パラメータの値を変更します。
initdg4odbc2.ora
では、次のように入力します。
HS_FDS_CONNECT_INFO=dsn2
initdg4odbc3.ora
では、次のように入力します。
HS_FDS_CONNECT_INFO=dsn3
注意:
状況に応じて異なるゲートウェイ・パラメータ設定を使用するために、同じODBCデータソースに対して複数のゲートウェイSIDを割り当てる場合も、同じ手順に従ってください。複数の初期化パラメータ・ファイルを作成し、それぞれに異なるSIDおよび異なるパラメータ設定を使用します。
複数のODBCデータソースの例: Oracle Net Listenerの構成
listener.oraへのエントリの追加
Oracle Net Listener構成ファイルlistener.ora
に、2つの新規エントリを追加します。複数のゲートウェイ・インスタンスが同じデータベースにアクセスする場合でも、ゲートウェイ・インスタンスごとに1つのエントリが必要です。
次の例では、インストールされていた最初のゲートウェイのエントリが1番目に、新しいエントリがその後に続いて示されています。
SID_LIST_LISTENER= (SID_LIST= (SID_DESC= (SID_NAME=dg4odbc) (ORACLE_HOME=oracle_home_directory) (PROGRAM=dg4odbc) ) (SID_DESC= (SID_NAME=dg4odbc2) (ORACLE_HOME=oracle_home_directory) (PROGRAM=dg4odbc) ) (SID_DESC= (SID_NAME=dg4odbc3) (ORACLE_HOME=oracle_home_directory) (PROGRAM=dg4odbc) ) )
ここで、oracle_home_directory
は、ゲートウェイが存在するディレクトリです。
複数のODBCデータソースの例: Oracle Net Listenerの停止および起動
次のステップを実行します。
- 「スタート」メニューで、「設定」→「コントロール パネル」→「サービス」を選択します。
- ゲートウェイ用のOracle Net Listenerサービスを選択します。
- 「停止」をクリックします。
- 「開始」をクリックします。
複数のODBCデータソースの例: ゲートウェイ・アクセス用のOracle Databaseの構成
2つの接続記述子エントリをtnsnames.ora
ファイルに追加します。複数のゲートウェイ・インスタンスが同じデータベースにアクセスする場合でも、ゲートウェイ・インスタンスごとに1つのエントリが必要です。
次の例では、最初にインストールされた元のゲートウェイ用のエントリの次に、新規ゲートウェイ・インスタンス用の2つのエントリが続いています。
old_dsn_using=(DESCRIPTION= (ADDRESS= (PROTOCOL=TCP) (PORT=port_number) (HOST=host_name)) (CONNECT_DATA= (SID=dg4odbc)) (HS=OK)) new_dsn2_using=(DESCRIPTION= (ADDRESS= (PROTOCOL=TCP) (PORT=port_number) (HOST=host_name)) (CONNECT_DATA= (SID=dg4odbc2)) (HS=OK)) new_dsn3_using=(DESCRIPTION= (ADDRESS= (PROTOCOL=TCP) (PORT=port_number) (HOST=host_name)) (CONNECT_DATA= (SID=dg4odbc3)) (HS=OK))
PORT
の値は、ゲートウェイをリスニングしているOracle Net ListenerのTCP/IPポート番号です。この番号は、Oracle Net Listenerにより使用されるlistener.ora
ファイルで確認できます。HOST
の値は、ゲートウェイが稼働しているマシンの名前です。この名前も、Oracle Net Listenerにより使用されるlistener.ora
ファイルで確認できます。
複数のODBCデータソースの例: ODBCデータへのアクセス
次のように入力してdg4odbc2
ゲートウェイ用のデータベース・リンクを作成します。
SQL> CREATE PUBLIC DATABASE LINK ODBC2 CONNECT TO 2 "user2" IDENTIFIED BY "password2" USING 'new_dsn2_using';
次のように入力してdg4odbc3
ゲートウェイ用のデータベース・リンクを作成します。
SQL> CREATE PUBLIC DATABASE LINK ODBC3 CONNECT TO 2 "user3" IDENTIFIED BY "password3" USING 'new_dsn3_using';
データベース・リンクの作成後に、次のように新規ODBCデータソースへの接続を確認できます。
SQL> SELECT * FROM ALL_USERS@ODBC2;
SQL> SELECT * FROM ALL_USERS@ODBC3;