Oracle Exadata Database Machine 11gリリース2(11.2.3.3.0)の新機能
Oracle Exadata Database Machine 11gリリース2(11.2.3.3.0)の新機能は次のとおりです。
フラッシュ・キャッシュの圧縮
フラッシュ・キャッシュの圧縮では、ユーザー・データがフラッシュ・キャッシュにロードされる際にデータを透過的に圧縮することによって、フラッシュ・キャッシュの論理容量が大幅に増加します。そのため、より多くのデータをフラッシュに維持することができ、ディスク・ドライブのデータにアクセスする必要が減ります。フラッシュのデータへのI/Oは、ディスク上のデータへのI/Oよりも大幅に速くなります。圧縮操作および解凍操作は、アプリケーションおよびデータベースに対して完全に透過的で、1秒当たり何百万I/Oという速度で実行してもパフォーマンスのオーバーヘッドはありません。
ユーザー・データの圧縮率に応じて、Oracle Exadata Storage Server Softwareは、フラッシュ・キャッシュ・サイズを最大2倍に動的に拡張します。圧縮の効果はデータの冗長性に応じて変わります。圧縮されていない表および索引の場合は、削減される領域が最も多くなります。OLTP圧縮された表および索引の場合は、領域が大幅に削減されます。ハイブリッド列圧縮を使用する表の場合は、削除される領域が最も少なくなります。フラッシュ・キャッシュ圧縮を有効にするには、Oracle拡張圧縮オプションが必要です。
この機能は、CellCLI ALTER CELL flashCacheCompress=true
コマンドを使用して有効にします。
最小ハードウェア: Exadata Storage Server X4-2L Server
表スキャン・ワークロードの自動フラッシュ・キャッシュ
Oracle Exadata Storage Server Softwareは、オブジェクトが読み取られる頻度に基づいて、表およびパーティションのスキャン・ワークロードで読み取られたオブジェクトをフラッシュ・キャッシュに自動的にキャッシュします。アルゴリズムでは、オブジェクトのサイズ、オブジェクトのアクセス頻度、キャッシュから削除されたデータへのオブジェクトによるアクセス頻度、およびデータベースによって実行されているスキャンのタイプが考慮されます。フラッシュ・キャッシュ・サイズおよびその他の同時発生するワークロードに応じて、表またはパーティションのすべてまたは一部のみがキャッシュされます。フラッシュ・キャッシュのサイズに比べて大きいオブジェクトのキャッシュを試行したり、メンテナンス操作でアクセスされる表をキャッシュすることによって、フラッシュ・キャッシュをスラッシングするリスクはありません。
この新機能により、フラッシュ・キャッシュに表を手動で維持する必要性がほとんどなくなりますが、例外として、特定のオブジェクトの場合は、合計ディスクI/Oを潜在的に増やすことにより、応答時間が確実に長くなります。以前のリリースでは、データベース管理者が大きなオブジェクトをKEEP
とマークして、表スキャン・ワークロード用のフラッシュ・キャッシュにキャッシュする必要がありました。
この機能は主に、データ・ウェアハウス、データ・マートなどの表スキャン集中型のワークロードに効果があります。オンライン・トランザクション処理(OLTP)に実行されるようなランダムI/Oは、以前のリリースと同じ方法で引き続きフラッシュ・キャッシュにキャッシュされます。
最小ソフトウェア: Oracle Exadata Storage Server Softwareリリース11.2.3.3
高速データファイル作成
高速データファイル作成では、新規データファイルがフォーマットされる速度が2倍以上になります。フラッシュ・キャッシュでは、新しくフォーマットされたブロックをディスクまたはフラッシュに書き込むのではなく、単にブロックに関するメタデータをライトバック・フラッシュ・キャッシュに保持することにより、ディスクへの書込みの実際のフォーマットを排除します。たとえば、高速データファイル作成を使用すると、リリース11.2.3.3を実行しているOracle Exadataフル・ラックに1TBのデータファイルを作成する際に90秒かかります。以前のリリースで同じ1TBのデータファイルを作成すると、220秒かかります。この機能は、ライトバック・フラッシュ・キャッシュが有効であり、適切なソフトウェア・リリースが使用されている場合に自動的に機能します。
最小ソフトウェア: Oracle Database 11gリリース2 (11.2)リリース11.2.0.4またはOracle Database 12cリリース1 (12.1)リリース12.1.0.1を実行するOracle Exadata Storage Server Softwareリリース11.2.3.3
ネットワーク・リソース管理
ネットワーク・リソース管理では、InfiniBandファブリックを使用して重要なデータベース・ネットワーク・メッセージに自動的かつ透過的に優先度を付け、レイテンシが重大な影響を及ぼす操作に関する高速の応答時間を実現します。優先度付けは、InfiniBandファブリック全体に適用されるように、データベース、データベースのInfiniBandアダプタ、Oracle Exadata Storage Server Software、ExadataストレージのInfiniBandアダプタおよびInfiniBandスイッチに実装されます。
Oracle RACキャッシュ・フュージョン・メッセージなど、レイテンシの影響を受けるメッセージには、バッチ、レポート作成およびバックアップ・メッセージよりも高い優先度が付けられます。ログ・ファイル書込み操作には、トランザクション処理時間のレイテンシを低下させるために最上位の優先度が付けられます。
この機能はCPUおよびI/Oリソース管理と連携し、統合環境での高パフォーマンスと予測可能性を実現します。たとえば、オンライン・トランザクション処理(OLTP)のワークロードがあると仮定した場合、コミット・レイテンシはログ書込みの待機時間によって決定されます。この機能により、ログ・ライター・プロセス(LGWR)のネットワーク転送に、バックアップ、レポート作成など、同一または他のデータベースにおける他のデータベース・トラフィックよりも高い優先度を付けることができます。
この機能はデフォルトで有効になっており、構成または管理は必要ありません。
最小ソフトウェア: Oracle Database 11gリリース2 (11.2)リリース11.2.0.4またはOracle Database 12cリリース1 (12.1)リリース12.1.0.1、およびスイッチ・ファームウェア・リリース2.1.3-4を実行するOracle Exadata Storage Server Softwareリリース11.2.3.3
アクティブ・ボンディング・ネットワーク
Oracle Exadata Database Machine X4-2データベース・サーバーおよびストレージ・サーバーでは、InfiniBandカードの両方のポートのアクティブ・ボンディングのサポートが有効になります。ネットワーク・トラフィックの送信に両方のInfiniBandポートが同時に使用されるため、アクティブ・ボンディングでは以前のリリースのアクティブ・パッシブ・ボンディングに比べてネットワーク帯域幅がさらに高くなります。
アクティブ・ボンディング機能は、以前のInfiniBandカードよりもさらに高いスループットをサポートする新しいInfiniBandカードを特長としているため、Oracle Exadata Database Machine X4-2のネットワーク帯域幅を向上させます。以前のInfiniBandカードは最新世代のサーバーのPCIバスによって提供されるより高速な帯域幅を活用できるほど速くなかったため、アクティブ・ボンディングで古い世代のハードウェアの帯域幅は向上しません。
InfiniBandカードのアクティブ・ボンディングについて、次の点に注意してください。
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Oracle Linuxを実行するデータベース・サーバーには、アクティブ・ボンディング機能があります。
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Oracle Clusterwareでは、クラスタ内の各データベース・サーバーに同じインターコネクト名が必要です。既存のOracle Exadata Database Machine X3-2およびOracle Exadata Database Machine X2-2システムをOracle Exadata Database Machine X4-2システムで拡張する場合、データベース・サーバーにレガシー・ボンディングを保持することをお薦めします。
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ネットワーク帯域幅を向上させるためには、InfiniBandカード1つ当たりに2つのIPアドレスが必要です。
次の表に、システムの構成方法のガイドラインを示します。
オペレーティング・システム | Oracle Exadata Database Machine X4-2のデータベース・サーバー | Oracle Exadata Database Machine X4-2のストレージ・サーバー | Exadata Storage Server X4-2L Serverを使用したOracle Exadata Database Machine X3-8フル・ラックのデータベース・サーバー |
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Oracle Linux |
アクティブ・ボンディング |
アクティブ・ボンディング |
従来のボンディング、HCAにつき1つのポートがアクティブ |
Oracle Solaris |
IPMP、1つのポートがアクティブ |
アクティブ・ボンディング |
IPMP、HCAにつき1つのポートがアクティブ |
最小ハードウェア: Oracle Exadata Database Machine X4世代サーバー
最小ソフトウェア: Oracle Exadata Storage Server Softwareリリース11.2.3.3
アプライアンス・モードのOracle ASMディスク・グループ
Oracle ASMのappliance.mode
属性を使用すると、1つ以上のOracle ASMディスクを削除するときにディスクのリバランス完了時間が改善されます。これは、障害後に冗長性がより高速にリストアされることを意味します。属性は、新しいディスク・グループの作成時に自動的に有効になります。既存のディスク・グループでは、ALTER DISKGROUP
コマンドを使用して明示的に属性を設定する必要があります。
属性は、次の要件を満たすディスク・グループのみで有効にできます。
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Oracle ASMディスク・グループ属性
compatible.asm
が、リリース11.2.0.4以降に設定されている。 -
cell.smart_scan_capable
属性がTRUE
に設定されている。 -
ディスク・グループ内のすべてのディスクが同じタイプである(すべてハード・ディスクまたはExtreme Flashディスクなど)。
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ディスク・グループのすべてのディスクが同じサイズである。
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ディスク・グループのすべての障害グループのディスク数が等しい。
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ディスク・グループにオフラインのディスクがない。
最小ソフトウェア: Oracle Database 11gリリース2 (11.2)リリース11.2.0.4またはOracle Database 12c リリース1 (12.1)リリース12.1.0.2を実行するOracle Exadata System Softwareリリース11.2.3.3
ハード・ディスクの自動修正および修復
Oracle Exadata System Softwareは、ハード・ディスクがアイドル状態のときに定期的にハード・ディスクを自動で検査して修復します。ハード・ディスクで不良セクターが検出された場合、Oracle Exadata System Softwareは、別のミラー・コピーからデータを読み取ることによって不良セクターを修復するようOracle ASMに自動的にリクエストを送信します。デフォルトでは、ハード・ディスクの修正は2週間ごとに実行されます。
最小ソフトウェア: Oracle Database 11gリリース2 (11.2)リリース11.2.0.4またはOracle Database 12cリリース1 (12.1)リリース12.1.0.2を実行するOracle Exadata System Softwareリリース11.2.3.3
関連項目:
修正間隔の設定の詳細は、Oracle Exadata System Softwareユーザーズ・ガイドを参照してください交換のためのハード・ディスクの削除
障害ステータスではない正常なハード・ディスクを交換する場合、Oracle Exadata Database Machine管理者は事前にALTER PHYSICALDISK DROP FOR REPLACEMENT
コマンドを実行して成功することを確認した後に、Oracle Exadata Storage Serverからハード・ディスクを削除する必要があります。このコマンドでは、ディスク・グループの強制ディスマウントを発生させずにそのハード・ディスクのグリッド・ディスクをOracle ASMから安全にオフラインにできることを確認します。ディスク・グループの強制ディスマウントを発生させずにすべてのグリッド・ディスクをオフラインにできる場合、このコマンドによってグリッド・ディスクがOracle ASMからオフラインにされ、ハード・ディスクが無効になり、ストレージ・サーバーのサービスLEDがオンになります。
最小ソフトウェア: Oracle Exadata System Softwareリリース11.2.3.3
交換のためのBBUの削除
Oracle Exadata Database Machineデータベース・サーバーまたはストレージ・サーバーでオンラインのBBU (バッテリ・バックアップ・ユニット)を交換する前に、Oracle Exadata Database Machine管理者はALTER CELL BBU DROP FOR REPLACEMENT
コマンドを実行してこのコマンドが成功することを確認する必要があります。このコマンドによって、コントローラがライトスルー・キャッシングに変更され、停電時にBBUが交換される際にデータ損失が発生しなくなります。
最小ハードウェア: ディスクフォームファクタBBUを搭載したOracle Exadata Database Machine X3-2またはOracle Exadata Database Machine X3-8 フル・ラック
最小ソフトウェア: Oracle Exadata System Softwareリリース11.2.3.3
関連項目:
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BBUの交換の詳細は、Oracle Exadata Database Machineメンテナンス・ガイドを参照してください。
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ALTER CELL BBU DROP FOR REPLACEMENT
コマンドの詳細は、Oracle Exadata System Softwareユーザーズ・ガイドを参照してください。
Oracle Exadata Database Machineエイス・ラックの構成
ストレージ・セルのOracle Exadata Database Machineエイス・ラックの構成は、ALTER CELL eighthRack
コマンドを使用して有効または無効にできます。エイス・ラックの構成を使用すると、ハード・ディスクに6個以下のセル・ディスクが作成され、フラッシュ・ディスクに8個以下のセル・ディスクが作成されます。
最小ソフトウェア: Oracle Exadata Storage Server Softwareリリース11.2.3.2.1
関連項目:
Oracle Exadata Database Machineエイス・ラックの構成の詳細は、『Oracle Exadata Database Machineメンテナンス・ガイド』を参照してください。
セル・アラートのサマリー
Oracle Exadata System Softwareは、Oracle Exadata Storage Serverのすべてのオープン・アラートのサマリーを電子メールで定期的に送信します。オープン・アラート電子メール・メッセージには、セル上のすべてのオープン状態の問題の簡潔なサマリーが示されています。サマリーには次の内容が含まれます。
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セル名
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イベント時間
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アラートの重大度
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アラートの説明
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アラート・サマリーの構成に関する情報
前のサマリー以降に作成されたアラートには、アスタリスクが付けられます。
最小ソフトウェア: Oracle Exadata System Softwareリリース11.2.3.3
関連項目:
アラート・サマリーの構成の詳細は、Oracle Exadata System Softwareユーザーズ・ガイドを参照してください大きいドライブの安全な消去
このリリースでは、Oracle Exadata Storage Server Softwareは、大きいハード・ドライブおよびフラッシュ・ドライブの安全な消去をサポートしています。次に、サポートされているアルゴリズムを使用してドライブを安全に消去するための所要時間を示します。
ドライブ・タイプ | 1パス(1pass) | 3パス(3pass) | 7パス(7pass) |
---|---|---|---|
1.2TBドライブ |
1.67時間 |
5時間 |
11.67時間 |
4TBドライブ |
8時間 |
24時間 |
56時間 |
186GBフラッシュ・ドライブ |
該当なし |
該当なし |
36分 |
関連項目:
ILOMの定期的なリセット
Integrated Lights Out Manager (ILOM)は、管理サーバー(MS)のILOMハング検出モジュールにより、未然防止策として定期的にリセットされます。これは、ILOMが長期間稼働した後に、不安的な状態に陥るのを防ぐためです。リセット間隔は、90日です。
最小ソフトウェア: Oracle Exadata System Softwareリリース11.2.3.3.0
Oracle OSwatcherからOracle Exawatcherへの置換え
このリリースから、Oracle OSwatcherはOracle Exawatcherに置き換わりました。Oracle Exawatcherには、Oracle OSwatcherより高度なコレクションおよびレポート機能が備わっています。
関連項目:
Oracle Exawatcherの詳細は、Oracle Exadata System Softwareユーザーズ・ガイドを参照してくださいハードウェアおよびソフトウェアの拡張
ハードウェアおよびソフトウェアに次の拡張が追加されています。
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Sun Datacenter InfiniBand Switch 36スイッチの拡張
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Oracle Exadata Database MachineのSun Datacenter InfiniBand Switch 36スイッチは、patchmgrユーティリティを使用してローリング方式でアップグレードされます。詳細は、『Oracle Exadata Database Machineメンテナンス・ガイド』を参照してください。
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スイッチ・ソフトウェア・リリース2.1.3-4には、断続的なリンクを自動的に無効にする機能があります。InfiniBandの仕様には、リンクのビット・エラー率は1012よりも小さい必要があると規定されています。シンボル・エラーの数が1日当たり3546ビット・エラーまたは1時間当たり144ビット・エラーよりも多い場合、リンクは無効になります。InfiniBandスイッチのソフトウェアには
autodisable
コマンドがあり、スイッチがリリース2.1.3-4にアップグレードされる場合、この機能はpatchmgrユーティリティによって自動的に有効になります。 -
新しいスイッチのソフトウェア・リリース2.1.3-4では、2台のスイッチ、またはファブリック内の複数のスパイン・スイッチ間に不均衡な数のリンクがあるファットツリー・トポロジを作成できます。
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サブネット・マネージャのフェイルオーバーの実行にかかる時間は、複数ラック構成でも1秒未満に削減されます。
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パッチ・アプリケーションの拡張
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patchmgrユーティリティには、パッチ適用の完了時の電子メール・メッセージと、ローリングおよび非ローリング・パッチ・アプリケーションのステータスを送信する機能があります。詳細は、『Oracle Exadata Database Machineメンテナンス・ガイド』およびパッチ・セットを参照してください。
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ILOM/BIOS、InfiniBand HCAおよびディスク・コントローラのデータベース・サーバーのファームウェア・アップグレードは、Oracle LinuxおよびOracle Solarisを実行するラックでコンポーネントを交換する際に自動的に実行されます。
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ハードウェアの堅牢性の強化
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ハード・ディスクの不良セクターからリカバリする時間は、12倍に削減されています。
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ハード・ドライブまたはフラッシュ・ドライブの障害状態はまれにしかブールになりません。ほとんどのドライブでは、障害が発生する前に大幅に速度が低下します。遅くて断続的なドライブがより早期に検出され、ドライブが
predictive failure
またはハード障害状態になる前にOracle Exadata Storage Server Softwareにより機能が停止されます。 -
ストレージ・サーバーのILOMが応答を停止すると、管理ソフトウェアはILOMを自動的にリセットできます。
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Oracle Solaris 11.1 (SRU 9.5.1)のサポート
このリリースでは、データベース・サーバーでOracle Solaris 11.1 SRU 9.5.1をサポートしています。