1 Oracle GoldenGate Microservicesのインストール

Oracle DatabaseでのOracle GoldenGate Microservices Architecture (MA)のインストールは、次の3つのステップによるプロセスです。

  1. Oracle GoldenGate MAをインストールします。

  2. 必要な環境変数を設定します。

  3. 構成アシスタントを使用してOracle GoldenGateインスタンスをデプロイします。

MAはOUIを使用してインストールします。OUIでコマンドラインのサイレント・インストールを使用することもできます。

インストーラは、選択したデータベースに関連付けられる中央インベントリにOracle GoldenGateホーム・ディレクトリを登録します。OUIを使用して製品がインストールされている場合、インベントリには、ホストにインストールされるすべてのOracleソフトウェア製品の情報が格納されます。

ディスク領域はOracle GoldenGate Bounded Recovery機能にも必要です。Bounded Recoveryは一般的なExtractチェックポイント機能のコンポーネントです。この機能は長時間実行中のオープン・トランザクションを特定の間隔でディスクにキャッシュして、Extractの再起動における高速リカバリを有効にします。個々のBounded Recovery間隔(BRパラメータのBRINTERVALオプションで制御されます)で必要となるディスクは次のとおりです。キャッシュ済データを備えるトランザクションごとに必要とされるディスク領域は通常、64KBプラス、64KBに丸められたキャッシュ済データのサイズです。長時間実行中のトランザクションがすべてディスクに保管されるわけではありません。Bounded Recoveryの詳細は、『Oracle GoldenGateリファレンス』BRパラメータに関する項を参照してください。

トピック:

前提条件

インストール前に必要な作業について学習します。

トピック:

ORACLE_HOMEおよびORACLE_SIDの設定

ORACLE_HOMEおよびORACLE_SIDのシステム環境変数が正しいOracleインスタンスに設定されていることを確認します。Oracle GoldenGateのプロセスでは、データベースへの接続時にそれらを参照します。

UNIXおよびLinuxシステムでのOracle変数の指定

WindowsシステムでのOracle変数の指定

UNIXおよびLinuxシステムでのOracle変数の指定

システム上に1つのOracle Databaseインスタンスが存在する場合には、システム・レベルでORACLE_HOMEおよびORACLE_SID環境変数を設定します。これらをそのように設定できない場合、インスタンスに接続されるすべてのExtractおよびReplicatのグループのパラメータ・ファイルで次のSETENV文を使用します。SETENVパラメータはシステムの設定より優先され、これらのパラメータによって、Oracle GoldenGateのプロセスがデータベースに接続する際にセッション・レベルでの変数の設定が可能になります。

SETENV (ORACLE_HOME = path_to_Oracle_home_location)

SETENV (ORACLE_SID = SID)

システムに複数のOracleインスタンスがあり、ExtractおよびReplicatのプロセスがそれらに接続する場合、各プロセス・グループのパラメータ・ファイルでSETENV文を使用する必要があります。SETENVパラメータへの入力として、Oracle GoldenGateを正しいOracleインスタンスに指し示すためにORACLE_HOMEおよびORACLE_SID環境変数を使用します。たとえば、次のファイル引用は、それぞれ別のOracleインスタンスからキャプチャする、2つのExtractグループを示しています。

グループ1:

EXTRACT edbaa
SETENV (ORACLE_HOME = "/home/oracle/ora/product")
SETENV (ORACLE_SID = "oraa")
USERIDALIAS tiger1
RMTHOST sysb
RMTTRAIL /home/ggs/dirdat/rt
TABLE hr.emp;
TABLE hr.salary;

グループ2:

EXTRACT orab
SETENV (ORACLE_HOME = "/home/oracle/ora/product")
SETENV (ORACLE_SID = "orab")
USERIDALIAS tiger1
RMTHOST sysb
RMTTRAIL /home/ggs/dirdat/st
TABLE fin.sales;
TABLE fin.cust;
WindowsシステムでのOracle変数の指定

システム上に1つのOracleインスタンスが存在する場合、Oracle GoldenGateについてはORACLE_HOMEORACLE_SIDのレジストリ設定で十分です。それらの設定がレジストリで不正確であり、それらの設定を変更できない場合、次のようにオーバーライドを設定できます。

  1. デスクトップまたは「スタート」メニューで、「マイコンピュータ」を右クリックして、「プロパティ」を選択します。

  2. 「プロパティ」で「詳細設定」タブをクリックします。

  3. 「Environment Variables」をクリックします。

  4. 「システム環境変数」の下にある「新規」をクリックします。

  5. 「変数名」にORACLE_HOMEと入力します。

  6. 「変数値」にOracleバイナリのパスを入力します。

  7. 「OK」をクリックします。

  8. 「New」を再度クリックします。

  9. 「変数名」にORACLE_SIDと入力します。

  10. 「変数値」にインスタンス名を入力します。

  11. 「OK」をクリックします。

システムに複数のOracleインスタンスがあり、ExtractおよびReplicatのプロセスがそれらに接続する場合、次のステップを実行します。

  1. 前の手順(システムに1つのOracleインスタンス)を使用して、ORACLE_HOMEおよびORACLE_SIDのシステム変数を最初のOracleインスタンスに設定します。
  2. そのインスタンスに接続するOracle GoldenGateのすべてのプロセスを開始します。
  3. 既存のORACLE_HOMEおよびORACLE_SIDの変数を編集して新しい情報を指定し、次のOracleインスタンスに対してこの手順を繰り返します。
  4. そのインスタンスに接続するOracle GoldenGateのプロセスを開始します。
  5. 残りのOracleインスタンスに対して編集と起動の手順を繰り返します。

Microservices Architectureの重要なディレクトリおよび変数

Microservices Architectureの設計では、インストールとデプロイメントのディレクトリ構造は簡略化されています。

このディレクトリ構造は、Linux Foundation Filesystem Hierarchy Standardに基づいています。さらに柔軟性が向上しており、デプロイメントのサブディレクトリの一部をファイル・システムの別の場所や、共有ネットワーク・デバイスを含む別のデバイス上に配置することができます。この設計は読取り専用のホーム・ディレクトリで構成され、ここにOracle GoldenGateをインストールし、カスタム・デプロイメント固有のディレクトリを次のように作成します。

次の表では、Oracle GoldenGateインストールのディレクトリの参照時に使用される、MAの重要なディレクトリおよび変数について説明します。例または手順にこれらの変数が含まれているときは、実際の組織のトポロジにおける対応するディレクトリ・パスのフル・パスで変数を置き換えます。

ディレクトリ名 変数 説明 デフォルト・ディレクトリ・パス

Oracle Databaseホーム

ORACLE_HOME

ホスト・コンピュータに作成されるOracle Databaseホームは、製品をインストールする際に選択するディレクトリです。この読取り専用ディレクトリには、製品のバイナリ、実行可能ファイルおよびライブラリ・ファイルが含まれます。

/database_install_location

Oracle GoldenGateホーム

OGG_HOME

ホスト・コンピュータに作成されるOracle GoldenGateホームは、製品をインストールする際に選択するディレクトリです。この読取り専用ディレクトリには、製品のバイナリ、実行可能ファイルおよびライブラリ・ファイルが含まれます。

/ogg_install_location

デプロイメント構成ホーム

OGG_CONF_HOME

各デプロイメントの情報および構成アーティファクトが格納される場所。

/ogg_deployment_location/etc/conf

デプロイメント・セキュリティ・ホーム

OGG_SSL_HOME

各デプロイメントのセキュリティ・アーティファクト(証明書、ウォレット)が格納される場所。

/ogg_deployment_location/etc/ssl

デプロイメント・データ・ホーム

OGG_DATA_HOME

各デプロイメントのデータ・アーティファクト(証跡ファイル)が格納される場所。

/ogg_deployment_location/var/lib/data

デプロイメント変数ホーム

OGG_VAR_HOME

各デプロイメントのロギングおよびレポート処理アーティファクトが格納される場所。

/ogg_deployment_location/var

デプロイメントetcホーム

OGG_ETC_HOME

各デプロイメントの構成ファイル(パラメータ・ファイルも含む)が格納される場所。

/ogg_deployment_location/etc

これらのファイルの格納場所をカスタマイズするために、これらすべてのデフォルトの場所を変更できます。

OGG_VAR_HOMEがローカル・ディレクトリ、OGG_HOMEが共有の読取り専用リモート・ディレクトリという構成では、ローカルOGG_VAR_HOMEを含む多くのデプロイメントが1つの読取り専用共有OGG_HOMEを共有できます。

このディレクトリ設計では単純な手動アップグレードが促進されます。アップグレードするには、サービスを停止し、Webインタフェース(またはRESTコマンド)でOGG_HOMEを設定して、プロセスを再起動します。再起動時に、更新された環境変数がOracle GoldenGateによって採用されます。Service ManagerのOGG_HOMEディレクトリ・パスを新しいOracle GoldenGateホーム・ディレクトリに変更すると、アップグレードが完了し、デプロイメントが新しいOracle GoldenGateリリースを使用するように簡単に切り替えられます。この後で、MAサーバー、ExtractプロセスおよびReplicatプロセスを再起動する必要があります。

次の表では、多くのOracle GoldenGate Classic Architectureのプログラムとユーティリティに加えて、MA専用のプログラムとユーティリティについて説明しています。

名前 説明 デフォルトのディレクトリ

adminclient

Admin Clientは、MA UIを使用するかわりに、プロセスの作成に使用するスタンドアロンのコマンドライン・インタフェースです。

$OGG_HOME/bin

adminsrvr

Administration Serverは、Oracle GoldenGateデプロイメント内で作動しているプロセス(アクティブなプロセスとアクティブでないプロセスの両方)の管理やモニタリングを実行します。

$OGG_HOME/bin

distsrvr

Distribution Serverは、分散ネットワーク・デプロイメントでのデータやコマンドの伝達と処理をサポートするために、ネットワーク・データ分散エージェントとして機能するサービスです。

$OGG_HOME/bin

extract

Extractデータ・プロセス。

$OGG_HOME/bin

oggca.sh

MA Configuration Assistant。

$OGG_HOME/bin

orapki

公開キー・インフラストラクチャの構成要素(ウォレットや証明書失効リストなど)を管理するためのユーティリティ

$OGG_HOME/bin

pmsrvr

Performance Metrics Serverは、メトリック・サービスを使用してインスタンス・デプロイメントのパフォーマンス結果を収集および格納します。

$OGG_HOME/bin

recvsrvr

Receiver Serverは、受け取るすべての証跡ファイルを処理する中央制御サービスです。

$OGG_HOME/bin

replicat

Replicatデータ・プロセス。

$OGG_HOME/bin

ServiceManager

Service Managerは、MAで提供される他のサービスの監視役として機能します。

$OGG_HOME/bin

crypto

$OGG_HOME/lib

htdocs

すべてのサーバーのMA HTMLページ。

$OGG_HOME/lib

info

すべてのサーバーのMA HTMLページをサポートする各種ヘルプ・ファイル。

$OGG_HOME/lib

sql

ユーティリティのhealthchecklegacyおよびshardingが格納されているSQLディレクトリ。

$OGG_HOME/lib

utl

ユーティリティのinstallloggingreverseproxyおよびshardingが格納されているユーティリティ・ディレクトリ。

$OGG_HOME/lib

OUIを使用した対話型インストールの実行

対話型インストールでは、必要なインストール情報を求めるグラフィカル・ユーザー・インタフェースが提供されます。

次の手順は新規インストールおよびアップグレードに適用されます。

  1. Oracle GoldenGateをインストールする一時ステージング・ディレクトリを作成します。たとえば、mkdir /u01/stage/oggscです。
  2. インストール用のZIPファイルを一時ステージング・ディレクトリに解凍します。たとえば:

    unzip ./fbo_ggs_Linux_x64_services.zip -d ./temp directory

  3. ディレクトリを展開して、fbo_ggs_Linux_x64_services_shophome/Disk1/runInstallerプログラムをUNIXまたはLinuxで実行します。
    OUIインストール・ウィザードが起動されます。
  4. 「Select Installation Option」ページで、目的の環境に応じたOracle Databaseのバージョンを選択し、「Next」をクリックして続行します。
  5. 「Specify Installation Details」ページで、次を指定します。
    • 「Software Location」には、Oracle GoldenGateソフトウェアをインストールする場所を指定します。インストールの完了後、これがOracle GoldenGateホーム(OGG_HOME)になります。$OGG_HOME環境変数を設定した場合、これは表示されるパスにする必要があります指定したディレクトリは、Oracle中央インベントリの登録済のホームにはできません。

    • 「Next」をクリックします。

  6. 「Summary」ページで、インストールに十分な領域があり、インストールの選択が正しいことを確認します。
    • (オプション)「Save Response File」をクリックして、インストール情報をレスポンス・ファイルに保存します。このファイルを入力として使用して、コマンドラインからインストーラを実行し、他のシステムで成功したインストールの結果を複製します。このファイルを編集、またはテンプレートから新しいファイルを作成できます。

    • 「Install」をクリックしてインストールを開始するか、「Back」をクリックして戻り、入力指定を変更します。既存のOracle GoldenGateインストールをアップグレードする際、OUIではソフトウェアの場所にファイルまたはディレクトリがあると示されます。「Yes」をクリックして続行します。

    • 中央インベントリ・ディレクトリを作成すると、INVENTORY_LOCATION/orainstRoot.shスクリプトを実行するように求められます。このスクリプトは、rootオペレーティング・システム・ユーザーとして実行されます。このスクリプトでは、インベントリ・データが確立され、インストールされるOracle製品ごと(この場合はOracle GoldenGate)にサブディレクトリが作成されます。

    インストールが終了すると、通知されます。
  7. 「Close」をクリックしてインストールを完了します。

OUIを使用したサイレント・インストールの実行

コマンドライン・インタフェースからのサイレント・インストールは、システムにX-Windowsやグラフィカル・インタフェースが備わっていない場合またはインストールを自動化する場合に実行できます。

サイレント・インストールでは、Oracle製品のインストール時に、組織の複数のユーザーが確実に同じインストール・プロセス・オプションを使用するようになります。

サイレント・インストールは、レスポンス・ファイルを使用して進められます。レスポンス・ファイルは、対話型のOracle Universal Installerセッションで「Save Response File」オプションを選択するか、バイナリ解凍後のレスポンス・ディレクトリにあるoggcore.rspテンプレートを編集することで保存できます。

Oracle GoldenGateレスポンス・ファイルには、Oracle GoldenGateに固有のパラメータに加えて、Oracle構成パラメータの標準のセットが含まれます。これらのパラメータは、インタラクティブ・セッションのフィールドに対応します。レスポンス・ファイルの場所は、unzipped_directory/fbo_gg_Linux_x64_services_shiphome/Disk1/responseです。

レスポンス・ファイルを使用してインストールを実行する場合は、次のコマンドを発行します。

unzipped_directory/fbo_gg_Linux_x64_services_shiphome/Disk1/runInstaller -silent -nowait -responseFile absolute_path_to_response_file