9 エンタープライズ・デプロイメント用のデータベースの準備

エンタープライズ・デプロイメント用にデータベースを準備するには、データベースが特定の要件を満たしていることを確認し、データベース・サービスを作成し、データベースのラージ・オブジェクトに対してSecureFilesを使用して、データベース・バックアップ戦略を策定する必要があります。

この章では、データベース要件、データベース・サービスの作成、およびデータベース・バックアップ戦略に関する情報を提供します。

エンタープライズ・デプロイメント用のデータベースの準備の概要

Oracle Fusion Middlewareエンタープライズ・デプロイメントの一環として、サポートされているデータベースを構成する方法を理解することが重要です。

ほとんどのOracle Fusion Middleware製品では、サポートされているデータベースに特定の一連のスキーマがインストールされている必要があります。これらのスキーマは、Oracle Fusion Middlewareのリポジトリ作成ユーティリティ(RCU)を使用してインストールします。

エンタープライズ・デプロイメントでは、Oracle Fusion Middleware製品スキーマに高可用性Real Application Clusters (Oracle RAC)データベースをお薦めします。

データベース要件について

エンタープライズ・デプロイメント・トポロジを構成する前に、次の項で説明されている要件をデータベースが満たしていることを検証する必要があります。

サポートされているデータベース・バージョン

次の情報を利用して、Oracle Fusion Middlewareの各リリースでサポートされているデータベース、および現在稼働中のOracleデータベースのバージョンを確認してください。

Oracle Fusion Middlewareでは、データベースがAL32UTF8文字セットに対応している必要があります。データベースのドキュメントを参照して、データベースで選択できる文字セットについて調べてください。

FMW 12.1.3プラガブル・データベース(PDB)もOracle Fusion Middlewareスキーマでサポートされているため、『相互運用性および互換性の理解』サポートされているデータベースとの相互運用性に関する項を参照してください。

エンタープライズ・デプロイメントでは、Oracle RACデータベースへの接続にGridLinkデータ・ソースを使用することをお薦めします。

ノート:

GridLinkデータ・ソースおよびSCANの使用方法の詳細は、『Oracle WebLogic Server JDBCデータ・ソースの管理』「アクティブなGridLinkデータ・ソースの使用方法」を参照してください。

アクティブなGridLinkには、有効なWebLogic Suiteライセンスも含め、特有のライセンス要件があります。Oracle Oracle WebLogic Serverデータ・シートを参照してください。

その他のデータベース・ソフトウェア要件

エンタープライズ・トポロジでは、RACデータベースの2つのインスタンスをホストする2つのデータベース・ホスト・コンピュータがデータ層にあります。これらのホストは、DBHOST1およびDBHOST2と呼ばれます。

エンタープライズ・トポロジをインストールまたは構成する前に、次のソフトウェアがDBHOST1とDBHOST2にインストール済であり使用可能であることを確認する必要があります。

エンタープライズ・デプロイメントのPROCESSESデータベース初期化パラメータの設定

表9-1に、いくつかの標準的なOracle SOA Suiteエンタープライズ・トポロジと、各トポロジでPROCESSES初期化パラメータの設定時に使用する必要がある値を示します。

この情報は、Oracle RACデータベースをエンタープライズ・デプロイメント用に構成するときの指針として利用してください。

表9-1 必要な初期化パラメータ

構成 パラメータ 必須値(クラシック値) 必須値(参照構成ドメイン) パラメータ・クラス

SOA

PROCESSES

300以上

600以上

静的

BAM

PROCESSES

200以上

*

静的

SOAおよびBAM

PROCESSES

500以上

-

静的

SOAおよびOSB

PROCESSES

800以上

1200以上

静的

* BAMは参照構成トポロジをサポートしていません。

SQL*Plusを使用して初期化パラメータの値をチェックするには、SHOW PARAMETERコマンドを次のように使用します。

  1. SYSユーザーとして、SHOW PARAMETERコマンドを次のように発行します。

    SQL> SHOW PARAMETER processes;

  2. 次のコマンドを使用して初期化パラメータを設定します。
    SQL> ALTER SYSTEM SET processes=300 SCOPE=SPFILE;
    
  3. データベースを再起動します。

パラメータ値の変更に使用する方法は、パラメータが静的であるか動的であるかと、データベースがパラメータ・ファイルとサーバー・パラメータ・ファイルのどちらを使用するかによって異なります。

ノート:

パラメータ値の変更の詳細は、Oracle Database管理者ガイド初期化パラメータ値の変更を参照してください。参照構成トポロジのデータベース・パラメータの詳細は、『Oracle SOA SuiteおよびOracle Business Process Management Suiteの管理』構成済参照構成ドメイン設定に関する項データベース設定に関する項を参照してください。

データベース・サービスの作成

複数のOracle Fusion Middleware製品が同じデータベースを共有する場合は、個別の専用のデータベース・サービスに接続するように、各製品を構成する必要があります。このサービスは、デフォルトとデータベース・サービスとは別である必要があります。デフォルトと異なるサービス名を使用する場合は、障害時リカバリとマルチデータセンター・トポロジのために、ロールベースのデータベース・サービスを作成できます。

ノート:

この項に示す手順は、Oracle Database 19cリリースを対象としています。これ以外のサポートされているデータベースをご使用の場合は、該当するドキュメント・ライブラリで最新のリリース別の情報を参照してください。

サービスを使用したOracleデータベースへの接続の詳細は、Real Application Clusters管理およびデプロイメント・ガイド動的なデータベース・サービスを使用したOracleデータベースへの接続に関する項を参照してください。

また、データベース・サービスはデフォルトのデータベース・サービスとは別のものにしてください。Oracle Database 19cデータベースのデータベース・サービスを作成および管理する完全な手順は、Oracle Real Application Clusters管理およびデプロイメント・ガイド動的データベース・サービスによる自動ワークロード管理の概要に関する項を参照してください。

ランタイム接続のロード・バランシングでは、ロード・バランシングを有効にする各サービスのサービス・レベルの目標を使用してOracle RACロード・バランシング・アドバイザを構成する必要があります。

SERVICE_TIMEまたはTHROUGHPUTについて、Oracle RACロード・バランシング・アドバイザを構成できます。接続ロード・バランシングの目標をSHORTに設定します。

srvctlユーティリティを使用してOracle Databaseサービスを作成および変更します。

データベース・サービスを作成および変更するには:

  1. サービスをデータベースに追加し、srvctlを使用してインスタンスに割り当てます。
    srvctl add service -db soadb -service soaedg.example.com -preferred soadb1,soadb2

    ノート:

    Oracle RACデータベースのサービス名には小文字を使用し、続けてドメイン名を指定します。たとえば: soaedg.example.com

    データベースがマルチテナント・データベースの場合は、サービスの作成時にプラガブル・データベース(PDB)名を指定して、サービスが指定されたPDBに関連付けられるようにします。たとえば:
    srvctl add service -db soadb -service soaedg.example.com -preferred soadb1,soadb2 -pdb PDB1
  2. サービスを起動します:
    srvctl start service –db soadb –service soaedg.example.com

    ノート:

    SRVCTLを使用したデータベース・サービスの作成および管理の完全な手順については、Real Application Clusters管理およびデプロイメント・ガイドSRVCTLでのサービスの作成に関する説明を参照してください。

  3. 実行時接続ロード・バランシングにロード・バランシング・アドバイザおよび適切なサービス・レベル目標を使用するように、サービスを変更します。
    Oracle Database 19c Oracle Real Application Clusters管理およびデプロイメント・ガイドの次のリソースを使用して、サービス・レベル目標SERVICE_TIMEおよびTHROUGHPUTを設定します。

    たとえば:

    このコマンドを使用して、サービスのデフォルト構成を確認します。
    srvctl config service -db soadb -service soaedg.example.com
    いくつかのパラメータが表示されます。次のパラメータを確認します。
    • 接続ロード・バランシングの目標: 長い

    • ランタイム・ロード・バランシングの目標: NONE

    次のコマンドを使用して、これらのパラメータを変更できます。
    srvctl modify service -db soadb -service soaedg.example.com -rlbgoal SERVICE_TIME -clbgoal SHORT
  4. サービスを再起動します:
    srvctl stop service -db soadb -service soaedg.example.com
    srvctl start service -db soadb -service soaedg.example.com
  5. 構成の変更の確認:
    srvctl config service -db soadb -service soaedg.example.com
    Runtime Load Balancing Goal: SERVICE_TIME
      Service name: soaedg.example.com
      Service is enabled
      Server pool: soadb_soaedg.example.com
      ...
      Connection Load Balancing Goal: SHORT
      Runtime Load Balancing Goal: SERVICE_TIME
      ...

Oracleデータベースでのラージ・オブジェクト(LOB)に対するSecureFilesの使用

SecureFilesは、Oracle Database 11gリリース1で導入された新しいLOB記憶域アーキテクチャです。Oracle Fusion Middlewareスキーマ、特にOracle SOA SuiteスキーマにはSecureFilesの使用をお薦めします。

Oracle Database 11gリリース1以降、新しいLOB記憶域アーキテクチャであるSecureFilesが導入されました。Oracle Fusion Middlewareスキーマ、特にOracle SOA SuiteスキーマにはSecureFilesの使用をお薦めします。Oracle Database SecureFilesおよびラージ・オブジェクト開発者ガイドOracle SecureFiles LOBの使用に関する項を参照してください。

db_securefileシステム・パラメータは、SecureFiles使用ポリシーを制御します。このパラメータは動的に変更できます。SecureFilesを使用するには次のオプションがあります。

  • PERMITTED: 12cより前のデフォルト設定。SECUREFILEキーワードが使用されている場合に、SecureFile LOB記憶域を許可します。デフォルトの記憶方式はBasicFileです。

  • PREFERRED: 12c以降のデフォルト設定で、LOB記憶域がBasicFileにデフォルト設定されるすべての場合にSecureFile LOB記憶域を使用します。

  • FORCE: すべての(新規) LOBをSecureFilesとして作成します。

  • ALWAYS: LOBをSecureFilesとして作成しようと試みますが、作成できない場合(ASSMが無効の場合)はBasicFilesに戻します。

  • IGNORE: SecureFilesを作成する試行を無視します。

  • NEVER: 新しいSecureFilesの作成を許可しません。

Oracle 12c Database以降でSecureFilesを使用するためのデフォルト設定はPREFERREDです。これは、LOBまたは親LOB (LOBがパーティションまたはサブパーティション内にある場合)でBasicFiles LOBが明示的に指定されていなければ、データベースがSecureFiles LOBの作成を試みることを意味します。Oracle Fusion MiddlewareスキーマではBasicFilesを明示的に指定しません。つまり、Oracle 12cデータベース以上のバージョンにインストールされている場合、Oracle Fusion Middleware LOBはデフォルトでSecureFilesになります。

Fusion Middleware 12.2.1.4リリース以降、SOAが参照構成機能を使用して構成されている(エンタープライズ・デプロイメント・ガイドに使用される構成)場合、Oracle 12cデータベース以上でdb_securefileシステム・パラメータを"ALWAYS"に設定することをお薦めします。たとえば:
sql> alter system set db_securefile=ALWAYS scope=both;

参照構成ドメインのデータベース設定の詳細は、『Oracle SOA SuiteおよびOracle Business Process Management Suiteの管理』データベース設定に関する項を参照してください。

Oracle 11gデータベースの場合、リポジトリ作成ユーティリティ(RCU)でOracle Fusion Middlewareスキーマを作成する前に、db_securefileパラメータをFORCEに設定することをお薦めします。

SecureFilesセグメントは、表領域を自動セグメント領域管理(ASSM)によって管理する必要があります。つまり、ASSMが無効になっていると、SecureFilesでのLOB作成が失敗します。ただし、Oracle Fusion Middlewareの表領域は、デフォルトではASSMが有効な状態で作成されます。したがって、デフォルトの構成では、Oracle Fusion Middlewareスキーマに対してSecureFilesを有効にするために何かを変更する必要はありません。

データベース・バックアップ戦略について

エンタープライズ・デプロイメントのインストールおよび構成の重要なポイントでデータベースのバックアップを実行すると、構成ステップの後半で問題が発生しても、迅速に回復することができます。

エンタープライズ・デプロイメントのインストールおよび構成の重要な点として、現在の環境をバックアップすることをお薦めします。たとえば、製品ソフトウェアをインストールし、特定のOracle Fusion Middleware製品のスキーマを作成した後で、データベース・バックアップを実行してください。バックアップを実行すれば、後の構成ステップで何か問題が発生しても、すばやくリカバリを実行できます。

この目的のために独自のデータベース・バックアップ戦略を使用することも、オペレーティング・システムのツールやRMANを使用して単純にバックアップすることもできます。

特にOracle Automatic Storage Managementを使用してデータベースを作成した場合は、Oracle Recovery Managerの使用をお薦めします。可能な場合、オペレーティング・システムのツール(tarなど)を使用してコールド・バックアップも実行できます。

Oracle SOA Suiteへのデータベース増分管理戦略の導入

Oracle SOA Suiteを含むOracleエンタープライズ・デプロイメントでは、Oracle SOA Suiteデータベースの増分管理など、データベース管理者にかかわる課題がいくつか存在します。データベース管理の重要性を軽視すると、データベースが本番環境に移行したときに問題が発生する可能性があります。

容量、テストおよび監視のための適切な戦略および計画の決定の詳細は、『Oracle SOA SuiteおよびOracle Business Process Management Suiteの管理』データベース増分の管理に関する項を参照してください。