2 Oracle E-Business Suite
この章の内容は次のとおりです。
2.1 概要
Oracle E-Business Suite (EBS)は、オラクル社の顧客のビジネス・ニーズに最適のソリューションを提供する統合ソフトウェア・アプリケーションのスイートです。
2.1.1 概念
EBSナレッジ・モジュールでは、次の機能がサポートされます。
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EBSオブジェクトのリバース・エンジニアリング: RKM E-Business Suiteを使用して、E-Business Suiteデータ構造をリバース・エンジニアリングできます。
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EBSからのデータの抽出: 表、ビューおよびキー・フレックスフィールドなどのオブジェクトを使用したE-Business Suiteからのデータの抽出に、標準のOracleまたはSQL LKMを使用できます。
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EBSへのデータ統合: オープン・インタフェース表を使用したE-Business Suiteへのデータの統合にIKM E-Business Suiteを使用できます。オープン・インタフェースAPIにより、多くのOracle固有のインタフェースがカプセル化され、データの整合性が保証されます。オープン・インタフェースは次のもので構成されます。
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ロードされるいくつかのインタフェース表。これらの表は、E-Business Suiteへの入力データのエントリ・ポイントです。
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インタフェース表からE-Business Suiteへのデータの挿入の検証および処理を行ういくつかのプログラム。
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Oracle E-Business Suite用のOracle Data Integratorナレッジ・モジュールは、データベース層と対話し、メタデータの抽出およびデータのロードを行います。データのロード時には、アプリケーション層の同時処理サーバーとも対話します。
2.1.2 ナレッジ・モジュール
Oracle Data Integratorには、E-Business Suiteデータを処理するためのナレッジ・モジュールが用意されています。これらのリストを表2-1に示します。これらの特定のEBS KMでは、Oracle Data IntegratorとE-Business Suiteの間に包括的な双方向の接続性が提供されており、データの抽出およびロードが可能です。ナレッジ・モジュールでは、E-Business Suiteのすべてのモジュールがサポートされており、EBSオブジェクト表/ビューおよびインタフェース表によって双方向の接続性が提供されます。
表2-1 E-Business Suite KM
ナレッジ・モジュール | 説明 |
---|---|
IKM E-Business Suite (オープン・インタフェース) |
IKM E-Business Suiteは、EBSインタフェース表へのデータのロードおよび同時リクエストの発行(これによってインタフェース表からベース表へのロードが行われます)に使用されます。 この統合ナレッジ・モジュールでは、次の処理が行われます。
インタフェース表のロードの他に、次のようなオプションのアクションも提供されます。
インタフェース表のロードには、必ずIKM E-Business Suite (オープン・インタフェース) KMを使用してください。E-Business Suiteの物理表への直接の書込みはサポートされていません。 |
RKM E-Business Suite |
このKMは、E-Business Suiteデータ構造をリバース・エンジニアリングします。表、ビュー、フレックスフィールドおよびE-Business Suiteのインタフェース表構造(列、主キーおよび外部キー)などのEBSオブジェクトがリバースされます。 |
2.2 インストールおよび構成
E-Business Suiteデータでの作業を開始する前に、この項の情報を必ず読んでください。
2.2.1 システム要件および動作要件
インストールを実行する前に、システム要件および動作要件のドキュメントを読んで、使用する環境がインストールする製品の最低インストール要件を満たすことを確認する必要があります。
サポートされているプラットフォームおよびバージョンのリストには、次のOracle Technical Network (OTN)からアクセスできます。
http://www.oracle.com/technetwork/middleware/data-integrator/overview/index.html
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2.3 トポロジの設定
このステップでは、データ・サーバーおよび、E-Business Suiteデータを格納するOracle Databaseの物理スキーマと論理スキーマを、Oracle Data Integratorで宣言します。
2.3.1 Oracleデータ・サーバーの作成
『Oracle Data Integrator接続およびナレッジ・モジュール・ガイド』のOracleデータ・サーバーの作成に関する項の説明に従って、Oracleテクノロジ用データ・サーバーを作成します。このデータ・サーバーは、E-Business Suiteデータを格納するOracle Databaseインスタンスを指している必要があります。
2.3.2 Oracle物理スキーマの作成
『Oracle Data Integratorの管理』の物理スキーマの作成に関する項の説明に従って、標準の手順を使用してOracle物理スキーマを作成します。このスキーマは、E-Business Suite表を指しているシノニムを含むOracleスキーマを指している必要があります。
ノート:
物理スキーマは、E-Business Suite表を指しているシノニムを含むOracleスキーマを表す必要があります。このスキーマは通常APPSと呼ばれます。これが、アプリケーションの物理表を含むOracleスキーマを直接指すことはできません。これらの物理表は、通常関連するアプリケーションの名前をとって命名されています。
リバース・エンジニアリングを行うには、物理スキーマが添付されているデータ・サーバーで指定されたOracleユーザーに、APPLSYS表およびOracleデータ・ディクショナリから選択する権限が必要です。
『Oracle Data Integratorの管理』の論理スキーマの作成に関する項の説明に従って、標準の手順を使用してこの物理スキーマ用の論理スキーマを作成し、特定のコンテキストで関連付けます。
ノート:
E-Business Suite表を含むOracleスキーマおよび、これらの表を指すシノニムを含むOracleスキーマは、物理スキーマ定義で作業スキーマとして定義できません。また、これらのOracleスキーマは、マッピングのステージング領域として使用しないでください。
2.4 統合プロジェクトの設定
E-Business Suiteの機能を使用してプロジェクトを設定するには、標準の手順に従います。『Oracle Data Integratorでの統合プロジェクトの開発』の統合プロジェクトの作成に関する項を参照してください。
次のKMをOracle Data Integratorプロジェクトにインポートします。
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IKM E-Business Suite (オープン・インタフェース)
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RKM E-Business Suite
これらの特定のEBS KMに加えて、Oracle Databaseでデータの抽出およびデータの品質チェックを実行する標準Oracle LKMおよびCKMをインポートします。利用できるKMのリストは、『Oracle Data Integrator接続およびナレッジ・モジュール・ガイド』 のOracle Databaseに関する項を参照してください。
2.5 Oracleモデルの作成およびE-Business Suite表のリバース・エンジニアリング
この項では、次の項目について説明します。
2.5.1 Oracleモデルの作成
『Oracle Data Integratorでの統合プロジェクトの開発』のモデルの作成に関する項の説明に従って、標準の手順を使用してOracleテクノロジに基づくOracleモデル、およびE-Business Suite接続の構成時に作成された論理スキーマに基づくOracleモデルを作成します。
ノート:
Oracle Data Integratorで定義されるE-Business Suiteテクノロジはありません。EBSデータをホストするOracle Databaseに対応する論理スキーマ上にデータ・モデルが作成されます。
2.5.2 E-Business Suite表のリバース・エンジニアリング
RKM E-Business Suiteでは、インストールされたE-Business Suite表をリバース・エンジニアリングし、E-Business Suite統合リポジトリから取得した情報を付加できます。
リバース・エンジニアリング・プロセスでは、次に示す情報を返します。
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インストールされたサブモデルとしてのE-Business Suite (モジュール)
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モジュールのサブモデルごとに、表、ビュー、フレックスフィールド、およびインタフェース表のサブモデル
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属性としての列および制約(主キーおよび外部キー)を持つデータストアとしての表
-
表のコメント
RKM E-Business Suiteを使用してEBS表のカスタマイズされたリバース・エンジニアリングを実行するには、『Oracle Data Integratorでの統合プロジェクトの開発』のモデルのリバース・エンジニアリングに関する項の説明に従って、通常の手順を使用します。この項では、EBS表固有のフィールドのみについて説明します。
リバース・エンジニアリング・プロセスでは、アプリケーションおよび表をサブモデルおよびデータストアとして返します。Oracle Applicationsをマッピングのソースまたはターゲットとして使用できます。
例2-1 E-Business Suiteのリバース・エンジニアリングの機能
E-Business Suite表のリバース・エンジニアリングには、次の機能があります。
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E-Business Suiteモジュールがサブモデルとしてリバースされます。サブモデル名はアプリケーション名に対応しています。
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各アプリケーション・サブモデルは、表、ビュー、フレックスフィールド、およびインタフェース表のサブモデルに分類されます。
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表/ビューは、データストアおよびその属性としての列、さらに制約(主キーおよび外部キー)としてリバースされます。
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<AppName>のフレックスフィールドと呼ばれるサブモデルがアプリケーションごとに作成されます。フレックスフィールド・サブモデルのデータストアは、アプリケーション用に登録されているキー・フレックスフィールドのConcatenated_Segment_Viewsに対応しています。これらのオブジェクトはビューのサブセットです。フレックスフィールド・サブフォルダのデータストアは、フレックスフィールドの名前をとって命名されます。
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インタフェース表サブモデルのデータストアは、名前にINTERFACEというパターンを含む表に対応しています。これらのオブジェクトは表のサブセットです。
ノート:
オープン・インタフェース(EBS統合リポジトリで指定)の一部には、INTERFACEというパターンが名前に含まれていないインタフェース表を持つものがあります。
例2-2 E-Business Suiteリバース・エンジニアリング・プロセスの制限
この項では、E-Business Suite表のリバース・エンジニアリングの制限について説明します。
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選択的なリバース・エンジニアリングは、このナレッジ・モジュールでは使用できません。
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Min Rowsオプションを使用するには、Oracle統計がすべての表で計算される必要があります。
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Oracle Data Integratorデータ・サーバーで定義されているOracleユーザーが、リバース・エンジニアリングする表の所有者ではない場合、これらの表でこのユーザーのシノニムを定義する必要があります。
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キー・フレックスフィールドのみがサポートされています。付加フレックスフィールドはサポートされていません。
2.6 マッピングの設計
E-Business Suiteをマッピングのソースまたはターゲットとして使用できます。
マッピング用に選択したKMによって、このマッピングの機能およびパフォーマンスが決まります。この項に示す推奨事項は、EBSデータのロードおよび統合に関連する様々な状況でのKMの選択に役立ちます。
2.6.1 E-Business Suiteからのデータのロード
E-Business Suiteをソースとして使用する場合、アプリケーションからデータを抽出して別のシステム(データ・ウェアハウス、他のデータベースなど)に統合します。
E-Business Suiteからのデータの抽出は、Oracle Databaseをソースとする通常のマッピングを使用して行います。このためには、Oracle Databaseテクノロジで機能するナレッジ・モジュールを使用できます。詳細は、『Oracle Data Integrator接続およびナレッジ・モジュール・ガイド』のOracleからのデータのロードに関する項を参照してください。
2.6.2 オープン・インタフェースを使用したE-Business Suiteへのデータの統合
Oracle Data Integratorでは、データをE-Business Suiteに統合するためのIKM E-Business Suite (オープン・インタフェース)を提供しています。E-Business Suiteへの統合プロセスは次のとおりです。
これらの処理は、IKM E-Business Suite (オープン・インタフェース)でサポートされています。このIKMは、IKM Oracle Incremental Updateと同様に使用され、オープン・インタフェース表をロードするための同様のオプションをサポートしています。この項では、オープン・インタフェースに固有のオプションについて説明します。IKM Oracle Incremental Updateの詳細は、『Oracle Data Integrator接続およびナレッジ・モジュール・ガイド』のOracle Databaseに関する項を参照してください。
グループIDの処理やオープン・インタフェース・プログラムの実行など、E-Business Suiteに固有のアクションのためのマッピングの構成については、「グループIDの管理」および「オープン・インタフェース・プログラムの実行」を参照してください。
2.6.2.1 グループIDの管理
データをE-Business Suiteに統合するトランザクションは、グループIDで識別されるバッチです。たとえば、いくつかのインタフェース表をロードしてE-Business Suiteで結果を生成する場合、これらのすべてのロード処理およびプログラムの検証と処理へのコールには、このバッチのグループIDが使用されます。
この項では、次の項目について説明します。
グループIDの作成
1つの単一バッチにおいてインタフェース表のグループをロードする最初のマッピングでは、強制的にグループIDを作成する必要があります。
マッピングでグループIDを作成するには:
-
KMオプションで次を設定します。
-
OA_CREATE_NEW_GROUP_IDを
YES
に設定します。 -
OA_GROUP_ID_NAMEオプションにグループID名を指定します。
ノート:
グループID名は、指定のインスタンスで一意である必要があります。バッチ処理の最後にグループIDを削除する場合、OA_REMOVE_GROUP_IDオプションを使用する必要があります。
-
OA_GROUP_ID_EXPRESSIONオプションのグループID値には有効なSQL式を指定します。
<SEQUENCE_NAME>.NEXTVAL
などのOracle Database順序値を使用します。
-
-
マッピングで、グループID値を使用してロードするインタフェース表のすべての列に対してフラグUD1を選択し、マッピング値を
0
に設定します。
バッチに属する次のマッピングでは、既存のグループIDを使用する必要があります。
既存のグループIDの使用方法
マッピングで既存のグループIDを使用するには:
-
OA_USE_EXISTING_GROUP_ID IKMオプションを
Yes
に設定します。 -
OA_GROUP_ID_NAME IKMオプションにグループID名を指定します。
-
マッピングで、グループID値を使用してロードするすべての列に対してフラグUD1を選択し、マッピング値を
0
に設定します。
インタフェース表のバッチをロードする最後のマッピングでは、不要になったグループIDを削除できます。
既存のグループIDの削除
既存のグループIDを削除するには:
- OA_REMOVE_GROUP_IDオプションを選択します。
- OA_GROUP_ID_NAMEオプションにグループID名を指定します。
- マッピングで、グループID値を使用してロードするインタフェース表のすべての列に対してフラグUD1を選択し、マッピング値を0に設定します。
ノート:
グループIDは、Oracle Applicationsインタフェース表を指す物理スキーマで指定された作業スキーマで作成されるSNP_OA_GROUP表に格納されます。グループIDは、Oracle Data Integratorでは一意のグループID名で参照されます。
2.6.2.2 オープン・インタフェース・プログラムの実行
Oracle Data Integratorマッピングでは、一連のインタフェース表がロードされる際、E-Business Suiteインタフェース表のデータを検証および処理するため、オープン・インタフェース・プログラムをコールする必要があります。このコールには既存のグループIDを使用できます(「既存のグループIDの使用方法」を参照)。オープン・インタフェースに表が1つしかない場合は、同じマッピングにグループIDを作成できます(「グループIDの作成」を参照)。オープン・インタフェース・プログラムの実行は、パッケージの最後のマッピングで開始されます。このマッピングでは、一連のオープン・インタフェース表にデータが移入され、通常は、グループIDが必要なくなると、これを削除します。
オープン・インタフェース・プログラムを実行するには: