12 Java EEクライアント・アプリケーション・モジュールの使用

Java EEでは、クライアント・アプリケーション・コード(クライアント・モジュール)の標準をEARファイルで指定する方法を学習します。これにより、アプリケーションのクライアント側を他のモジュールとともにパッケージ化したアプリケーションを作成できます。

クライアント・モジュールは、EARのMETA-INF/application.xmlファイルで<java>タグを使用して宣言します。『Oracle WebLogic Serverアプリケーションの開発』エンタープライズ・アプリケーション・デプロイメント記述子要素に関する項を参照してください。

ノート:

<java>タグを、サーバー側モジュールで使用できるJavaコードの宣言と混同しないよう注意してください。これは、その目的ではなく、サーバー側コンテナの外で実行するクライアント側コードを宣言する目的で使用します。

クライアント・モジュールは、基本的にはMETA-INF/application-client.xmlという特別なデプロイメント記述子を含むJARファイルです。このクライアントJARファイルのMETA-INF/MANIFEST.MFファイルには、プログラムのエントリ・ポイントを指定するMain-Classエントリも含まれます。application-client.xmlファイルの詳細は、「クライアント・アプリケーションのデプロイメント記述子の要素」を参照してください。

この章の内容は次のとおりです。

ノート:

Java Web Startを使用して、WebLogic ServerにデプロイされたJMSキューおよびトピックに接続する場合は、java.security.AccessControlExceptionを取得する可能性があります。セキュリティ障害を回避するには、クライアント側でシステム・プロパティ-Dweblogic.j2ee.client.isWebStarttrueに設定する必要があります。

クライアント・アプリケーションの展開

weblogic.ClientDeployerweblogic.j2eeclient.Mainユーティリティを使用して、クライアント・アプリケーションを抽出する方法を学習します。

WebLogic Serverは、クライアント・モジュールの使用を容易にするためのユーティリティを備えています。このようなユーティリティには以下の2つがあります。

  • weblogic.ClientDeployer - EARからクライアント・モジュールを展開し、これを実行するための準備を行います。

  • weblogic.j2eeclient.Main - クライアント・コードを実行します。

Java EE EARファイルからクライアント側JARファイルを展開して、デプロイ可能なJARファイルを作成するには、weblogic.ClientDeployerユーティリティを使用します。weblogic.ClientDeployerクラスは、Javaコマンド・ラインで次の構文を使用して実行します。

java weblogic.ClientDeployer ear-file client1 [client2 client3 ...]

ear-file引数は、拡張子.earを持つJavaアーカイブ・ファイルか、1つまたは複数のクライアント・アプリケーションJARファイルが格納されている展開されたディレクトリです。

client引数には、展開するクライアントを指定します。weblogic.ClientDeployerユーティリティは、ここに指定したクライアントごとに、指定した名前のJARファイル(拡張子.jarを含む)をEARファイル内から検索します。

たとえば、次のコマンドを考えます:

java weblogic.ClientDeployer app.ear myclient

このコマンドでは、app.earからmyclient.jarが展開されます。weblogic.ClientDeployerユーティリティでは、展開時に他の2つの操作も実行されます。

  • JARファイルにMETA-INF/application-client.xmlファイルが含まれていることを確認します。含まれていない場合は例外がスローされます。

  • myclient.runtime.xmlというファイルから読取りを行い、展開されたJARファイル内にweblogic-application-client.xmlファイルを作成します。このファイルは、weblogic.j2eeclient.Mainユーティリティで、クライアント・アプリケーションのコンポーネント環境(java:comp/env)を初期化するために使用します。runtime.xmlファイルの形式の詳細は、「クライアント・アプリケーションのデプロイメント記述子の要素」を参照してください

ノート:

モジュールのMETA-INF/application-client.xmlデプロイメント記述子のエントリのバインディングを定義するには、クライアント・プログラムの<client>.runtime.xml記述子を作成します。

クライアント・アプリケーションの実行

weblogic.j2eeclient.Mainユーティリティを使用してクライアント側JARファイルを抽出した後に、クライアント・アプリケーションを実行する方法を学習します。

EARファイルからクライアント側のJARファイルを展開したら、weblogic.j2eeclient.Main ユーティリティを使用してクライアント側アプリケーションをブート・ストラップし、次のコマンドを使用してWebLogic Serverインスタンスを指すようにします。

java weblogic.j2eeclient.Main clientjar URL [application args]

たとえば:

java weblogic.j2eeclient.Main myclient.jar t3://localhost:7001

weblogic.j2eeclient.Mainユーティリティによって、クライアント・コード内のjava:comp/envからアクセス可能なコンポーネント環境が作成されます。

application-client.xml記述子に記述されているリソースが以下のいずれかに該当する場合、あらかじめmyclient.runtime.xmlファイルに指定された情報に基づいて、weblogic.j2eeclient.MainクラスはサーバーのグローバルJNDIツリーからjava:comp/envへのバインドが試行されます。

  • ejb-ref

  • javax.jms.QueueConnectionFactory

  • javax.jms.TopicConnectionFactory

  • javax.mail.Session

  • javax.sql.DataSource

ユーザー・トランザクションは、java:comp/UserTransactionにバインドされます。

application.xmlデプロイメント記述子の<res-auth>タグは、現時点では無視され、applicationと入力されます。現時点では、フォームベースの認証はサポートされていません。

残りのクライアント環境は、weblogic.ClientDeployerユーティリティによって作成されたweblogic-application-client.xmlファイルからバインドされます。

バインディングが見つからない場合や不完全な場合は、weblogic.j2eeclient.Mainクラスからエラー・メッセージが出力されます。

環境が初期化されると、weblogic.j2eeclient.MainユーティリティがMain-ClassエントリのJARクライアントのJARマニフェストを検索します。このクラスのmainメソッドを呼び出すと、クライアント・プログラムが起動します。URL引数の後ろでweblogic.j2eeclient.Mainユーティリティに渡したすべての引数は、クライアント・アプリケーションに渡されます。

アプリケーション用に作成したJavaクラス、およびそのアプリケーションが依存するすべてのJavaクラス(WebLogic Serverクラスを含む)は、クライアントJVMから使用できるようにしておく必要があります。クライアント・アプリケーションをステージするには、クライアントで必要とするすべてのファイルを特定のディレクトリにコピーし、そのディレクトリをJARファイルにバンドルします。クライアント・アプリケーション・ディレクトリの最上位には、アプリケーションを起動するためのバッチ・ファイルやスクリプトを格納できます。JavaクラスとJARファイルを保持するクラスまたはサブディレクトリを作成し、起動スクリプトのクライアントクラスパスに追加します。

Javaクライアント・アプリケーションにJRE (Java Runtime Environment)をパッケージ化することもできます。

ノート:

クライアント・モジュールJARで使用するクラスパス・マニフェスト・エントリは移植できません。これは、Java EE標準で未対応であるためです。