2 WebLogicシンT3クライアントの開発

WebLogicシンT3クライアントを開発および使用する方法を学習します。

WebLogicシンT3クライアントの理解

WebLogicシンT3クライアントのjar (wlthint3client.jar)は、wlfullclient.jarおよびwlclient.jar (IIOP)リモート・クライアントのjarの軽量かつ高パフォーマンス版です。シンT3クライアントは、サイズを最小限に抑えながら、クライアントでの使用に適した豊富なAPI群へのアクセスを実現します。その名前が示すように、WebLogic T3プロトコルを使用し、IIOPプロトコルを使用するwlclient.jarに勝る大幅なパフォーマンス向上をもたらします。

シンT3クライアントは、リモート・クライアントのほとんどのユース・ケースで推奨される方式です。シンT3クライアントには、次に示すような制限があります。これらの数少ないユース・ケースでは、フル・クライアントまたはIIOPシン・クライアントを使用する必要があります。

シンT3クライアントは、スタンドアロン・アプリケーションで使用でき、WebLogic以外の外部サーバーで実行するアプリケーションで使用できるように設計されています。一般的なユース・ケースの1つは、WebLogic JMS宛先との統合です。

WebLogicシンT3の機能

このリリースでは、次の機能をサポートしています。

  • Oracle WebLogicのRemote Method Invocation (RMI)用のT3/T3Sプロトコル(RMI over HTTP (HTTPトンネリング)およびをRMI over HTTPS (SSLを介したHTTPトンネリング)含む)。WebLogic T3通信の詳細は、『Oracle WebLogic Server RMIアプリケーションの開発』T3プロトコルを実装したWebLogic RMIの使用に関する項を参照してください。

  • WebLogic Serverで使用可能なJMS、JMX、JNDI、およびEJBの各リソースへのアクセス。

  • wlsaft3client.jarを使用したWebLogicストア・アンド・フォワード(SAF)サービス。

  • JTAを使用したトランザクションの開始と終了(ロールバックまたはコミット)。

  • WebLogicクライアントJMS機能。順序単位、作業ユニット、メッセージ圧縮、XMLメッセージ、JMS自動クライアント再接続、Destination Availability Helper APIなどがあります。

  • クライアント側のクラスタリングを使用すると、クライアント・アプリケーションはフェイルオーバーやWebLogic Serverインスタンスのロード・バランシングに関与できます。『Oracle WebLogic Server RMIアプリケーションの開発』クラスタ化されたRMIアプリケーションに関する項を参照してください。

  • JAAS認証とJSSE SSL。「セキュリティ」を参照してください。

  • ネットワーク・クラスのロード。デフォルトでは、シンT3クライアントのネットワーク・クラスのロードは無効化されています。次のシステム・プロパティを使用して、ネットワークのクラスロードを有効化します。

    -Dweblogic.rmi.networkclassloadingenabled=true

制限事項と考慮事項

このリリースでは、次の機能はサポートしていません。

  • Mbeanベースのユーティリティ(JMSヘルパー、JMSモジュール・ヘルパーなど)、およびJMSマルチキャストはサポートされていません。MbeanベースのヘルパーのかわりにJMX呼出しを使用できます。

  • WebLogic JDBC拡張をはじめとするJDBCリソース。

  • クライアントでのWebLogic RMIサーバーの実行。

シンT3クライアントでは、ホストへの接続にJDKクラスを使用します(デュアル・スタック・マシンへの接続を含む)。ホスト上に複数のアドレスが存在する場合、ホストが正しく構成されていないと、間違ったアドレスへの接続が試行され、接続に失敗する可能性があります。

相互運用性

このリリースのWebLogicシンT3クライアントは、相互運用性を次のようにサポートしています。

WebLogic Serverの旧リリース

WebLogicシンT3クライアントにおける旧WebLogicリリースとの通信のサポートについては、『Oracle WebLogic Serverの理解』プロトコルの互換性に関する項を参照してください。

外部アプリケーション・サーバー

WebLogicシンT3クライアントのjarは、次のアプリケーション・サーバーでサポートされています。

  • GlassFish

  • IBM WebSphereアプリケーション・サーバー

  • Red Hat JBoss Application Server

セキュリティ

クライアントのセキュリティに関する一般情報は、次の項を参照してください。

接続の考慮事項

WebLogicシンT3クライアントでは、JDKクラスを使用してホストに接続します。ホストで複数のアドレス(デュアル・スタック)が使用可能な場合、そのホストが正しく構成されていないと、クライアントが間違ったIPアドレスに接続してしまう可能性があります。

基本的なWebLogicシンT3クライアントの開発

WebLogic初期コンテキストを使用して、基本的なWebLogicシンT3クライアントを作成する方法を学習します。

基本的なWebLogicシンT3クライアントを作成するには、次のステップに従います。

  1. リモート・オブジェクトへの参照を取得します。

    1. t3://ip address:portまたはt3s://ip address:portという形式のT3 URLを使用して、サービスをホストするサーバーの初期コンテキストを取得します。

    2. 初期コンテキストを使用してルックアップを実行することで、サービス・オブジェクトのインスタンスを取得します。このインスタンスは、ローカル・オブジェクト参照と同じように使用できます。

  2. リモート・オブジェクト・メソッドを呼び出します。

  3. クライアントのクラスパスにwlthint3client.jarを追加します。このファイルは、WebLogic ServerがインストールされているWL_HOME\server\libディレクトリにあります。

    ノート:

    複数のクライアントを組み合せて拡張機能セットを作成することはサポートされていません。wlfullclient.jarwlthint3client.jarまたはwlclient.jarを、WebLogic ServerのクラスパスやWebLogicフル・インストールのweblogic.jarファイルを参照するクラスパスに追加しないでください。追加した場合の動作は不明です。WebLogic Serverアプリケーションは、すでにWebLogicクライアントの機能をすべて利用できます。

例2-1に、基本的なWebLogicシンT3クライアントのサンプル・コードを示します。

例2-1 WebLogic初期コンテキストの作成および使用

Hashtable env = new Hashtable();
env.put("java.naming.factory.initial",
  "weblogic.jndi.WLInitialContextFactory");
env.put("java.naming.provider.url","t3://host:7001");
env.put("java.naming.security.principal","user");
env.put("java.naming.security.credentials","password");
Context ctx = new InitialContext(env);
try {
  Object homeObject =
    context.lookup("EmployeeBean");
//use the EmployeeBean
}
catch (NamingException e) {
// a failure occurred
}
finally {
  try {ctx.close();}
  catch (Exception e) {
// a failure occurred
}
}

外部サーバー・アプリケーション

外部サーバーにホストされているアプリケーションは、wlthint3client.jarを使用すると、WebLogic Serverインスタンスのリモート・クライアントとして機能できます。JMS、サーブレット、EJB、起動クラスなどのリモート・サービスへのアクセスを可能にするには、必要なアプリケーション・コードをwlthint3client.jarとともにアプリケーション・サーバーにデプロイします。

JNDIを使用して外部アプリケーション・サーバーからWebLogic Serverリソースに接続し、アクセスするには、ガイドラインとして次のステップに従ってください。

  1. クライアントのクラスパスにwlthint3client.jarを追加します。
  2. クライアント・アプリケーションで、WebLogic初期コンテキストを作成してから、そのコンテキストを使用してリソースをルックアップし、使用します。詳細は、例2-1を参照してください。
  3. 初期コンテキスト・ファクトリをクライアント・コードのシステム・プロパティとして次の値に明示的に設定することが必要な場合もあります。

    env.put("java.naming.factory.initial", "weblogic.jndi.WLInitialContextFactory");

  4. wlthint3client.jarファイルをサーブレットに埋め込んだり、共有ライブラリを使用したりするなど、標準Java EEメソッドを使用してwlthint3client.jarファイルと共に必要なアプリケーション・コードをアプリケーション・サーバーにデプロイします。「デプロイメントの考慮事項」を参照してください。
  5. クライアントを起動またはデプロイします。

次の項では、外部サーバーと相互運用する際に考慮すべき事項について概説します。

デプロイメントの考慮事項

wlthint3client.jarは、Java EEの標準的な方法でデプロイできます。ただし、使用するデプロイメント方法を決める際には、クライアントのサイズ、クラスのロード、パフォーマンス、およびコードの不整合が発生するリスクへの許容度を考慮する必要があります。たとえば:

  • wlthint3client.jarをサーブレットなどのアプリケーションに埋め込んだ場合、アプリケーションのサイズはwlthint3client.jarのサイズだけ増えますが、コードの不整合が発生するリスクはアプリケーションの範囲に限定されます。

  • wlthint3client.jarをlibディレクトリにデプロイした場合、アプリケーションのサイズに影響はありませんが、コードの不整合が発生するリスクは外部サーバー・コンテナ全体に及びます。