1 スタンドアロン・クライアントの概要

スタンドアロン・クライアントは、WebLogic Serverから独立した実行時環境を持つクライアントです。(Webサービスなどの管理対象クライアントは、サーバーへのアクセスに必要な実行時環境を提供するうえで、サーバー側のコンテナに依存します)。WebLogic Serverアプリケーションにアクセスするスタンドアロン・クライアントは、標準のI/Oを使用する単純なコマンド・ライン・ユーティリティから、Java Swing/AWTクラスを使用して構築された高度な対話型のGUIアプリケーションまで様々です。クライアントの種類、クライアントの機能、およびクライアントの配布方法について学習します。

クライアントJarファイルの配布

クライアントJAR、およびスタンドアロン・クライアントの作成のためにOracle WebLogic Serverで提供されるその他のリソースを使用するときのライセンス要件について学習します。

「スタンドアロンWebLogicクライアント」を参照してください。

WebLogic T3クライアント

WebLogic T3クライアントは、OracleのT3プロトコルを使用してWebLogic Serverと通信するJava RMIクライアントです。T3クライアントは、他の種類のクライアントよりもパフォーマンスに優れており、最も推奨されるクライアントです。

WebLogicシンT3クライアント

WebLogicシンT3 Javaクライアントは、WebLogicインストール・クライアント、フル・クライアント、およびシンIIOPクライアントにかわる軽量のクライアントです。このクライアントは、フル・クライアントを使用した場合と同じパフォーマンスを実現しますが、利用するJARファイルははるかに小さくなります。シンT3クライアントでは、フル・クライアントを使用できるユース・ケースのほとんどがサポートされています。

シンT3クライアントは、スタンドアロン・アプリケーションで使用でき、WebLogic以外の外部サーバーで実行するアプリケーションで使用できるように設計されています。一般的なユース・ケースの1つは、WebLogic JMS宛先との統合です。

WebLogicフル・クライアント(非推奨)

WebLogicフル・クライアントは、スタンドアロン・クライアントの中で最大サイズのJARファイル(wlfullclient.jar)を必要としますが、最も多くの機能を備え、総合的なパフォーマンスに優れています。3種類のT3クライアントのパフォーマンスはすべて同じです。wlfullclient.jarは、IIOPサポートも提供します。次を参照してください。

ノート:

Antスクリプトで起動される<java>タスクからWebLogicフル・クライアントを実行する場合、wlfullclient.jarマニフェスト・クラスパスに含まれているRSA Crypto-Jライブラリに関する重要な情報は、非フォーク対象VMでのWebLogicフル・クライアントの実行に関する項を参照してください。

WebLogicインストール・クライアント

インストール・クライアントはWebLogic Serverのフル・インストールで使用できます。WL_HOME/server/libにあるweblogic.jarファイルを使用し、すべてのWebLogic Server固有の拡張機能のクライアント側のサポートを提供します。次などのサーバー側の操作をサポートする唯一のクライアントです。

  • ejbcコンパイラなど、デプロイメント目的に必要な操作。

  • デプロイメントなどの管理操作。

  • サーバー側の操作を呼び出すWLSTおよびクライアント側のJSR 88アプリケーション。

RMI-IIOP (非推奨)

IIOPは、Java RMIで記述されたインタフェースを持つ分散アプリケーション向けのトランスポート・プロトコルです。IIOPクライアントの使用が任意の場合には、IIOPクライアントではなくT3クライアントを使用することをお薦めします。

『Oracle WebLogic Server RMIアプリケーションの開発』RMI over IIOPの使用に関する項を参照してください。

CORBAクライアント

Java単独の環境以外で作業している場合には、IIOPを使用してJavaプログラムをCORBA (Common Object Request Broker Architecture)クライアントに接続し、CORBAオブジェクトを実行できます。IIOPは、インタフェースがJava RMIまたはインタフェース定義言語(Interface Definition Language: IDL)で記述された分散アプリケーション用のトランスポート・プロトコルです。ただし、この2つのモデルは、異種システム間での相互運用可能な環境を作成する方法が明確に異なります。

プログラミングする際に、IDLまたはRMIインタフェースのいずれを使用するかを決定する必要があります。それらを混在させることはできません。WebLogic Serverは、次のCORBAクライアント・モデルをサポートしています。

JMXクライアント

JMXクライアントを使用すると、WebLogic Server MBeanにアクセスできます。

『Oracle WebLogic Server JMXによるカスタム管理ユーティリティの開発』JMXを使用したWebLogic Server MBeanへのアクセスに関する項を参照してください。

JMSクライアント

WebLogic Serverには、Java EEおよびWebLogic JMSの機能を提供するJMSクライアントが数多く用意されています。

ヒント:

Oracle WebLogic JMSクライアントでは、JMSシン・クライアント(非推奨)以外のすべての場合でT3プロトコルを使用する必要があります。JMSシン・クライアント(非推奨)は常に低速のIIOPプロトコルを使用するため、実際のユース・ケースでシンT3クライアントが大きすぎると思われる場合にしかお薦めできません。

Webサービス・クライアント

WebLogic Serverには、Java SEクライアントがWebLogic Serverまたは他のアプリケーション・サーバー上でホストされているWebサービスを呼び出すことができるスタンドアロンのWebサービス・クライアントが用意されています。これらのクライアントは、表1-1にリストされています。これらのクライアントの使用方法の詳細は、『Oracle WebLogic Server JAX-RPC Webサービスの開発』スタンドアロンJava SEクライアントからのWebサービスの起動に関する項を参照してください。

WebLogic Tuxedo Connectorクライアント

WebLogic Tuxedo Connectorでは、WebLogic ServerアプリケーションとTuxedoサービスとの相互運用が実現されます。

次を参照してください。

クライアントと機能

WebLogic Server環境でサポートされているクライアントのタイプとその機能について学習します。

次の表に、WebLogic Server環境でサポートされるクライアントの種類と、それぞれの特徴、機能、および制約についてまとめます。

ノート:

複数のクライアントを組み合せて拡張機能セットを作成することはサポートされていません。環境に最も適したクライアントを1つ選択し、その種類のクライアントに指定されているクライアント・クラスのみを使用してください。

表1-1 WebLogic Serverクライアントの種類と機能

クライアント 種類 言語 プロトコル クライアント・クラス要件 主な機能

WLシンT3クライアント

RMI

Java

T3

wlthint3client.jar

  • 小さいフットプリント。

  • Oracle WebLogicのRemote Method Invocation (RMI)用のT3/T3Sプロトコル。

  • WebLogic Serverクラスタリングをサポートします。

  • JSSE SSLをサポートします(HTTPトンネリングを伴うものを除く)。

  • IIOPクライアントよりも高速で、スケーラビリティでも優れています。

  • wlsaft3client.jarを使用したWebLogicストア・アンド・フォワード(SAF)サービスを含む、WebLogicクライアントJMSのほとんどの機能。

  • ほとんどのJava EE機能をサポートします。

  • 「WebLogicシンT3クライアントの開発」を参照してください。

クライアントのインストール

RMI

Java

IIOP

weblogic.jar

  • JSSE SSLをサポートします。

  • ほとんどのJava EE機能をサポートしますが、WebLogicクライアントJMSはサポートしません。

  • ejbcコンパイラなど、デプロイメント目的に必要な操作。

  • デプロイメントなどの管理操作をサポートします。

  • サーバー側の操作を呼び出すWLSTおよびクライアント側のJSR 88アプリケーションをサポートします。

  • 「WebLogicインストール・クライアント」を参照してください

クライアントのインストール

RMI

Java

T3

weblogic.jar

  • Oracle WebLogicのRemote Method Invocation (RMI)用のT3/T3Sプロトコル(T3/T3SのHTTPトンネリングを含む)をサポートします。

  • WebLogic Serverクラスタリングをサポートします。

  • JSSE SSLをサポートします。

  • IIOPクライアントよりも高速で、スケーラビリティでも優れています。

  • WebLogic JMSクライアント・ストア・アンド・フォワード(SAF)サービスを含む、WebLogicクライアントJMSのすべての機能。

  • ほとんどのJava EE機能をサポートします。

  • ejbcコンパイラなど、デプロイメント目的に必要な操作をサポートします。

  • デプロイメントなどの管理操作をサポートします。

  • サーバー側の操作を呼び出すWLSTおよびクライアント側のJSR 88アプリケーションをサポートします。

  • 「WebLogicインストール・クライアント」を参照してください

非推奨

WLフル・クライアント(T3)

RMI

Java

T3

wlfullclient.jar (非推奨)

  • 非推奨のWebLogic Server 12.1.3。

  • ほとんどのWebLogic Server固有の機能をサポートします

  • WebLogic Serverクラスタリングをサポートします。

  • IIOPクライアントよりも高速で、スケーラビリティでも優れています。

  • ほとんどのJava EE機能をサポートします。

  • 「WebLogicフル・クライアントの開発(非推奨)」を参照してください。

非推奨

WLS-IIOP

(WebLogic Server 7.0で導入)

RMI

Java

IIOP

wlfullclient.jar (非推奨)

  • WebLogic Server固有の機能をサポートします。

    非推奨のWebLogic Server 12.1.3。

  • WebLogic Serverクラスタリングをサポートします。

  • IIOPシン・クライアントよりも高速で、スケーラビリティでも優れています。

  • 非ORBベース。

  • WebLogic Server JMSはサポートしません(かわりに同じJarでT3プロトコルを使用)。

  • 「WLS-IIOPクライアントの開発(非推奨)」を参照してください。

非推奨

シン・クライアント

RMI

Java

IIOP

wlclient.jar (非推奨)

  • WebLogic Serverクラスタリングをサポートします。

  • セキュリティやトランザクションを始めとするJava EEの様々な機能をサポートします。

  • SSLをサポートします。

  • CORBA 2.4 ORBを使用します。

  • T3クライアントの選択肢のうち、高速なものを使用することを検討してください。

  • 「シン・クライアントの開発」を参照してください。

CORBA/IDL

CORBA

OMG IDLからマップする言語(C++、C、Smalltalk、COBOLなど)

IIOP

WebLogicクラスは不要

Java SE

RMI

Java

IIOP

WebLogicクラスは不要

  • WebLogic Server環境への接続を提供します。

  • WebLogic Server固有の機能をサポートしません。Java EEの多数の機能をサポートしません。

  • CORBA 2.3 ORBを使用します。

  • com.sun.jndi.cosnaming. CNCtxFactoryの使用が必須です。

  • JDK 1.8までのクライアントをサポートします(JDK 1.8より後ではJava SEはCORBA ORBを埋め込みません)。

  • 「Java SEクライアントの開発(非推奨)」を参照してください。

非推奨

JMSシン・クライアント

RMI

Java

IIOP

wljmsclient.jar

wlclient.jar (非推奨)

  • シン・クライアントの機能。

  • WebLogic JMS (マルチキャスト・セッションおよびJMSHelperクラス・メソッドのクライアント側XMLの選択を除く)。

  • SSLをサポートします。

  • 「WebLogic JMSシン・クライアント(非推奨)」を参照してください。

  • T3クライアントの選択肢のうち、高速なものを使用することを検討してください。

JMS SAFクライアント

(WebLogic Server 9.2で導入)

RMI

Java

t3またはIIOP

  • wlsaft3client.jarおよびwlthint3client.jar (優先)または

  • wlsafclient.jar (非推奨- IIOPを使用)、wljmsclient.jar (非推奨- IIOPを使用)、wlclient.jar (非推奨)

JMS Cクライアント

(WebLogic Server 9.0で導入)

JNI

C

任意

WebLogic JMS対応の任意のJavaクライアント(wlthint3client.jarなど)

  • WebLogic JMSアプリケーションおよびリソースにアクセスできるCクライアント・アプリケーション。

  • SSLをサポートします。

  • 「WebLogic JMS C API」を参照してください

JMS .NETクライアント

(WebLogic Server 10.3で導入)

T3

.NET

T3

WebLogic.Messaging.dll動的ライブラリ

WebLogic AQ JMSクライアント

(WebLogic Server 10.3.1で導入)

JNDI/

Java

IIOP/T3 +

aqapi.jaro6.jarorai18n.jarおよびwlclient.jar (非推奨)、wlfullclient.jar (非推奨)、weblogic.jar (インストール・クライアント)、またはwlthint3client.jar

『Oracle WebLogic Server JMSリソースの管理』スタンドアロンのWebLogic AQ JMSクライアントに関する項を参照してください。

JMX

RMI

Java

IIOP

wljmxclient.jar

『Oracle WebLogic Server JMXによるカスタム管理ユーティリティの開発』JMXを使用したWebLogic Server MBeanへのアクセスに関する項を参照してください。

Webサービス

SOAP

Java

HTTP/S

com.oracle.webservices.wls.jaxws-wlswss-client.jar

com.oracle.webservices.wls.jaxws-owsm-client.jar

com.oracle.webservices.fmw.client.jar

『Oracle WebLogic Server JAX-WS Webサービスの開発』スタンドアロンJava SEクライアントからのWebサービスの起動に関する項を参照してください。

C++クライアント

CORBA

C++

IIOP

Tuxedoライブラリ

RESTクライアント

JAX-RS

Java

HTTP

jersey-client.jar

JAX-RSクライアントAPIをサポートします。