Oracle Application Server 概要 10gリリース2(10.1.2) B15619-02 |
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この章では、Oracle Application Serverによって提供される高可用性およびスケーラビリティ・ソリューションの概要について説明します。この章の項目は次のとおりです。
スケーラビリティとは、使用可能なハードウェア・リソースに応じたスループットを提供する、システムの能力のことです。スケーラビリティは、システムのハードウェア・リソースにのみ制限されます。スケーラブルなシステムとは、待機時間とスループットに悪影響を与えずに、リクエストの増加を処理するシステムです。
1つのオペレーティング環境内の計算能力を高めることを、垂直スケーリングと呼びます。水平スケーリングでは、複数のシステムを活用して、1つの共通の問題を並列処理します。
Oracle Application Serverでは、垂直と水平の両方でスケーリングを行います。水平スケーリングの場合、Oracle Application ServerではOracle Application Server Clusterでスループットを増やすことができます。そこでは、アプリケーション・サーバーのいくつかのインスタンスをグループ化し、ワークロードを共有します。また、Oracle Application Serverは垂直スケーラビリティが優れているため、1つのオペレーティング環境内にある同じ構成ファイルからいくつかの仮想マシンを起動できます(ポート、アプリケーションおよびルーティングが自動的に構成されます)。これには、複数プロセスに基づいた垂直スケーリングというメリットを実現しながらも、アプリケーション・サーバーの複数インスタンスの管理というオーバーヘッドがなくなります。
システムおよびそのシステム内の任意のコンポーネントの可用性は、正常に動作する時間の割合で定義されます。システムの可用性を計算する式は、次のようになります。
可用性=障害発生までの平均時間(ATTF)/ [障害発生までの平均時間(ATTF)+リカバリまでの平均時間(ATTR)]
たとえば、1日のうちで12時間は正常に動作するシステムには50%の可用性があることになります。99%の可用性を持つシステムは1年間に平均で3.65日停止します。基幹システムでは、非常に高い可用性標準を満たすことが求められ、具体的にはシステムが1年間にわずか4〜5分間の停止時間しかないことを意味します。
Oracle Application Serverは、ロード・バランシングや基本的なクラスタリングから、破滅的なハードウェアおよびソフトウェア障害時に最大のシステム可用性を実現する機能まで、多種多様な高可用性ソリューションの提供を目的として設計されています。
高可用性ソリューションは、ローカル高可用性、バックアップとリカバリおよび障害時リカバリという3つの基本的なカテゴリに分けられます。
ローカル高可用性ソリューションによって、1つのデータ・センター配置における可用性が確保されます。これらのソリューションによって、プロセス、ノードおよびメディアの障害だけでなく、人為的なエラーからも保護されます。ローカル高可用性ソリューションは、さらにアクティブ/パッシブ型とアクティブ/アクティブ型の2つに分類できます。
アクティブ/パッシブ・ソリューションでは、リクエストを処理するアクティブ・インスタンスと、スタンバイ状態のパッシブ・インスタンスを配置します。アクティブ・インスタンスに障害が発生すると、アクティブ・インスタンスはシャットダウンされ、パッシブ・インスタンスがオンラインになり、アプリケーション・サービスが再開されます。この時点で、アクティブとパッシブのロールが切り替わります。このプロセスは手動で行うことも、ベンダー固有のクラスタウェアで処理することもできます。アクティブ/パッシブ・ソリューションは、一般的にコールド・フェイルオーバー・クラスタと呼ばれます。
アクティブ/アクティブ・ソリューションでは、アクティブ・アプリケーション・サーバーのインスタンスが常に複数配置されます。すべてのインスタンスが同時にリクエストを処理します。
図8-1に、アクティブ/アクティブおよびアクティブ/パッシブのシステムの配置を示します。
ローカル高可用性には、アーキテクチャの冗長性以外にも、次のような機能があります。
バックアップとリカバリとは、ハードウェアの障害およびデータの消失に対する保護、およびデータが消失した場合の再構築に関する様々な戦略と手順のことです。想定される障害には、本番環境全体の破滅的な消失には至らないものもあります。しかし、障害のタイプに関係なく、システム内で障害が発生した場合、障害の発生したコンポーネントまたはプロセスをできるだけ迅速にリストアすることが重要です。
ユーザー・エラーによってシステムが誤作動することもあります。状況によっては、コンポーネントまたはシステムの障害を修復できないこともあります。一定の間隔でシステムをバックアップし、修復不能な障害が発生した場合にバックアップをリストアできるように、バックアップおよびリカバリの機能を用意しておく必要があります。
障害時リカバリ・ソリューションは一般的に、洪水や地域的なネットワークの停止などの災害からアプリケーションを保護するために、地理的に分散配置するものです。障害時リカバリ・ソリューションでは通常、2つの同種のサイト(1つはアクティブ・サイト、もう1つはパッシブ・サイト)を設定します。サイトはそれぞれが自己完結型のシステムです。一般的に、アクティブ・サイトを本番サイト、パッシブ・サイトをスタンバイ・サイトと呼びます。
通常の運用では、本番サイトがリクエストを処理します。サイトでフェイルオーバーやスイッチオーバーが発生すると、スタンバイ・サイトが本番ロールを引き継ぎ、すべてのリクエストはそのサイトにルーティングされます。
フェイルオーバーのためにスタンバイ・サイトを保持するには、スタンバイ・サイトに同種のインストールとアプリケーションを含めるだけでなく、データと構成を本番サイトからスタンバイ・サイトに常時同期化する必要もあります。
図8-2に、地理的に分散された障害時リカバリ・ソリューションを示します。
Oracle Application Serverは、柔軟性の高いインストール、配置およびセキュリティ・オプションとともに、ローカル高可用性、バックアップとリストアを実現し、あらゆる障害に対して最大限の保護を提供する障害時リカバリ・ソリューションを備えています。
Oracle Application Serverのローカル高可用性を実現するものは、Oracle Application Serverの中間層およびOracle Application Server Infrastructureに対する、いくつかのアクティブ/アクティブおよびアクティブ/パッシブのソリューションです。アクティブ/アクティブとアクティブ/パッシブのどちらの高可用性ソリューションでも、インストールの容易さ、コスト、スケーラビリティおよびセキュリティが異なるオプションがあります。
一部の障害では、単なるプロセスの再起動以上の複雑なリカバリを実行する必要があります。場合によっては、すでに実装されているバックアップ手順に基づいてリストア操作を実行する必要があります。
Oracle Application Server環境の完全バックアップを次に示します。
リカバリのための完全なバックアップおよびリストアのソリューションを必要とする障害には、ノードの完全な置換えを必要とするノード障害、Oracleソフトウェアまたはバイナリ・ファイルの削除や破損があります。このタイプのリカバリ・ソリューションを必要とする障害では、すべてのプロセスの手動再起動も必要です。特定の障害タイプとリカバリ方法の詳細は、『Oracle Application Server管理者ガイド』を参照してください。
システム内で発生した障害のタイプによっては、オンライン・バックアップによりシステムをリストアする必要がある場合があります。オンライン・バックアップを次に示します。
リカバリのためにオンライン・バックアップおよびリストア・ソリューションを必要とする障害には、メタデータ・リポジトリ内のデータ障害、Oracle Application Serverコンポーネントのランタイム構成ファイルの削除や破損があります。このタイプのソリューションを必要とする障害では、1つ以上のプロセスを再起動することも必要です。特定の障害タイプとリカバリ方法の詳細は、『Oracle Application Server管理者ガイド』を参照してください。
Oracle Application Serverの障害時リカバリ・ソリューションは、ローカル高可用性ソリューションの上に構築されます。このソリューションには、Oracle Application Serverとプラットフォーム構成が相互にミラー化された同種の本番サイトとスタンバイ・サイトが必要です。これらの構成は、定期的に同期化して、同種であることを保持する必要があります。
Oracle Application Serverで実装できる各高可用性ソリューションの詳細は、『Oracle Application Server高可用性ガイド』を参照してください。各ソリューションの構成、運用および管理方法の説明も記載されています。
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