Oracle Application Server 概要 10gリリース2(10.1.2) B15619-02 |
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この章では、Oracle Application Serverの概要について説明します。この章の項目は次のとおりです。
インターネットは、企業が新しい市場を獲得し、社内のビジネス・プロセスを効率化するための大きなチャンスをもたらします。このチャンスは同時に新しい課題を生み出します。アプリケーションを迅速に配置し、膨大な数のユーザーに対応させる必要があるからです。
多くの場合、高度にスケーラブルなアプリケーションを迅速に配置するためには、ともに動作するように設計されていない多様な製品を統合させる必要があります。整理統合された業務アプリケーションのセットを手に入れる方法が他にない場合、企業は多大な資本、時間、労力を、初期段階だけでなく継続的に費やして、自社で構築した複雑なテクノロジやシステムを維持していかなければなりません。
E-Business用のWebサイトを構築する企業の多くは、アプリケーションの開発と配置に関連する様々な問題や課題を抱えています。
アプリケーション開発に関連する課題は山積みです。複雑なインターネット環境でアプリケーションを開発するには、数十にものぼるインタフェース、プログラミング言語およびプラットフォームが必要になります。このようなアプリケーションをサポートできるインフラストラクチャを構築するには、インターネット・アプリケーションの開発者側に立った包括的な知識が必要です。そのうえ、アプリケーションの開発、テストおよび配置には非常に長い時間がかかります。
今日のインターネット・アプリケーションには、満たすべき共通の要件があります。E-Businessの課題とは、このような要件にすべて対応したアプリケーションを作成することです。
図1-1に、統合型インターネット・アプリケーションの開発課題に関係する6つの主な要件を示します。6つとは、Java2 Platform, Enterprise Edition(J2EE)の要件、Webサービス、業務統合、ポータル、ワイヤレス、パーソナライズです。
E-Businessアプリケーション開発者のほとんどは、開発サイクルが短くなっているという事実に直面しており、その一方でより多くのプログラミング言語や複数プラットフォームを求める要求が増え続けています。この数年、開発者はプラットフォームに依存しないプログラミング言語であるJavaを、アプリケーション開発に使用するようになりました。しかし、独自のApplication Program Interface(API)を使用しているため、アプリケーションは現在でもベンダーに依存しています。業界標準に準拠して、ベンダー間の標準となるレベルを作成することは、ますます要求されている課題です。J2EEのプラットフォームとコンポーネントの仕様では、Webに基づく複数層のエンタープライズ・アプリケーションを開発するための標準プラットフォームを定義しています。J2EEを開発要件に取り入れることで、矛盾する業界標準の問題を解決できます。
E-Businessの発展に伴い、各企業は自社のWebサイトにますます依存して業務を進めるようになります。Webサービスがもたらす標準ベースのインフラストラクチャにより、企業は社内のビジネス・プロセス・サービスを提供することも、そのビジネス・プロセスをパートナのビジネス・プロセスと動的にリンクさせることもできます。Webサービスでは、XMLベースのメッセージやインターネット・ベースの製品を使用して、他のソフトウェア・アプリケーションと直接連動させることができます。
この数年の間に、ポータルが新しいインターネット・デスクトップとして出現し、ユーザーはWebブラウザを通して情報にアクセスしたり、異なるソースの情報を1つのエントリ・ポイントに集めることが可能になりました。また、ポータルはパーソナライズされたビューをサポートしているので、ユーザーやユーザー・グループは、個人の好みやニーズに合せてポータルのコンテンツや外観をカスタマイズできます。どのようなアプリケーションやWebサービスにもアクセスでき、セキュアで使いやすく、動的なポータルは、E-Businessに不可欠なインフラストラクチャの要素です。
オフィスの外で仕事をする人の数はますます増えています。ワイヤレス・アプリケーションにより、Web対応電話、PDA、ポケットベルなどのモバイル・デバイスを使用した迅速なアクセスが可能になります。ただし、ワイヤレス・アプリケーションでは、小型の画面、少ないデータ入力容量、ワイヤレス機器をサポートする標準が異なるなどの制限があります。
顧客は、Webサイトのナビゲーション、購入物、人口統計および評価データを通して、顧客自身や顧客の関心事項に関する貴重な情報を提供します。この情報が効果的に抽出されると、顧客にカスタマイズを提供でき、ビジネス上の意思決定ができます。
ほとんどの企業では、既存のアプリケーションやデータソースを新しいビジネス・プロセスに統合する必要があります。企業が成長するにしたがって、既存のアプリケーションやデータソースをパートナ、顧客およびサプライヤのものと統合させることが不可欠になります。このような企業では、アプリケーションを書きなおしたり、カスタマイズされた様々なプログラム・ロジックを構築せずに、完全な業務アプリケーション統合を行う必要があります。
いかなるWebサイトにおいても、成功の鍵は、サーバーがユーザーに適切なコンテンツをどれだけ迅速かつ確実に提供できるかにあります。サーバーのレスポンスに時間がかかりすぎたり、レスポンスを返すことができないと、ユーザーは別のサイトで取引を行ってしまいます。コンテンツとアプリケーションがセキュアでないと、機密の情報や情報技術資産が攻撃されやすくなります。配置されたアプリケーションがハードウェアを効率的に利用できないと、情報技術関連の予算が機器の購入に費やされて急速に底をついてしまいます。
アプリケーションの配置に関連する懸念事項には、可用性、スケーラビリティ、パフォーマンス、キャッシュ、システム管理、およびユーザー管理とセキュリティ管理などがあります。
システム全体の可用性は、正常に機能した時間のパーセンテージで測定します。E-Businessを成功へと導くためには、ダウンタイムをなくして100%機能させることが必要です。可用性を改善するために、企業では冗長コンポーネントを利用する場合もありますが、停止した主コンポーネントをバックアップ・コンポーネントがただちに引き継ぐことができなければ可用性は改善されません。
システムのスケーラビリティとは、ユーザーのリクエストが増加したときにどれだけ適切に対応できるかを表します。Webユーザーの数は、過去数年間に猛烈な勢いで増加しました。ハードウェア・リソースを増やしたときに、それに合せて拡張できる高品質のWebサイトを維持することはきわめて重要です。
Webサイトの設計や構築をやりなおさずに、Webサイトのパフォーマンスを向上させ、アプリケーションの速度を上げることは各企業に共通の目標です。パフォーマンスの一般的な要素には、複数のリクエストを同時に処理できる能力や、リソースの競合、操作の待機時間、レスポンス時間、サービス時間、スループット、その他待機時間、スケーラビリティなどに対する処理機能があります。
大容量のWebサイトの多くでは、数千人のユーザーを同時に処理しており、頻繁にコンテンツが変わる動的な環境で正確なデータを提供する必要があります。キャッシュは、Webサイトのインフラストラクチャとテクノロジが複雑になった結果もたらされる、コンピュータ処理上および経済上の負荷を軽減するための主要テクノロジの1つです。ただし、E-Businessモデルが必要とする動的でパーソナライズされたコンテンツをキャッシュに保存することは一般的に困難です。
アプリケーション・サーバーの管理者には、アプリケーションのプラットフォーム、配置したアプリケーション、および個々のアプリケーション・ユーザーの権限とアクセス権を監視および管理するための高度なツールが必要です。管理者は、アプリケーション・サーバーとそのコンポーネントの管理および監視を容易にする集中管理コンソールを利用することで、数多くのメリットを得られます。また、このコンソールを使用して、アプリケーションの配置、構成、およびセキュリティの管理を行うこともできます。
インターネットが成長を続けるなかで、ネットワークを通過する情報に対する危険性は急激に増加しています。そのため、セキュアなWebサイトを維持することはきわめて重要です。Webサイトの運営を開始したら、データベースと、データベースが置かれているサーバーを保護する必要があります。内部のデータベース・ユーザーを管理および保護し、E-Businessの顧客がデータベースにアクセスする際の機密性を保証しなければなりません。
Oracle Application Serverは、完全な統合E-BusinessプラットフォームであるOracleプラットフォームの一部です。Oracleプラットフォームは、次の製品で構成されています。
スケーラブルでパフォーマンスの高いE-Businessソリューションを配置できるようにするには、統合され、包括的で柔軟性があり、オープンなプラットフォームを利用できなければなりません。オラクル社では、ランタイム・プラットフォームとともに、開発、配置および管理用の統合ツール群を提供します。Oracleプラットフォームにより、インターネット上でビジネスを行うためのアプリケーションの作成と配置のプロセスが簡略化されます。
Oracle Application Serverは標準に完全対応したアプリケーション・サーバーであり、Webサイト、J2EEアプリケーション、Webサービスを実行するための包括的で完全に統合されたプラットフォームを提供します。ビジネス・プロセスを改良してE-Businessに移行する際に直面するあらゆる難題に対処します。
Oracle Application Serverは、J2EEプラットフォーム、XML、新しいWebサービスおよびグリッド標準を完全にサポートしています。Oracle Application Serverを使用して、企業ポータルを作成すると、顧客や取引パートナが簡単な方法で情報にアクセスできるようになります。企業ポータルはカスタマイズしたり、ネットワーク・ブラウザまたはワイヤレス・デバイスからアクセスできます。ビジネス・プロセスを再定義したり、既存のアプリケーションとデータソースを顧客やパートナのものと統合することもできます。リアルタイムでパーソナライズを行い、顧客にカスタマイズを提供したり、顧客のナビゲーション、購入物、評価および人口統計データの評価および関連付けができます。
Oracle Application Serverを利用すると、組込みWebキャッシュ、ロード・バランシング、クラスタリングなどの機能を使用して、高速でスケーラブルなインターネット・アプリケーションを配置することにより、Webサイトのインフラストラクチャを節約できます。
次の各項では、E-Business Webサイトに共通した開発および配置上の課題を克服するために、Oracle Application Serverによって提供されるソリューションについて説明します。このソリューションには、スケーラブルで可用性の高いインフラストラクチャに基づいて構築された、J2EEおよびインターネット・アプリケーション、ポータル、ワイヤレス、ビジネス・インテリジェンス、E-Businessの統合、キャッシュ、管理およびセキュリティが含まれます。
Oracle Application ServerはJ2EEフレームワークの上に構築されます。J2EEフレームワークでは、J2EE API仕様、XML、Webサービスをはじめとする最新の業界標準テクノロジとプログラミング言語がサポートされます。このような包括的で柔軟なフレームワークにより、サーブレット、JavaServer Pages、XML、PL/SQL Server Pages、SOAPなどの使い慣れたプログラミング言語とテクノロジを使用して、動的Webサイト、ポータル、トランザクション型アプリケーションなどを設計、開発およびデプロイできます。また、Oracle Application Serverでは、許可を受けたユーザーが任意のWebデバイスから、インターネットを介してビジネス機能を利用できるようにするための包括的なWebサービスも提供します。
Oracle Application Serverでは、膨大なプログラミングやメンテナンスが不要な、すぐに利用できるポータルを提供しています。Oracle Application Server Portalを使用することにより、セルフサービスの統合企業ポータルを構築、配置および運営管理することができます。Oracle Application Server Portalでは、セルフサービスによるコンテンツの管理と公開、ウィザードによる開発、拡張可能なフレームワークでのWebサービスの配置、公開、コンシュームなどを行えます。また、規模の小さい企業が短時間で簡単なポータルを構築できる、OracleAS Portalで構築可能なカスタム・アプリケーションであるOracle Instant Portalが含まれています。
Oracle Application Server Wirelessを使用すると、任意のデバイスにコンテンツを配信したり、任意のプロトコルを使用したり、任意のワイヤレス・ネットワークで動作することが可能になります。これにより、ワイヤレス・デバイス向けの開発および配置が容易になります。また、Oracle Application Server Wirelessには、電子メールやロケーションベース・サービスなどのワイヤレス・サービスもあります。これらのサービスにより、ワイヤレスに対応するアプリケーションやポータルの構築が容易になります。Oracle Application Serverにより、アプリケーション開発者は、基盤となるワイヤレス・インフラストラクチャへの依存から解放されます。Oracle Application Server Wirelessは、Oracle Application Server Containers for J2EE(OC4J)の上に構築されており、XMLおよびJ2EEでのオープン標準のサポートを利用して、パフォーマンスの高い、スケーラブルなワイヤレス・インフラストラクチャの構築を可能にします。
Oracle Application Server Business Intelligenceでは、パーソナライズを包括的に実行でき、またビジネス・インテリジェンス・サービスを提供します。Oracle Application Server Business Intelligenceの機能を使用すると、登録済ビジターと匿名ビジターの両方に、サイトの参照時、パーソナライズされたリコメンデーションを動的に提供できます。また、動的な非定型クエリー、レポート作成、および分析を標準のWebブラウザを使用して実行したり、スケーラブルでセキュアなプラットフォームで高品質で動的に生成されるレポートを公開できます。
Oracle Application Serverには、E-Businessアプリケーションの連携と統合を実現する強力な一連の機能があります。Oracle Application Serverを使用すると、スケーラビリティと管理のしやすさに重点を置いて、エンタープライズ・アプリケーション、取引パートナおよびWebサービスを統合したり、Oracle以外の様々なデータソースに対して問合せやトランザクションによる透過的なアクセスを実現します。また、ヒューマン・ワークフローとプロセス・ワークフローの自動化を実装でき、各種のアプリケーション・パッケージやレガシー・システムにもそのまま接続できます。
Oracle Application Serverの柔軟性の高い配置モデルにより、可用性とスケーラビリティの高いシステムを設計できます。Oracle Application Serverには、可用性とスケーラビリティを高める様々なオプションがあるほか、フォルト・トレランス、障害検出およびフェイルオーバーを実装するための機能も用意されています。また、Oracle Application Serverは、コールド・フェイルオーバー・クラスタやアクティブ・フェイルオーバー・クラスタなどの可用性の高いオプションもサポートしています。
Oracle Application Serverでは、静的および動的のどちらで生成されたWebコンテンツでもキャッシュに保存できるという独自の機能を備えたWebキャッシュ・ソリューションを提供しています。Oracle Application Server Web Cacheを利用すると、負荷の重いWebサイトのパフォーマンスとスケーラビリティが大幅に向上します。また、Web Cacheは、一貫性があり予測可能なレスポンスを確実に返すための多くの機能を提供しています。たとえば、ページ断片のキャッシュ保存、Edge Side Includes(ESI)およびEdge Side Includes for Java(JESI)サポート、圧縮、動的コンテンツの組立て、Webサーバーのロード・バランシング、Webキャッシュのクラスタリング、フェイルオーバーなどの機能があります。
Oracle Application Serverでは、Webサイト管理とアプリケーション・サーバー管理のあらゆる側面を簡略化するための一連の管理機能を提供しています。Oracle Application Serverの管理機能を使用すると、次のことが可能になります。
Oracle Application Server Identity Managementインフラストラクチャを使用すると、アプリケーションのセキュリティ・ライフ・サイクルを通してユーザーIDを管理できます。Oracle Application Serverには、認証、セキュリティ・サービス、認可およびユーザー・プロビジョニングを処理するコンポーネントが用意されており、インターネット・アプリケーションのセキュリティを保証できます。
表1-1に、各ソリューションに関連するOracle Application Serverのコンポーネントを示します。
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