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Oracle Application Server 高可用性ガイド
10g リリース2(10.1.2)
B15817-04
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OracleAS Infrastructureの高可用性: 概要

Oracle Application ServerのOracleAS Infrastructure部は、OracleAS Metadata RepositoryとOracle Identity Managementの2つの部分で構成されます。これらが連動することにより、Oracle Application Serverコンポーネントの一元化されたメタデータ、管理およびセキュリティ・サービスが提供されます。

可用性の高いOracleAS Infrastructureを作成するには、両方の部分(Oracle Identity ManagementとOracleAS Metadata Repository)の可用性を高める必要があります。それぞれの部分には固有の高可用性プランを作成できます。たとえば、Oracle Identity Managementコンポーネントを、すでに高可用性を実現するために構成されているOracleAS Metadata Repositoryデータベース(Real Application Clustersデータベースなど)に対して、アクティブ/アクティブ構成で実行することができます。OracleAS Infrastructureの高可用性トポロジについては、第9章「OracleAS Infrastructure: 高可用性トポロジ」を参照してください。

ここでは、OracleAS Infrastructureの高可用性の概要について説明し、後続の章でその詳細を説明します。

この章の内容は次のとおりです。

6.1 OracleAS Infrastructureサービスの高可用性

OracleAS Infrastructureは、次のサービスを提供します。

これらのサービスは、次のコア・コンポーネントの上部で実行されます。OracleAS Infrastructureの高可用性を保証するには、これらのコア・サービスがすべて使用可能であることが必要です。

これらのコア・コンポーネントは、Oracle Identity ManagementアプリケーションおよびOracle Managementアプリケーションによって使用されます。次の表に、これらのコア・コンポーネントがOracle Identity Managementの各アプリケーションでどのように使用されるかを示します。

表6-1    Oracle Identity Managementアプリケーション 
Oracle Identity Managementアプリケーション  説明 

Oracle Internet Directory 

Oracle Internet Directoryは、OracleAS Metadata Repositoryをデータ・ストアとして使用します。Oracle Internet Directoryには、Oracle Internet Directoryプロセスが実行されていることをチェックする監視プロセス(oidmon)が含まれます。

Oracle Internet Directoryの高可用性を実現するには、OracleAS Metadata Repositoryの高可用性も実現する必要があります。 

Oracle Delegated Administration Services

OracleAS Single Sign-On 

Oracle Delegated Administration ServicesおよびOracleAS Single Sign-Onは、OC4Jアプリケーションです。これらはOC4J_SECURITYと呼ばれるOC4Jインスタンスで実行されます。

Oracle Delegated Administration ServicesおよびOracleAS Single Sign-Onの高可用性を実現するには、OC4J_SECURITYインスタンスの高可用性も実現する必要があります。 

Oracle Directory Integration and Provisioning 

Oracle Directory Integration and Provisioningは、一連のサービスとOracle Internet Directoryに組み込まれたインタフェースで構成されます。

Oracle Directory Integration and Provisioningの高可用性を実現するには、Oracle Internet Directoryの高可用性も実現する必要があります。 

管理機能として、Oracle Application ServerにはDistributed Configuration Management(DCM)が含まれています。このDCMにもOracleAS Metadata Repositoryが使用されます。

OracleAS Infrastructureが必須のサービスをすべて提供するためには、前述のコンポーネントがすべて使用可能である必要があります。UNIXプラットフォームでは、これらのコンポーネントに関連付けられているプロセスを起動してアクティブにする必要があります。Windowsでは、これらのプロセスの一部がサービスとして実行されます。

6.1.1 プロセス管理

データベース、データベースのリスナーおよびApplication Server Controlコンソールを除くOracleAS Infrastructureのプロセスは、Oracle Process Manager and Notification Server(OPMN)によって起動、管理および再起動されます。つまり、OPMN管理対象プロセスで発生した障害は、OPMNによって処理されます。OPMNは、インストール時に自動的にインストールおよび構成されます。

ただし、OPMNでは、データベース・プロセスやデータベース・リスナーの障害は処理されません。さらに、OPMNプロセスで発生した障害が検出されず、適切なリカバリ手順が実行されない場合、OracleAS Infrastructureは非リジリエンス・モードのままとなります。プロセスの管理および監視については、第2.2.1項「プロセス障害の検出と自動再起動」を参照してください。

6.1.2 ソフトウェアおよびハードウェア障害からの保護

システム・パニックやノードのクラッシュなど、OPMNでリカバリできないローカルなハードウェアおよびソフトウェア障害を防止するには、高可用性トポロジにOracleAS Infrastructureをインストールし、実行する必要があります。

高可用性トポロジはいずれも、すべてのOracleAS Infrastructureコンポーネントのあらゆるタイプのソフトウェア障害を検出し、リカバリできる必要があります。さらに、OracleAS Infrastructureを実行しているホストも、あらゆるタイプのハードウェア障害を検出し、リカバリできるようにする必要があります。第6.2項「イントラサイトの高可用性トポロジ」を参照してください。

しかし、これらのトポロジでは、データの破損や損失をもたらすサイト障害、メディア障害または地域的な災害からOracleAS Infrastructureを保護することはできません。このような障害から保護するために、Oracle Application Serverは、サイトレベルのアクティブ/パッシブ型の障害時リカバリ・トポロジとしてOracleAS Disaster Recoveryを提供します。詳細は、第IV部「障害時リカバリ」を参照してください。

メディア障害が発生した場合、またはメタデータが破損した場合は、OracleAS Backup and Recovery Toolを使用して、OracleAS Metadata Repositoryデータベースのデータやファイル・システム内のファイルを含め、Oracle Application Serverのメタデータをバックアップし、リカバリすることができます。第6.3項「OracleAS Infrastructureのバックアップとリカバリ」を参照してください。

6.2 イントラサイトの高可用性トポロジ

OracleAS Infrastructureのイントラサイトの高可用性トポロジは、次のグループに分けることができます。

表6-2に、これらのトポロジ・タイプの概要を示します。

表6-2    イントラサイトの高可用性トポロジの概要 
トポロジ  説明 

アクティブ/アクティブ 

アクティブ/アクティブ型トポロジでは、OracleAS Infrastructureサービスの複数のアクティブ・インスタンスを複数のノードで実行します。これらのインスタンスはすべて、リクエストを同時に処理します。1つのインスタンスまたはノードに障害が発生すると、残りのアクティブ・インスタンスが、障害が発生したインスタンスのワークロードを引き継ぎます。

アクティブ/アクティブ・トポロジでは、外部ロード・バランサを使用して、アクティブ・インスタンスにリクエストを分散します。

アクティブ/アクティブ・トポロジには、次のものがあります。

 

アクティブ/パッシブ 

アクティブ/パッシブ型トポロジでは2つのノードを使用しますが、常に1つのノードのみがアクティブになります。アクティブ・ノードまたはインスタンスに障害が発生すると、パッシブ・ノードがアクティブになり、障害が発生したインスタンスのワークロード全体を引き継ぎます。

アクティブ・ノードとパッシブ・ノードは、Oracle Application Serverがインストールされるストレージ・デバイスを共有します。また、これらのノードには仮想ホスト名が使用され、その仮想ホスト名を通じてアクティブ・ノードへのアクセスが行われます。アクティブ・ノードに障害が発生すると、仮想ホスト名によってもう1つのノードが指定され、今度はそのノードがアクティブ・ノードになります。

アクティブ/パッシブ・トポロジには、次のものがあります。

 

それぞれのトポロジでは、Oracle Identity Managementコンポーネントを同じノードに配置することも、OracleAS Single Sign-OnおよびOracle Delegated Administration ServicesコンポーネントをOracle Internet Directoryのノードとは異なる個別のノードに分散することもできます。

Oracle Identity Managementを中心としたOracleAS Cluster(Identity Management)およびOracleAS Cold Failover Cluster(Identity Management)では、OracleAS Metadata Repositoryをそれ自身または既存のコールド・フェイルオーバー・クラスタ・データベースにインストールするか、あるいは既存のReal Application Clustersデータベースにインストールします。

6.2.1 アクティブ/アクティブ型の高可用性トポロジ

アクティブ/アクティブ・トポロジでは、Oracle Application Serverインスタンスを実行しているすべてのノードがアクティブであり、同じワークロードを共有します。Oracle Identity Managementのアクティブ/アクティブ・トポロジは、OracleAS Cluster(Identity Management)トポロジとも呼ばれます。

OracleAS Cluster(Identity Management)トポロジには、非分散型と分散型の2種類があります。どちらの場合も、Oracle Identity Managementコンポーネントを、ハードウェア・クラスタの一部であるマシンにインストールする必要はありません。表6-3で、非分散型および分散型のOracleAS Cluster(Identity Management)トポロジについて説明します。

表6-3    OracleAS Cluster(Identity Management)トポロジ(アクティブ/アクティブ) 
トポロジ  説明 

OracleAS Cluster(Identity Management) トポロジ 

非分散型トポロジでは、すべてのOracle Identity Managementコンポーネントが複数のホストのそれぞれにインストールされます。これらのホストは、リクエストを送る外部ロード・バランサの背後に配置されます。ホストに障害が発生した場合、ロード・バランサによって残りのホストにリクエストが転送されます。 

分散型OracleAS Cluster(Identity Management)トポロジ 

分散型トポロジでは、OracleAS Single Sign-OnおよびOracle Delegated Administration Servicesコンポーネントが、Oracle Internet DirectoryおよびOracle Directory Integration and Provisioningとは異なるホストに配置されます。これらのホストの前面にはロード・バランサがあり、これによりアクティブ/アクティブ型の可用性が実現します。OracleAS Single Sign-OnおよびOracle Delegated Administration Servicesコンポーネントを分離することで、他のOracle Identity Managementコンポーネントをファイアウォールの内側で保護できます。 

OracleAS Cluster(Identity Management)トポロジでのOracleAS Metadata Repositoryの高可用性オプション

どちらのOracleAS Cluster(Identity Management)トポロジの場合も、すべてのノードのOracle Identity Managementコンポーネントは同じディレクトリ・ストア・データベースに接続されます。このデータベースの高可用性は、OracleAS Metadata Repositoryでも使用され、OracleAS Metadata Repository Creation Assistantを使用してディレクトリ・ストアおよびメタデータ・リポジトリを既存のデータベースにインストールすることによって実現されます。このデータベースは次の高可用性構成のいずれかにすでにインストールされています。

アクティブ/アクティブ・トポロジの詳細は、次の項を参照してください。

6.2.2 アクティブ/パッシブ型の高可用性トポロジ

アクティブ/パッシブ・トポロジでは、ハードウェア・クラスタ上のコールド・フェイルオーバー・クラスタ構成を使用します。表6-4で、これらのトポロジについて説明します。これらのトポロジは、OracleAS Infrastructureコンポーネントが設定および分散される方法に基づいて変化します。

表6-4    OracleAS Cold Failover Clusterトポロジ(アクティブ/パッシブ) 
トポロジ  説明 

OracleAS Cold Failover Cluster(Infrastructure) トポロジ 

ハードウェア・クラスタに2つのノードを持つ、アクティブ/パッシブ構成です。2つのノードは共有記憶域に接続されています。

OracleAS Metadata Repository およびOracle Identity Managementは、共有記憶域にある同じOracleホームにインストールされます。OracleAS Metadata Repositoryのための新規データベースがインストールされます。

OracleAS Metadata RepositoryおよびOracle Identity Managementは、一方のノードでアクティブになり、もう一方のノードでパッシブになります。このトポロジは、最もインストールが容易で、すぐに構成できます。 

分散型OracleAS Cold Failover Cluster(Infrastructure)トポロジ 

OracleAS Single Sign-OnおよびOracle Delegated Administration Servicesは、Oracle Internet DirectoryおよびOracle Directory Integration and Provisioningとは異なるマシンにインストールされます。

OracleAS Single Sign-OnおよびOracle Delegated Administration Servicesは、外部ロード・バランサによってロード・バランシングされる複数のホストにインストールされます。OracleAS Single Sign-OnおよびOracle Delegated Administration Servicesは、アクティブ/アクティブです。

ただし、OracleAS Metadata RepositoryOracle Internet DirectoryおよびOracle Directory Integration and Provisioningは、OracleAS Cold Failover Cluster内にインストールされます。OracleAS Metadata Repositoryのための新規データベースがインストールされます。これらのコンポーネントは、アクティブ/パッシブ・モードで実行されます。 

OracleAS Cold Failover Cluster(Identity Management) トポロジ 

Oracle Identity Management コンポーネントは、ハードウェア・クラスタ内にアクティブ/パッシブ・モードでインストールされます。

OracleAS Metadata Repositoryは、個別にインストールされます。OracleAS Metadata Repository Creation Assistantを使用して、既存の高可用性データベースにインストールできます。

Oracle Identity ManagementはOracleAS Metadata Repositoryとは異なるOracleホームを持ちます。Oracle Identity Managementのフェイルオーバーは、OracleAS Metadata Repositoryとは無関係に実行され、その逆も同様です。 

分散型OracleAS Cold Failover Cluster(Identity Management)トポロジ 

OracleAS Metadata Repositoryは、OracleAS Metadata Repository Creation Assistantを使用して、既存のデータベースにインストールされます。このデータベースでは、コールド・フェイルオーバー・クラスタ、Real Application Clustersまたは他のデータベース動作を保証する構成を使用して高可用性を実現できます。

OracleAS Single Sign-OnおよびOracle Delegated Administration Servicesは、他のOracle Identity Managementコンポーネントとは異なるホストに配置されます。これらはOracleAS中間層ホストにインストールできます。また、前面にロード・バランサがあるため、アクティブ/アクティブの可用性を実現できます。

Oracle Internet DirectoryおよびOracle Directory Integration and Provisioningは、アクティブ/パッシブ構成の2つのノードを持つコールド・フェイルオーバー・ハードウェア・クラスタにインストールされます。

この構成は、OracleAS Single Sign-OnおよびOracle Delegated Administration ServicesがOracle Internet DirectoryおよびOracle Directory Integration and Provisioningと異なるホストにインストールされるという点で、OracleAS Cold Failover Cluster(Identity Management) トポロジとは異なります。この分散により、Oracle Internet DirectoryおよびOracle Directory Integration and Provisioningをファイアウォールの内側で実行することができます。

このトポロジは、分散型OracleAS Cold Failover Cluster(Infrastructure)トポロジと類似しています。違いは、Oracle Internet DirectoryおよびOracleAS Metadata Repositoryがインストールされたハードウェア・クラスタに、それぞれが異なるOracleホームを持っているという点です。

OracleAS Single Sign-OnおよびOracle Delegated Administration Servicesはアクティブ/アクティブで、Oracle Internet Directoryはアクティブ/パッシブであることに注意してください。OracleAS Metadata Repositoryの可用性は、データベースに使用する高可用性の構成に依存します。 

OracleAS Cold Failover ClusterトポロジでのOracleAS Metadata Repositoryの高可用性オプション

OracleAS Cold Failover Clusterトポロジでは、OracleAS Metadata Repositoryの高可用性オプションとして、次のものがあります。

OracleAS Cold Failover Cluster(Infrastructure)および分散型OracleAS Cold Failover Cluster(Infrastructure)では、OracleAS Metadata Repository用に新規データベースがインストールされます。OracleAS Metadata Repositoryはコールド・フェイルオーバー・クラスタ・データベースに配置されます。

OracleAS Cold Failover Cluster(Identity Management)および分散型OracleAS Cold Failover Cluster(Identity Management)では、次のような既存の高可用性データベースにOracleAS Metadata Repositoryをインストールします。

6.3 OracleAS Infrastructureのバックアップとリカバリ

この項は、OracleAS Infrastructureのバックアップおよびリカバリに関する考慮事項で構成されています。この項の内容は次のとおりです。

OracleAS Infrastructureのバックアップおよびリカバリの詳細手順は、『Oracle Application Server管理者ガイド』を参照してください。

6.3.1 OracleAS Cold Failover Cluster (Infrastructure)

OracleAS Cold Failover Cluster(Infrastructure)のバックアップおよびリカバリ操作を実行するときは、次の点に注意してください。

メタデータ・リポジトリ・データベースのコールド・バックアップまたはリストアの前に、OracleAS Backup and Recovery Toolはまずデータベースを停止します。WindowsのOracleAS Cold Failover Cluster環境では、Oracle Fail Safe Managerはデータベース・ポーリングを実行し、データベースが停止している場合はこれを再起動します。つまり、1次(アクティブ)ノードでOracleAS Backup and Recovery Toolを使用して「backup_cold」または「restore_repos」を実行する前は必ず、Oracle Fail Safe Managerのデータベース・ポーリングを無効化し、バックアップまたはリストア操作の後で再度有効化する必要があります。

6.3.2 Oracle Identity Management

OracleAS Cluster(Identity Management)またはOracleAS Cold Failover Cluster(Identity Management)環境(あるいはその分散型のバリアント)では、各Oracle Identity Managementインストールを個別にバックアップおよびリストアする必要があります。各Oracle Identity Managementインストールで実行されたバックアップは、障害が発生した場合、それぞれのインスタンスでのみリストアできます。

DCMリポジトリがOracleAS Metadata Repositoryデータベースにある場合、OracleAS Backup and Recovery Toolを使用するには、バックアップおよびリストア操作中に少なくとも1つのOracle Internet Directoryプロセスを実行している必要があります。したがって、すべてのOracle Identity Managementノードで障害が発生した場合は、最初に1つのOracle Identity Managementノードでリストア操作を行い、そのノードのOracle Internet Directoryプロセスを起動する必要があります。その後で他のOracle Identity Managementノードをリストアします。

Oracle Identity Managementノードが完全に故障してしまい、新しいノードにリストアする必要がある場合は、『Oracle Application Server管理者ガイド』の「新しいホストへのIdentity Managementインスタンスのリストア」の手順を参照してください。


注意

DCMリポジトリがデータベースにあるかどうかを確認するには、dcmctl whichfarmコマンドを実行し、出力で「Repository Type: Database」または「Repository Type: Database (host)」の行をチェックします。 



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