項ごとに様々なトピックを記載しています。各項の内容は、次のとおりです。
この章では、ワイヤレス開発パス(図2-1を参照)の高度な手順を紹介し、アプリケーションの作成に使用する複数のツールについて説明します。アプリケーションの作成には様々な方法があります。この章は、PCベースのアプリケーションの現在の作成方法を、ワイヤレス固有の概念の追加によって補完することを目的としています。アプリケーション作成の最初の手順は設計です。設計フェーズでは、モバイル対応の対象が、ビジネス・プロセスなのか、生産性ツールなのか、またはエンタテインメント・アプリケーションなのかを見極めます。
アプリケーション設計プロセスへの最も効率的なアプローチ方法は、そのプロセスを4つの手順に分けることです。最初に、アプリケーションまたはビジネス・プロセスをモバイルにするためのビジネス・ケースを作成します。これには、モバイル・ソリューションの具体的な利点の判断が含まれます。モバイル・アプリケーションのビジネス・ケースに関する詳細は、OTNのhttp://www.oracle.com/technology/tech/wireless/index.htmlのMobile Centerを参照してください。
2番目に、使用状況、必要なビジネス・フローおよび最適なアクセス・チャネル(モバイル・ブラウザ、音声アクセス、メッセージまたはネットワーク・アクセスなしのアプリケーション(オフライン))を判別し、アプリケーションの範囲を決定します。3番目の手順では、そのチャネルを使用可能にするための実際の開発モデル(XHTML/J2EEやJ2ME)を選択します。4番目の重要な手順は、アプリケーションのデプロイに関する考慮です。デプロイによって、アプリケーションをエンド・ユーザーに配信するプロセスとそのアプリケーションのライフ・サイクルの管理に使用する方法がカプセル化されます。このプロセスを通して、開発者は次のことを確認できます。
適切なビジネス・プロセスのモバイル化
適切なアクセス・チャネルを使用したビジネス・プロセスの拡張
適切な量の機能の開発
適切なデプロイ・モデルの決定
ソリューションに具体的な投資利益(ROI)があることの確認
Oracle Application Server Wirelessには、ロケーション・ベース・サービス、メッセージ・サービスおよびパーソナライズ・サービスなど、使用中のアプリケーションを大幅に拡張するWebサービスが用意されています。たとえば、社内のWebサービスをOracle Application Server WirelessのメッセージWebサービスと結合すると、在庫レベルが危機的な状態まで低下したときに管理者に自動的に警告できます。Oracle Application Server WirelessのメッセージWebサービスは、アドレス、メッセージ・テキストおよび配信チャネル(音声、FAX、SMSまたは電子メール)を入力として受け入れます。次に、Webサービスはメッセージ・コンテンツを取得し、それぞれのアドレス、SMS、電子メールまたは電話番号(テキスト音声合成を使用)に送信します。開発者の作業は、メッセージ送信先の基礎となるインフラストラクチャやビジネス上の関係を考慮する必要がないため、大幅に簡略化されます。メッセージWebサービスの詳細は、第10章「メッセージ・アプリケーションの作成」またはOTNのMobile Centerを参照してください。
ワイヤレス・アプリケーションを作成するとき、すでに存在するビジネス・ロジックを複製する必要はありません。様々なバックエンド・システムとアプリケーションをWebサービスとして公開し、Oracle Application Server Wirelessを使用して任意のデバイスに配信できます。たとえば、PC専用の従来型フィールド・サービス・システムを再利用する場合があります。既存のフィールド・サービス・システムを使用し、XHTMLまたはJ2MEを使用してモバイル・ビューを作成するだけで再利用できます。
Oracle Application Server Wirelessには、J2EE/XHTMLモデルまたはJ2MEモデルのいずれを使用しているかによって、アプリケーションの作成とテストに使用できるツールが2つ用意されています。J2EE/XHTML開発モデルを使用すると、サーバー側のリアルタイムのワイヤレス・アプリケーションとボイス・アプリケーションを作成できます。これには、メッセージ、音声インタフェース、PDAおよび携帯電話のブラウザなどのチャネルが含まれます。これらすべてのチャネル用に、1つのオープンな規格の開発モデルでアプリケーションを作成できます。J2MEは、制限付きまたは断続的なネットワーク接続性を伴う小型画面付きのデバイスに最適です。J2MEを使用すると、ビジネス・ロジックおよびUIロジックはデバイス上で処理でき、CPUに負荷のかかる処理についてはサーバーに対してWebサービスをコールできます。このコールは、ネットワーク接続が使用不可の場合はバッファに格納されます。
Oracle Application Server Wirelessツールを使用すると、デバイスのメーカー(NokiaやOpenwaveなど)が提供するモバイル・デバイス・シミュレータを利用できます。デバイス・シミュレータを使用すると、開発用のPCまたはラップトップを使用して、電話上にアプリケーションを表示できます。パーソナル・コンピュータでは、標準的なWebブラウザを使用してアプリケーションをテストできますが、テストには様々なフォーム要素を持つ各種デバイス・エミュレータを使用することをお薦めします。これにより、様々なデバイスのフォーム要素のレンダリングに関連するOracle Application Server WirelessのXMLの構成メンバーがわかります。Mobile Centerには、最も一般的なデバイス用のシミュレータの一部がリストされています。
JDeveloper Wireless Extension(JWE)を使用すると、XHTMLまたはJ2MEのアプリケーションをJDeveloperでコード作成、デバッグおよびテストできます。開発サイクル全体にわたり、次のすべての段階で、JWEによるサポートが提供されます。
ウィザードとテンプレートを使用したアプリケーションの作成
GUIベースのツールを使用したアプリケーションの編集
統合されたエミュレータまたは実際のデバイス上でのアプリケーションのテスト
高度なデバッグ・システムとログ・ファイルを使用したアプリケーションのデバッグ
直感的なユーザー・インタフェースを使用したアプリケーションのデプロイ
Wireless Developer Kit(WDK)は、Oracle Application Server Wireless用のフットプリントの小さい開発環境です。WDKを使用すると、Oracle Application Server Wireless用のワイヤレス・アプリケーションの開発に、すべての開発IDEとデバイス・シミュレータを使用できます。WDKには、XHTMLとJ2MEのサンプル、デバイス検出、エラー・ロギングおよびWebサービスが付属しています。開発者は、開発用のPCまたはラップトップでOracle Application Server Wirelessの完全インストールをシミュレートできます。WDKは、http://www.oracle.com/technology/tech/wireless/index.htmlのMobile Centerからも入手できます。
アプリケーションは、デプロイする前に実際のデバイスでテストする必要があります。JWEまたはWDKを使用して作成したアプリケーションをターゲット・デバイスのシミュレータでテストすると、実際のデバイスでのテストが可能な状態になります。
Oracle Application Server WirelessにはWebベースのツールが複数用意されており、デプロイするアプリケーションを登録し、デプロイしたアプリケーションを管理できます。アプリケーション登録用の2つのツールは、サービス・マネージャとMobile Studioです。
Mobile Studioは、アプリケーションを実際のデバイスでテストするための開発者用のテスト環境です。Mobile StudioはOracle Application Server Wirelessとともにインストールされます。また、OTNのhttp://www.oracle.com/technology/tech/wireless/index.htmlのMobile Centerで入手可能なホスティング・バージョンもあります。アプリケーションをMobile Studioに登録すると、実際のモバイル・デバイスでアプリケーションを確認できます。また、ある電話番号に電話をかけ、音声を使用してアクセスしたり、SMSアプリケーションの場合は、SMSデバイス上でアプリケーションをテストすることもできます。
サービス・マネージャを使用すると、XHTMLまたはJ2MEアプリケーションを登録し、必要なユーザーにアクセス権限を付与できます。サービス・マネージャは、アプリケーションを本番環境にデプロイするために使用されます。サービス・マネージャを使用するには、Oracle Application Server Wirelessをインストールする必要があります。
注意: Oracle Application Server Controlコンソールからテスト済のJ2EEアプリケーションをデプロイする方法は、『Oracle Application Server Containers for J2EEユーザーズ・ガイド』の第2章「構成およびデプロイ」を参照してください。 |