Oracle JRockit JDK へのアプリケーションの移行

この節では、別の JDK で開発された Java アプリケーションを、実行時の最適なパフォーマンスを損なうことなく Oracle JRockit JDK に移行する方法について説明します。この節の内容は以下のとおりです。

アプリケーションの移行について

アプリケーションを BEA JRockit JVM に移行するプロセスは比較的簡単です。環境を若干変更して、簡単なコーディングのガイドラインに従うだけで済みます。この節では、その簡単なプロセスを正常に完了するための手順とヒントを示します。利点や、移行中に発生する可能性のある問題についても説明します。JRockit JDK で実行するときにアプリケーションが正常に動作するための、J2SE コーディングのベストプラクティスも紹介します。

移行する理由

JRockit JDK は Oracle WebLogic Server に付属しているデフォルトの JDK です。現在、Java アプリケーションの開発に使用できる他の JDK も市販されていますが、Oracle では、Oracle の製品として JRockit JDK を使用することをお勧めします。

移行に関する制限

移行は、JRockit JDK を含む Oracle WebLogic Server がサポートされているすべてのプラットフォームで実行できます。サポートされるプラットフォームのリストについては、以下を参照してください。

移行のサポート

アプリケーションを JRockit JDK に移行するときに問題が発生したりバグを見つけたりした場合は、support@bea.com まで電子メールでご連絡ください。問題に関する以下のような情報をできる限りご提供ください。

ハードウェア
オペレーティングシステムとそのバージョン
移行するプログラム
スタックダンプ (存在する場合)
エラーを再現する小さなサンプルコード
*.dump および *.mdmp/core プロセスメモリダンプファイルのコピー (メモリダンプは Windows では *.mdmp ファイルに格納され、Linux および Solaris では core または core.* ファイルに格納される)

移行手順

この節では、Sun Microsystems の JDK など、サードパーティ JDK から JRockit JVM に移行する際に必要な、環境および実装の基本的な変更点について説明します。内容は以下のとおりです。

環境の変更

サードパーティ JDK から JRockit JVM に移行するには、ファイルを以下のように変更する必要があります。

<WEBLOGIC_HOME>/common/commEnv.cmd (または .sh) の JAVA_HOME 環境変数を適切なパスに設定する。
<WEBLOGIC_HOME>/common/commEnv.cmd (または .sh) の JAVA_VENDOR 環境変数を BEA に設定する。
起動スクリプトを使用する場合は、起動コマンドラインから、Sun や他の JVM プロバイダに固有のオプション (-XX:NewSize など) を削除する。可能であれば、これらのオプションを Oracle JRockit JVM に固有のオプション (-Xns など) に置き換えます。変更する必要のある他のフラグは MEM_ARGS と JAVA_VM です。

(JRockit JVM でサポートされているコマンドラインオプションの詳細については、リファレンスマニュアルを参照してください)。

JRockit JDK では、config.xml のデフォルトのコンパイラ設定を、javac コンパイラを指すように変更します。

その他のヒント

アプリケーションを JRockit JDK に正常に移行するためのその他のコーディングプラクティスについては、「Java アプリケーションの開発」を参照してください。

アプリケーションに合わせた JRockit JVM のチューニング

アプリケーションを JRockit JDK に移行したら、最適なパフォーマンスを求めて JVM をチューニングすることができます。たとえば、別の起動ヒープサイズを指定したり、カスタムのガベージコレクションパラメータを設定したりできます。JRockit JVM のチューニングに関する詳細については、「プロファイリングおよびパフォーマンスチューニング」を参照してください。

非標準のオプション (-X で始まるオプション) は、起動時に JVM をチューニングするための重要なツールです。これらのオプションを使用して、さまざまな Java アプリケーションのニーズに適合するように JRockit JVM の動作を変更します。

どの JVM でも非標準のオプションを使用しますが、オプション名は JVM 同士で異なる場合があります。たとえば、JRockit JVM では、世代別コンカレントおよび世代別パラレルガベージコレクタで、ナーサリを設定するために非標準の -Xns オプションを使用しますが、Sun の HotSpot JVM では、この値を設定するために非標準の -XX:NewSize オプションを使用します。

アプリケーションを JRockit JDK に移行する場合は、用意されている非標準のオプションについて理解しておくことをお勧めします。詳細については、リファレンスマニュアルを参照してください。

また、非標準のオプションはいつでも変更される可能性があることに注意してください。

アプリケーションのテスト

アプリケーションをプロダクション環境に置く前に、必ず JRockit JVM 上でアプリケーションをテストしてください。Sun JVM (HotSpot) で開発したアプリケーションは、プロダクション環境に置く前に JRockit JVM 上でテストする必要があります。

テストする理由

テスト方法

JRockit JVM でアプリケーションをテストするには、次の手順に従います。

Sun JDK と一緒に提供したツールのレプリカ

Sun JDK に通常備わっている以下の J2SE ツールは、JRockit JDK には付属しません。

JRockit JDK では、Sun ツールの大部分より同等であるか、または良いかを内部のツールを提供します。コードリスト 5-1 には、Sun ツールと、それに対応する JRockit JDK の一覧を示します。ツールの中には、jrcmd 機能を必要とするものがあります。詳細については、「診断コマンドの実行」を参照してください。

表 5-1 JRockit JDK/Sun のツールの同等物
Sun のツール	JRockit JDK に同梱	JRockit JDK 同等物
`jinfo`	省略可能	`jrcmd <pid> print_properties` `jrcmd <pid> command_line`
`jhat`	省略可能	JRockit Memory Leak Detector (「JRockit Memory Leak Detector」を参照) および JRockit Runtime Analyzer (「JRockit Runtime Analyzer」を参照)
`jmap`	省略可能	JRockit Memory Leak Detector (「JRockit Memory Leak Detector」を参照) `jrcmd <pid> print_object_summary` `jrcmd <pid> verbose_referents` `jrcmd <pid> heap_diagnostics`
`jsadebugd`	省略可能	なし
`jstack`	省略可能	`jrcmd <pid> print_threads`
`jps`	必須	`jrcmd`
`jstat`	必須	同等物なし。`jstat` は JRockit JVM と動作します。JRockit Runtime Analyzer (「JRockit Runtime Analyzer」を参照) および Oracle JRockit Mission Control 内の JRockit Management Console (「JRockit Management Console」を参照) はこのためにしかしながら、より良いツールです。
`jstatd`	必須	同等物なし。`jstatd` は JRockit JVM と動作します。
`jconsole`	必須	`jconsole` は JRockit JVM と動作します。JRockit Mission Control の JRockit Management Console (「JRockit Management Console」を参照) は JRockit JVM をモニタするためのしかしながら、より良いツールです。
`jrunscript`	必須	同等物なし。`jrunscript` は JRockit JVM と動作します。

JRockit JVM と Sun の間のコマンドラインオプションの互換性

この節では、JRockit JVM の実行時および Sun Hotspot JVM の実行時に利用できるコマンドラインオプションの互換性について説明します。オプションの中には、名前だけが同じもの、機能だけが同じもの、および名前と機能の両方が同じものがあります。

表 5-2 は、Sun Hotspot JVM と JRockit JVM で名前が同じであるにもかかわらず、機能が異なるオプションを示しています。

表 5-2 名前が同じで機能が異なるオプション
オプション名	Hotspot の機能	JRockit JVM の機能
-`Xms`	ヒープの初期サイズを設定する。	ヒープの初期サイズおよび最小サイズを設定する。詳細については、「`-Xms`」を参照。

表 5-3 は、Sun Hotspot と JRockit JVM で同じまたは類似の機能を持つ JVM にもかかわらず、名前が異なるオプションを示しています。

表 5-3 機能が同じまたは類似で名前が異なるオプション
Hotspot のオプション名	JRockit JVM のオプション名	機能
`-XX:+AggressiveHeap`	`-XXaggressive:memory`	大量のメモリを要求する作業負荷に合わせてメモリシステムをコンフィグレーションし、大量のメモリリソースを有効に使用して高いスループットを確実に実現することが可能な予想値を設定する。JRockit JVM は、ラージページが使用可能な場合はラージページを使用する。
`-verbose:gc`	`-Xverbose:memory`	メモリシステムに関するログ情報を出力する。
`-Xmn、-XXNewSize、-XXMaxNewSize`	`-Xns`	若い世代のサイズを設定する。
`-XX:+UseConcMarkSweepGC`	`-Xgc:singlecon`	コンカレント方式を使用するようにガベージコレクタを設定する。
`-XX:+UseParallelGC`	`-Xgc:parallel`	パラレル方式を使用するようにガベージコレクタを設定する。

表 5-4 は、Oracle JRockit JVM でのみ利用できるオプションを示しています。

表 5-4 JRockit JVM でのみ利用できるオプション
オプション名	機能
`-XgcPrio`	休止時間の均等化とスループットの最大化のどちらを優先するかを指定する。
`-XpauseTarget`	アプリケーションの適切な休止時間を指定する。

移行に関するヒントの提出

この節で説明した移行に関するヒントは、今後発展していくものです。JRockit JDK へ正常に移行するための方法は、移行するアプリケーションや使用されている VM によって異なることがよくあります。Oracle では、Oracle JRockit JDK へのアプリケーションの移行に関するユーザの経験に基づいた提案を歓迎します。Oracle JRockit のフォーラム (dev2dev) に移行のアイデアやコメントをお気軽にお寄せください。

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