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Oracle Database 管理者リファレンス
10g リリース2(10.2) for UNIX Systems

B19278-06
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B HP-UXシステムでのOracle Databaseの管理

この付録では、HP-UXシステムでOracle Databaseを管理する方法について説明します。次の項目について説明します。

B.1 Oracleインスタンス用のHP-UX共有メモリー・セグメント

Oracle Databaseは、インスタンスの起動時に、Oracle共有グローバル領域(SGA)の作成用に割り当てられた共有メモリーをHP-UX shmmaxカーネル・パラメータの値で除算して、メモリー・セグメントを作成します。たとえば、1つのOracleインスタンスに割り当てられた共有メモリーが64GBで、shmmaxパラメータの値が1GBの場合、Oracle Databaseはそのインスタンスに対して64個の共有メモリー・セグメントを作成します。

1つのOracleインスタンスに対して複数の共有メモリー・セグメントが作成されると、パフォーマンスが低下する可能性があります。これは、Oracle Databaseでインスタンスが作成されるときに、各共有メモリー・セグメントが一意のプロテクション・キーを受け取るためです。使用できるプロテクション・キーの数は、次の表に示すように、システム・アーキテクチャによって異なります。

アーキテクチャ  プロテクション・キーの数 

PA-RISC 

Itanium 

14 

Oracleインスタンスが作成する共有メモリー・セグメントがプロテクション・キーの数より多い場合、HP-UXオペレーティング・システムは、プロテクション・キー・フォルトを表示します。

shmmaxパラメータの値は、システムで使用できる物理メモリーの量に設定することをお薦めします。この設定によって、1つのOracleインスタンスの共有メモリー全体が1つの共有メモリー・セグメントに割り当てられ、インスタンスに必要なプロテクション・キーが1つで済みます。

システムのアクティブな共有メモリー・セグメントのリストを表示するには、次のコマンドを実行します。

$ ipcs -m

Oracle Databaseがそのインスタンスに対してプロテクション・キーの数よりも多いセグメントを作成する場合は、shmmaxカーネル・パラメータの値を大きくします。

関連項目:

推奨されるカーネル・パラメータの最小値については、『Oracle Databaseインストレーション・ガイド』を参照してください。 

B.2 HP-UX SCHED_NOAGEスケジューリング・ポリシー

HP-UXシステムのほとんどのプロセスは、タイム・シェアリング・スケジューリング・ポリシーを使用します。タイム・シェアリングが適用されると、重要な処理(ラッチの保持など)が実行されるときにOracleプロセスがスケジュールから除外されるため、パフォーマンスが低下することがあります。HP-UXのSCHED_NOAGEは、特にこの問題に対処した修正済のスケジューリング・ポリシーです。通常のタイム・シェアリング・ポリシーとは異なり、SCHED_NOAGEによってスケジュールが設定されたプロセスは、優先順位が上下したり、優先使用されることがありません。

この機能は、オンライン・トランザクション処理(OLTP)環境に適しています。これは、OLTP環境では、重要なリソースを対象に競合が発生することがあるためです。Oracle DatabaseのOLTP環境でSCHED_NOAGEポリシーを使用した場合、パフォーマンスが10パーセント以上も向上する可能性があります。

SCHED_NOAGEポリシーを意思決定支援環境で使用しても、同じレベルのパフォーマンス上の効果は得られません。これは、リソースの競合がほとんど発生しないためです。アプリケーションとサーバーの環境はそれぞれ異なるため、使用している環境にSCHED_NOAGEポリシーが適切であることをテストおよび検証する必要があります。SCHED_NOAGEを使用する場合、Oracleプロセスに最も高い優先順位を割り当てることには注意が必要です。SCHED_NOAGEの最も高い優先順位をOracleプロセスに割り当てると、システムのCPUリソースを使い果たし、他のユーザー・プロセスの応答が停止する可能性があります。

B.2.1 Oracle DatabaseでのSCHED_NOAGEの有効化

Oracle DatabaseでSCHED_NOAGEスケジューリング・ポリシーを使用するには、OSDBAグループ(通常はdbaグループ)がRTSCHEDおよびRTPRIO権限を取得し、スケジューリング・ポリシーを変更したり、Oracleプロセスの優先順位レベルを設定する必要があります。dbaグループにこれらの権限を付与するには、次の手順を実行します。

  1. rootユーザーでログインします。

  2. テキスト・エディタを使用して/etc/privgroupファイルを開くか、必要な場合は作成します。

  3. OSDBAグループの名前で始まる次の行を追加または編集し、システムが再起動するたびにこのグループに付与するRTPRIO権限とRTSCHED権限を指定します。

    dba RTPRIO RTSCHED
    
    
  4. ファイルを保存してテキスト・エディタを終了します。

  5. 次のコマンドを入力し、OSDBAグループに権限を付与します。

    # /usr/sbin/setprivgrp -f /etc/privgroup
    
    
  6. 次のコマンドを入力し、権限が正しく設定されていることを確認します。

    # /usr/sbin/getprivgrp dba
    
    

HPUX_SCHED_NOAGE初期化パラメータを各インスタンスのパラメータ・ファイルに追加し、このパラメータに対してプロセスの優先順位レベル(整数値)を設定します。サポートされる値の範囲は178〜255です。値が小さくなるほど優先順位が高くなります。パラメータの設定が範囲外にある場合、Oracle Databaseは自動的にそのパラメータを許容値に設定し、新しい値が設定されたSCHED_NOAGEポリシーを使用して処理を続行します。また、新しい設定に関するメッセージをalert_sid.logファイルに生成します。ユーザーまたは自動再調整によって、Oracleプロセスに対して最高レベルの優先順位が割り当てられた場合、Oracle Databaseは、システムのCPUリソースが使い果たされる可能性があることを警告するメッセージをalert_sid.logファイルに生成します。このパラメータには、Oracleプロセスに必要な優先順位レベルを割り当てておくことをお薦めします。

関連項目:

優先順位ポリシーと優先順位の範囲の詳細は、HP-UXのドキュメント、およびrtsched(1)とrtsched(2)の各manページを参照してください。 

B.3 軽量タイマーの実装

Oracle Database 10gでは、動的初期化パラメータSTATISTICS_LEVELTYPICAL(デフォルト)またはALLに設定されている場合、いつでもランタイム統計を収集できます。このパラメータ設定は、TIMED_STATISTICS初期化パラメータを暗黙的にtrueに設定します。HP-UXシステム上のOracle Databaseでは、gethrtime()システム・ライブラリ・コールを使用して、統計の収集中に経過時間を計算します。この軽量システム・ライブラリ・コールを使用することによって、パフォーマンスに影響を与えることなく、Oracleインスタンスを実行しながら、いつでもランタイム統計を収集できます。

TIMED_STATISTICS初期化パラメータが明示的にtrueに設定されているときに、gethrtime()システム・ライブラリ・コールを使用すると、使用しない場合に比べてOracleのパフォーマンスを最大10パーセント改善できます。また、ランタイム統計の収集にgethrtime()システム・ライブラリ・コールを使用しても、Oracle DatabaseのOLTP環境のパフォーマンスが低下することはありません。

B.4 非同期I/O

非同期I/O擬似ドライバをHP-UXシステム上で使用すると、Oracle DatabaseがRAWディスク・パーティションへのI/Oを非同期方式で実行できるようになり、I/Oのオーバーヘッドが減少してスループットが向上します。非同期I/O擬似ドライバは、HP-UXのサーバーとワークステーションの両方で使用できます。

B.4.1 MLOCK権限

Oracle Databaseで非同期I/O操作を処理するには、OSDBAグループ(dba)にMLOCK権限を付与する必要があります。dbaグループにMLOCK権限を付与するには、次の手順を実行します。

  1. rootユーザーでログインします。

  2. テキスト・エディタを使用して/etc/privgroupファイルを開くか、必要な場合は作成します。

  3. OSDBAグループの名前で始まる次の行を追加または編集し、MLOCK権限を指定します。


    注意:

    このファイルでは、特定のグループに対する権限指定に1行のみを使用する必要があります。このファイルにdbaグループに関する行がすでに含まれている場合は、その行にMLOCK権限を追加してください。 


    dba RTPRIO RTSCHED MLOCK
    
    
  4. ファイルを保存してテキスト・エディタを終了します。

  5. 次のコマンドを入力し、OSDBAグループに権限を付与します。

    # /usr/sbin/setprivgrp -f /etc/privgroup
    
    
  6. 次のコマンドを入力し、権限が正しく設定されていることを確認します。

    # /usr/sbin/getprivgrp dba
    

B.4.2 非同期I/Oの実装

HP-UXシステムで非同期I/Oを使用する場合は、データベース・ファイルに対して次の記憶域オプションを使用する必要があります。

いずれかの記憶域オプションを使用して非同期I/Oを実装する前に、System Administrator Management(SAM)ユーティリティを使用して、非同期ディスク・ドライバをHP-UXカーネルに設定する必要があります。

SAMユーティリティを使用して非同期ディスク・ドライバを追加し、カーネルを設定するには、次の手順を実行します。

  1. rootユーザーで次のコマンドを実行します。

    # sam
    
    
  2. 「Kernel Configuration」領域を選択します。

  3. 「Drivers」領域を選択します。

  4. 非同期ディスク・ドライバ(asyncdsk)を選択します。

  5. 「Actions」→「Add Driver to Kernel」を選択します。

  6. 「List」→「Configurable Parameters」を選択します。

  7. MAX_ASYNC_PORTSパラメータを選択します。

  8. 「Action」→「Modify Configurable Parameter」を選択します。

  9. 次のガイドラインを使用して、パラメータに新しい値を指定し、「OK」をクリックします。

    MAX_ASYNC_PORTSパラメータは、設定可能なHP-UXカーネル・パラメータの1つで、/dev/asyncファイルを同時にオープンできる最大プロセス数を制御します。

    最大数のプロセスが/dev/asyncファイルをオープンした後で別のプロセスがそのファイルをオープンしようとすると、エラー・メッセージが表示されます。多数のシャドウ・プロセスやパラレル問合せスレーブが非同期I/Oを実行しているシステムで、このエラーが発生すると、システムのパフォーマンスが低下することがあります。このエラーは記録されません。このエラーを回避するには、/dev/asyncファイルにアクセスする最大プロセス数を予測し、MAX_ASYNC_PORTSパラメータにその値を設定します。

  10. Actions」→「Process a New Kernel」を選択します。

  11. 次のオプションのいずれかを選択し、「OK」をクリックします。

    • 「Move Kernel Into Place and Shutdown System/Reboot Now」

    • 「Do Not Move Kernel Into Place: Do Not Shutdown/Reboot Now」

    2番目のオプションを選択した場合は、新しいカーネルvmunix_testとその作成に使用されるsystem.SAM構成ファイルが、/stand/buildディレクトリに作成されます。

新しいカーネルを使用するには、次の手順を実行します。

  1. 次のコマンドを入力し、新しいカーネルを所定の場所に移動します。

    # /usr/sbin/kmupdate
    
    
  2. 次のコマンドを入力し、システムを再起動します。

    # /sbin/shutdown -r now
    
    

HP-UX非同期デバイス・ドライバを使用して非同期I/O操作を可能にするには、次の手順を実行します。

  1. rootユーザーでログインします。

  2. 次のコマンドを入力し、新しいデバイス・ファイルを作成します。

    # /sbin/mknod /dev/async c 101 0x0
    
    
  3. 次のコマンドを入力し、メジャー番号が101の/dev/asyncデバイス・ファイルが存在することを確認します。

    # ls -l /dev/async
    
    

    このコマンドの出力は、次のようになります。

    crw------- 1 oracle   dba     101 0x000000 Oct 28 10:32  /dev/async
    
    
  4. 必要に応じて、このデバイス・ファイルに対し、Oracleソフトウェア所有者およびOSDBAグループとの整合性があるオペレーティング・システム所有者およびアクセス権を設定します。

    Oracleソフトウェア所有者がoracleで、OSDBAグループがdbaの場合は、次のコマンドを実行します。

    # /usr/bin/chown oracle:dba /dev/async
    # /usr/bin/chmod 660 /dev/async
    

B.4.3 非同期I/Oの検証

非同期I/Oを検証するには、最初に、HP-UX非同期ドライバがOracle Databaseに対して設定されていることを検証します。次に、Oracle DatabaseがHP-UXデバイス・ドライバを介して非同期I/Oを実行していることを検証します。

B.4.3.1 HP-UX非同期ドライバがOracle Databaseに対して設定されているかどうかの検証

HP-UX非同期ドライバがOracle Databaseに対して適切に設定されていることを検証するには、次の手順を実行します。

  1. 少ない数のパラレル問合せスレーブ・プロセスを持つOracle Databaseを起動します。

  2. 次のコマンドを入力して、GlancePlus/UXユーティリティを起動します。

    $ gpm
    
    
  3. メイン・ウィンドウで、「Reports」→「Process List」をクリックします。

  4. 「Process List」ウィンドウで、パラレル問合せスレーブ・プロセスを1つ選択し、「Reports」→「Process Open Files」を選択します。

    パラレル問合せスレーブ・プロセスによって現在オープンされているファイルのリストが表示されます。

  5. オープン・ファイルのリストから、/dev/asyncファイルまたはモード101 0x000000を検索します。

    /dev/asyncファイルまたはモード101 0x000000のいずれかがリストに含まれている場合は、パラレル問合せスレーブ・プロセスによって/dev/asyncファイルがオープンされています。つまり、HP-UX非同期デバイス・ドライバは、Oracleプロセスが非同期I/Oを実行できるように正しく設定されています。/dev/asyncファイルのファイル記述子番号をメモしておいてください。

B.4.3.2 Oracle Databaseが非同期I/Oを使用しているかどうかの検証

Oracle DatabaseがHP-UX非同期デバイス・ドライバを介して非同期I/Oを使用しているかどうかを検証するには、次の手順を実行します。

  1. HP-UXシステムのtuscユーティリティを、前述の手順でGlancePlusユーティリティを使用して選択したOracleパラレル問合せスレーブに連結します。

  2. 使用している環境でI/Oバウンド問合せを実行します。

  3. tusc出力でread/writeコールのパターンをチェックします。

    このためには、たとえば、次のコマンドを入力します。pidは、非同期I/Oを処理する予定のパラレル問合せスレーブのプロセスIDです。

    $ tusc -p pid > tusc.output
    
    
  4. 問合せの実行後、[Ctrl]キーを押しながら[C]キーを押してプロセスから切断し、tusc.outputファイルを開きます。

    次に、tusc.outputファイルのサンプルを示します。

    ( Attached to process 2052: "ora_p000_tpch" [ 64-bit ])
    ................... 
    ........................ 
    [2052] read(9, "80\0\001\013  \b\0\0\0\0\0\0\0\0".., 388) .. = 28 
    [2052] write(9, "\0\0\00e\0\0\0\080\0\001\013Ð \0".., 48) .. = 48 
    [2052] read(9, "80\0\001\013¢ 18\0\0\0\0\0\0\0\0".., 388) .. = 28 
    [2052] write(9, "\0\0\00e\0\0\0\080\0\001\01bd4\0".., 48) .. = 48 
    
    

    DISK_ASYNCH_IO初期化パラメータが明示的にfalseに設定されていない場合(デフォルトのtrueになっている場合)、tusc.outputファイルには、同じファイル記述子(前述の例では9)の非同期read/writeコールのパターンが連続して表示されます。

    tusc.outputファイルのファイル記述子番号をGlancePlusの/dev/asyncファイルで使用されている番号にマップします。この番号は、特定のパラレル問合せスレーブ・プロセスについて一致しています。これによって、HP-UX非同期デバイス・ドライバを介したI/Oが非同期であることが検証されます。同期I/Oの場合またはDISK_ASYNC_IO初期化パラメータが明示的にfalseに設定されている場合、前述の非同期read/writeパターンは表示されません。かわりに、lseekまたはpread/pwriteのコールが表示されます。また、1つのファイル記述子のみでなく、多数の異なるファイル記述子(read/writeの最初の引数)が表示されます。

B.4.4 SGAの非同期フラグ

HP-UXシステム上のOracle Databaseでは、HP-UX非同期ドライバが提供する非ブロック・ポーリング機能を使用して、I/O操作の状態がチェックされます。非同期ドライバは、送信されたI/O操作の状態に基づいてフラグを更新します。このポーリングではこのフラグがチェックされます。HP-UXでは、このフラグが共有メモリーに読み込まれている必要があります。

Oracle Databaseでは、非同期フラグを各OracleプロセスのSGA内に設定します。HP-UXシステム上のOracle Databaseは、真の非同期I/Oメカニズムを備えています。つまり、以前に発行されたI/O操作の一部が完了していなくても、I/O要求を発行できます。このメカニズムにより、パフォーマンスが向上し、パラレルI/Oプロセスのスケーラビリティが保証されます。

リリース8.1.7より前のOracle Databaseのリリースでは、I/O操作は、HP-UX非同期ドライバを使用して共有メモリーからのみ実行できました。新しいHP-UX非同期ドライバでは、Oracle Database 10gは共有メモリーとプロセス専用領域の両方からI/O操作を実行できます。ただし、非同期ドライバを介したI/O操作は、本質的には非同期ではありません。Oracle Databaseでは、非同期ドライバに送信されたI/O操作の状態をチェックするために、ブロック待機が必要です。このため、データベース・ライター・プロセスなど一部のOracleプロセスでは、本質的には同期I/Oが処理されています。

B.5 大規模メモリーの割当てとOracle Databaseのチューニング

Oracle Database 10g上で実行するアプリケーションは、以前のリリースで実行するアプリケーションと比べて非常に大きいメモリーを使用する場合があります。これには、次の2つの理由があります。

B.5.1 永続的な専用SQL領域とメモリー

ユーザーがSQL文を発行すると、Oracle Databaseは、次のメモリー割当てステップを自動的に実行します。

  1. Oracle SGAの共有プールをチェックし、同一文に対する共有SQL領域がすでに存在しているかどうかを確認します。共有SQL領域が存在する場合は、その領域を使用して、文の以降の新しいインスタンスを実行します。共有SQL領域が存在しない場合は、共有プール内の新しい共有SQL領域をSQL文に割り当てます。

  2. ユーザー・セッションのために、専用SQL領域を割り当てます。

専用SQL領域には、処理対象SQL文のバインド情報やランタイム・メモリー構造などのデータが格納されます。また、解析対象文および情報を処理するその他の文も格納されます。

同じSQL文を実行するすべてのユーザーには、単一の共有SQL領域を使用するカーソルが割り当てられます。このようにして、多数の専用SQL領域を同じ共有SQL領域に関連付けることができます。ユーザー・セッションが専用サーバーを介して接続された場合、専用SQL領域はサーバー・プロセスのPGA内に設定されます。ただし、ユーザー・セッションが共有サーバーを介して接続された場合は、専用SQL領域の一部がSGA内に保持されます。

CURSOR_SPACE_FOR_TIME初期化パラメータは、SQLカーソルの割当てをライブラリ・キャッシュから解除して、新規SQL文のために領域を確保できるかどうかを指定します。このパラメータをtrueに設定すると、共有SQL領域の割当てがOracleライブラリ・キャッシュから解除されるのは、SQL文に関連付けられたすべてのアプリケーション・カーソルがクローズしている場合のみになります。また、このパラメータがtrueの場合、オープンしているカーソルに関連付けられた専用SQL領域の割当て解除も防止されるため、ユーザーの専用SQL領域を永続的にすることができます。

Oracle DatabaseでCURSOR_SPACE_FOR_TIME初期化パラメータをtrueに設定した場合、以前のリリースのOracleと比べて次のメリットがあります。

Oracle DatabaseでCURSOR_SPACE_FOR_TIME初期化パラメータをtrueに設定した場合、以前のリリースのOracle Databaseと比べて次のデメリットがあります。

CURSOR_SPACE_FOR_TIMEパラメータをfalseに設定すると、SQL全体の実行速度が遅くなり、パフォーマンスが低下することがあります。このパラメータをfalseに設定すると、共有SQL領域の割当てがライブラリ・キャッシュから早期に解除される可能性があります。

B.5.2 デフォルトの大規模仮想メモリー・ページ・サイズ

デフォルトでは、Oracle Databaseは、プロセス専用メモリーの割当てに、HP-UXシステムの使用可能な最大の仮想メモリー・ページ・サイズ設定を使用します。このサイズは、値L(最大)で定義され、現在HP-UX v2 (11i.23)です。この値は、Oracle実行可能ファイルのリンク時に、LARGE_PAGE_FLAGSオプションの1つとして設定されます。

仮想メモリー・ページ・サイズがLに設定されていると、HP-UXは、使用可能なプロセス専用メモリーを、1GB制限まで、または割り当てられたメモリー量の合計に達するまで、1MB、4MB、16MBなどのサイズのページに割り当てます。Oracle PGAに十分なメモリーが割り当てられていて、大きなデータ・ページ・サイズ単位でのメモリー割当てが可能な場合は、オペレーティング・システムは、一度に最大のページ・サイズを割り当てます。たとえば、Oracle PGAに48MBを割り当てている場合、システムでは、16MBを3ページ設定するか、またはより小さい倍数の単位サイズのページを組み合せることができます。たとえば、1MBを4ページ、4MBを3ページおよび16MBを2ページとするなどです。PGAに64MBを割り当てた場合、データ・ページ単位サイズと使用可能なメモリー量とが一致するため、1ページ(64MB)がオペレーティング・システムによって割り当てられます。

一般的には、大規模メモリー・ページによってアプリケーションのパフォーマンスは向上します。これは、オペレーティング・システムが処理する必要のある仮想メモリー変換時のエラー数が減り、より多くのCPUリソースをアプリケーションに解放できるためです。また、プロセス専用メモリーの割当てに必要なデータ・ページ数の合計も減ります。これによって、プロセッサ・レベルでのTranslation Lookaside Buffer(TLB)ミスの可能性が減ります。

ただし、アプリケーションにメモリーの制約があり、非常に多くのプロセスを実行する傾向がある場合は、この大幅なページ・サイズの増加によってプロセスに大規模なメモリーの割当てが指示されるため、メモリー不足エラー・メッセージが発生する可能性があります。メモリー不足エラーが発生する場合は、ページ・サイズの値を小さくして、D(デフォルト)サイズの4KBとL(最大)サイズの4GBの間に設定する必要があります。

最小ページ・サイズ設定値(4KB)を使用すると、最大ページ・サイズ設定値を使用した場合よりもCPU使用率が20パーセント以上高くなります。最大設定値Lを使用すると、4MBの設定値を使用した場合よりもメモリー使用率が50パーセント高くなります。システムにメモリー制約がある場合は、使用できるメモリー・リソースの制約内で、ページ・サイズを特定のアプリケーションの要件と一致するように設定することをお薦めします。

たとえば、設定値Lでは問題が発生するアプリケーションで、設定値4MBの仮想メモリー・ページを使用すると、適切なパフォーマンスが得られる場合があります。

B.5.3 チューニングに関する推奨事項

永続的な専用SQL領域および大規模仮想メモリー・ページ・サイズへのメモリー割当ての増加に対応してチューニングを行うには、次の推奨事項があります。

B.6 CPU_COUNT初期化パラメータおよびHP-UX動的プロセッサ再構成

HP-UX 11iでは、プロセッサ・セット(Psets)の動的ランタイム再構成、および有効なユーザーによるプロセッサ・セット間の作業負荷の動的再割当てをサポートしています。

HP-UX Virtual Partitions(VPAR)を使用すると、ユーザーは、各自のシステムを複数の論理パーティションで構成し、各パーティションに独自のプロセッサ、メモリーおよびI/Oリソースのセットを割り当てて、HP-UXオペレーティング・システムの個別のインスタンスを実行できます。vParsに組み込まれているHP-UX Processor Setsを使用すると、仮想パーティションを再起動せずに、仮想パーティション間で動的プロセッサを移行できます。これによって、アプリケーション間でリソースのパーティション化を効率的に行うことができるため、HP-UXサーバー上で実行する各アプリケーションへのインタフェースおよび保証を必要とするリソースの割当てが最小限で済みます。

Oracle DatabaseのCPU_COUNT初期化パラメータは、Oracle Databaseで使用可能なCPU数を指定します。HP-UX 11iシステムのOracle Database 10gでは、オペレーティング・システムを定期的に問い合せることによって、CPUホスト構成の変更を動的に検出できます。システムのCPU数が変更された場合、OracleはCPU_COUNTパラメータを適切な値に調整して、その内部リソースを再割当てします。これによって、新しい作業負荷は新しく追加されたプロセッサを利用できるため、高いCPU使用率が原因でボトルネックが発生している場合は、DBAによる変更を必要とせずに、データベースのパフォーマンスを改善できます。

初期化パラメータの一部の値は、システムの起動時にCPU_COUNT値に基づいて計算されます。システムの起動後にCPU数が変更された場合、これらの初期化パラメータは動的に更新されず、新しいCPU数は考慮されません。このため、新しいCPU数が元のCPU数と大きく異なる場合は、最適でないデータベース構成となる場合があります。システムでCPU数が大幅に増加すると、データベースは追加された処理能力を利用できない可能性があります。

システムで増加したCPU数が小さい場合(たとえば、2から4に変更した場合)に必要な処理はありません。

システムで増加したCPU数が大きい場合(たとえば、2から32に変更した場合)は、次の手順に従ってください。

  1. 次のどちらかの方法で、CPU_COUNT初期化パラメータを新しい値に設定します。

    • データベースでサーバー・パラメータ・ファイル(spfiledbname.ora)を使用している場合は、次のSQL*PlusコマンドをSYSユーザーで実行し、新しいパラメータ値を指定します。

      SQL> ALTER SYSTEM SET CPU_COUNT=32 SCOPE=SPFILE
      
      
    • データベースで初期化パラメータ・ファイル(initsid.ora)を使用している場合は、このファイルを編集して新しいパラメータ値を指定します。

  2. データベースを再起動します。

B.7 ネットワーク情報サービス(NIS)の外部ネーミングのサポート

HP-UXシステムでは、NIS外部ネーミング・アダプタがサポートされています。 NIS外部ネーミングの構成方法と使用方法の詳細は、『Oracle Database Net Services管理者ガイド』の外部ネーミング・メソッドの構成に関する項を参照してください。


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