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WebLogic Integration 入門

Data Integration

現在のエンタープライズでは、異種環境が一般的になっています。これらの環境には、独自のデータフォーマットを持つ異種のアプリケーションが存在します。さまざまなデータフォーマットが存在すると、ビジネスシステム間のデータ統合が困難になります。受信するデータを異なるシステムが理解するには、あらかじめそのデータを適切なフォーマットに変換しておく必要があります。異なるシステム間のデータ統合を簡素化するために、企業は XML を情報交換の標準として採用しつつあります。

XML をデータ交換の標準フォーマットとして採用すると、エンタープライズ内統合とエンタープライズ間統合の両方を簡素化できます。エンタープライズの内部では、さまざまなデータフォーマットを XML に変換して他のアプリケーションとシームレスに交換できます。さらに、XML ドキュメントを XML 文法に変換して、インターネットを介してトレーディングパートナと交換できます。

WebLogic Integration は、従来のデータの XML への変換、および XML ドキュメントの他の XML 文法へのトランスフォーメーションをサポートしています。以下の節では、WebLogic Integration が提供する Data Integration 機能について説明します。

データ変換

異なるエンタープライズアプリケーションのデータの統合をサポートするために、WebLogic Integration ではバイナリデータを XML に、またはその逆に変換できます。バイナリデータを XML に変換する場合、標準 XML 解析方法を使用してデータにアクセスできるよう、構造化バイナリデータが XML ドキュメントに変換されます。

図5-1 バイナリデータの XML への変換

バイナリデータを変換するには、開発者はまずバイナリデータのレコードレイアウトのメタデータ記述を作成します。メタデータには、フィールドタイプ（文字列、浮動小数点など）やフィールド名といった、レコード内のフィールドの記述が含まれます。メタデータは、メッセージフォーマット言語（MFL）ファイルに格納されます。実行時に、MFL ドキュメントはバイナリデータを XML ドキュメントに、またはその逆に変換するために使用されます。

MFL ファイルを作成するには、統合スペシャリストは WebLogic Integration の Format Builder ツールを使用します。また、統合スペシャリストは Format Builder を使用して、変換から作成された XML ドキュメントを記述する DTD ファイルまたは XML スキーマを生成できます。

図5-2 Format Builder

変換を実行するには、アプリケーションで変換機能をプログラム的に呼び出すか、またはビジネスプロセスでワークフローから変換機能を呼び出します。生成された XML ドキュメントは、直接 XML 対応アプリケーションで使用するか、または他のビジネスプロセスを開始するために使用できます。また、他の XML 文法に変換することもできます。

ビジネスプロセスとの統合

WebLogic Integration には、データ変換とビジネスプロセスの統合を可能にするプラグインフレームワークが用意されています。データ変更機能とビジネスプロセスを統合するために、統合スペシャリストは以下の 2 つのワークフローアクションを使用できます。

Translate Binary to XML
Translate XML to Binary

各アクションは、バイナリデータのメタデータ記述が格納されている MFL ファイルと、ソースデータまたはターゲットデータ（バイナリまたは XML）の場所を指定するために使用します。

データ変換用のこれらのアクションを使用するには、統合スペシャリストは WebLogic Integration Studio を使用してビジネスプロセスを定義し、いずれかのデータ変換アクションをワークフローノードに指定します。実行時に、指定されたアクションが実行されて、データが適切なフォーマットに変換されます。

バイナリデータによるビジネスプロセスのトリガ

ビジネスプロセスは、XML ドキュメントの受信によってトリガされます。WebLogic Integration には、バイナリデータを XML に変換することによってビジネスプロセスをトリガするためのプラグインが用意されています。プラグインのこの機能を、イベントハンドラと呼びます。

JMS メッセージを内部 JMS キューに発行すると、イベントハンドラが呼び出されます。このイベントハンドラによって、JMS メッセージのバイナリデータが XML ドキュメントに変換されます。この XML ドキュメントを使用すると、ビジネスプロセスをトリガできます。

イベントハンドラの使い方は、WebLogic Integration に付属の Servlet サンプルに示されています。Servlet サンプルの詳細については、次の節を参照してください。

サンプルドメイン

WebLogic Integration には、データ変換機能とビジネスプロセスの統合、および Format Builder によるメッセージフォーマット定義の作成方法を示した 3 種類のサンプルが用意されています。

Servlet アプリケーション

Servlet アプリケーションは、バイナリデータイベントハンドラを使用してバイナリデータを XML に変換するサーブレットをインストールします。サーブレットには、Web ブラウザからアクセスできます。このサーブレットは、バイナリデータから XML への変換の要求を受け付け、生成された XML データを応答として表示します。また、XML データを、ビジネスプロセスのトリガに使用する内部 JMS キューにポストします。

EJB アプリケーション

この EJB アプリケーションは、人事管理システムから給与管理システムにデータが流れるビジネスプロセスをシミュレートします。このプロセスでは、データは次の順序で流れます。

ビジネスプロセスは、エンドユーザが給与データにアクセスするときに手動で開始されます。
給与データを使用して、プロセスはバイナリデータを使用する従来の給与管理システムから従業員データを取得します。
バイナリデータが XML に変換され、従業員の給与情報を計算できるようになります。
計算の結果がバイナリフォーマットに変換されます。このバイナリデータは給与管理システムに送られて、さらに処理されます。

Purchase Order

Purchase Order サンプルには、Format Builder を使用して DTD および MFL ファイルを作成する方法が示されています。このサンプルは、DTD、MFL、およびバイナリデータが格納されたデータファイルで構成されています。開発者は、データファイルを Format Builder への入力として使用して、独自の DTD ファイルと MFL ファイルを作成できます。サンプルに含まれている DTD ファイルと MFL ファイルを使用すると、作成したファイルが適切であるかどうかを検証できます。

データトランスフォーメーション

バイナリデータが XML ドキュメントに変換されたら、XML ドキュメントを特定の XML 文法（RosettaNet や ebXML など）に変換できます。XML ドキュメントを別の XML 文法または表示フォーマットに変換するプロセスを、XML トランスフォーメーションと呼びます。

XSLT は、XML ドキュメントを別の XML または非 XML ドキュメントに変換するためのルールを定義する特殊な XML 言語です。XSL スタイルシートには、XML ドキュメントのどの要素を変換するか、およびどのように変換するかを指定します。XML スタイルシートは、ソース XML ドキュメントの要素を、別の XML 文法を持つターゲット XML ドキュメントの要素にマップします。

図5-3 XML トランスフォーメーション

XML ドキュメントを変換するには、統合スペシャリストは、まずある XML 文法を別の XML 文法にどのようにマップするかを指定する XSL スタイルシートを作成します。統合スペシャリストは、Contivo Analyst の設計時 GUI を使用して XSL スタイルシートを作成するか、Contivo Analyst と Contivo eService の自動マッピング機能を使用できます。

図5-4 Contivo Analyst Mapping Editor

XSL スタイルシートを作成するには、統合スペシャリストはまずソースおよびターゲット XML ドキュメントの DTD または XML スキーマを指定する必要があります。DTD ファイルとスキーマファイルは、Contivo Analyst を使用して WebLogic Integration リポジトリから取得します。XSL スタイルシートを作成したら、それを WebLogic Integration リポジトリに格納します。

実際のトランスフォーメーションは、WebLogic Server にバンドルされている XSL トランスフォーメーションエンジンによって実行時に行われます。統合スペシャリストは、いつトランスフォーメーションが実行されるのかを、WebLogic Integration の Business Process Management 機能を使用して作成したビジネスプロセスに定義します。

ビジネスプロセスとの統合

WebLogic Integration には、データトランスフォーメーションとビジネスプロセスを統合するための XSL 変換アクションが用意されています。データトランスフォーメーション機能とビジネスプロセスを統合するには、統合スペシャリストは WebLogic Integration Studio を使用してビジネスプロセスを定義して、ワークフローノードに XSL 変換アクションを指定します。

実行時に、ビジネスプロセスに定義された XSL 変換アクションによって、WebLogic Server に付属のトランスフォーメーションエンジンが呼び出されます。トランスフォーメーションエンジンは、WebLogic Integration リポジトリに格納されている XSL スタイルシートを使用して、ソース XML ドキュメントからターゲットドキュメントに要素をマップします。変換された XML ドキュメントは、ビジネスプロセスを完了させるために使用できます。また、トレーディングパートナに送信してさらに処理を行ったり、他の XML 対応アプリケーションで使用したりできます。