WebLogic Operations Control の紹介

     前  次    新しいウィンドウで目次を開く     
ここから内容の開始

WebLogic Operations Control の紹介

このマニュアルでは Oracle® WebLogic Operations Control を紹介します。

 


WebLogic Operations Control とは

オペレーション センターでの仮想化テクノロジの導入では物理ハードウェアの最大限の利用が確保されますが、テクノロジから生じる複雑さによって、コンピューティング リソースを効率的に利用できる一方、アプリケーションがどの程度厳密にサービス レベル アグリーメント (SLA) に準拠するかを判別することが困難になります。

WebLogic Operations Control (WLOC) は、アプリケーションの仮想化に伴う重要な課題に対処する仮想化および非仮想化エンタープライズ Java アプリケーションのための管理フレームワークです。これらの課題に対処するために、WLOC では以下のことを行います。

需要と供給の管理

WLOC では抽象レイヤが導入され、コンピューティング環境の複雑さと、オペレーション センターでサポートされる各 Java アプリケーションのユニークな要件を理解することが要求される代わりに、オペレーション スタッフは需要と供給の観点から業務を遂行できます。

図 1 WLOC による需要と供給の管理

WLOC による需要と供給の管理

需要サイドでは、WLOC を使用して Java アプリケーション (プロセス) を WLOC サービスに整理します。関連するプロセスのグループを単一のサービスに整理し、グループ単位で管理を行います。各プロセスごとに 1 つのサービスを作成できます。

供給サイドでは、WLOC を使用してオペレーション センターの計算リソースをリソースの集合、つまりリソース プールに整理します。WLOC リソース プールは、単一の物理マシン、またはハイパーバイザ ソフトウェアを通じて使用可能な仮想化されたリソースの集合を表現できます。

WLOC では、デプロイされたサービスの需要を満たすために、使用可能なリソースの供給が効率的に管理されます。

サービス品質目標の達成

WLOC では、サービス レベル アグリーメント (SLA) を要件およびポリシーの集合としてカプセル化する環境が提供されます。オペレーション チームは、ハードウェアおよびソフトウェアのリソースの割り当てを管理するアプリケーションレベルの SLA に基づいたポリシーを定義できます。これにより、仮想化および非仮想化プラットフォーム間でサービス品質 (QoS) の目標が達成されます。あらかじめ定義された条件が発生すると、WLOC ではアクションがトリガされます。たとえば、WLOC ではサービスに対するリソースが動的に割り当てられます。

リソースを選択するための判断

WLOC ではオペレーション センター全体のリソースの使用がモニタされ、リソース全体の最大限の使用効率が確保される方法で Java アプリケーションのデプロイメントが配布されます。

ユーザがサービスをデプロイしたり、WLOC アクションが追加のプロセスの起動を要求すると、サービスまたはプロセスをホストする場所を決定するために WLOC ではすべてのリソース プールが調査されます。リソース プールを選択するため、WLOC では IP アドレスまたはソフトウェア アクセスなどの依存関係を満たすことができないリソース プールが最初に除外されます。たとえば、サービスが WebLogic Server ソフトウェアへのアクセスを必要とする場合、WLOC では WebLogic Server ソフトウェアへのアクセスを提供できないリソース プールがすべて除外されます。

宣言された依存関係を検討した後、WLOC では残りの各リソース プールの容量、現在デプロイされているサービスの SLA、および各サービスに宣言された相対的な優先順位が検討されます。その後、ユーザが選択する以下のいずれかのアルゴリズムが使用されます。

 


WLOC デプロイメント アーキテクチャの概要

一般的な WLOC デプロイメントには、単一の WLOC コントローラ (オペレーティング環境に関するデータを収集する中央のコンポーネント) と、リソースを管理およびモニタし、それらの情報をコントローラに提供する複数のエージェントが含まれます。WLOC 環境のビジュアルなコンフィグレーション、管理、およびモニタを実行できる WLOC Administration Console はコントローラでホストされます。

図 2 WLOC のコンポーネント

WLOC のコンポーネント

注意 : すべてのコンポーネントは通信に HTTPS または HTTP を使用します。

以下の表は、上記の図に示す WLOC の各コンポーネントについて説明します。

表 1 WLOC のコンポーネント
コンポーネント
説明
コントローラ
オペレーティング環境およびデプロイされたサービスに関するデータをエージェントから収集し、順応的管理を提供する中央のコンポーネント。コントローラは、デプロイされたすべてのサービスがサービス レベル アグリーメント (SLA) に適切に準拠するような形で、収集されたデータを使用してポリシーを適用し、新しいサービスをデプロイします。このコントローラは、WLOC Administration Console をホストします。詳細については、「コントローラ」を参照してください。
エージェント
環境に関する情報をコントローラに提供し、プロセスを開始および停止し、コントローラが要求する他のアクションを呼び出します。各エージェントは狭いスコープ内で動作します。Plain Agent は単一の物理マシンのデータ収集とプロセス管理を行います。ESX Agent は VMware リソース プールのデータ収集とプロセス管理を行います。ハイパーバイザ ソフトウェアは、1 つまたは複数の物理ホストでサポートされる仮想化されたリソースの集合を WLOC に対して使用可能にします。詳細については、「エージェント」を参照してください。
WLOC Administration Console
オペレーション センターのサービスのコンフィグレーション、管理、およびモニタに使用される Web ブラウザベースのグラフィカル ユーザ インタフェース。これはコントローラでホストされます。詳細については、「プロセスを整理するサービスの定義」を参照してください。
管理対象 Java プロセス
Plain Agent では任意のタイプの Java プロセスが管理されます。ESX Agent では、WebLogic Server Virtual Edition (WLS-VE) などの LiquidVM (LVM) 上で実行する仮想化された Java アプリケーションのみが管理されます。
VMware Virtual Center
ESX Agent は、VMware Virtual Center と通信して、WLS-VE などの LVM インスタンスを管理するために WLOC で使用できる VMware リソース プールに関するデータを収集します。LVM インスタンスが開始した後、エージェントはその LVM インスタンスと通信してモニタ データを収集し、管理アクションを呼び出します。WLOC でリソースの需要が管理される一方、このような方法で VMware Virtual Center ではリソースの供給が管理されます。
VMware インフラストラクチャは、VMware ツールを使用してコンフィグレーションする必要があります。WLOC を使用して仮想化環境をコンフィグレーションすることはできず、使用可能なリソースを利用するためにのみ使用します。

コントローラ

WLOC コントローラは、オペレーティング環境およびデプロイされたサービスに関するデータをエージェントから収集し、順応的管理を提供する中央のコンポーネントです。コントローラでは、環境内のすべてのサービスのサービス レベル アグリーメント (SLA) に準拠するため、収集されたデータを使用して新しいサービスが適切にデプロイされ、ポリシーが評価および適用されます。

図 3 WLOC コントローラ

WLOC コントローラ

各 WLOC 環境には、以下の処理を行う単一のコントローラが含まれています。

エージェント

WLOC エージェントは、CPU サイクルとマシン メモリ、または WLOC サービスで使用されるリソース プールとしての仮想リソースの集合を示すスタンドアロン Java プロセスです。

図 4 WLOC エージェント

WLOC エージェント

一般に、WLOC 環境には以下の処理を行う複数のエージェントが含まれています。

図 2 にあるとおり、WLOC では 2 種類のエージェントが提供されます。

WLOC Administration Console

WLOC Administration Console は、オペレーション センターのサービスのコンフィグレーション、管理、およびモニタに使用される Web ブラウザベースのグラフィカル ユーザ インタフェースです。これは、エージェントと通信してモニタ データを収集し、管理アクションを呼び出す WLOC コントローラによってホストされます。

図 5 WLOC Administration Console

WLOC Administration Console

以下の表に、WLOC Administration Console を使用して実行できるタスクの概要を示します。

表 1 WLOC Administration Console のタスク
タスク
説明
コンフィグレーション
  • コントローラおよびエージェントのネットワーク通信をコンフィグレーションします。
  • Java アプリケーションをサービスに整理します。
  • サービスのサービス レベル アグリーメント (SLA) を自動的に適用するポリシーを作成します。
  • ロギングおよび監査機能をコンフィグレーションします。
  • ユーザを作成し、グループとロールに割り当てます。
管理
  • サービスをデプロイし、アクティブ化します。
  • 手動でサービスに作用するアクションを呼び出します。
  • SLA 違反の結果開始されるアクションの裁決を行います。
モニタ
  • サービスのパフォーマンスをモニタします。
  • リソース プールがホストされるマシンのコンピューティング リソースの使用をモニタします。
  • コントローラのログ ファイルとセキュリティ監査ファイルを表示します。

WLOC Administration Console にアクセスできるのは、認証された WLOC ユーザのみです。

注意 : セキュリティ データを除いて、WLOC では XML ファイルにコンフィグレーションが格納されます。必要であれば、WLOC Administration Console を使用する代わりに有効なテキスト エディタを使用して XML を直接編集することで、WLOC コンポーネントをコンフィグレーションできます。この場合、変更を有効にするためにコントローラまたはエージェントを再起動する必要があります。

WLOC Administration Console で以下の処理を行うことはできません

 


プロセスを整理するサービスの定義

WLOC サービスは、WLOC が 1 つの単位として管理する 1 つまたは複数のプロセスの集まりです。サービス内の各プロセスは、Java 仮想マシン (JVM) から起動し、JVM で実行するクラスが含まれているソフトウェア スタックです。同じ機能を実行し、同じ実行時特性を備えたプロセス (JVM プロセス) は、サービス内の「プロセス グループ」にまとめることができます。たとえば、クラスタ内のすべてのサーバをプロセス グループに整理できます。

図 6 サービスの定義—WebLogic Server インスタンスのクラスタ

サービスの定義—WebLogic Server インスタンスのクラスタ

各プロセス グループについて以下を指定します。

 


SLA を適用するポリシーの定義

サービスのデプロイメントまたは実行時の要件 (制約)、および SLA 制約が満たされない場合に実行されるアクションを指定する 1 つまたは複数のポリシーを定義できます。たとえば、ポリシーでは実行時環境に応じてサービスのサイズを展開または縮小できます。

制約は、1 つのプロセス、プロセスのグループ、またはサービスのすべてのプロセスに対して付与できます。管理対象プロセスが Java Management Extensions (JMX) を通じて管理データを公開する場合、プロセスの MBean 属性の値に基づく制約、または、プロセスあるいはプロセス グループの MBean 属性から取得された計算値に基づく制約を定義できます。

制約に違反した場合、WLOC ではコンフィグレーションされた Java クラス (アクション) が呼び出されます。WLOC で提供されるアクションをコンフィグレーションして、以下のことが行えます。

また、あらかじめ定義された時間にアクションをトリガするポリシーを定義できます。

アクションを組み合わせて、呼び出すアクションのシーケンスが指定されたアクション パイプラインを作成できます。アクションまたはアクション パイプラインは、サービスのポリシーで呼び出すか、または WLOC Administration Console から手動で呼び出すことができます。

たとえば、すべてが単一の WebLogic Server クラスタで実行される、外部向け Web サービス コレクションのプロセス グループを指定する WLOC サービスを作成します。以下のように、プロセス グループをコンフィグレーションできます。

サービスのデプロイ時、WLOC ではサービスが排他的に使用する 400 CPU サイクルおよび 600 MB の RAM が予約されます。WLOC ではサービスにプロセスが追加されるにつれ、サービスが使用する追加のリソースが最大まで要求されます。追加のリソースが他のプロセスで使用中の場合、予約された最小リソースが各プロセスで保持される限り、WLOC では優先順位の低いプロセスからリソースを削除することができます。

 


WLOC リソースのモニタ

WLOC リソースのパフォーマンスをモニタするには、以下の手順を行います。

 


WLOC セキュリティの管理

WLOC Administration Console へのアクセスを保護するため、WLOC ではロールベースのアクセス制御が使用され、異なるレベルの特権をさまざまなユーザまたはグループに割り当てることができます。WLOC で提供される一連のセキュリティ ロールにはアクセス特権があらかじめコンフィグレーションされています。多数のユーザの管理を簡素化するため、WLOC では一連のグループも提供され、1 つまたは複数の WLOC セキュリティ ロールにこれらをコンフィグレーションできます。WLOC Administration Console を使用すると、ユーザを作成してグループに割り当てたり、直接セキュリティ ロールに割り当てたりすることができます。

図 8 WLOC セキュリティの管理

WLOC セキュリティの管理

 


関連情報

以下のような WLOC のドキュメントが用意されています。


  ページの先頭       前  次