概要

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WebLogic Portal の概要

WebLogic Portal は、BEA WebLogic Platform の外部向けコンポーネントで、アプリケーションを統合するためのユーザ インタフェースが用意されています。WebLogic Portal を使用して、異機種環境から収集したアプリケーション データと機能を、統合された動的でカスタマイズ可能な Web ベースのポータル ユーザ インタフェースに表示すると同時に、複数のデバイス上で顧客、パートナ、および従業員をサポートすることができます。WebLogic Portal では、開発作業の重点を最重要事項であるアプリケーションに置くことができるように、インフラストラクチャが処理されます。

強力なポータル フレームワークと J2EE セキュリティ基盤に加え、WebLogic Portal には、コンテンツ管理、コミュニティ、パーソナライゼーション、検索、ユーザ管理など、さまざまなビジネス サービスが用意されています。

WebLogic Portal は、外部コンテンツ管理システムを単一の管理インタフェースに結合できる仮想コンテンツ リポジトリを提供します。これらの外部リソースのコンテンツを使用してポータルを構築することができます。WebLogic Portal は、コンテンツを作成し、管理する BEA コンテンツ リポジトリも提供します。

このガイドは、WebLogic Portal を使用するアプリケーションを理解し、開発を行うための出発点として役立ちます。この章では、ポータルの概念を紹介し、WebLogic Portal のインフラストラクチャ フレームワークとビジネス サービスについて説明し、アーキテクチャから開発、ステージング、およびプロダクションに至るポータル ライフサイクルについて説明します。このガイドのその他の章では、ライフサイクルの各段階を詳細と WebLogic Portal を使用するための出発点について説明します。

この章の内容は以下のとおりです。


ポータルの概念

ポータルを使用して、個々のプロセスとさまざまな機能を単一の Web インタフェースに統合することができます。ポータルを使用する以前には、Web ユーザは一度に 1 ページのみ訪問することができました。その後、Web ユーザは、たとえばブラウザ ウィンドウで航空会社の航空便を検索することなどができました。ただし、ユーザが個人の予定を確認したり、会社の出張規定を表示したりする場合は、新しいウィンドウを開き、おそらく二度以上ログインしなければなりませんでした。この場合、おそらく各サイトが別のサイトと異なるルック アンド フィールで表示されています。ポータルでは、ユーザはこれらのすべてのサイトやもっと多くのサイトを単一のブラウザ ウィンドウで、しかもシングル サインオンによって、共通のルック アンド フィールで表示することができます。

ポータルは、ポートレットと呼ばれる個々のウィンドウによって、このような統合されたビューを実現します。各ポートレットには、プロセス フロー、機能、またはコンテンツが組み込まれ、複数のポートレットを単一のブラウザ ウィンドウで表示することができます。一部のポータルでは、ポートレットが相互に通信することもできます。ポートレットは 1 ページにグループ化することができます。 ページは、通常タブ形式のクリッカブル リンクによって表される表示可能領域です。さらに、複数のページを 1 つのブックにグループ化し、編成することができます。ブックはナビゲーション リンクまたはタブで表すこともできます。全体として、それぞれが各ページの複数のポートレットを表示する複数ページを持つ複数のブックをポータルに含めることができます。

ポータルの別の特徴として、ブック、ページ、およびポートレット間で共有される共通のルック アンド フィールを持つことが挙げられます。場合によっては、ユーザがドロップダウン フィールドまたはその他のコントロールを使用して、ルック アンド フィールを変更し、ポータルを「再スキン」することができます。

通常、ポータルは、外部データ (RSS ニュース フィードなど)、外部ビジネス プロセス (Web サービス)、外部ポートレット (Web Services for Remote Portlets [WSRP]) などにアクセスする場合でも、単一のセキュリティ フレームワークを使用して認証および認可を行います。

図 2-1 は、多くのポートレットおよびその他の機能を含むページを示します。たとえば、デスクトップ ヘッダはキャンペーンを表示し、あるポートレットは複雑なプロセス フローを網羅し、別のポートレットと通信し、別のポートレットはリモート ポータルから取得することができます。

図 2-1 ポータル デスクトップ

ポータル デスクトップ

技術的に言えば、ポータルは、デスクトップと呼ばれるカスタマイズ可能で、パーソナライズされた、対象者固有のビューを表示できるエンタープライズ アプリケーションのリソースのコレクションです。たとえば、ポータルには、内部従業員およびパートナ用のビジネス ロジック、プロセス フロー、およびコンテンツが含まれます。ポータル管理者は、各対象者に適したフローとコンテンツを表示する従業員用のデスクトップとパートナ用のデスクトップを作成できます。Java 2 Enterprise Edition (J2EE) および WebLogic Server を柔軟な資格エンジン (WebLogic Portal) と共に使用することによって提供される統合セキュリティ フレームワークにより、単一のデスクトップにすべてのリソースを取り込み、認証されたユーザが資格を与えられたリソースだけを動的に表示することができます。たとえば、デスクトップには、従業員とパートナ用のページとポートレットを含めることができますが、ログインしたパートナは従業員のページやポートレットを表示することはできません。その逆の場合も同様です。

再利用もポータルの重要な概念です。たとえば、ポータルの単一ポータル プロセス フローは、複数のデスクトップの複数のポートレットで再利用できます。


WebLogic Portal のフレームワーク

ブラウザで表示されるポータル デスクトップは、グラフィック、アニメーション、カスケーディング スタイル シート、JavaScript などのブラウザがサポートするリソースを含む単純な HTML コードです。ポータルの動的な性質と機能的な能力の重要なポイントは、クリックまたは選択によって背後で実行される処理にあります。

従来の背後で実行される処理 (Java の分野) には、アプレットなどのクライアント側の機能と JSP、サーブレット、EJB、その他の J2EE 機能などのサーバ側の処理がありました。これらのすべての機能は、ポータルが関係するしないにかかわらず処理を実行します。WebLogic Portal は、標準ベースのコンポーネント (XML、JSP、JavaScript、カスケーディング スタイル シート、GIF など) を使用して、各リクエストに対するポータル ユーザ インタフェースを動的に構築します。

WebLogic Portal のフレームワークでは、複数のタイプのデバイスに対するポータル ユーザ インタフェースを同時に、かつ簡単にカスタマイズし、再利用することができます。ポータル ユーザ インタフェースを適切に配置することにより、アプリケーションの機能を統合されたビューに表示することができます。たとえば、ポータル アプリケーションを特定の方法でデスクトップ ブラウザに表示するポータル ルック アンド フィールを作成し、ハンドへルド デバイスでアクセスしたときに、まったく異なる方法でポータルとそのコンテンツを自動的に表示するサブ ルック アンド フィールを作成することができます。

WebLogic Portal のフレームワークは、WSRP 標準を使用して、連合ポータルを操作します。それにより、リモート ポータルで表示できるブック、ページ、およびポートレットを作成し、リモート ポータルがホストするブック、ページ、およびポートレットを表示することができます。

また、WebLogic Portal は、ユーザが独自のコミュニティ ポータルを作成し、グループ内で対話形式で動作する必要のあるポートレットを構築できるフレームワークを提供します。コミュニティでは、グループのメンバーが相互に通信し、コンテンツを作成、共有し、新しいユーザが参加するように招待し、独自のコミュニティを管理するために使用する安全が確保された独自のポータル デスクトップを作成することができます。WebLogic Portal は、電子メール、カレンダー、コンテンツ、タスク、ディスカッション フォーラム、コンテンツの保守、検索、ブックマーク リンクの作成、課題リストの保守、通知の実行、RSS ニュース フィードの表示、リッチ テキスト コントロールによるポートレット コンテンツの編集を行うためのポートレットを提供する GroupSpace と呼ばれるプロジェクト チーム用のコミュニティ構築テンプレートを装備しています。

コミュニティとのコラボレーションの拡大に加えて、WebLogic Portal では、ユーザ独自のカスタム アプリケーションで使用する WebLogic Portal Administration Console のツールの外観を変更することもできます。WebLogic Portal を使用して、管理機能の一部を表示し、別のアプリケーション機能と組み合わせて、エグゼクティブ ダッシュボード、コラボレーション コミュニティ、ASP アフィリエイト アプリケーション、ISV ブランドのアプリケーション、セルフサービス アプリケーション、OA&M アプリケーションなどを含む多くのタイプのアプリケーションを作成することができます。

WebLogic Portal のフレームワークでは、アプリケーションの開発と管理を簡単かつ迅速に行い、生産性を向上させ、ユーザ環境を改善しながら投資を回収することができます。


WebLogic Portal のビジネス サービス

WebLogic Portal は、ポータル ユーザ インタフェースの開発とアプリケーションの統合のための強力なフレームワークの他に、アプリケーションをより強力にし、パーソナライズできる以下のサービスを提供します。


ポータル ライフサイクル

WebLogic Portal およびその他の WebLogic Platform コンポーネントを使用してポータル アプリケーションを作成し、その後さまざまな環境を通じて以下のライフサイクルを繰り返します。ポータル アプリケーションを設計し、その基礎となる J2EE リソースを構築し、アプリケーション機能とユーザ インタフェースを開発し、ステージング環境でランタイム コンフィグレーションとテストを実行し、アプリケーションをデプロイし、プロダクション環境でアプリケーションを管理します。

図 2-2 は、ポータル ライフサイクルが発生するアーキテクチャ、開発、ステージング、およびプロダクション環境を示します。

図 2-2 ポータル ライフサイクル

ポータル ライフサイクル

アーキテクチャ

ほとんどの場合、アーキテクチャ段階は 1 回だけです。アーキテクチャ段階では、基本的なアプリケーション設計を決定し、開発作業の基礎として使用する J2EE リソースの開始セットを作成します。

この段階で作成するリソースには、基本的なポータル エンタープライズ アプリケーションと基本的な Web アプリケーション、カスタム EJB とサーブレット (ビジネス ロジック)、開発環境のデータを事前移植するカスタム SQL スクリプト、文字列置換変数を備える共有開発ドメイン (config.xml)、カスタム ドメイン、エンタープライズ アプリケーション、Web アプリケーション テンプレート、およびカスタム ルック アンド フィールが含まれます。アーキテクチャ段階では、チーム開発環境を設定します。

この段階でのアプリケーション レベルの決定事項には、使用する認証および認可プロバイダ、ユーザ プロパティを外部に保存するかまたは WebLogic Portal のユーザ プロファイル機能を使用して WebLogic Server のデフォルト LDAP ストアに保存するかどうか (またはその両方)、使用するデータベース、ステージングおよびプロダクション環境でのクラスタ コンフィグレーション、同時アプリケーション開発におけるソース コントロール戦略および表記規則、アプリケーション コードおよびデータを環境間で移動するプロセス、ポータル アプリケーションで表示するリモート ブック、ページ、およびポートレットを用意するかどうか、特に互換性のあるサードパーティ製システムを WebLogic Portal のコンテンツ リポジトリと組み合わせて使用する場合のコンテンツ管理戦略などがあります。

アプリケーション レベルの決定事項の他に、使用する各 WebLogic Portal 機能に対するアーキテクチャと設計を決定する必要もあります。たとえば、アプリケーションでキャンペーンを使用する場合、キャンペーンをトリガする条件 (日付/時刻、ユーザ プロファイル プロパティなど) を決定する必要があります。また、キャンペーンを実行する場合、コンテンツを表示するために使用するコンテンツ特性を決定する必要があります。たとえば、「春」、「夏」、「秋」、および「冬」を値として持つ「季節」プロパティを指定して、これらの値のいずれかを使用するプロダクション環境に追加したコンテンツがキャンペーンによって自動的に反映されるようにする必要がある場合があります。このように、機能レベルのアーキテクチャには多くの決定事項があります。

開発

開発の段階では、アーキテクチャの段階で作成したリソースを開発者が使用してポータル アプリケーションのプログラム機能を作成します。この段階のソース コントロールを使用して、複数の開発者がアプリケーション機能を作成します。

この段階で作成するリソースには、JSP、ページ フロー、Web サービス、ポータル、ブック、ページ、ポートレット、キャンペーン、コンテンツ セレクタ、プレースホルダ、プロパティ セット、XML ファイル、グラフィック、JavaScript、HTML、Java コードなどがあります。開発段階で作成するリソースはファイル ベースです。プロダクションの段階になると、ほとんどのリソースはエンタープライズ アーカイブ (.ear) ファイルにデプロイされます。この段階で使用される主なツールは、ソース コントロール、WebLogic Workshop およびその他選択したエディタ、ステージングと開発環境の間でデータベースと LDAP データをやり取りする WebLogic Portal プロダクション業務ツールです。

開発コードとリソースは通常サーバとデータベース データ (コンテンツ、ユーザ、セキュリティ ロールなど) に依存するため、開発はサーバとデータベース データが移植されるステージングと並行して行われます。

ステージング

ステージング段階では、稼働させるポータル アプリケーションを構築し、コンフィグレーションし、テストして、デプロイします。ステージング段階のテストでは、アプリケーションのリリース準備が整うまでに、ステージングと開発を何回も繰り返します。

この段階のタスクには、コンテンツとコンテンツ タイプの作成、デスクトップの作成、キャッシュ設定の変更、管理者ユーザの作成、対話管理ルールの変更、委託管理ロールの作成とリソースへの適用、訪問者の資格ロールの作成、WebLogic Portal の外部セキュリティおよびコンテンツ プロバイダへの接続、行動追跡およびキャンペーン電子メールなどのサービスのコンフィグレーション、パフォーマンス向上のためのキャッシュ設定の変更などがあります。これらのタスクにより、データが LDAP サーバとデータベースに書き込まれます。

この段階で使用する主なツールは、WebLogic Portal Administration Console、WebLogic Portal プロダクション業務ツール (ステージング、開発、プロダクション間でデータベースと LDAP のデータをやり取りする)、および使用している外部のコンテンツ、認証、または認可プロバイダです。

プロダクション

プロダクションの段階では、実際のポータル アプリケーションを管理し、調整します。ユーザ管理など、この段階での多くのタスクは、ユーザの追加などのステージングで実行するタスクと同じです。ただし、ステージング段階のタスクは公開のポータルを単に所定の場所に配置することを目的しているのに対して、プロダクション段階のタスクは実際に実行中のアプリケーションを管理することを目的とします。

この段階でのタスクには、ユーザ管理、委託管理および訪問者の資格ロールのリソースへの適用、デスクトップの作成、コンテンツの追加、対話管理ルールのリセットと変更などがあります。また、訪問者は、WebLogic Portal 訪問者ツールを使用して、コミュニティを作成し、ポータル環境をカスタマイズできます。これらのタスクにより、データが LDAP サーバとデータベースに書き込まれます。この段階で使用する主なツールは、WebLogic Portal Administration Console、WebLogic Portal プロダクション業務ツール (プロダクションおよびステージング間でデータベースと LDAP のデータをやり取りする)、および使用しているサードパーティ製のコンテンツ、認証、または認可プロバイダです。

プロダクション環境にある場合に、アプリケーションの機能またはユーザ インタフェースを更新し、アプリケーションの新しいリリースを作成する場合は、更新したアプリケーションがリリースできる状態に整うまで開発およびステージング環境に戻ります。

反復開発やアプリケーションの更新を簡単に行うために、WebLogic Portal は、環境間で LDAP とデータベースのデータをやり取りできるプロダクション業務ツールを用意しています。たとえば、ポータル デスクトップとコミュニティをプロダクションからステージングまたはプロダクションから開発に移動して、プロダクション アプリケーションの実際のシミュレーションで、新しいアプリケーションの機能をテストすることができます。

WebLogic Portal の各機能領域はポータル ライフサイクルに従います。表 2-1 は、ポータル ライフサイクルを通してさまざまな機能がどのように変化するかを示します。

表 2-1 ライフサイクルの各段階の機能タスクの例
ポータル
対話管理
セキュリティ
アーキテクチャ
カスタム ポータル ルック アンド フィールを設計し、構築するポータルのタイプを定義する。
提供するパーソナライゼーションのタイプを決定する。
アプリケーションへのユーザ アクセスを開発する。
開発
ユーザ インタフェース グラフィック、カスケーディング スタイル シート、JavaScript 機能、JSP スケルトン ファイル、レイアウト、およびポータル、ポートレット、ブック、ページ ファイルを作成し、WSRP プロデューサ機能をコンフィグレーションする。
デフォルト値を持つプロパティ セット、キャンペーン、プレースホルダ、コンテンツ セレクタを作成し、キャンペーン、プレースホルダ、およびコンテンツ セレクタを実装する JSP およびページ フローを開発する。
EJB、URL、およびファイルベースのリソース (JSP など) へのアクセスを制御するデプロイメント記述子の宣言型セキュリティをコンフィグレーションし、条件式に基づく訪問者の資格と委託管理ロールをサポートするプロパティ セットを作成する。
ステージング
ポータル デスクトップとコミュニティ テンプレートを作成する。リモート ポートレットを表示する。
デフォルトのユーザ プロファイル プロパティの設定値、およびキャンペーン、プレースホルダ、コンテンツ セレクタの定義を変更する。
訪問者の資格と委託管理ロールを作成し、これらのロールを訪問者および管理アクセス用のポータル リソースに適用する。管理者ユーザを作成する。
アプリケーションをプロダクション環境にデプロイする。
プロダクション
デスクトップとポータル コンポーネントを調整する。ユーザがコミュニティを作成する。
キャンペーン、プレースホルダ、およびコンテンツ セレクタの定義を調整する。
ロールの定義とポータル リソースへの適用を調整する。管理者ユーザを作成し、既存の管理者のアクセス権を調整する。

個々の機能がポータル ライフサイクルに従う場合でも、すべてのポータル アプリケーションおよびその機能の開発を同時に行う必要はありません。たとえば、ライフサイクルを移動して、完全なポータル アプリケーションを作成し、次に独自のライフサイクルに従って追加のポートレットの開発を続行して、ポータル アプリケーション全体を更新することができます。

このガイドの残りの章では、ポータル ライフサイクルの各段階について詳細に説明し、ポータル開発への入門ガイダンスを提供します。


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