スタンドアロン クライアント プログラマーズ ガイド

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JMS SAF クライアントによる確実なメッセージ送信

以下の節では、JMS SAF クライアント機能をコンフィグレーションおよび使用して、スタンドアロンの JMS クライアントからサーバサイドの JMS 送り先にメッセージを確実に送信する方法について説明します。

 


JMS クライアントでのストア アンド フォワードの使い方の概要

JMS SAF クライアント機能は、WebLogic Server 9.0 で導入した JMS ストア アンド フォワード サービスをスタンドアロン JMS クライアントに拡張したものです。この機能を使用することで、(一時的なネットワーク接続の障害などが原因で) JMS クライアントが送り先にアクセスできない場合でも、JMS クライアントはサーバサイドの JMS 送り先にメッセージを確実に送信できるようになります。サーバとの接続が切断されている間、JMS SAF クライアントによって送信されたメッセージはクライアントのファイル システム上でローカルに格納され、クライアントが再接続するときに、サーバサイドの JMS 送り先に転送されます。

JMS SAF クライアント機能は、主に JMS SAF クライアント実装と SAF フォワーダで構成されています。前者は、ローカルのファイル システムにあるクライアントサイドの永続ストアにメッセージを直接書き込むために使用され、後者は、永続ストアに書き込まれたメッセージを取得して WebLogic Server インスタンスに送信するために使用されます。また、必要に応じて JMS SAF クライアントが SAF フォワーダ メカニズムを使用するかしないかを設定できる SAFClient 初期化 API (weblogic.jms.extensions) も用意されています。詳細については、「JMS SAF クライアントの初期化 API」を参照してください。

注意 : サーバサイドの WebLogic JMS SAF でのアクセスできない可能性のある送り先に JMS メッセージを確実に送信する方法の詳細については、『WebLogic ストア アンド フォワードのコンフィグレーションと管理』の「JMS メッセージに対する SAF のコンフィグレーション」を参照してください。

 


クライアントサイドの SAF を使用するための JMS クライアントのコンフィグレーション

サーバサイドではコンフィグレーションを行う必要がありませんが、クライアントサイドでは各クライアントでコンフィグレーションを行う必要があります。以下の節では、クライアントサイドの SAF を使用するための JMS クライアントのコンフィグレーション方法について説明します。

JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルを生成する

各クライアント マシンには、JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルが必要です。コンフィグレーション ファイルには、JMS SAF クライアント環境での処理に必要なサーバサイドの接続ファクトリと送り先に関する情報を指定します。指定の JMS モジュールのコンフィグレーション ファイルから JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルを生成するには、インストールした WebLogic に付属している ClientSAFGenerate ユーティリティを使用します。

ClientSAFGenerate ユーティリティは、ソース JMS のコンフィグレーション ファイルに記述されているすべての接続ファクトリ、スタンドアロンの送り先、および分散送り先のエントリを作成します (「JMS モジュールから JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルを生成するための手順」を参照)。生成されたファイルには、「JMS SAF クライアントの初期 JNDI プロバイダを使用できるように JMS クライアント アプリケーションを変更する」で説明する初期 JNDI コンテキストを通じて JMS SAF クライアントが直接対話する接続ファクトリとインポート済み送り先が定義されます。ただし、生成されたファイルには、外部の JMS 送り先やサーバサイドの JMS モジュールの SAF 送り先のエントリは含まれません。しかも、SAF エクスポート ポリシーが All に設定された JMS 送り先のみが、ファイルに追加されます (送り先のデフォルト設定)。

JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルの仕組み

JMS SAF クライアントの XML ファイルは、JMS モジュールの WebLogic Server weblogic-jmsmd.xsd スキーマに準拠し、ルート要素 weblogic-client-jms を持っています。weblogic-jmsmd.xsd スキーマには、サーバサイドの WebLogic JMS SAF 機能に対応する最上位要素がいくつかあります。詳細については、「JMS SAF クライアントのコンフィグレーションでの有効な SAF 要素」を参照してください。

ファイルの最上位要素には、JMS SAF クライアントが直接対話する接続ファクトリとインポート済み送り先の要素が記述されています。SAF 送信エージェント、リモート SAF コンテキスト、および SAF エラー処理の要素には、SAF フォワーダの機能が記述されています。永続ストアの要素は、JMS SAF クライアント API と SAF フォワーダの両方で使用されます。

JMS モジュールから JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルを生成するための手順

ClientSAFGenerate ユーティリティを使用して、WebLogic ドメインの JMS モジュール コンフィグレーション ファイルから JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルを生成します。また、コンフィグレーション ファイルは既存の JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルから生成することもできます。詳細については、「ClientSAFGenerate ユーティリティの構文」を参照してください。

注意 : クライアント マシン上で ClientSAFGenerate ユーティリティを実行して、既存の JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルからコンフィグレーション ファイルを生成する場合、シン JMS クライアントや JMS SAF クライアントではなく、CLASSPATH 内の wlfullclient.jar を使用する必要があります。詳細については、「JMS SAF クライアントの JAR ファイルをクライアント マシンにインストールする」を参照してください。

次の手順は、ClientSAFGenerate ユーティリティを使用して、インストールした WebLogic Server に付属している examples-jms.xml モジュール ファイルから JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルを生成する方法を示しています。

  1. JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルのベースとして使用する JMS モジュール ファイルが存在する WebLogic ドメインのディレクトリに移動します。
  2. c:\bea\wlserver_10.0\samples\domains\wl_server\config\jms 
  3. Java コマンドラインで ClientSAFGenerate ユーティリティを実行します。
  4. > java weblogic.jms.extensions.ClientSAFGenerate -url http://10.61.6.138:7001 -username weblogic -moduleFile examples-jms.xml -outputFile d:\temp\ClientSAF-jms.xml

    表 6-1 に、有効な ClientSAFGenerate の引数を示します。

  5. SAFClient-jms.xml というコンフィグレーション ファイルがカレント ディレクトリに作成されます。以下に、その主な内容の例を示します。
  6. <weblogic-client-jms xmlns="http://www.bea.com/ns/weblogic/100" xmlns:xsi="http://www.w3.org/2001/XMLSchema-instance">
    <connection-factory name="exampleTrader">
    <jndi-name>jms.connection.traderFactory</jndi-name>
    <transaction-params>
    <xa-connection-factory-enabled>false
    </xa-connection-factory-enabled>
    </transaction-params>
    </connection-factory>
    <saf-imported-destinations name="examples">
    <saf-queue name="exampleQueue">
    <remote-jndi-name>weblogic.examples.jms.exampleQueue
    </remote-jndi-name>
    <local-jndi-name>weblogic.examples.jms.exampleQueue
    </local-jndi-name>
    </saf-queue>
    <saf-topic name="quotes">
    <remote-jndi-name>quotes</remote-jndi-name>
    <local-jndi-name>quotes</local-jndi-name>
    </saf-topic>
    </saf-imported-destinations>
    <saf-remote-context name="RemoteContext0">
    <saf-login-context>
    <loginURL>t3://localhost:7001</loginURL>
    <username>weblogic</username>
    </saf-login-context>
    </saf-remote-context>
    </weblogic-client-jms>
    ヒント : クラスタまたはドメインにデプロイされた他の JMS モジュールからリモート SAF 接続ファクトリと送り先を追加するには、これらの JMS モジュールに対して ClientSAFGenerate ユーティリティを再実行します。その際、-outputFile パラメータに同じ JMS SAF コンフィグレーション ファイル名を指定します。詳細については、「ClientSAFGenerate ユーティリティの構文」を参照してください。
  7. 生成されたコンフィグレーション ファイルには、SAF リモート コンテキストがリモート サーバに接続する際に使用する暗号化されたパスワードが含まれていません。暗号化されたリモート SAF コンテキストのパスワードを作成して、コンフィグレーション ファイルに追加するには、「リモート JMS SAF コンテキストのパスワードを暗号化する」の説明に従ってください。
  8. JMS SAF クライアント アプリケーションが実行されるクライアント マシンに、生成されたコンフィグレーション ファイルをコピーします。詳細については、「JMS SAF クライアントの JAR ファイルをクライアント マシンにインストールする」を参照してください。
  9. 注意 : デフォルトでは、JMS クライアントの現在の作業ディレクトリに ClientSAF.xml が作成されます。ただし、JMS クライアントに引数を渡すことによってファイル名を明示的に指定することもできます。詳細については、「JMS SAF クライアントの初期 JNDI プロバイダを使用できるように JMS クライアント アプリケーションを変更する」を参照してください。

ClientSAFGenerate ユーティリティの構文

weblogic.jms.extensions.ClientSAFGenerate ユーティリティは、JMS モジュール ファイルまたは既存の JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルを使用して、JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルを生成します。

java 	[ weblogic.jms.extensions.ClientSAFGenerate ] 
[ -url server-url ]
[ -username name-of-user ]
[ -existingClientFile file-path ]
[ -moduleFile file-path ['@' plan-path ]]*
[ -outputFile file-path ]

表 6-1 ClientSAFGenerate の引数
引数
定義
url
JMS SAF クライアントが接続する WebLogic Server インスタンスの URL。
username
この JMS SAF クライアント インスタンスがメッセージを転送する際に使用する有効なユーザの名前。
existingClientFile
既存の JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルの名前。このパラメータを指定すると、既存のファイルが読み取られ、新しいエントリが追加される。追加される項目とすでに JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルに存在する項目との間で衝突が検出された場合は、警告が発生して新しい項目は追加されない。指定された JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルが見つからない場合は、エラーが出力されてユーティリティは終了する。
moduleFile
JMS モジュール コンフィグレーション ファイルとプラン ファイル (省略可能) の名前。
outputFile
生成される出力ファイルのパス。パスが指定されていない場合は、stdout に出力される。
デフォルトでは、JMS クライアントの現在の作業ディレクトリに ClientSAF.xml が作成される。ただし、JMS クライアントに引数を渡すことによってファイル名を明示的に指定することもできる。

JMS SAF クライアントのコンフィグレーションでの有効な SAF 要素

weblogic-jmsmd.xsd スキーマの weblogic-client-jms ルート要素には、サーバサイドの WebLogic JMS SAF 機能に対応する最上位要素がいくつか含まれています。表 6-2 に、スキーマの最上位要素と対応する管理 MBean との関係を示します。

表 6-2 weblogic-client-saf の要素
weblogic-client-jms 要素
WebLogic Server の管理 MBean
connection-factory
saf-agent
saf-imported-destinations
saf-remote-context
saf-error-handling
persistent-store

警告 : JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルで指定できるのは、1 つの persistent-store および saf-agent 要素のみです。

これらの管理 MBean のすべてのプロパティは、JMS SAF クライアント実装でもサーバサイドの SAF JMS コンフィグレーションの場合と同じように機能します。ただし、次の表に示すものは除きます。

表 6-3 に、標準の SAFAgentMBean フィールドと JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルのフィールドとの相違点を示します。

表 6-3 SAFAgentMBean フィールドの変更点
サーバサイドの SAF フィールド
JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルとの相違点
PersistentStore
使用不可。定義される永続ストアは 1 つのみ。
ServiceType
使用不可。これは送信エージェントにしかなれない。
BytesThresholdHigh
しきい値プロパティは使用不可。
BytesThresholdLow
しきい値プロパティは使用不可。
MessagesThresholdHigh
しきい値プロパティは使用不可。
MessagesThresholdLow
しきい値プロパティは使用不可。
ConversationIdleTimeMaximum
使用不可。このフィールドはメッセージの受信でのみ有効。
AcknowledgeInterval
使用不可。このフィールドはメッセージの受信でのみ有効。
IncomingPausedAtStartup
使用不可。休止を解除できない。休止を解除可能にするには、JMS SAF クライアント プロパティを設定しないこと。
ForwardingPausedAtStartup
使用不可。休止を解除できない。休止を解除可能にするには、JMS SAF クライアント プロパティを設定しないこと。
ReceivingPausedAtStartup
使用不可。休止を解除できない。休止を解除可能にするには、JMS SAF クライアント プロパティを設定しないこと。

警告 : JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルで指定できるのは、1 つの saf-agent 要素のみです。

表 6-4 に、標準の JMSConnectionFactoryBean フィールドと JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルのフィールドとの相違点を示します。

表 6-4 JMSConnectionFactoryBean フィールドの変更点
サーバサイドの SAF フィールド
JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルとの相違点
無視される。これらの接続ファクトリは対象外になる。
無視される。このクライアントはマルチキャスト受信を実行できない。
無視される。JMS SAF クライアントは XA トランザクションを実行できない。
すべてのフィールドが無視される。JMS SAF クライアントはメッセージを受信できない。
すべてのフィールドが無視される。JMS SAF クライアントはサーバに接続されてないため、ロード バランシングができない。

表 6-5 に、標準の SAFImportedDestinationsBean フィールドと JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルのフィールドとの相違点を示します。

表 6-5 SAFImportedDestinationsBean フィールドの変更点
サーバサイドの SAF フィールド
JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルとの相違点
SubDeploymentName
無視される。これらは、このファイルで定義される 1 つの SAF エージェントを対象にしている。
UnitOfOrderRouting
無視される。メッセージ順序単位はサポートしない。

JMS SAF クライアントのデフォルト ストア オプション

各 JMS SAF クライアントは、コンフィグレーションを必要としないデフォルト ストアを持っており、このストアは複数の JMS SAF クライアントで共有できます。デフォルト ストアはファイル ベースのストアで、JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ディレクトリ直下のファイル グループにデータを保持します。

persistent-store 要素を使用すると、デフォルト ストアに別の場所を指定でき、次の要素を JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルに指定することによって、デフォルトの書き込みポリシーを変更することもできます。

表 6-6 persistent-store の要素
要素名
機能
directory-path
ファイル ストアを保持するディレクトリのファイル システム上のパス名を指定する。
synchronous-write-policy
ファイル ストアがディスクにレコードをフラッシュする方法を定義する。指定できる値は、[Direct-Write] (デフォルト)、[Cache-Flush]、および [Disabled]。

警告 : JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルで指定できるのは、1 つの persistent-store 要素のみです。

次に、JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルにおけるカスタマイズされた JMS SAF クライアントのデフォルト ストアの例を示します。

  <persistent-store>
<directory-path>config/jms/storesdom</directory-path>
<synchronous-write-policy>Disabled</synchronous-write-policy>
</persistent-store>

ファイル ストアの同期書き込みポリシーの使用に関する詳細については、『WebLogic Server 環境のコンフィグレーション』の「WebLogic 永続ストアの使い方」を参照してください。

リモート JMS SAF コンテキストのパスワードを暗号化する

生成された SAF コンフィグレーション ファイルには、ソース JMS モジュール ファイルにコンフィグレーションされているかどうかに関係なく、暗号化された SAF リモート コンテキストのパスワードが含まれていません。JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルで定義されるリモートのクラスタまたはサーバのコンテキストに対しセキュリティ資格がコンフィグレーションされる場合、リモートのサーバまたはクラスタに接続する際に、暗号化されたパスワードが必要になります。

暗号化されたリモート SAF コンテキストのパスワードを作成するには、インストールした WebLogic に付属している ClientSAFEncrypt ユーティリティを使用する必要があります。このユーティリティを使用すると、クリアテキストの文字列を JMS SAF クライアント用に暗号化することができます。

注意 : 既存の weblogic.security.Encrypt コマンドライン ユーティリティは、ドメイン セキュリティ ファイルへのアクセスが想定されるため、クライアントでは使用できません。

暗号化されたパスワードの生成手順

以下に、ClientSAFEncrypt を使用して暗号化されたパスワードを生成する手順を示します。

  1. Java コマンドラインで ClientSAFEncrypt ユーティリティを実行します。
  2. > java -Dweblogic.management.allowPasswordEcho=true weblogic.jms.extensions.ClientSAFEncrypt [ key-password ] [ remote-password ]*
  3. key-password フィールドまたは remote-password フィールドが指定されていない場合は、key-passwordremote-password を指定するよう対話形式で求められます。
  4. 次に、暗号化されたパスワードを取得する例を示します。
  5. Password Key ("quit" to end):
    Password ("quit" to end):
    <password-encrypted>{Algorithm}PBEWithMD5AndDES{Salt}9IsTPAuZdcQ={Data}d6SSPp3GwPAfEXn8izyZA0IRCV/izT8H</password-encrypted>
    Password ("quit" to end):
  6. JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルに定義されているリモート コンテキストに必要な数だけリモート パスワードを生成します。
  7. 暗号化されたリモート パスワードをコピーして、JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルの </saf-login-context> スタンザの前に貼り付けます。次に例を示します。
  8. <saf-remote-context name="RemoteContext0">
    <saf-login-context>
    <loginURL>http://10.61.6.138:7001</loginURL>
    <username>weblogic</username>
    <password-encrypted>{Algorithm}PBEWithMD5AndDES{Salt}dWENfrgXh8U={Data}u8xZ968dElHckso/ZYm2LQ6xVNBPpBGQ</password-encrypted>
    </saf-login-context>
    </saf-remote-context>

    JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルに定義されているリモート コンテキストで必要になるすべてのパスワードに対して、同じ key-password を指定して ClientSAFEncrypt ユーティリティを使用します。クライアントが JMS SAF クライアントの使用を開始する際、ClientSAFEncrypt ユーティリティに指定した同じ key-password を使用する必要があります。

  9. quit と入力して、ClientSAFEncrypt ユーティリティを終了します。

ClientSAFEncrypt ユーティリティの構文

weblogic.jms.extensions.ClientSAFEncrypt ユーティリティは、クリアテキストの文字列を JMS SAF クライアント用に暗号化して、リモート SAF コンテキストにアクセスできるようにします。

java 	[ -Dweblogic.management.allowPasswordEcho=true ] 
weblogic.jms.extensions.ClientSAFEncrypt [ key-password ]
weblogic.jms.extensions.ClientSAFEncrypt [ remote-password ]

表 6-7 ClientSAFEncrypt の引数
引数
定義
weblogic.management.allowPasswordEcho
省略可能コマンドラインで入力した文字が表示されるようにする。weblogic.jms.extensions.ClientSAFEncrypt では表示されないことを想定しているため、表示する場合は、このプロパティを true に設定する。
key-password
JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルに定義されているリモート コンテキストに必要なすべてのリモート パスワードを暗号化する際に使用するキー。
コマンドラインで省略した場合は、key-password の入力を求められる。
remote-password
暗号化するクリアテキストの文字列。1 つのセッションで生成される各リモート コンテキストに対する複数のパスワード。
コマンドラインで省略した場合は、remote-password の入力を求められる。

JMS SAF クライアントの JAR ファイルをクライアント マシンにインストールする

JMS SAF クライアントのインストール方法は、クライアント マシンで、小さい JAR ファイル (シン クライアント) を必要とするのか、必要な機能をすべて含み推奨ベスト プラクティスである、高パフォーマンスで単一の wlfullclient.jar ファイルを使用できるのかによって異なります。

必要な WebLogic JAR ファイルは、WebLogic Server インストール ディレクトリの WL_HOME\server\lib サブディレクトリにあります。WL_HOME は、インストールした WebLogic 製品全体の最上位インストール ディレクトリ (たとえば c:\bea\weblogic92\server\lib) です。

シン クライアント用に小さいサイズの JAR ファイルが必要な場合は、次の JAR ファイルをクライアント マシンのファイル システム上のディレクトリに配置し、CLASSPATH に追加する必要があります。

wljmsclient.jarwlclient.jar を参照するので、CLASSPATH にはどちらか一方の JAR を指定するだけでかまいません。

同様に、推奨ベスト プラクティスとして高パフォーマンスでサイズの大きな wlfullclient.jar を使用する場合も、この JAR ファイルをクライアント マシンのファイル システム上のディレクトリに配置し、CLASSPATH に追加する必要があります。また、wlfullclient.jar ファイルを使用すると、クライアント マシンで ClientSAFGenerate ユーティリティを実行して、既存の JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルからコンフィグレーション ファイルを生成することができます。詳細については、「JMS モジュールから JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルを生成するための手順」を参照してください。

シン クライアントの開発の詳細については、「Java EE アプリケーション クライアント (シン クライアント) の開発」を参照してください。

JMS SAF クライアントの初期 JNDI プロバイダを使用できるように JMS クライアント アプリケーションを変更する

JMS SAF クライアントには、「JMS モジュールから JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルを生成するための手順」で生成した JMS SAF クライアントのコンフィグレーション ファイルに指定されたサーバサイドの JMS 接続ファクトリと送り先をルックアップするために、初期 JNDI プロバイダが必要になります。

JMS SAF クライアントに必要な JNDI コンテキスト ファクトリ

JMS クライアント アプリケーションを変更して、標準のサーバ初期コンテキストの代わりに JMS SAF クライアントの JNDI コンテキスト ファクトリを使用するようにします。JMS SAF クライアントの JNDI プロパティ java.naming.factory.initial に使用する名前は、weblogic.jms.safclient.jndi.InitialContextFactoryImpl です。

JMS SAF クライアント アプリケーションの JNDI 初期コンテキスト ファクトリの例は、次のようになります。

   public final static String JNDI_FACTORY="weblogic.jms.safclient.jndi.InitialContextFactoryImpl";

標準の JNDI ルックアップを使用して、JMS SAF クライアントは自動的に起動され、コンフィグレーション ファイルに指定されたサーバサイドの JMS 接続ファクトリと送り先をルックアップします。デフォルトでは、JMS クライアントの現在の作業ディレクトリに ClientSAF.xml というコンフィグレーション ファイルが作成されます。ただし、JMS クライアントに引数を渡すことによってコンフィグレーション ファイルの名前を明示的に指定することもできます。

JMS SAF クライアントで作成された初期コンテキストから返される項目は、サードパーティの JMS プロバイダからの JMS 呼び出しでは処理できません。また、JMS SAF クライアントの初期コンテキストとサーバの初期コンテキストを混在させることはできません。詳細については、「JMS SAF クライアントのコンテキストとサーバのコンテキストは混在できない」を参照してください。

また、JMS クライアント アプリケーションを更新して weblogic.jms.extensions.ClientSAF 拡張クラスを使用可能にすることができます。これによって、JMS クライアントが JMS SAF クライアント システムの使用を制御することができるようになります。詳細については、「JMS SAF クライアントの初期化 API」を参照してください。

JMS SAF クライアントの任意指定の JNDI プロパティ

次のような 2 つの任意指定の JMS SAF クライアントの JNDI プロパティがあります。

ローカル JNDI プロバイダでは、lookup(String) API および close() API しかサポートされていません。その他の API ではすべて、機能がサポートされていない旨の例外が送出されます。

 


JMS SAF クライアント管理ツール

次の管理機能は、JMS SAF クライアント実装で使用できます。

JMS SAF クライアントの初期化 API

weblogic.jms.extensions.ClientSAF 拡張クラスを使用すると、JMS クライアントが JMS SAF クライアント システムの使用を制御することができるようになります。JMS クライアントではこの拡張メカニズムを使用する必要はありませんが、これを使用すると、JMS SAF クライアント システムをきめ細かく制御することができます。たとえば、close() メソッドを使用すると、JMS クライアントがメッセージを転送しないようにすることができます。

クライアントサイドのストア管理ユーティリティ

JMS SAF クライアントには、JMS SAF クライアントが使用するデフォルトのファイル ストアを管理するユーティリティが用意されています。サーバサイドの WebLogic ストア ユーティリティと同様に、JMS SAF クライアント ストアのトラブルシューティングを行ったり、データを抽出したりできます。このユーティリティは、Java コマンドラインからでも WebLogic Scripting Tool (WLST) からでも実行することができます。ストア ユーティリティで操作できるのは、実行中の JMS SAF クライアントが現在開いていないストアのみです。

ストア管理の最も一般的な使用例は、サイズを減らすためにファイル ストアを圧縮する場合や、トラブルシューティングを目的としてファイル ストアの内容を XML ファイルにダンプする場合です。詳細については、『WebLogic Server 環境のコンフィグレーション』の「永続ストアの管理」を参照してください。

 


JMS SAF クライアントでの JMS プログラミングの考慮事項

JMS SAF クライアントを使用する場合、次の JMS プログラミングの考慮事項が適用されます。

JMS SAF クライアント メッセージでの JMSReplyTo フィールドの処理方法

一般的に、JMS アプリケーションは JMSReplyTo ヘッダ フィールドを使用して、一時的な送り先の名前を他のアプリケーションに対して公開できます。ただし、サーバサイドの JMS SAF インポート済み送り先の場合と同様に、JMSReplyTo フィールドを持つ一時的な送り先の使用は JMS SAF クライアントでサポートされていません。

JMS 一時送り先の使用方法の詳細については、『WebLogic JMS プログラマーズ ガイド』の「一時的な送り先の使い方」を参照してください。

JMS SAF クライアントのコンテキストとサーバのコンテキストは混在できない

JMS SAF クライアントのネーミング コンテキストから返される項目をサーバの初期コンテキストから返される項目と一緒に使用すると、JMS API が失敗し、その旨の例外メッセージが表示されます。同様に、サーバの初期コンテキストから返される項目を JMS SAF クライアントのネーミング コンテキストから返される項目と一緒に使用すると、JMS API が失敗し、その旨の例外メッセージが表示されます。

JMS SAF クライアントでのトランザクション セッションの使用

JMS SAF クライアントでのトランザクション セッションはサポートされていますが、クライアント SAF 操作は、グローバル (XA) トランザクションへ一切参加しません。XA トランザクションがある場合、メッセージ送信処理は XA トランザクションの外部で行われ、例外は送出されません。

 


JMS SAF クライアントの相互運用のガイドライン

相互運用のガイドラインは、JMS SAF クライアントを使用してサーバサイドの WebLogic JMS にメッセージを転送する場合に適用されます。

Java ランタイム

各クライアント マシンには、J2SE 1.4 以降のランタイムがインストールされている必要があります。

WebLogic Server のバージョン

WebLogic の JMS SAF クライアント システムは、WebLogic Server 9.2 以降でのみ機能します。

クライアントサイドの WebLogic JMS SAF クライアント コードは、リリース 9.2 以降の WebLogic Server JAR ファイルで実行される必要があります。WebLogic Server JAR ファイルのインストールの詳細については、「JMS SAF クライアントの JAR ファイルをクライアント マシンにインストールする」を参照してください。

 


JMS SAF クライアントのチューニング

JMS SAF クライアントでは、サーバサイドの SAF サービスで使用可能なパラメータのチューニングを利用することができます。詳細については、『WebLogic Server パフォーマンス チューニング ガイド』の「WebLogic JMS ストア アンド フォワードのチューニング」を参照してください。

 


JMS SAF クライアントの使用に関する制限

JMS SAF クライアントでは、「JMS SAF クライアントのコンフィグレーションでの有効な SAF 要素」で説明したフィールド レベルの制限のほか、次の制限も適用されます。


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